コメントにトラリピの利回りに関して書き込みがあったのですが、ちょっと気になったのでそれに関する私の考え方を書いておきます。
まず普通に商売を考えてください。洋服の輸入販売をしているとします。小さな会社ですがそれなりに繁盛して売り上げもそこそこ、投下資金2000万ですがそれに対する利益率は約4割。800万あります。
これならどうにか食べていける?
でもこれならどうにかなると考えるのがまるで商売を知らない人の単純な考え方でしょ?
貸借対照表ではどうなってます?借り入れもあるでしょ?在庫もいっぱい。デッドストックは?在庫の回転率はどうです?
投資収益率(ROI)なんていうのは一つの項目でしかなくて、他に大事なことっていっぱいあるじゃないですか。それを無視してそのビジネスを評価するなんて事は不可能のはず。
ではトラリピは?
レバレッジは借金。仕掛け玉は在庫です。それをどう考えるのか?
まして在庫が多い場合、その在庫の評価がキーポイントになりませんか?
在庫を考える場合、帳簿価格でそれを見るのか、それとも時価評価するのか?当然時価評価しなくては実情は見えませんよね。
簡単に言えば、企業価値とは清算価値ではないでしょうか。私として注目したいのはそこ一点です。その商売をして良かったのか悪かったのか。今、どうなっているのかはその清算価値で判断したいです。
それとレバレッジってなんなのか。
昔から株式では信用取引があります。先物も証拠金を入れて取引をする。FXもそうですが、こういう証拠金取引とはなんなのかそれをどう考えるかは非常に大事だと思います。私としてはこれは借金取引システム以外の何物でもないし、その借金を無視して利益率を考えるのはバカげていると思っています。
50万円の証拠金で1000万円の取引ができますが、自分が売買しているのは50万円ではなくて1000万円でしょ?
ということは利益率を考えるのであれば1000万円に対しての利益率を考えるべきであって、50万円の利益率じゃ駄目じゃないんでしょうか。950万円の借金は無視ですか?
私はここが証拠金取引の大きな落とし穴だと思うわけです。差金決済システムだから安心だと思わせるのがそれらを仕掛ける業者の常套手段であるし、それに乗ってしまうから莫大な借金を抱えることもあるんじゃないでしょうか。相場で破産するのはまさにこの証拠金取引をやるから。
この辺の考え方をうまく説明できないのですが、これをどう考えるかは非常に大事だと思ってます。
不動産ビジネスを始めるとします。で、不動産は担保として優秀だから95%まで融資しましょうと銀行に言われた。そこで1000万を投じて2億円の物件を購入する。賃貸に回して収入があったとして、その利回りってどう計算します?1000万に対して?それとも2億に対して?
2億に対して計算するのが当たり前ですよね?1000万に対する利益率を見てウハウハ喜ぶのって馬鹿げていると思いませんか?
でも証拠金取引の場合、どういうわけか1000万を基準にして考えてしまう人が多い。面白いでしょ?
FXって、銀行に融資しますから不動産投資をしませんか?といわれているのと全く同じだということがわかりますでしょうか。
ここで、いいじゃん、それでと思う人もいるでしょう。そういう方はそれでやれば構わないわけですが、原点に返って商売、事業ってなんなのか考えてみることは大事だと思います。そうやって大きなリスクを取ってやる人はたくさんいるし、企業の多くは借金をしているわけですからそれが普通なのかもしれません。でも赤信号みんなで渡れば怖くないってのはビジネスじゃないんじゃないでしょうか。
トヨタと日産の違いってなんなのか。サントリーが凄いのはどういうことなのか。そういうのがまるでわからない人はビジネスに手を出すべきじゃないと私は思っています。相場も同じ。
私は先物投資が長かったですが、こういう考え方をしていました。たとえば日経225を一単位買う。これに必要なお金は今はいくらでしょう。50万円ぐらいですか?でも買っているのは日経225が8500円だとすれば850万円の買い物をしているってことですよね。
私としてはこの金額を常に頭に入れていました。私が売買しているのは850万円の商品であって50万円ではないと。証拠金取引の良いところは全額入れる必要がないところですが、その差額である800万円は借金以外の何物でもないと。ですから、本来、850万円の資金がなければ買えないものだし、自分としては850万円を投資するけれど、50万は証拠金として投入、あとの800万はいつでも出せる様に用意しとりあえず定期にしておくとか、そういう考え方でした。
お金がないから銀行から融資を受けるのではなくて、もし融資の利息がゼロである場合、自己資金があっても借りるのは良いですよね。ビジネスはその金利ゼロの融資で行い、自己資金は他の安全な投資、定期でも良いですが、そういう風にやるのなら安全。
こういう考え方ってきっと今時の考え方ではないと思います。でもそれは証拠金取引が世の中に蔓延して、そして事業なり投資なり経験の少ない人たちがこれはいいやと飛びついて流行っているだけの話であって、本来考えるべきのリスクがおざなりにされていると私は思うのです。
株式の信用取引の倍率って今はどうなっているのか知りませんが、かつては3倍でした。100万円で300万円の売買が出来る。空売りもできる。今じゃそんなのはなんてことありませんが、昔は信用取引をしているなんてのはギャンブラー扱いです。そして非常に危険であるという認識でした。たったの3倍でですよ。では現代の証拠金取引って何倍です?10倍?20倍?日本では規制が始まったらしいですが、世界的には100倍以上もある。
これって世も末だなぁ、なんて古い私は思うわけですが、このリスクコントロールをどうやるのかは私は決して簡単ではないと思っています。そしてこれは借金と同じであるということを忘れてはならないと思うのです。
数年の短いスパンで儲かった損したとやるのも良いですが、私としてはもっと長い目でみています。何十年、あるいは世代が代っても存続できるのか否か、そこが重要だと思っています。そして優良企業の第一条件として無借金経営であるというのを信奉しています。投資家も全く同じ。
その辺の考え方の違いが、生き残れるかいつか消えていくかの違いとして出てくると私は信じています。
相場の世界なんてわけのわからないヤクザの集まりみたいなもので、二十代で何億も儲けたなんてのはゴロゴロいます。でもたった数ヶ月で消えて行ったとか。あるいは20年勝ち続けていたけれど、ある時何を血迷ったか大損して消えて行ったりとか。この世界って面白い話がいくらでもあります。そういう世界を見ていて思うことは、儲けることより生き残ることが大事だということ。戦いって勝ちを求めなくても、負けないようにしていると勝ち組に残れることも知りました。
単にトラリピと言っても、それがどういう仕組みで自分は何をしているのか、そして儲かりますよとそれを薦める業者は一体何を考えているのか。その辺をじっくり考えてみる必要があるんじゃないでしょうか。
そもそもトラリピの本質とは、「逆張り」「ナンピン」「塩漬け」の統合システムであるってこと。本来、初心者はこのどれもやってはいけないとされていることの集合体なんですね。それをわかってやっているのか、それともなんとなく良さそうだからやっているのか。利益が出ているみたいだからやってみようなんて思わせるのは、それこそ素人を相場の世界に取り込む業者の古くからの常套手段の何物でもないでしょ。
そして投資金額である証拠金に対する利益率が30%だろうが40%だろうが、50%を超えたとしても、証拠金取引とは何かを考えたらその%は全く意味がないものであることも理解するべきじゃないでしょうか。それは借金を除いた計算方法なんですから。これはトラリピに限らずレバレッジを効かせている投資は皆同じ。
トラリピは画期的なシステムでもなんでもなくて、何度も書きますが、逆張りナンピン塩漬けを統合しただけ。
でもこれでは利益が出ないって言うんじゃないです。逆張り、ナンピンでは利益が出ないってことじゃないのと同じ。でもトラリピの塩漬け玉リスクを回避するためにどうしたら良いのか考え出すと、それはまさに逆張り、ナンピンのリスク回避と同じになって、要は普通に売買しても同じじゃない?ってところに戻ってしまいます。
ただ、自動で動くのは画期的なシステムだと思うし、楽をして儲けたい人が飛びつくのも理解できます。私だって楽したいですもん。ただトラリピだけでは妙味がない、リスク回避が難しいと思うわけで、それとスワップ狙いを組み合わせるとか、まだ思いつきませんが、なんらかの方法、ハイブリッドトラリピシステムみたいなものを作ることもできそうな気がしています。それも私としては今後の楽しみの一つです。
ああ、それとトラリピの利益率を上げる方法はシミュレーションをすれば大体見えるはずですが、ポイントは利益幅を大きく取ることだと思います。仕掛け幅を小さくして玉を増やすのも良いですが、ポジションがどんどん大きくなるから難しいですよね。
また、通常のトラリピは、買いトラリピだとすれば下がりながら買い玉を置いていく方法ですが、上がりながら目の前に買い玉を置いていく方法。これも資金効率がかなり良さげで研究の余地がありそうです。
この辺は過去データでいろいろシミュレーションすると意外なものが見えてくるはずで、トラリピをやるのであれば少なくとも自分でシミュレーションができる環境をつくるべきではないでしょうか。メタトレーダーというソフトがあれば簡単にできますし、シミュレーションなしに投資を始めるのは、今の時代、カーナビ無しで知らない土地に行くようなものかも。
と、まぁ、いつもの独断と偏見です。