【重要】日本の非居住者と税金

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このブログでは何度も何度も書いてきたことですが、ブログってどんどん時間とともに情報は埋もれてしまいますので、たまにこの件に関しては書くことにしています。

ポイントとしては、海外に居住し日本の非居住者となれば(日本を源泉とする所得以外)基本的に日本の税務署とは「さよなら~~」が出来るわけです。ただし、

○ 非居住者と認定されるのは簡単ではない。

○ 海外に出て非居住者になっても「贈与・相続」に関しては5年間縛りがある。

この話って、このジャンルのプロが「アドバイス」するような内容ではなくて、どの国に行っても納税義務はあるわけですから、納税義務者として最低限知らなければならない常識を共有するという意味で書いています。ですから、実際に行動に移す場合は「専門家」のアドバイスを受けるのが当然で、誰に聞いたとか、ネットで見たとか、そういうのは駄目。もちろん私が書く内容も違っているだろうという目で見てください。

どういう所得には税金が掛かって、特例もあって年金には掛からないとか、そういうことはもう全ての方がわかっていると思いますので省略しますが、問題は、非居住者であれば納税義務もなくなるとしても、非居住者になるのは簡単ではないってことなんです。

これに関しては何度も書いていますので、このブログの読者の方はもう耳にタコ状態だと思いますが、まだわかっていない人はたくさんいます。

良く勘違いしている例は

「海外に183日以上滞在すれば、非居住者になる」

という点。日本にはこの183日ルールは存在しません(税理士でも『半年以上海外に出ていれば大丈夫』というのがいますので注意が必要)。でもこのルールを使う国はたくさんあって、オーストラリアもそうですしマレーシアもそう。ただし、ここにもう一つの勘違いがあるんですよ。本来の183日ルールとは

「183日以上滞在したら納税義務が生じる」

という意味なんですね。つまり、183日以上滞在しなければ「納税義務がない」という意味ではないわけです。ま、日本にはそもそもそのルールがありませんから関係ないのですが、ここで多くの人が疑問に感じるのは「租税条約」のことのはず。つまり、マレーシアでもオーストラリアでも183日以上滞在すれば、納税義務が生じるわけですね。そしてその国でも日本でも両方に課税されないように「二重課税防止」という取り決めがある。

だから結論としては「マレーシアの納税義務者」であるから「日本には納税義務がない」と考えてしまいがちです。でもそんなことはどこにも書いてありません。自分が勝手にそう拡大解釈しているだけ

まず「二重課税防止」とはどういうことかですが、例えばアメリカの会社から報酬を受けているとしましょう。そして税率は35%だとすれば当然アメリカに税金を払わなければなりません。これは外人だろうとアメリカ人だろうと、「どこに住んでいようと納税義務がある」。

もしその人が日本在住だとしましょう。当然、日本の納税義務者ですから、日本でも納税し無くてはならない。その税率が50%だとします。

さて、どうなるんでしょうか?

アメリカに35%支払って、日本で50%支払ったら、合計で85%の税金を支払うことになります。これを二重課税と呼ぶわけで、こんなことがあったら大変なことになります。ですから両国間で租税条約を結ぶんですね。

では実際にどうなるかというと、日本の居住者ですから確定申告しなくてはなりませんし、その時に、アメリカで支払った税額が「税額控除される」ということ。ですから単純計算では35%と50%の差額である15%だけ日本に納税すれば良いんですね。これを「二重課税防止」と呼ぶわけです(日本の税率の方が安ければ納税もない)。二箇所で払っても重複して払っていないので、これは二重課税じゃないわけです。あえて言うなら単なる「二箇所課税」(笑)。ここを理解しないと話が進みません。

ところがですね、世の中には自分勝手に解釈する人がいて、「アメリカで税金を払ったのだから日本には払う必要が無い」と思い込む人がいるんですね。

ここで抑えておかないとならないことは、「他国で納税義務が生じれば、母国では納税義務が無くなるということではない」という点。

ではどうやったら納税義務がなくなるのか。ここが重要になるわけですが、上に書いたように日本にはそもそも183日ルールはありません。では何を根拠に非居住者と判断するかというと、一言で言えば

「居所がどこにあるのか」

これだけなんです。このことに関しては国税庁にこういう説明があります。

 我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。
 「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。
 したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。
 ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、職務内容や契約等を基に「住所の推定」を行うことになります。
 「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。

ここには183日ルールは書いていませんよね。また住民票を抜けば非居住者ということでもないし、社会保険庁に海外転出届を出したから非居住者ってことでもないわけです。そういう届け出は「自己申告」でしかなくて、当局がどう判断するかは関係がないってこと。

じゃぁ居所、つまり家がどこにあるのかといえば、日本には無いし、マレーシアでコンドを所有している、あるいは借りているから大丈夫だろう、ってことでもないんですね。この国税局がいう「居所がどこにあるか」の判断って非常に曖昧で、とんでもない解釈をすることもあるのを我々は知らないと非常にうまくないと私は思うのです。「生活の本拠」があるかどうかって言い方もなんとなくわかるけれど、では何をもって生活の本拠とみなすかは「客観的事実によって判断」となっていますが、では客観的事実は具体的にどういうことなのかってわかります?

例えばですね、

○ 16才の時にアメリカへ留学し、その後、大学、大学院と合計8年、アメリカ在住の場合

○ 旅行が好きで、1年の内、300日は海外を放浪している場合

こういう場合は日本の居住者と認定されます。留学生の場合は「(日本にいる)親からの仕送り」で生活してるわけですから、居所は日本ということになります(同居と同じ)。旅行で放浪している人も同じ。

ま、その辺はそうだろうなと思いますよね。では

○ 香港に何年も在住し、会社も持ち、住居も持ち、家族も香港で生活し、本人は日本には時々会議で帰る程度の場合

このケースは誰が考えたって香港の居住者であって日本の非居住者ですよね。ところが国税局はこういうケースでも「日本の居住者」として裁判を起こしたんです。それが有名な「武富士事件」。その詳細は検索して頂くことにして(このブログにも書いています)、これってとんでも無い話で、これでも日本の居住者だと言われるなら、世界に出ている日本人はみんな日本の居住者になっちゃうじゃないかと思うわけです。

でも実際には、一審は武富士の勝ち。そして二審はなんと武富士は負けたんですよ(ここが重要)。さてどうなるかと海外在住の日本人が気にしていた最高裁ですが、武富士が逆転勝訴です。これで安心した人って半端じゃ無い数いるはずですが、まぁ、そういう結果じゃないと本当に困ってしまいます。

じゃぁ、大丈夫ってことでしょう?と考えて良いのかどうか。少なくとも国税局は訴訟に持っていったわけですし、二審では武富士は負けたという事実を忘れてはならないと思うのです。

ま、これは極端な例ですが、183日がどうじゃとか住民票がどうじゃとかそういうレベルの話じゃないってことなんですよ。

でもそんなメチャクチャじゃ何を基準にしたら良いのかわからないって話になるわけで、そういう時に出てくる一般論として

○ 半年以上は海外に出ていること
○ どんなビザを持っているのか
○ 家がどこにあるのか
○ 家族はどこにいるのか
○ 仕事はどこでしているのか
○ 収入の源泉はどこにあるのか

そういう「客観的な」様々な点から「総合判断する」しか無いんですね。でもこれなら「絶対」大丈夫ってこともないということ。(こういう風に考えると年金生活者の海外ロングステイってどう扱われるのか微妙だと思いませんか?「日本に自宅もあって生活できるように維持し、収入の源泉は日本にあるなら単なる長期旅行ですね」なんて言われたら真っ青です)

本当にいい加減だと思いますが、これはやっぱり歴史を考えないと駄目で、過去から現在に至るまでに「海外を利用して節税を考える個人や企業がゴマンといる」ってことなんですね。だからどうしたって当局は「性善説」は取らないわけです。我々に悪意がないにしても、当局がどう見るかは別ってこと。実際に、海外との税制の違いを利用して節税するのは世界の常識なわけですから。

そしてもう一つ大事なのは「5年縛りがある」という点。

これは簡単で、海外に出て日本の非居住者になっても出国から5年以内は日本に対して相続・贈与の申告納税義務があるということ。

これを知らないとうまくなくて、オーストラリアもマレーシアも相続税・贈与税という概念そのものが税法上にありませんから日本人にしてみれば\(^o^)/状態。ところがそれを利用されて、簡単に節税されては日本国としては困るわけで、5年間は日本にいるのと同じですというルールを作った。

もしそういうルールが無かったことを考えてもみてくださいな。大金持ちの当主がそろそろヤバくなって(どういう意味? 笑)、相続税が大変だという事になった場合です。じゃぁ、オヤジも息子もMM2Hでも取ってマレーシアに行こうよって話になるでしょう。半年もしないでビザはほぼ間違いなく取れちゃうんですから。その後、資産を現金化して海外に出して、あるいはマレーシアに持ち込んでも良いですが、オヤジさんは闘病生活をマレーシアで続けるとして、息子は日本に度々帰って183日以上の滞在にならないように気を使って、そうこうしているうちに2年ほどでオヤジさんが他界したとなれば(それまで待たずともさっさと贈与して、日本に帰ってくればOK)、相続税はゼロになっちゃうんですよ。簡単すぎると思いません?

贈与でも同じです。贈りたい方と貰う方が、両方共MM2Hを取ってマレーシアに行って、2年目ぐらいに贈与をして、次の年に日本に帰ってくれば贈与完了です。そんな簡単に贈与ができるなら金持ちはみんなMM2Hを取って数年だけマレーシアに行っちゃいます。

でもかつてはその5年縛りがなかったんですね。だから海外を利用してそういうことを合法的にやった人はゴマンといるわけです。またかつては、子供の国籍を変えると相続が簡単に出来たり(海外在住の外国籍の子や孫には無税で相続させる方法が存在した)ようなうまくすり抜けられる抜け道もあったりで、税金を払わないで良いように寝ずに考える人はいくらでもいて、そして実行していたってことなんですね。でもそれに歯止めを掛けなければならないのは国として当たり前のことだと思います。

ですからこの5年縛りも簡単に考えるとうまくなくて、日本ではキャッシュはほとんどご主人の名義だったのに、マレーシアでコンドミニアムを買って奥さんの名義にしたとか、あるいは帯同した息子の名義にした、なんてのも立派な贈与なわけです。黙っていればわからないというのは解決策にはならなくて、これが発覚すれば当然、日本に贈与税を納付しなければならない。

贈与税がどれだけ高率なのかはみなさんご存知のはずで、数千万単位の金でも動かしたら大変なことになります。でも発覚してから「いやいや、あれは知らなかったからそうしただけで、では元に戻します。」なんてのが通用するのか?(笑)

また夫婦でマレーシアに渡って、残念なことに5年以内に相続が発生したとすれば、当然それは日本で申告しなくてはならないということで、それをしなければ租税回避となります

これを突き詰めて考えると共有名義ってのも同じなんですね。結構海外ぐらしに多い年より夫婦で再婚同士ってのがいます。しがらみの無い海外で心機一転・・なんて考えるのでしょうが、それは良いにしても、定期や不動産を共有名義にしたらどうなるんでしょうか。

ま、細かいことを考えてもしょうがないですが、基本的にはそういう問題があるということを忘れてはならないと思います。また実際に、何億という資産を持っている方がペナンに在住しておりまして、結果的に帰国したのですが、その後、当局から調べが入ってとんでも無い額の納税をしたというニュースがあったのを「ペナン在住のMM2H申請代行業をするリカさん」のブログに書いてありました。ちなみにリカさんのお客さんではありません。

話は戻って「日本の非居住者になる」という点ですが、これを簡単に考える傾向のある人達が存在します。それは過去に「海外駐在経験」を持つ人たち。この海外駐在のケースって簡単というか問題がないんですね。自分の意志によってというより、社命によって海外に出て、そこで仕事をし、収入を得、生活するのもはっきりしているわけですよ。つまり、海外に出て、節税しようとか下心がある人達じゃないんですね。だから当局もそうだし、会社も、また会社に付いている公認会計士も簡単にこの辺を処理するわけです。だから駐在経験を持つ人はこの辺を簡単に考える傾向があるのを知っておいて損はないと思います。

ところがですね、我々みたいに社命でもなんでもない、一個人が自分の意志によって海外に出るとなると話はまるで違ってくるってことなんですね。もしかしたら節税目的かもしれないわけですし、そういう人は過去にも現在にもたくさんいる。ですから当局もそういう目で我々を見てもしょうがない。

実際に退職者って一体何で食っているんだかわからないような、あっちに行ったりこっちに行ったりどこが本拠地だかわからないような、なんだか怪しそうなわけのわからん人っていっぱい居ますよね。特にハワイとかアメリカ西海岸なんてのは、半端じゃない大金持ち日本人がプラプラしているんですね。そういう人たちが一体何をしているのか、あるいは何をしたのか、何か企んでいるのか、そういうのに当局はちゃんと目を光らせているわけです。俺達はたいして金もない年金生活者だと言っても、当局はそうは見ないってこと。

そして目をつけられると、上に書いた武富士みたいにわけのわからないことが起きるかもしれないってことです。

このブログの読者に、あるいは検索で来る方の中に節税目的で海外に出ようと考えている人がいるのかどうかもわかりませんが、それが目的じゃないにしても、なんだか旨いことが出来そうだと考える人は少なく無いと思っています。

でもそう簡単には行かないと思いますよ、って話。

でもマレーシアもオーストラリアもある一面を見ればタックスヘイブンに間違いがなく、それはそれで我々在住者がそれを利用する権利を与えられたのと同じですから、ちゃんと法律に則ってやれば全く何の問題もないってことですね。

もし税制の違いを利用して何かを計画しているとしたら、とにかく5年間は計画を実行すること無くじっとしていて、そして日本の居住者と見られるかもしれないことは一切しないこと。ここで問題なのは、な~~んも深いことを考えずに簡単に資産の名義を移動しちゃうことなんですね。何を計画したわけでもなく、租税回避を目的としているわけでもなく、皆がそうやっているから私もそうした。問題は無いんでしょ?みたいな。この日記で一番言いたいことはこの部分です。決して他人ごとじゃないんですね。知らず知らずのうちに脱税する意志なんか無いのに、結果的には租税回避をしてしまう危険があるってこと。居住者か非居住者かの認定に関しても同じです。

オマケでいくつか書き足しておきます。

巷でよくある話は

○ 黙っていればわからない。
○ 日本に持ち帰るからバレる。
○ 海外に残しておけば良い。
○ 我々雑魚は絶対に大丈夫。
○ もし見つかったら修正申告すれば良いだけだ。

こういうことを自慢気にいう人も少なくないんですね。私としては「日本人の民度は高いんじゃなかったっけ?」なんて思うのですが(笑)、「好きにすれば良い」としか言えませんね。私の友人で、オーストラリアと日本を行ったり来たりしている資産家の人がいるんですよ。ハワイにも別荘を持っていた。かなり前ですが、彼はその別荘を売ったんですね。で、利益が出たのでアメリカで納税したそうです。日本にも当然納税義務があるけれど、彼は何もしなかった。ところが数年後、日本の税務署から「お尋ね」が来た。アメリカでキャピタルゲインがあったはずですが・・・という内容。

彼はかなりびっくりしたそうです。私もへ~~と思いましたが、実際にそういう事例を聞くと日本国も頑張っているなぁと思いますよね。当然、やるべきです。(笑)

また取引のある銀行マンから聞きましたが、香港にはかなり前から国税局の出先機関があるようで、情報は収集していると言ってましたっけ。実際に、最近は海外で口座を開くのも難しくなってきていますよね。ネットの中には「私が紹介する銀行は絶対大丈夫だ」なんて頓珍漢な人もいますが、そういう問題じゃないってことなんですよ。世界の動きがそうなっているってこと。スイスのプライベートバンクが大量の個人情報を出さざるを得なくなって、名前が連なっていたドイツの政治家が辞任しなくちゃならないとか大騒ぎになったじゃないですか。そのデータをアメリカも欲しがったけれど渡ったのかどうかはわからず。また日本も同じで、そのデータを当局が入手したら面白いことになったでしょうね。

とにかく無記名口座とか、タックスヘイブンの隠し口座とか、ファンドにして個人名が外に出ないようにするとか、そういう存在そのものが難しくなるのは時代の流れですし、主だった(国税局がうるさい)先進国に在住している人には開かせない動きもあります。これはアメリカは昔からそうで、アメリカ人は世界のあちこちで自由に口座を開けないんですね(現地の銀行はアメリカからの圧力が怖いからアメリカの言うことを聞く)。世界に国境がない時代になればなるほど、逆にお金関係の縛りは厳しくなると思って間違いがないと思っています。そして各国の課税も強化されるでしょう。

8月にこんなニュースがありました。

海外居住者の口座情報、毎年交換 税逃れを防止

富裕層の税逃れを防ぐため、海外に住む個人の金融口座の情報を多国間で交換する経済協力開発機構(OECD)の新ルールの詳細が30日、明らかになった。各国の金融機関に海外居住者すべての口座情報を毎年1回、税務当局に報告させ交換するのが柱だ。2015~16年の導入を目指す。

このことは日記として書きましたので詳細はそちらを見ていただくとして(ここをクリック)、インチキをしようとか、どう逃げるかとかそういう考え方は捨てて、ちゃんとやれば全く問題がないのですから、正しい情報を仕入れてまともなことをするのが一番だと思っています。

タックスヘイブンの存在、利用価値に私が気がついたのは30年近く昔で、その後は企業や個人がどういうことをしているのか、また自分も海外に出るようになって何か利用できることはないかと思い、様々なコンサルタント、税理士、公認会計士、銀行、(海千山千のわけわからん連中とも)接触してきました。それが未だに続いているわけですが、私の持っている情報や知識はそういう中で知り得たものでしかありません。ですから間違いなく、私が書いていることの中には誤解もあるはずだと思っています。

ここは違うぞ!という部分がありましたら、是非教えてください。その指摘が無い限り私の進歩は無いわけですから。

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