素晴らしい「包丁」を手に入れた~~

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道具から入るタイプの私としては「包丁」もかな~~り気になるんですよ。包丁にもいろいろあって、用途別に特化しているのもあれば、切れ味を優先した包丁もあれば、扱いやすさを優先したものなどキリがない。価格的にもそれこそ100均のもあれば、20万円を超すような包丁があったり。

私としては自分の力量もわかっていますから、良いものを手に入れても使いこなせない、必要ないと思うものも多くあるわけで、収集のための包丁集めはしないように心がけています。でも切れ味だけは譲れなくて(ヨメさんも同じ)、素材の良いものを買うようにしてきました。

とりあえず今持っていもので十分で、それどころか箱にしまって使わないものもあるのですが、最近は「良い包丁」というより「使いやすさ」が気になっています。そしてそれが一番大事のはず。

そういう意味でどうしても使ってみたい包丁があったんですよ。「くっつかない包丁」です。これってマグロの刺し身を切るとすぐわかりますが、普通の三徳包丁で刺し身が包丁にくっついたまま動かすと刺し身が簡単に割れる、崩れることが起きてしまうのね。だから包丁は引かずに上から下ろして使うようになるし、刺し身は潰れる。スモークサーモンの薄切りも普通の包丁ではまずちゃんと切れない。だから刺身包丁みたいに片刃で身が薄くて細い包丁のほうが抵抗が少ないので良い。

でもくっつくのは刺し身ばかりではなくて、キュウリにしてもトマトにしても、そりゃいろいろあるわけですよ。肉も同じで包丁の身が薄くて細いほうが切りやすい。でも刺身包丁も同じで、そういう薄くて細くて長い包丁って「普段使い」ができないじゃないですか。刺身包丁でキュウリやカボチャを刻む人はいないし。(笑)

そこで気になっていたのは「ディンプルが付いている包丁」です。いわゆる凸凹がついていて切ったものがくっつかないタイプ。穴が空いているのも持っていますが、変に軽くて使いづらいしどうしてもディンプルがついているのを使ってみたかったんです。(私は重めで、手を添えるだけで自重で切れる様な包丁が好み)

そこで今回手に入れたのがこれです。ブランド名は「グレステン」。これがお利口さんなんてもんじゃないのね。キュウリも全くくっつかないし、肉も切りやすい。刺し身はまだ切っていませんが、これなら大丈夫そう。三徳包丁ですから何にでも使える。また今まで持っている三徳包丁より短めの刃渡り17センチにしました。だから細かい作業がやりやすい。

そしてですね、この切れ味が半端じゃ無いんですよ。切れない包丁は絶対に使わない我ら夫婦ですが、この包丁の切れ味は「今までに体験したことのない凄さ」でした。自分で包丁を砥いで、「ここまで切れるようになれば上等だろう」なんてニヤニヤしていたのが恥ずかしいぐらい。ここまで包丁って切れるようになるのか?みたいな感じなんです。それこそ床屋のカミソリみたいな。

こういう包丁で玉ねぎを切ると涙は出ないし、断面が艶があってキレイなんですよね。パンを切るとそれがよくわかります。楽しみなのはこれで安い刺し身を切ること。見た目も舌ざわりも違うはずで、少しは美味しく感じるかもです。(笑)

でも私の知識ではそこまで切れるようにすると、つまり鋭角に砥がないと駄目だと思うのですが、それだと刃こぼれしやすくなるんですね。だから何にでも使う三徳包丁は鋭角過ぎてもうまくない。

じゃ、この包丁は?

これがなんと「ハマグリ刃」なんですわ。ご存じの方はご存知だと思いますが、和包丁は「片刃」が普通で、一般的な包丁、洋庖丁は「両刃」ですよね。で、ハマグリ刃は両刃ではありますが、ラインがハマグリの様に丸くなっているのね。「日本刀」がそうであるし、猟師が使うナイフもハマグリ刃が多い。

違いをわかりやすく図に描くとこんな感じ。

この片刃の形状(下の図)なんて素晴らしいとしか言い様がないと思うんですよ。さすが日本の職人!切れが素晴らしく素材がくっつかない構造。ただし私みたいなド素人には結構使うのが難しいのね。右利きだと刃が左へ左へと入って行きますから。だから素材を真っ二つにしようとすると(私の様なド素人は注意しないと)切り口が斜めになってしまいますが、薄切りの場合は「剥がす、めくるように切れる」のね。両刃は真っ直ぐ刃が降りて行きますが、薄切りをしようとすると外側(薄く切った方)に力が逃げようとしますからすぐ千切れて薄く切るのは難しい。どちらが良いというより、どちらも得手不得手があるってことじゃないでしょうか。

この刃の角度の付け方って「物理の理屈」がちゃんと考えられていて、特に片刃は日本が産んだ芸術だと思うくらい「切ること」を徹底的に追求した形なんですね。そしてこのハマグリ刃も同じで、上から切り下ろした時の力が作用するベクトルの方向、そして接触面の反発する力が多方向へうまく逃げるようになっている。だから「厚手で丈夫で、なおかつ切れる」包丁、ナイフになる。猟師のように肉や骨はもちろんのこと木を削ったりしても大丈夫、そして良く砥がれたものは「ひげ剃り」もできちゃう。ナイフにハマグリ刃が多いのはこういうことなんですねぇ。

でもこれほどきっちり砥いであるってことはそれなりの素材じゃないとすぐ使えなくなるんですね。100均の包丁と同じで、あれもきっちり砥ぐと凄く切れるようになるけれど、それが長続きしない。

この包丁で使われているステンレス鋼ですが、巷で有名なステンレス鋼ではないので一体何なんだ?と思って調べてみたのですが、この会社って「古く伝統ある包丁屋」ではなくて「近代的な理論によって作り出した新時代の包丁製作会社」みたいな感じなんですわ。ステンレス鋼も非常に硬い素材で、このディンプルを付けた形状とか、ハマグリ刃であることなど、「今時の包丁」という感じがプンプンします。たいしたもんだわ。

包丁の商標は「グレステン」ですが、作っているのはホンマ科学株式会社という元はブレーキのモーターを作る会社の様子。つまり「伝統的な包丁」ではなくて、技術屋が最新技術を持ち寄って包丁を作ったらこうなった、みたいな、ちょっと異色な会社、包丁だと思います。なおかつこの包丁ですが、おもに売られているのは「デパートなどの展示販売」とのこと。マーケティングもわざわざそれを選んだってのがなるほど~~と感心したりして。

この包丁って高いと言えば高いですが、1万円以下で、ちまたで良いと言われる包丁に比べると安い方に入るんじゃないでしょうか。

「グレステン」ホンマ化学株式会社のホームページはここをクリック。

ただし、問題があります。

ハマグリ刃の包丁を砥ぐのは簡単には行かないという点。orz

いわゆる普通の包丁のように一定の角度をつけて砥石で砥ぐことができないんですね。刃の横っ面が湾曲していますから、角度を変えながら研が無くてはならない。私にそんなことができるんだろうか。また一般家庭で使う「簡易シャープナー」では砥げませんからどうするのかと思ったら、この会社は「永久保証」を付けていて、切れなくなったら本社へ送り返してくれと。新品をくれるわけじゃなくて(笑)、有料で砥いでくれるわけですが、普通の家庭なら砥ぐのは年に2,3回で十分だろうと。それだけ「刃持ちが良い」という自信があるんでしょうね。

これ、本当に良く切れます。そして切ったものがくっつかない。良いわ~~~~。

それとですね、ヨメさんは良くペティナイフを使うようなんですが、良いのがなくてかなり安くてすぐに切れなくなるペティナイフを使っていたんです。ですからヨメさん用にペティナイフ(14センチ)も手に入れました。

この角度、面白いでしょ?

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普通のペティナイフって「柄と刃」が一直線の感じですが、これは角度がついていて「普通の包丁のように使える」「刃先に自然に力が入る」のね。そして細身でなおかつディンプルが付いていますから、これもまた食材が「ほとんどくっつかない」という優れもの。私の感覚としては「短くて普段使いできる刺身包丁」みたいな。(笑)

これらの包丁は、私としては「大事に使う」のではなくて「普通に使おう」と思っています。大事な包丁は手入れも必要だし、食洗機には入れたら傷がつくし、切るものも考えないと刃こぼれしたりしますが、これはオールステンレス製ですし、丈夫そうだし多少乱暴に扱っても良いと思うんです。ただし、切れなくなっても「簡易シャープナー」だけは使うなとヨメさんにはっきり言っておかないと~。(笑)

包丁って「趣味」になりえる道具だと思います。パッと見た目は同じように見えますが、私達の祖先が頭を捻って考えて考えて考え抜いて作り出したものなんですよね。そして使う素材も同じで、硬ければ良く切れるけれど砥ぐのは大変だし、それじゃすぐ折れたり刃こぼれをするわけで、包丁に使う素材って多くの相反する性質が求められるしそれを日本の鉄鋼会社は神代の時代から考え抜いて素晴らしい素材を作り上げた。これは近代のステンレス鋼も同様で、近年のはハガネに負けないようなものまで出てきている。そしてなおかつ違う性質の素材を合わせて使うとか、そして日本の考え抜かれた片刃の形状とか、知れば知るほど興味が出てきます。

この包丁の歴史ってまさに人類の「戦争の歴史」だとわかるのも面白いと思いました。強靭で、切れ味が鋭く、そして折れない素材を使った武器を持った部族が「敵を圧倒できた」ってことなのね。青銅の時代に「ハガネ」を手に入れた部族がどんな戦いをしたのか非常に興味があります。

特に片刃の形状って良くそんな形状にすることを考えついたと感心するばかりなんですが、これを考えだした先人には頭が下がる思いがします。そして相反する性質を持った素材を合わせて作る技術とか、この包丁の世界って日本の「ものづくりの原点」のような気がします。

包丁と言えば日本ですし、海外の有名ブランドも作っているのは日本だったり、素材づくりから最終的な砥まで多くの職人の手を経てやっと一つの包丁が出来るんですよね。京都の織物と似ていて、包丁って包丁屋だけで作れるものじゃなくて、多くの専門職があつまってやっとひとつの製品ができあがる。だから人件費が安い中国で作ろうなんてこともできないんですね。素材メーカーから包丁になるまでに何人もの職人や企業が関わりますから、その皆があつまる町から外へ出たら作れない、それが包丁。

本当に包丁って面白いと思います。

でも夜中に包丁を眺めながらニヤニヤすることがないように気をつけないと・・・。(笑)

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