究極の「牛肉の火入れ」 プロはやっぱり凄い

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牛肉だけじゃなくて「火入れ」って本当に難しいと思います。

私が一番、難しいと思うのは「鶏肉」ですかね。

私が低温調理に目覚めたきっかけはそれで、「蒸し鶏」の美味しさをどうにか家で再現したかったから。中華でいう「白切り鶏」「海南チキン」がそれですね。また今では「サラダチキン」が流行っていますが、「やわらかくしっとりした鶏の胸肉」なんて家ではどうしようもなかった時代がある。

ただ昔から「柔らかくする。しっとりさせる」調理方法はあって、それは熟成だったり、筋切りや叩いて繊維を壊したり、パイナップルやキーウィー、舞茸の酵素を使ってタンパク質を緩めたり、また塩麹などを使うのも同じ。ああ「重曹」を使うのも中華料理では定番ですね。

低温調理が出てきたのはやっぱり現代というか、この10数年で、それは「低温調理器具の普及」によるものだと思う。歴史的にはフランスでSous Videと呼ばれる調理法は確立していた。私が低温調理を始めた頃は低温調理器もプロ用の高価なものしか売っておらず、大きな鍋と温度計を使ってやっていましたっけ。で、食材は「真空パック」しましたが、かつて「低温調理」は「真空調理」と呼ばれていた。

焼くとか煮るとかはわかっていても、まさか「その温度」まで考える人は少なかったけれど、「温度が重要」というのが一気に広がって今に至る。

煮るにしても「ボコボコ、グツグツ、ポコポコ、フツフツ」みたいな大雑把なことしかわからない時代から、「何度で何分、何時間」というのが解明される時代になった。ましてや感覚的には「火を通している」とは思えない、45度~60度(中心温度)での調理が重要なのもわかってきた。

もちろんオーブンの歴史は長いものがあるし、温度も重視されたけれど、それは「調理器の温度」であって、今の低温調理の様に「器具も具材も同じ温度を維持する」という考え方ではなかったのね。つまり、昨今、言われる「低温調理」とは【湯煎する事】と言っても良いと思う。もちろんオーブンやコンベクションオーブンを使った低温調理もあるけれど、一般的には低温調理とは「湯煎」を言う。

しかし、こんなフランス料理のプロが「牛肉のステーキ」を焼くのに「非常に弱い火」で1時間も2時間も掛けて焼くというのは初めて知りました。低温調理は低温調理だけれど、オーブンや低温調理器、コンベクションオーブンを使うのとも違う考え方。

でもこのプロの考え方に「火入れの全て」が入っていると思ったので、紹介します。

私がその通りだと思ったのは2箇所ありました。

○ 塩コショウを焼く前にはしない

この考え方は常識とは違うわけですが、最近、塩コショウはしないで焼くのが広まっているのを感じます。ただし、「ブライン、マリネ」の考え方は全くの別物。

でもかつては塩コショウをしてから焼くのが当たり前だったのは、やっぱり「塩、胡椒のレベルはそれなりだった」からかもしれない。現代は、単なる「塩気をいれる塩」ではなくて「美味しい塩」が広まったし、フランスの「フルードセル」みたいに「結晶の形」でも大きく食味が変わるのがわかったからでしょう。また胡椒もそうで、胡椒をまぶして焼けば「胡椒は焦げる」のが普通で、それでは「良い胡椒の意味がない」し、そもそも論として「胡椒は最初に振るべきものではない」という考えも古くからあった。でも当然、ここでも「ブライン、マリネ」で胡椒を使うのは別の話し。

そしてもう一つ。ここが非常に重要だと思うところ。

○ 牛肉の内部の脂も焼く必要がある

特にサシの入っている牛肉を「レア、ミディアムレア」で仕上げた場合、【中心は真っ赤な生のママ】というケースが多いのは、私も困ったものだと思っていていて、本来は「生に見えても火は入っている」のね。ただ50度ぐらいで調理された牛肉は「見た目は生肉に見える」というだけのこと。でも「中心は生のママで良い」と考えているお店、プロも非常に多い。

ここで重要なのは「脂肪分」だと私は思っていて、「生肉は大好き」な私でも「生の白い脂肪」を食べようとは全く思わないし、想像しただけでも気持ちが悪くなります。

だから「ユッケ」や「牛のたたき」も「脂肪分がない、少ない赤みの牛肉を使う」のが世の中の常識。

でも「良い牛肉のサシは美味しい」のは間違いがない。でも「生のママ食べたくはない」というところが重要で、だから「生に見えても火は通っているように調理する」のね。

牛肉の脂肪が溶けるのは輸入牛で40~50度で、和牛の場合は25度~30度と言われている。

つまりその温度で調理をすれば、脂は溶けて、和牛なら和牛香も広がる。これは「生肉が好きだから」と言って「白い生の脂肪も食べる」のとは大きな違い。特に「和牛でない無印牛」の場合、レアやミディアムレアで食べた時に「生の白い脂肪分が残っていて、それを食べる」なんて想像しただけでもゾクゾクっとする。

でも過去にはそこまで考えることは一般的ではなかったんでしょう。

でも今の時代は、「ユッケでも牛のたたき」でも【霜降り肉を使って、サシは溶かす】事によって、今まで以上に美味しいものが作れる。

私は世の中に「霜降り和牛の刺し身や寿司」が出てきた時に、そんなものが美味しい理由はないと思ったのね。サシの入った牛肉は好きでしたが「脂身を生で食べたいとは思わない」から。

でも時代は「霜降り牛肉の【炙り】」が出るようになった。これは「生肉」とは全くの別物で和牛の美味しいサシを楽しめるはず。

要は「脂身をどう調理するか」が大きなポイントで、上の異常に見える「ステーキを焼くのに1~2時間掛ける」のも「美味しくてサシの入った良い牛肉を使う」からこそ、考えて行き着いた調理方法だと思う。

でも私としては「サシそのものの負担が大きくて食べられなくなってきた」こともあって、上のプロみたいな調理をしようとは全く思わないし、A5和牛みたいな牛肉を素晴らしいとも思わないのだけれど、しっかり真ん中まで火を通した「レア、ミディアムレア」、そして「ユッケ」をしっかり作ろうと思う。

和食の「牛のたたき」も同じで、「赤身肉を使う」のが常識で、それも真ん中は「ナマ」だけれど、サシが適度に入った美味しい牛肉をしっかり低温調理で50度ぐらいで調理して作った「牛のたたき」を【常温で出す】は和食界の革命になるんじゃないかと思うぐらい。

そして、そして、今でも大好きな「ユッケ」だけれど、やっぱり「赤身肉よりサシが入っている方が美味しい」と思うようになってきたし、「完全な生肉に見えるけれど、45~50度で火は入っているユッケ」を【常温で食べる】のを基本としようと思いました。冷やしてしまうとまた「脂肪分」は固まるから。

でも火がちょっとでも入りすぎると「ユッケは不味くなる」のね。

モントキアラのある焼肉店で出てきたユッケがそれで、私は生まれて初めて「ユッケを残す」ことをしました。(笑)

店としては「安全を考えた火入れ」なんだろうとは思うけれど、あれじゃユッケの良さは台無しになると思った。あれならあえて食べる必要もない。

やっぱりユッケだけは自分の家で好きな肉を使って、好きな味付けで作るのが一番美味しいと思う。肉選びも安全性の確保も自己責任でやる方が間違いがないと思うし、「激安」なのも嬉しいポイント。(笑)

牛肉の火入れで言えば、ステーキにしてもローストビーフ、あるいはしゃぶしゃぶでもすき焼き、焼き肉でも私は「ミディアムレアのレア寄り」が昔から好き。でも決して「生焼けじゃ駄目」なのね。

その焼き方を突き詰めると、今回紹介したプロの焼き方になるのだろうと思った。

でも自分であそこまでやる気は全く無くて、やっぱり「低温調理で中もしっかり火を入れて(でも見た目は生)、そして周りは多少焦げがある(焼目以上)ようにして、カリッとした触感があるクラストが出来るように焼きたい。

こんな感じ。

またこんなふうでも良いし、やっぱりローストビーフって使う肉もいろいろ、火入れもいろいろ、味付けもいろいろ、食べ方もいろいろで良いと思うなぁ。その点、ステーキは「ベストの状態を狙う必要がある」と思うし、それだけに難しいと思う。

そして私のようなほぼ中は生みたいで(でも火は通っている)、外はしっかり焼くのが好きという、そういう焼き方がベストとされる料理があるのも最近知りました。

それはイタリア料理で、私以上に【レア好き】のお国柄なのもわかってきた。これって驚きで、私にしてみるとアメリカやオーストラリアみたいに「昔から肉はウェルダンに焼く」のが世界標準だと思っていたから。

イタリアはフィレンツェの伝統料理。Tボーンステーキで外はカリッと、中はレアなのだそう。でも「中は生」ということではない。

【レアとは生という意味ではない】ことを認識するのが重要なんでしょうね。

世の中って本当に広いし面白い。

また常識もそれができるバックグラウンドがあったからで、でも時代も変わり技術も進化していく中でその常識も壊されていくんでしょう。

本当に面白いと思う。

 

 

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