白濁した白湯スープを作る実験

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豚骨スープや韓国のコムタンスープの様に「白濁したスープ」を取るにはどうしたら良いのか、またその理屈は?ということで実験をしてみました。

まず白濁するということは、水の分子の中に油の分子が混ざっている状態。本来水と油は分離するわけですが、それが混ざった状態。これを「乳化」と呼ぶわけですが、マヨネーズ、バター、牛乳もそれ。水に混ざった脂の分子が光を乱反射するから白い色に見える。

ただ乳化には2種類あって、水の中に油が混ざったもの(O/W型)(牛乳など)と油の中に水が混ざったもの(W/O型)(バターなど)と別に考えるようです。でもここではそれは無視します。(O/WとはOil in Water)

なぜ乳化が起きるかというのはいくつか理由があるわけですが、白湯スープで考えると、

○ 脂分と水分
○ 乳化剤
○ 撹拌

があれば出来るということ。で、乳化剤とはここでは「ゼラチン」がそれに該当しますし、撹拌は「ボコボコ煮る」事によって起きる。また料理屋によっては「牛乳や粉末ミルク」「レシチン」を入れるところもあり、またハンディタイプのフードプロセッサのようなもので強制的に撹拌し、乳化させることもあるとのこと。

牛乳や粉ミルクを入れるのは、それであの白い色が出るのかと考えるのは間違いのようで、もちろん白い色は付くけれど「乳化剤」の働きをする。

ま、簡単にまとめるとこういうことになるんでしょうが、現実としてはうまくいかないことがあるんですね。これは私の調理実験でも何度も経験していて、白濁(乳化)するはずなのにそうならない、あるいは白濁したのがいつのまにか白濁がなくなっていることがあります。これは「圧力鍋」を使った時に経験しました。

最初は白濁していて良い感じだと思ったのですが、その後、また圧力をかけて煮ていきますとそれがなくなるんです。その写真がこれ。まずは骨だけ圧力鍋で煮込んでスープを作りました。白湯スープになっています。それにオックステイルを入れた時の写真。スープの色に注目してください。

その後、圧力をかけて45分煮た時のスープの色。本来はもっと白濁するのを期待していたのですが、逆のことが起きています。

これが「解乳化」と呼ばれる現象のようで、水分に混ざっていた脂分が分離してしまった状態

なぜそれが起こるのか?これは「きっと」乳化剤として働いていたゼラチンの変性によるものだと思います。ゼラチンの特性として冷えると粘度が強くなり、また固まり、ゼリーや煮凝りに使えるわけですが、逆に高温度にさらすとその特徴が失われるとのこと。ですから固める料理の場合はゼラチンを投入するときの温度に拘るのですよね。ゼラチンを入れてからグツグツ煮るようなことはしない。

ただし、ゼラチンが固まる作用は高温に晒すと弱まるとしても、乳化剤としての作用までも弱まるのかどうかはわかりません。でも上のような変化を見ると乳化剤としての作用も落ちたと考えるべきだと思っています。

ではなぜ最初に骨から煮だした時には白濁したのか?

これは時間が関係しているのではないでしょうか。圧力鍋ですと120度に達すると言われていますが、沸騰させないほうが良いゼラチンがその温度に長くさらされたら駄目ってことでしょう。でも短時間なら大丈夫で、骨のスープは白濁していたと私は「想像」しています。

このようなことは今まで何度もありました。

白濁しなくても良いケースはありますが、油と水が混ざることによって我々は油を口の中にいれるのであって、マヨネーズもそうですが、油だけ口に入れることはまずありません。ですから乳化することによって初めて油を口に入れられ、その風味やコクを味わえるということだと思います。

では圧力鍋を使わないとどうなるのかの実験をしてみました。

使った骨はマロウボーン(骨髄が多い骨)ではなく、肋骨です。この骨は脂が多く使い方が難しいと感じるのですが、これしかなかったのでこれを使いました。ただ、腱も多く付いていますのでゼラチンの量はかなり多い骨。それと肉は安いチャック(肩肉)を使いました。

これを流水でよく洗います。骨には切断した時の切りくずが付いていることも多いので注意。

これを水の中に入れ、1時間ほど血抜きをします。そして沸騰したお湯に入れ、湧いてから5~10分放置。それをまた流水で綺麗に洗います。ここで目立つ脂部分は切り落とします。

下処理をした肉と骨。

これから本煮込みに入りますが、お湯ではなくて水から煮ます。入れたものはニンニク、ショウガ、玉ねぎ、黒胡椒粒。これらをこの時点で入れる重要性は私には良くわからないのですが、オマジナイ程度の考えです(笑)。臭みがどうのという理屈には私は懐疑的です。特に胡椒はこの時点で入れても長時間煮込めば簡単に香りは飛んでしまうのがわかりきっていますので、まさにオマジナイの域をでないはず。

沸騰してからアクを取り、火を弱くしてコトコト煮る状態を2時間続けました。鍋の蓋は開けたままです。

この時点で肉はかなり柔らかくなっていて、これ以上煮込んだら出し殻になりますから、肉と野菜類だけ取り出します。(当然、肉を食べるつもりです)(笑)。

スープは若干白濁しているという感じですが、これでは白湯スープとは呼べませんね。ここから火の強さは変えずに「鍋に蓋をします」。そして一時間後がこれ。かなり白濁しています。

火の強さは変えていませんが、「鍋に蓋をする」というのが大きな違い。これは一体何なのかというと、様子を見ているとすぐにわかりますが、蓋をしていない状態では「コトコト煮る」状態ですが、フタをすると沸騰して「グツグツ煮る」状態になります。蓋をすることによって熱が外に逃げないからだと思います。

良く巷で言われることとして、「透明なスープを作るときには蓋をしない」「白濁したスープを取るときには蓋をする」という言い方がされますが、これはある意味正しいものの、正確ではないのがここではっきりします。つまり、静かに煮るか、ボコボコ煮るかの違いであって、蓋そのものには関係ないはずです。つまり、蓋をしなくてもボコボコ煮れば白濁する。

要は、「スープを撹拌すると乳化が進む」という原理がここにあるのを確認できるということ。

ここで一つの成果が見れましたが、実はまだ煮込んでいます。トータル5時間を過ぎています。(笑)

何をしようとしているかですが、骨からスープを取る場合、10時間ぐらい煮こむ人もいるわけで、もしかしたらこれからが本番なのかもしれません。

私は「出汁」というとどうしても昆布とかかつお節が頭にあって、「一番出汁」が一番良く、いつまでも煮ないという固定観念があります。ですから骨や肉を煮出す時に、最初に5~10分煮て茹でこぼしをするということにかなり強い抵抗というか疑問がありました。「一番美味しいところを捨てちゃうのか?」と思うのです。

しかし段々と最近わかってきたのは、この一番出汁のように思えるものは「汚れ」や「雑味」を多く含んでいるもので、「無い方が良い」ということ。そう思うようになってからは違和感がなくなってきました。でもまだちょっと残ってるかな?(笑)

こういう調理法に拘る国の一番は私は韓国料理だと思っています。血抜きや茹でこぼしの下処理にはかなり気を使う特徴があるのがレシピを見ていると良くわかります。そしてフランス料理もそう。ところがアメリカやオーストラリアのレシピを見ていますと一般家庭でここまで拘るのは非常に稀であるのもわかります。恐ろしいと思うのが南米料理で、煮こぼしもアク取りもしないケースが非常に多い。あの煮るととんでもなく臭いと言われる豚足でさえもそのまま煮込むレシピが大半。ま、香辛料を半端じゃない量使うってのがそれに関係しているんでしょう。

ただ、出汁そのものに拘るのが良いのか、あるいは臭みがあっても多くの香辛料でそれを抑えこむ料理とどっちが美味しいのかというのは決められないと思います。懐石料理と闇鍋の違いみたいなものがあるんでしょうが、私は癖がある料理はそれなりに好きですので、基本的には好みの問題かと。

ただ、どちらが難しいかといえば出汁に拘る料理のほうが難しいのは明白で、それは今回の白湯スープではなくて清湯スープ、あるいは上湯と呼ばれるスープにその真髄があるんだろうと想像しています。

例えば今回の素材でも、それこそボコボコ煮てしまえば白湯スープになるわけで、では同じ素材で清湯スープを取るにはどうするべきかとなると、突然ハードルが高くなるような気がします。きっとコトコト煮る状態よりも温度を低くして、対流(撹拌)が起きないようにしないとならないはず。

そして骨からスープを取る場合、かなり時間が掛かるわけですが、時間短縮には最適な圧力鍋ではこれが出来ないことがはっきりわかりました。一番最初の画像のように、中途半端な時間で作るのならそれなりのものは出来るのでしょうが、本来の骨の旨味や滋養を取り出すという目的があったばあい、長時間煮ないと駄目ですから、高温になる圧力鍋では途中で「解乳化」が起きて白濁はなくなってしまい、圧力鍋では出来ない芸当と言っても良いのではないでしょうか。ただし、プロ用機器では圧力鍋に「乳化させる器具」が取り付けられたものもある様子。その原理は社外秘となっていてどういう理論に基づくものかはわかりませんでした。

ただし、白濁しないほうが良い場合、圧力鍋を使ったらどうかという次の課題があると思います。また乳化して白濁したものを「解乳化」させる技法もあるわけですから、清湯スープを取るのにボコボコ煮たり圧力鍋で時間短縮をし、その後、解乳化で綺麗にしたらどうなるの?という疑問があるわけです。これもいつか実験してみましょう。(笑)

それとこの手の煮込みならばスロークッカーでも良いような気がします。実は今回、スロークッカーを使おうと思ったのですが、まずはオーソドックスな煮方で実際に自分にできるのかどうかの実験をしたということ。

スロークッカーは熱量が小さいので、コトコト煮る状態に持って行くまでに数時間掛かるんですね。ですから、内鍋を直火にかけても大丈夫なタイプなら、コンロで沸騰まで持って行き、それをスロークッカーにセットすれば同じ状態は作れるような気がします。スロークッカーも(私の機種では)LowでもHighでも最終的には沸騰しますので、これに入れて放置が出来ればかなり楽ができるはず。また、沸騰させたくない場合は、まだ実験していませんがLowにセットして「蓋を開けておけば」調度良い温度でキープ出来るかもしれません。

ただ、温度調節が出来るタイプではありませんから、蓋をしないで放置したらLowの場合は温度が下がり過ぎるかもしれない。これは室温にも関係しますからなんとも言えませんが、温度調節機能が付いていないことがほんとうに残念で仕方がありません。

これがあれば秘密兵器になる可能性大なんですが。(笑)

オーストラリアで売られている、スロークッカーと低温調理機のハイブリッドタイプです。40-90度の範囲で設定可能。

MU4000 Duos™ Sous Vide & Slow Cooker  ← クリック

さぁて、牛の白湯スープと柔らかく煮えた牛肉を最終的にどういう料理にするべきでしょうか。

私としては塩コショウぐらいの単純な味付けにして、白湯スープをじっくり味わってみたいと思っています。多分、肉には別途ツケダレみたいなものがあっても良さそうで、その辺はマレーシアでも人気のある「肉骨茶」の食べ方で行こうかと。それとも韓国風のソルロンタンで行くか・・・。

--------(後記)----------

白濁させないスープの取り方ですが、やっぱり沸騰させないどころか80度の温度をかなりの長時間キープするとのこと。これって普通の寸胴をコンロに掛けた場合、温度管理が出来ないので、な、な、なんとプロでも炊飯器を使うことがあるらしい。炊飯器と言っても営業用の特大のものだけれど、あれにもやっぱり「保温機能」があるらしくそれをつかうとのこと。ただ火が弱いのでたまに火を入れるらしい。

80度の温度をキープ・・・・。これって温度調節機能が付いているスロークッカーにしか出来ないことじゃないですかね。スロークッカーは焼き物でできていて、熱源は底には無くて回りにあるらしいので、周りからじんわり火が通る。まさに蒸し煮と同じようなことになるし、底から炊くのと違って対流も起こりづらい。

買うしか無いか・・・・・

(後記)
うえで紹介した低温調理+スロークックのハイブリッド型調理器を買いました。温度調節はアホか?と思うくらいいい加減で、温度に敏感な調理はできませんが(ローストビーフや温泉卵)、大雑把な料理にはどうにか使えます。これを入手したのでスロークッカーはお嫁に出しました。(笑)

 

 
    

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