英HSBC:日本の個人富裕層事業から撤退-店舗閉鎖を顧客に通知
2月23日(ブルームバーグ):英銀グループ最大手HSBCが日本でのリテール(個人)富裕層向け事業から撤退することが分かった。このサービスを取り扱っていた全店舗を閉鎖する。欧州債務危機を背景に世界的に事業再編を進める中、2008年に日本で同業務に参入してから4年で退くことになる。
HSBCは預かり資産1000万円以上が対象のHSBCプレミアを中止する。3月8日から新規の投資信託販売などを止め、7月末までに東京、名古屋、大阪の全営業店を閉じる。HSBCグループの全世界での事業再編の一環としている。同社が22日夜、顧客に電子メールで送った通知書をブルームバーグ・ニュースが入手し明らかになった。
欧州危機が広がりを見せる中、HSBCでは新たな自己資本規制に備えるため日本、韓国、タイを含むアジア諸国で資産売却など業務縮小を進めている。日本では昨年12月、クレディ・スイスにプライベートバンキング事業を売却することで合意。1月にはコスタリカ、エルサルバドルなどでの事業売却を発表している。
HSBCプレミアの中島ギフォード個人金融サービス本部長は、顧客向け通知書の中で、「この度、全世界におけるHSBCグループの事業再編の一環として、大変残念ではございますが、私どもは日本におけるHSBCプレミアサービスのご提供を中止することを決定しました」と述べた。
HSBCは日本のリテール富裕層向け事業の売却を検討し、その入札手続きに入っていたことが、複数の関係者の話により1月に明らかになっていた。買い手が見つからない場合は、同事業の閉鎖もあり得るとしていた。
争奪戦
HSBCは08年にHSBCプレミアを開始。10年に追加した大阪と名古屋を含め、丸の内、赤坂、広尾の東京都内や横浜に6拠点を構える。しかし、欧州危機を受けて同行のスチュアート・ガリバー最高経営責任者(CEO)は過去20年にわたる拡大路線を反転、現在は世界的に資産売却や人員削減を進めている。
ロンドンに本拠を置くHSBCは140年以上に前に日本の金融市場に参入。アセットマネジメント(資産運用)や融資業務のほか、証券業務などを手掛けている。
日本のリテール金融サービス市場では、1471兆円(9月末時点)に上る個人金融資産をめぐり、国内外の金融機関が争奪戦を繰り広げている。外国勢ではHSBCのほか、米シティグループや英スタンダードチャータード、国内勢ではみずほや三菱UFJなどの大手銀行グループが富裕層業務を積極的に展開している。
「重要なお知らせ」
HSBCが同業務からの撤退について説明した「重要なお知らせ」を顧客宛てに送ったのは22 日午後8時半ごろ。丸の内、広尾支店などの取引顧客にとって突然の知らせとなった。HSBCの担当者は同事業についての売却検討、撤退の可能性に関して1月に報道されて以降、そうした事実はないと顧客からの問合せに回答し続けてきたからだ。
通知書は他行への口座移行手続きを促した上で「口座解約に伴う送金手数料は、無料とさせていただきます」と説明。「詳細につきましてはHSBCプレミアコールセンター(0120-777-369 24時間)までお問い合わせください」と記載している。
連絡を試みると「ただいま電話が込み合っています。しばらくお待ち下さい」とのアナウンスが流れたまま、10分以上つながることはなかった。皇居近くの日比谷通りに面した丸の内支店では22日深夜、シャツターは降り、オフィスの電気は消えていた。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日向貴彦 Takahiko Hyuga thyuga@bloomberg.net
更新日時: 2012/02/23 12:26 JST
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