中国のゴーストタウンを調べていましたが、凄いですねぇ。
ゴーストタウンというとどうしても昔のアメリカの西部開拓時代の街を思い出してしまいますが、現代のゴーストタウンって新しいビルが建ったまま「人はいない」という摩訶不思議な光景。それも規模が大きくてゴーストタウンというよりゴーストシティ。
例えばこんな。天津のある一角。これだけのビル群があるのに、入居者はゼロ。
アメリカのマンハッタンと同じような街を作るとのこと。川沿いの遊歩道も綺麗。
ここはまだゴーストシティと決まったわけでもなく、まだまだ建設が進行中とのこと。でも人はいない。
このレポートはこちら。どんな状態かよく分かる。2016年5月の時点。
これらを見ていて頭に浮かぶのはマレーシアのこと。
私がマレーシアウォッチングを始めてから7-8年ですが、その変貌ぶりには驚くほど。そしてまだまだ開発中。それも新しいのは規模が大きくてそれこそ日本で言えば「丸の内」を作ってしまうような、異常と言っても良いようなプロジェクトもある。それらは現在進行形で、そんなに作ってどうすんだよと思うけれど、まだまだ計画が目白押しだとのこと。
前にマレーシアのプロジェクトを調べた時に、こんなニュースも見ました。大元はスター紙に出ていたようですが、
2015年第2四半期の時点でKL全体とサイバージャヤ、プトラジャヤを合わせて約266万平方フィートのオフィス・スペースがある。2016年には約2倍になり、2017年には1097万平方フィートにまで増えるとみられている。
このペースでいけば、2019年にはKL中央ビジネス地区の供給過剰はかなり大きくなると予想される。この点から、将来の供給には押し下げ圧力がはたらくとも指摘する。
ざっくり言うとオフィススペースが2015年の2倍に2016年には増え、2017年にはそれがまた倍になる。2015年からの2年だけでほぼ4倍のスピード。そしてまだ計画があるんですから一体どうなっちゃうのか。
数多くのプロジェクトの中で私が一番驚いたのは「Tun Razak Exchange」です。場所はKLCCのすぐ近く。
ここに何を作るかというと、アメリカのウォール街みたいな街。ここを金融の中心地にして、香港、シンガポールに挑戦し、将来的にはウォール街、シティと肩を並べるようにすると。ここに出来るビル群はなんと25棟で中心になる超高層ビルはツインタワーには負けるものの380メートルかな。世界中の金融関係の会社に税金軽減などの優遇措置を設けて250社、スキルのある人才を4万人集めるとのこと。
これだけでもぶったまげるプロジェクトで、「新しくコンドを建てます」なんてレベルではない。そしてこのような「街づくり」大プロジェクトはいくらでもある。
現在進行中のプロジェクトだけでも凄い。下の動画は2013年の時点の動画で、これらのプロジェクトは進行中、完成間際のものもあるんじゃないですかね。
この動画は、クアラルンプールの歴史的な変貌が見れるので面白いです。
2016-2020のプロジェクト。すでに建設中なのもありますね。高層ビルが凄い数。
今の時点でも(オフィスは知りませんが)コンドミニアムの価格、レントが下落しているのは私みたいに海外からウォッチングしているだけでもはっきりわかるし、どうなっちゃうんでしょうか。不動産投資を考えていませんから「供給過剰」は大歓迎ですが、どうしても行き過ぎに見える開発の結果、中国みたいなゴーストタウン、ゴーストシティが出来るんじゃないかと気になっています。もうできているのかな?
KL市内の交通網もどんどん発展するようで、都市への人口流入が今後も続くにしても、上の「Tun Razak Exchange」みたいに「海外に依存」する基本は変わらないはずで、それだけ集められるんですかね。とんでもなく恐ろしいことが起きる世界経済の転機が来ているのに。
でもこれは考えようで、世界経済がややこしくなるからこそ、コスト削減、優遇税制とか効率とか考えるとマレーシアが注目されるのかと思ったり。ま、マレーシアが狙っているのはその線だろうとは思うし、勝算はなくはないような気がしています。
日本や今我々が住んでいるオーストラリアの常識で考えると、このマレーシアの開発ブームって考えられないですよね。一般常識としては「ニーズがあるから作る」わけで、「将来のニーズの先取り」でここまでやるのはあり得ない。
ただこの考え方も固定観念から抜け出ていないという自覚があって、そもそも国の成り立ちを考えるとこれもアリなんだろうと思うんですよ。マレーシアは昔から通商の拠点として発達してきて、「海外頼り」がマレーシアの歴史そのもので、インフラを整えることによって「どうぞ利用してください」と発展してきた国。今は「通商」だけではなくて「生産地」として成功しているのも同じことで、「海外から呼びこむ」「海外を利用する」のはプロ中のプロでしょう。
それはMM2Hという世界的には非常に珍しいシステムを持っているのも同じだし、ラブアン島に「オフショア」を作って、世界の「タックスヘイブン」の仲間入りもした。そして優遇税制があるわけで、「東南アジアのハブ」としてグローバル企業もマレーシアに拠点を持ったほうが利益が出るシステムを構築している。
他国を利用するという意味では、「労働者も海外から入れる」わけで徹底している。それは建設現場であり、サービス業であり、また家庭の中もそう。
しかし、「移民はほぼ不可能」という点でも徹底していて、「利用はするけれど、させない」という賢さは天下一品。こんな賢い国って他にあるか?って思うくらい。
あちこちに巨大プロジェクトを作って大丈夫か?とは思うものの、中国みたいに地方政府が巨額の借金をして作っているってことでも無いのだろうし、そのプロジェクトが成功するのかどうかは「開発業者のリスク」であって、国も国民も腹は傷まないのかもしれない。
都市部の開発だから私としてはどうしても「普通の不動産業」と考えてしまうのだけれど、マレーシアの不動産業は「リゾート開発」「別荘地開発」と考えればすんなり理解できるような気がするんですよ。我々の考え方だとマンションを建てればそれの入居率は90%以上なのは当たり前だと思うけれど、これがリゾートや別荘地の開発であるならば、「土地だけ買って放置」とか「誰も住まないコンド」があるのは普通であって、夜になっても電気がつかないコンドがあっても何の不思議もない。
これはゴールドコーストがもろそういう状態で、中心地のコンドでさえ夜になると部屋に明かりがつかない方が圧倒的に多い。じゃ売れていないのかというとそんなことはなくて「完売」が普通で、投資対象として売買されている。でも「住む人はいない」みたいな。
ま、コンドはわかるけれどオフィスはどうなんだ?って思いますよね。ここがどうもよくわからないのだけれど、日本の森ビルみたいに自社ビルで賃貸に出しているとリスクが高いけれど、オフィスもコンドと同じように売りにだしているなら、まさに「宅地開発」となんら変わりはない。維持費は当然、投資家持ちだし、開発業者は「売り抜けること」さえできれば問題はないんでしょう。
でも逆を返せば「投資家のリスク」が高いわけで、我々日本人の一般的な「不動産投資」の考え方は通用しないんじゃないですかね。それこそ「沖縄に出来た新しいタワーマンションに投資するべきかどうか」の考え方に近いのかもしれない。
マレーシアそのものが「カジノ」みたいな気がしてくるわけですが、マレーシアって「生活の場」ではなくて「株式市場」に似ていて、それは「日本にはない投資市場」と捉えるべきなんでしょうかね。
中国の建築ラッシュは「内需拡大」のための政府による大号令の下に始まって、それを主導したのは地方政府。これでうまくいくはずがないというのは資本主義の国に住む我々にはわかるけれど、マレーシアの場合は「国や自治体の公共投資ではない」という点で全く違う。「開発業者と投資家」がリスクを取っているのであって、国の腹が痛むことはない。またその開発業者や投資家も「海外から呼びこむ」ことをしているわけで、マレーシアという国そのものが「場所貸し」で生きている国って感じがします。
この辺を理解できずに、我々が持っている常識でマレーシアの不動産、経済を考えても何も見えないのだろうと思いました。
マレーシアに勝算はあるのか?
こういうことを書くと石が飛んできそうですが、私が目にする「マレーシア人」を見ているとこれからもどんどん経済発展するような国には見えないんですよ。でも「国の設計」がちゃんと出来ていて「指導層がしっかりしていれば大丈夫」なんだ、ってな気がするわけです。マレーシアは日本と違って、「格差」が大きいんでしょう。それは決して経済的なこと、収入がとか生活レベルがってことじゃなくて、「国を導くしっかりした【層】」が存在するってことじゃないですかね。当然、富はそこに集中するけれど、そういう「選ばれた人たち」が存在するから、マレーシアはここまで来たのだろうし、これからも進むのだろうと思ったり。収入の格差はあるにしても「ブミプトラ政策」で国民を守る。そしてMM2Hみたいなカモは呼び込んでも、移民はさせない永住権もちょっとやそっとじゃ取らせない。これって国の制度としては完璧じゃないかと思ったり。(笑)
しかし、かつては何もないランカウイの空と海を見ながら、こういうマレーシアにすると夢を見、「絵図」を書いたマハティールさんて凄いと思うなぁ。
日本はマレーシアを下に見ることなく、ダメな人たち、ダメな習慣を見て判断することなく、このマレーシアの賢さは絶対に学ぶべきだと思いますわ。
後進国が先進国に追いつくにはマレーシアのやりかたしかないのははっきりしているし、それは停滞し始めた先進国にも当てはまるところが多々あるんじゃないですかね。日本が停滞期を脱するためには、マレーシアを徹底研究する必要があると思うわけです。日本人の高い民度が、技術力が、習慣が、なんてことをいつまでも考えて自画自賛していると、本当にマレーシアに追い越される日が来るかもしれない。その時、真面目な日本人、高い技術力も、「マレーシアに使われる」という時代になるのかも。
日本は戦後貿易立国から内需を増やすことに成功したけれど、「内需は日本人が作る」という固定観念を捨てるべきじゃないですかね。マレーシアみたいに「外人、外国企業を利用して内需を増やす」という発想、計画が必要だと思うわけです。
少子化だから移民を増やすとか、労働力が足りないから海外から受け入れるとか、今の安倍さんがやっていること、いや政治家のこの辺の考え方ってまるでわかっていない「ただの思いつき」で決めているような気がします。
今回のイギリスのEU離脱も、日本では「イギリスの保守思想」、「思い上がり」とか言われていますが、私はイギリスの問題の根本は「移民問題」であると思っているんですが、日本はどうもここを外して(隠して)報道しているような気がしてならないのです。
その理由は簡単で、政治家も企業も「移民を入れる方向」で考えていて、マスコミもそれに乗っている。つまり、今回のイギリス離脱の問題が「移民問題」であるとは言えない立場。移民問題を日本人に気がついてほしくないと考えているはず。
世界的には日本ほど「起業ビザ」「日本国籍」「永住許可」を得るのが簡単な国はないと私は思っていて、またお人好しの国民性、そして「外国人に参政権を与えろ」なんて当たり前のようにいう「人権派」もいる。こんな状態で外国人を大量に受け入れたらどうなるかってことは、海外を見ればすぐわかるのに日本は「リスクの想定」が非常に甘いと感じます。
移民政策ではマレーシアは非常に優れていると私は思うし、「外人を利用しても、利用はさせない」制度がきっちりしている。日本はこの大事なところを是非とも見習ってもらいたいです。
マレーシアは「安い労働力」を売り物にして伸びてきた国ではない。これを日本がしっかり学ぶのは本当に大事で、日本の明治維新、戦後の復興、アメリカをも抜いて個人あたりのGDP世界一になったこともある国だけれど、もうああいうことは起きないと決めてしまうのは「思考停止」であり「古い考え方」から抜け切れないだけのことで、新しいフェーズに入るには何が必要かという長期展望がないのね。政治家にも経済人、学者からもその提案がない。困った日本ですわ。
こんな硬直化した日本を出て、若者が海外に活路を見出すのは非常に良いと思うわけで、でもサバイバルは簡単じゃないけれどチャンスに賭けるのは良いことだと思う。もしいつか日本が復活することがあったとして、日本に必要なのは「今までの日本人ではない」わけだから、海外に出た日本人が将来の日本を作ると言っても過言じゃないんじゃないですかね。
でも海外に出る日本人は「日本人としてのアイデンティティ」は持ち続けて欲しいというのが私の願い。「世界のどこでも通用する」のを目指して「根無し草」になってしまっては何の意味もないのだから。
50年後のマレーシア、日本を見てみたいなぁ・・・。