【マッドマンセオリー】を理解しないとトランプと付き合えないと思う

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マッドマンセオリー(狂人理論)ってご存知ですかね。

これは交渉事において「狂ったようなまさかの話をぶつけて、相手を動揺させて有利に話を進める」ことを意味する。

Wikiにはこんな風に書いてある。(ここをクリック)

狂人理論(きょうじんりろん)あるいはマッドマン・セオリー(英: madman theory)とは、アメリカ合衆国第37代大統領リチャード・ニクソンの外交政策の要として広く知られる理論あるいは戦略である。ニクソンおよびニクソン政権は、東側諸国の指導者たちに大統領が非合理的で気まぐれだと思わせることに腐心した[1]。ターゲットとした国家に挑発行為をやめさせ交渉の場につかせるために、アメリカがとる行動が予測不可能であると思わせるのがこの理論の骨子である[1]。

しかし国際関係論の専門家には、交渉を成功に導くための戦略としての有効性を疑問視する者もいる[2][3]。狂人理論は逆効果であることも多いが、一定の条件のもとであれば有効であるという研究もある[4]。

私はこの言葉そのものを知ったのは最近なのですが、トランプがこの手法を取るビジネスマンなのは2016年から気がついていました。誰でも彼の言動をしっかり見ていればわかるはずで、そういう手法がある事自体を知らない「真面目な人」はトランプは狂っているとしか思わないはず。

私がトランプはそれが好きだと確信したのはトランプの「北朝鮮との交渉」を追っていた時のこと。当初、彼は世界が諦めていた北朝鮮との交渉を始めた頃、あの北朝鮮のお坊ちゃまを持ち上げていたじゃないですか。それって「あまりにも見え透いたお世辞」ではあったけれど、ものの見事に北のお坊ちゃまはその気になって、2019年にはトランプは板門店で国境を超えて北朝鮮に入ったし、ハノイでの会合も実現した。あの頃の北のお坊ちゃまは有頂天になっていると言ってよいほど期待していたのは間違いがない。

ところがハノイでどんな合意が出来るのかと思ったら、トランプの掌返し。ものの見事に決裂し、北のお坊ちゃまは打ちひしがれたように国に戻った。

まぁトランプの言う事って狂っていると思うほどメチャクチャで、褒めまくることもすれば恫喝もする。どちらも「真意ではないだろう」とは思うものの、本気かもしれないわけで、そりゃ相手もトランプ応援団もヒヤヒヤするなんてもんじゃない。でも彼は「真意を見せない」のね。

これってまさにビジネスマンのやり方だと私は思ったんですよ。でもそれは「良い方法」という意味ではなくて、私はトランプみたいな相手とは絶対に交渉したくないと思いますもの。

その手のマッドマンセオリーで私もコテンパンにやられて経験があって、それは私の人生の中でも二度。たった二度ですが経験した苦い思い出があります。

当時の私はまだ30才前後の若造で、でも零細企業でどうにかやっていたのですが、主要取引先から突然の「大幅の取引条件の変更」を求められたのね。嘘だろ?と思う内容でしたが、「それが受け入れることが出来ないのなら取引終了」となるわけで、渋々、飲むしか無かったのですが、後にわかったことはそんな条件を飲んだのは同業者の中では私だけで、同業者から「どうしてあんな条件を飲んだのか」と吊し上げられました。「お前のせいで・・・」ってことなのね。これってかつて「ゴーンが日産に来てやったこと」と同じじゃないですかね。

それとお世話になっていた取引先から、「新規取引先を紹介するよ」と言われて、喜び勇んでその企業の営業部長と新たな会社に出向いたときのこと。私はその部長は「こちらサイド」だと勘違いをしていたのね。これも馬鹿みたいですが、同じ様な条件で取引ができる会社が増えるかもしれないと信じ込んでいたわけです。

ところが先方の会社に行って打ち合わせが始まってびっくり。その紹介してくれた部長は相手先の立場になって、その会社でも言いづらいような条件を私に突きつけたのね。それは「大幅値下げ」であって、絶対にそれは無理ですと言う私をその部長は罵倒しはじめたのね。「紹介する俺の顔も立たない」とか、しまいには私を世間知らずのバカ呼ばわりまで始めたんですよ。でもそれを黙って聞くしか無かった30才前後の若造だった私。

本来なら、そこで席を立つべきですが、その紹介してくれた部長の会社も重要取引先でしたし、「ちょっとお時間をください」と言って、その場で手帳と計算機を取り出して計算を何度もして、「できる限り精一杯の価格」を提示したんですよ。そこからも値引きを押し付けられてそれで契約ということになった。

ところがですね、こんなことは零細企業では良くある話で、零細企業が上から、あるいは同等に交渉なんて出来ないのが普通だったのね。それだけ私の会社は駄目会社ってことなんですが、こういうこともあろうかと「ニセの情報」も私は手帳の中に持っていたのね。

私が頭を抱えながら手帳を見ながら計算機を叩いていたら、その部長が「それを見せろ」と言い出した。そこには原価や利益率、値引きの限度額(数量によって違う)のデータがびっしり書かれているわけです。当然、それは社外秘ですから絶対に見せられない。でも「見せろ」「無理です」「見せろ」「無理です」の攻防の末、私は見せたんですよ。

それをじっと見ていた部長は、「この価格で手を打て」と強要。そして私は渋々それを飲んで「ありがとうございました」というしかなかった。

ま、ここまで酷いことってあまりないのですが、その時のために私は「本物のデータと違うものを手帳の中に持っていた」ことでどうにか助かった。

でもその価格できっちり利益が出るわけでもなく、その紹介してくれた部長との会社との取引価格も変更せざるを得ないわけで、段々と取引は細くなり、1年もせずに取引は終了しました。

ま、それが製品の競争力も高いわけでもなく、価格もそんなもんなのが零細企業の常で、でもその中で「小回りとかサービス、アフターサービス」でどうにか売り込むしか無いのが私の会社の「生き残り戦略」だったわけです。だからこそ「競争も殆どない」「皆がそれは難しいだろう」という世界に入っていくしか無いのね。これは非常に難しいけれど、うまくブレイクスルーを見つけると「ブルーオーシャンが待っている」ということもあるのね。

でも私に大きな敗北感を味あわせた人は、その二人だけで、一生忘れることはない。

でも本来、ビジネスの世界って大手でも似たりよったりで、皆ニコニコやっていきましょうなんてことはありえない。それどころか、私がいた零細・中小企業の世界の方が良いかもしれなくて、話すと長くなりますが、「世界でも一流の大企業」と取引をした時には「こんな世界もあるのか」と驚いたのね。「見積書」をまず出すのはどこでも同じですが、その項目が細かいのね。仕入れ原価から粗利、人件費、経費の全ても見積書に書く必要があって、相手はその一つ一つに言及してくるのね。

話はトランプに戻りますが、彼は「倒産」も数度経験があるようだし、あの生き馬の目を抜くと言われるニューヨークのビジネス界であれだけの頭角を現すってことは「普通じゃない」のは誰しもわかるはずで、「約束を守らない」とか「言うことがコロコロ変わる」「脅す、褒める」なんてのは当たり前のことだと思うんですよ。トランプのことを「息をするように嘘を付く」という専門家は多いけれど、私にしてみればそういう人たちは今までどんな世界で生きてきたのかと思うくらい。きっと「公務員」「政治家」「学者」みたいな、それも「きれいな部分だけしか見てこなかった人」なんだろうと思ったり。あるいは「汚い世界なのはわかった上で、民衆に印象付けをしているだけ」だろうと思ったり。ま、その辺はこの何年間、アメリカで何が起きてきたのかを見ればその可能性が高いのは想像できる。

だから私は「トランプの真意がわからない」なんてのは当たり前のことで、彼の生きてきた世界では「真意を読まれたら負け」なわけで、そしてそれは「国際政治」でも同じじゃないかと思う。「嘘、策略、陰謀」が世界の歴史だと私は理解しています。「陰謀論を馬鹿にする人たち」って私にしてみると「頭の中はお花畑」に見えるのね。

でもトランプには「非常にわかりやすい部分がある」のを忘れてはならないと思うんですよ。

それは、「彼は大統領選でやると約束したことをやっている」わけで、そういう意味では、私は「言行一致」していると思っています。

だから今回のゼレンスキーとの会合決裂しても、それだけを見て大騒ぎするのは筋が違うと思っていて、まずトランプは「何をするといってきたのか」を思い出すべきだし、「何をしてきたのかが重要」だと私は思うのね。私には「トランプの確固たる目標がある」と思っていて、それが富士山の頂上を目指すのだとすれば、「登り方はいろいろある」のと同じじゃないかと思うし、頂上を目指すには「知っておくべきこと」もあれば、「同じ様な目標を持っていても、それぞれの思惑や本音もいろいろ」なわけで、まずは【それをあぶり出す】ことが最初にやるべきことのはずで、ゼレンスキーとの会合で「シャンシャンシャン」とうまくいくほうがおかしいし、それは「まだ本音をあぶり出せていない」とも言えるはず。

特にヴァンスが「感謝したことがあるのか。しているのか」、トランプがゼレンスキーに「君はなんのカードも持っていない」とはっきり言ったのは良いと思っていて、これは「アメリカにおんぶにだっこでうまくやろう」「援助を引き出そう」「安全保障の確約を取ろう」と【自己中心的な被害者意識をぶち壊す】のには効果的だったと思う。ヨーロッパをも敵に回したと言うメディアも多いけれど、そもそも「ヨーロッパでさえもアメリカに頼ろう」としていたのは間違いがないわけで、でも今は、ヨーロッパの中で「俺達が結束して対処するしか無い」という機運が生まれたのは良いことだと思う。

「いつまでもあると思うな親と金」だと思うし、トランプの今までの言動を見ると、「ロシアに肩入れをしているのではない」のが見えてくる。でも停戦には「どうロシアを説得するのか」が最重要課題で、「プーチンが望んでいること」を考えると停戦は簡単に行くとはおもえないじゃないですか。そんな状態でプーチンを益々孤立化させて「絶対に許さない、叩き潰す」みたいなアプローチをトランプがしたらどうなるのか、そっちの方こそ真剣に考えるべきだと思う。

また先日、日本の保守論壇で超有名なあの女性が、「トランプはノーベル平和賞を受賞したいのだ」みたいなことを言っていたのは本当に驚きで、あの彼女でさえも今の動きが読めていないのかがっかりもしました。もう彼女の時代は終わったのかと思ったくらい。

このウクライナの歴史がわからないと、ウクライナ戦争を論じることは出来ないと思う。「突然、ウクライナに侵攻したプーチンはキチガイで、全世界はウクライナを守るべきだ」というのに私は真実とのズレを感じるし、「とにかくロシアは潰せ」と考えるロシア嫌いを喜ばすだけで、それがこれからの世界の平和のために良いとは全く思えない。それは「相手を叩きのめさないと結論は出ない」ことで、戦争はもっと長く激化すると考えるべきだと思うし、「頑張れ」一辺倒の応援が良いのかどうか。では「ウクライナは犠牲になるしか無いのか」が問題になるけれど、それを言うなら、私は世界が見捨てたチベットやウイグル、香港のことも守れと言いたい。「力による現状変更は認めない」のは【理想としては正しい】と私も思うけれど、どの国も「あの手この手を使って現状変更を試みる」のが世界の歴史だと思う。

喧嘩にルールなんて無い。

 

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