とうとう日本もTPPに交渉参加することになりますね。困ったもんだ。
私はこのブログに何度もTPPは反対だと書いています。
その理由はいくつかあるのですが、関税撤廃とかそういうところに問題があるのではないし、日本の農業は守れるのか?というところに関心があるのでもないのです。基本的に日本に取って有利な面が私にはわかりません。でも輸出倍増計画を持つアメリカに取ってはどうしても進めたい話でしょう。
TPPが変だと思うのは、表向きは綺麗ごとが並べられていますが、条項の中におかしなものが紛れ込んでいるという点。私が一番気になるのはISD条項です。これは何かというと、他国の市場への参加が自由に出来るように諸々の規制を撤廃するということになっていますが、もし他国に進出し、そこには当然内国法もあれば地域独特の慣習なり規制也が残っていて、それが障害となって進出企業がうまくいかなかったとします。こんなことは当たり前に起こるというか、その辺をどうクリアするかが企業の能力だと思うのですが、TPPの場合、その企業が損害を受けたと訴訟を起こすことができるんですね。相手はその国です。
そしてその裁判をするのがTPPの国際法廷でその国は関係ないっていうんです。何これ?って思いませんか。
市場を開放してやったのにそこでうまくいかなかったのはお前のせいだとその国を訴えることができる。こんなバカな話がありますか。
その他、自由化とは逆に著作権法の強化や医薬品の独占がしやすい条項もあるとのこと。これってTPPの理念に逆行する内容。
まぁ、日本では農業がどうなるとそこばかり問題視されますが、当然農業は大きな打撃を受けるかもしれません。でもTPPは市場全般にわたって他国からの参入がしやすいようになっている条約で、人的交流も大きな柱。つまり他国で仕事がしやすくなる。そして世界的には閉鎖的だといわれる日本の金融の世界にも他国企業が参入しやすくなる。
これって、日本には郵貯というちょっと変った世界があるわけで、そこに眠る資金量は莫大。そこにメスが入れられると国債の受け皿が崩壊する危険だってあるわけです。簡易保険の市場も凄いらしい。でもそれこそかつての小泉さんや竹中氏のように、アメリカがいうようにもっと日本をバラバラに解体して自由化を進めたほうが良いと考える日本人もいるわけですが、私としてはそこは疑問。というかわからない。保守派の私としては日本の特殊性をぶっこわす(小泉さん流)した方がいいのかどうかがわからない。
ま、アメリカは自由貿易主義の先鋒で、日本に対して今までもいろいろ口出しをしてきたわけですよね。それは日米構造協議でであり、その後の年次改革要望書であり、アメリカは具体的に、そして細部にわたって日本を彼らの都合の良い国にするためにプレッシャーを掛けてきた。これに応える形で日本も妥協をしてきたけれど、まぁ、のらりくらりも可能な状態だったのかもしれません。
ところがこのTPPってのは要望じゃないんですね。条約。つまり強制力があるってこと。そして上に書いたISD条約で補強してある。アメリカの本気度がTPPには見えるような気がします。
TPPはアメリカの経済侵略であるという人が居るけれど、私もそう感じます。
ところがですね。アメリカ国内に目を向けて見ると、アメリカ国内でも日本と同じ恐怖をもっているのがわかります。つまり、外国企業が進出してきて、国内法をもねじまげて強引に活動するのではないかという心配。アメリカではバイアメリカン運動ってのが活発ですよね。アメリカ製品を買おうという市民運動。これってTPPから見ると駄目なわけです。こういう他国商品を排斥するような運動を政府が見逃すから売れないのだと訴えられれば、アメリカ政府はその外国企業に損害賠償金を払わなければならない。
ま、アメリカでもTPPに反対する勢力は決して小さくないということなんですが、ここでおかしな情報が入ってきました。アメリカでの報道ですが、TPPの策定、交渉が秘密裏に行われていて、産業界の重鎮はその草案に目を通すことが出来たけれど、議員にはその権利さえなかったという話。通商代表部が企業群と組んで勝手に進めてきた話だというんです。
これは市民団体が、TPPの内容がリークされたことによって初めてTPPがなんたるかを知り驚愕したというような内容。もしかしたら日本よりアメリカ国内の方がTPPに関する情報が少ないのかも。
この動画の最後の方で言っているのは、TPPは特定の大企業に取っての世界戦略の条約でしかないということ。1%の企業の夢であると。
このニュースが出たのが去年の6月で、アメリカでもTPPは極秘に動いていて未だに明らかになっていない部分があるようです。不思議な話ですよねぇ。
国ってなんだろうと思うことが近年多いのですが、国とは企業より大きなもの、力を持っているものと単純に信じていますが、ところが軍事産業の巨大さはもう何十年も前から言われていますし、農業にしても超巨大な会社が市場を押さえているのが現状で、NAFTA(北米自由貿易協定)でもメキシコのとうもろこし(彼らの主食)産業がアメリカ企業に取られたとか、カナダでも農産品の流通までアメリカ企業に取られたという話を聞きます。
巨大企業というと今ではアップルを思い出しますが、アップルでさえ小さな国より大きくなってしまった。農業にしても同じで巨大企業がいくつかある産業に集約されてしまっていて、その集合体としてのグループはアメリカ国家さえも動かす力があるというレポートを読んだことがあります。畜産関係も同じで、アメリカの肉市場は恐ろしいことになっているという話。
結局TPPはアメリカからの新たな押し付けと思って見ていましたが、そのアメリカを動かしているバックがいるってことなんですね。
日本では考えられませんが、アメリカの政府高官には産業界の大物がなる、また後で民間に戻るとかそういうのが当たり前だそうで、国とは企業の代表であると言っても良いくらいの国になっていると聞きます。
今回のTPPでも、それって本当なんだなぁと思うことがしばしばあって、本当に国際的な、あるいは国家のためというより、特定の産業界、特定の大企業の都合が良いように世界は動かされている可能性は非常に高いと思います。
ニューヨークの911テロにしても、あるいはイラク侵攻、アフガン侵攻に関してもどうも普通の常識では考えられないおかしな点がいくつもあって、本当に世界の安全を目標に各国が動いているのかどうか、それともあるバックが自分達の利益、理想実現のために無理にやっているのではないか、そんな気がしてならない大きな事件がこの20年、相次いで起こっているのが気になります。
こんな話をすると世界の歴史とはまさにそれで、戦争にしても国と国との問題と見るのは単純すぎて、実は大きな企業がバックについていたなんてことは毎度の話だと聞かされたこともあります。確かに日本の日露戦争にしてもあのリーマンブラザーズが日本の借金申し出を受けたから出来た戦争であって、ユダヤ人を迫害する、ロシアをやっつけるという共通の目的があったからに他ならない。そんなところに一企業の名前が出てくることに私は違和感を感じるのですが、これが世界の歴史なのかも知れず。
またアメリカの行動にしてもブッシュファミリーとは一体どういう素性の家系なのか。イラク戦争で儲けたのは誰か?という話にはアメリカの有名政治家の名前がゴロゴロ出てくるし、彼らが関連している企業群が相当数あるのがわかる。いや、政治家が関係している企業が多いのではなくて、企業が自分達の身内を政界に送り込んでいるというのが見えてきます。
アメリカって腐敗しているのかな、なんて思うのがそういうところ。
軍事関連企業がアメリカを脅かす時代になると退任時に演説した大統領もいるし、FRBという民間企業に通貨発行権を委譲してしてしまった大統領も後悔の手記を残しているし、まぁ、アメリカって正義の味方なのか、利権の塊りの国なのかわからなくなってきます。
まぁ、自由貿易だとか、関税撤廃だとか、なんだか耳障りの良い言葉を並べていても、そこに時限爆弾が隠されている可能性を絶対に忘れるべきではないと思うし、綺麗な言葉が好きな理想論者も多少は裏事情を調べてみるのも大事だと思います。大体、自由貿易主義とか市場開放、規制緩和、関税撤廃、その言葉だけで良い事だと思う人がいるんで本当に困る。それってちょっと綺麗な女性ウインクされるとその気になっちゃう人と同じような気がしてくるんですよ。
ま、あんなこんなTPPですが、安倍さんは交渉に参加すると言う。大丈夫なのか?
交渉に参加するだけでもう逃げられないという人も居れば、受け入れられないところは拒絶するべきで、それが駄目なら交渉から出ればよいという人もいる。まぁ、どちらが現実的なのかわかりませんが、私は戦後の日本とアメリカの関係を考えますと、絶対に対等ではないし、ノーといえる日本ではない、そうは言えない裏事情もあるのかもしれずで安倍さんの腹の内が想像さえ出来ません。
ただ、進むのもイバラの道、参加せずに留まるのもイバラの道。どちらも難しい選択だろうとは思います。
ああ、そうそう。私が気になるISD条項ですが、TPPに参加表明しているオーストラリアがこの条項には反対しているそうです。当たり前っていえば当たり前だろうって思います。
ISD条項に関しては東京新聞に参考になるQ&Aがありました。
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時間が経つとなくなるので、ここに内容を写させてもらいます。
TPP交渉の焦点「ISD条項」 海外投資トラブル回避
安倍政権が近く参加表明するTPP(環太平洋連携協定)は「ヒト・モノ・カネ」の行き来を活発にするため、関税の引き下げに加えて企業の投資や知的財産の保護などのルールづくりも協議している。中でも参加国の交渉では「ISD条項」の扱いが焦点となっていて、日本国内でも注目度が高まっている。どんな仕組みなのか。 (岸本拓也)
Q ISD条項って何。
A 英語の「Investor(投資家) State(国家) Dispute(紛争) Settlement(解決)」の頭文字の略称で、「国家と投資家の間の紛争解決」という意味になる。要するに企業などの投資家を保護するためのルールだ。
具体的には外国企業が投資先の国の対応によって損害を受けた場合、国連の仲裁機関などを通じてその国を訴えることができる。
制度が利用されるケースで想定されるのは、日本企業が新興国で建てた工場などに対し、その国が急に法律を変えて没収(国有化)する場合など。企業はその国に対し賠償金を求めることができる。
Q 外資企業が差別されないための仕組みなのかな。
A ISDがないと企業は投資先の国で不利益を被っても「泣き寝入り」の恐れがある。だから日本が経済連携協定(EPA)や投資協定を結んだ二十四カ国との間にはISDがある。例外はフィリピンとのEPAだけだ。これまで日本政府が訴えられた例はないが、世界各国での訴訟件数は二〇一一年末時点で四百五十件に上る。
Q そのISDが、なぜTPPでは問題視されるの。
A 訴訟大国の米国の存在が大きい。日本の「TPP反対派」は「米国企業が、日本政府を次々と訴えるのでは」と心配している。「訴訟乱発によって日本独自の厳しい環境規制や食品安全規制が脅かされる」との見方もあり、ISDを「米国の毒まんじゅう」と批判する有識者もいるよ。
Q 心配しすぎでは。
A 「反対派」は米国と北米自由貿易協定(NAFTA)を結ぶカナダ、メキシコの例を挙げている。これまでにISDを使って四十六件の提訴があったが三十件が米国企業が原告。中には米国企業がカナダとメキシコから多額の賠償金を勝ち取った例がいくつかあった。逆に米国政府が負けた訴訟はなく「ISDは米国優位」と指摘されている。ただ、米国企業の敗訴は十一件あり一概に米国有利の仕組みとも言えない。
Q TPPでのISDの交渉はどうなっているの。
A 豪州はTPPにISDを盛り込むことに反対しまだ決着していない。安倍晋三首相は「国の主権を損なうようなISDは合意しない」と主張しているが、日本が交渉に参加した場合、主張がどこまで通るかは見通せないのが現実だ。
世界に存在する様々な謀略説が好きな人がいますが、って私がそれなんですが(笑)、このTPPを練って推進しようとしている存在がいるのがわかりますね。ニューワールドオーダー(NWO)を推進したい人たち。彼らはいつか世界統一政府を作りたいみたいだけれど、EUを見ればわかるように簡単ではないのがわかった。国のくくりで世界統一は難しい。しかし経済力に物を言わせて金融界、産業界を中心に世界の再構築を狙っているのでしょう。まぁ、それは考えすぎだとしても、一つのルールが全世界で通るようにしたいのは間違いがないですね。で、そのルールとは彼らのルールでこちらの都合は関係ない。
TPPとはある特定の企業群が世界制覇を進めるための道具であると思います。経済を伸ばすには四苦八苦しているピラミッドの底辺層を伸ばすのと、絶大なる力を持つ企業をより大きくするのと2面戦略が必要なのはわかりきったことで、オバマ氏の戦略にも整合する。
大体自由貿易主義とか市場原理主義とかって強者の論理でしかないですよね。EUがそうだけれど、一つの檻の中にライオンやウサギやネズミを入れて、さぁみんなで頑張りましょうっていうのと同じで何が起こるかは見えてる。
でもま、彼らの基準で日本市場に入ってきても日本人はそれを素直に受け入れるほど単純じゃないのね。農業でも危ないのは北海道のポテトぐらいかも。産地独特の良さ、個別種の良さ、多種多様を重要視する日本人の特性は外人にはまず理解の外だろうし、それに巨大農場経営が得意な外国企業が対処するのは難しいと思っています(でも時間と共にこれも変るのかな)。
かつての日米構造協議、年次改革要望書でも、あるいはプラザ合意のような日本の息の根を止めるようなことが起きても日本は混乱せずに伸びてきた。逆を言えば無理難題を押し付けたアメリカはそれでも良くならない。
さてTPPがどうなりますか。日本の立場だと受けるしかないのだろうと思うけれど、これを良い薬にして更なる発展をしてもらいたいと思います。まぁ、黒船が来たときのことを思えばTPPもたいしたことないのかな、と。 (笑)