最近マレーシアで子育て、あるいは留学するのが良いという話題と遭遇していろんな人の意見を見聞きしているのですが、かなり強い違和感を感じています。これって実はマレーシアで子育てをしている方々のブログを読んでも感じていることですので、それについて私の考えを書きます。
まぁ、子育てって海外に限らず日本でも難しいわけで、親が思うように子供が育つ確率なんて数パーセントでしかないでしょうが、海外に出るとそれがもっと難しくなると私は思っています。日本にいるとき以上に子供に対する期待や夢が大きくなるんですね。だから余計夢と現実の差が大きくなる。そしてうまくないと思うのが海外で子育てをしたこともない、海外で育つ子供の苦労さえ全く知らない人たちが、海外に出ることは良い事だと煽っていること。冗談じゃないぜ、全く。旅行やロングステイで海外の美味しいところだけ取って「素晴らしい~~~~~~」と思うのは勝手だけれど、その延長線上で子供の教育をうんぬん言うのは的外れもはなはなだしいと思っています。
○ バイリンガル
二ヶ国語あるいはそれ以上の言語を繰れるようになって欲しいというのはどの親も間違いなく願っていると思いますが、これが簡単じゃないんですね。そんなのは世界中にいくらでもいる二世、三世を見るとわかるし、日本にも帰国子女はいくらでもいますから彼らを観察してみればすぐにわかること。また実際に海外に出て、そこに育った子供達が周りにいるでしょうからよく観察してからものを言って欲しいと思います。またバイリンガルだと言えるような大人(子供じゃないですよ)に育った人をどれだけ知ってます?ほとんどいないでしょ?
でも自分の子供は大丈夫だと思うんですねぇ。
実際に経験したことがないことをゼロから始めるわけですから、手探りでやっていくしかないと思うのですが、でもその前に調べればわかることがいくらでもあるのに調べもしないのは危険だと思います。現地で育てばどうにかなるなんて事は絶対にないと思って間違いがないはずです。そんなに外国語を習得するのは難しいのか?って思う人がいたら、それこそそこが落とし穴で、外国語を習得するのは簡単なんですね。そこに住んでいる人たちを見ればわかること。みんな外国語をしゃべってます。(笑)
難しいのは日本語ってこと。これに気がついていない人が多いのには本当にびっくりします。自分が日本人で日本語を普通に扱えるから、子供もそうなると信じ込んでいるんですね。つまりバイリンガルのポイントは日本語の習得であるということ。
こういうことを書く私を偉そうに~~って思うでしょうが、私は周りに海外育ちが若いころからいっぱいいる環境で育ちました。親戚に二世三世がいますし(今は5世の時代か)、私の義理の兄も二世(ちなみに日本語を話せるのは一人もいません)。そして私自身、息子達が3歳1歳でオーストラリアに渡ってきて20年育てましたし、同じ永住仲間の子供達はいくらでもいますので、一体どうしてこうなっちゃうの?という例はいくらでも見てきました。で、残念ながら私の息子達もバイリンガルと言えるかというと難しいところです。
私が何を考えてどう我が子を育ててきたかはこのブログにも書いていますが、我が家は基本は日本語中心に育てました。普通の親は一日でも早く子供が現地に馴染んで欲しいと願いますから逆のことをするケースが多いんですね。下手な英語を使いながら家の中では英語だけ、英語のテレビを見せ、英語の絵本を読ませる。たしかにこれはかなり有効で早く英語世界に馴染みますが、それだけ日本からどんどん離れていくってことなんですね。ましてやここは日本じゃないんですから、我が子は現地人として育つだけです。
これがわかっていましたし、日本語の習得はかなり難しいですから(日本にいる日本の子供達に外国語を教えるのと同じこと)我が家の場合は自宅では英語は一切禁止で育てました。普通の日本の家庭と全く同じです。日本の絵本、日本のテレビ、言葉も日本語のみ。そして日本語環境を維持するために日本語補習校(日本人学校は無い)に通わせ、日本語で学び日本語で遊ぶ環境を維持しました。ですから子供達は普通の日本人と同じように幼少期を過ごして育ったわけですが、一歩外へ出ればそこに日本語は皆無ですから嫌でも現地語(我が家の場合は英語)を覚えていきます。そして幼稚園、小学校と現地の学校で教育を受けるわけですからどんどん英語力は伸びていきます。
っていうのも実は嘘で、うちの子供たちは留学生と同じように英語には常に苦労していました。その点では、永住仲間の子供達と比べると英語力はかなり劣っていたと思います。多分高校生になっても日本語の方が得意だったろうと思います。
でもこの育て方としては私は間違えていなかったと今でも思っていまして、子供達はかなり苦労しましたが、皆さんが私の息子達と会って話をしてもちゃんと敬語の使い分けもしますし、日本人らしい挨拶の仕方もしますし(笑)、彼らが海外育ちなのは多分わからないだろうと思います。
でもねぇ~~
じゃぁ日本語で論文を書け、企画書報告書稟議書の類を書けというと全くアウトです。つまり多くの帰国子女と同じレベル。その代わり英語はほぼ完璧なわけですが、これじゃバイリンガルじゃないんですね。
忘れられない出来事があります。私の友人で子供達が中学生、高校生の時にこちらへ移住してきたのがいます。その子供達は聡明で日本の超有名私立校でかなり良い成績を取っていたような子供達でした。この年頃での移住ってかなり難しくて、途中で挫折するケースが多い(成績が芳しくない。引きこもり。登校拒否。日本に帰るなど)のですがその子供達はどんどん現地に馴染み、大学もこちらのトップ校を好成績で出まして、私としては理想の育ち方だと思っていました。私の目から見れば完璧なバイリンガルで、しかも原点として日本人としての考え方、アイデンティティをしっかり持っている(これを維持するのが海外では難しい)。ところがですね、就職時になったらそれでも駄目っていう現実があったのにはびっくり。その子はバイリンガルとしての仕事を望んでいたのですが、「君の日本語も英語も、両方とも使い物にならない」とはっきり言われたとがっかりしていました。
ここなんですね、難しいところは。親が考えているバイリンガルと社会が求めているバイリンガルには大きな隔たりがあるってこと。ましてや日常会話は完璧ですなんてレベルでは全くお話にならず。
私はここがポイントだと思うんです。海外に出て子供達が現地の言葉を普通に操り、現地人と普通になんの問題も無く付き合っている姿を見ると親としてはホッとします。また、「パパ、バナナって英語でなんていうか知ってる?バナーーナって言うんだよ。」なんて言われてデレデレしてしまうんですね。ここに落とし穴があると私は思っています。この方向で行けば大丈夫だ、なんて思ってしまう。
ところがそのまま大きくなるととどんどん現地化していくだけだってこと。
子供に日本語を教えるために日本語環境に置いておくのは非常に大事だと思いますし、日本語補習校へ通わすのも良いと思いますが、それとて実は簡単ではないんですね。これはゴールドコーストでもそうですが、例えば幼稚園とか小学校の年少組みは50人ぐらいの子供達がいる。ところが上に進むにつれて段々減っていくんですね。中学校になると3分の1以下になり、中学を卒業できるのは10人にも満たないなんてことが普通。子供達の現地校での勉強が難しくなり、宿題も増えますから日本語補習校なんて行っていられなくなるんですね。
それでも騙し騙し通わせるわけですが、あるとき、「どうして日本語なんか必要ないのに勉強しなくちゃならないの?」なんてことを言い出すのが普通。
これは大きな関門で、これをいかに切り抜けるかがどの家庭でも経験する第一番目の関門だと思います。まだまだ関門は続くのにこの第一番目さえも通り抜けるのは簡単ではないはず。で、多くの親は妥協してしまう。
日本語補習校の方もその辺はちゃんと考えていて、遊びに来るだけでも良いという環境を作っているものの、それでも止めていく子供達は多い(うちの子供たちは現地校は休んでも日本語補習校だけは絶対に休まない補習校大好きという変なやつらでした)。
これは日本語に問題が残るだけじゃなくて、日本そのものを知る機会が減るということでもあるわけです。日本人が日本人としての文化、考え方を身に着けるには日本語を通してそれを得るわけで、その基本となる日本語を学ぶことをやめてしまえばどうなるかは簡単に想像できるはずです。家庭内だけでどうにかしようというのは無理があると思います。日本の文化って言語だけじゃなくて日本人独特の団体としての行動パターンや考え方があるはずで、学校はそれを学ぶには最適なところだと私は思っています。学校は子供にとって唯一の日本人社会なんですね。
私が考えていたポイントは自分が日本人であるということを強く意識させること、そして日本人であることの誇りを植えつけること。これってちょっと変な言い方ではあると思いますが、自分が日本人であることを嬉しいと思う状態をいかに維持するかがポイントだと思います。日本のことも覚えていない、あるいは行ったこともないけれど、日本を祖国と思い、日本が大好き、日本人大好き状態を維持する。私は子供達に催眠術ではないけれど小さいころから日本て素晴らしい国だ、日本人って凄いんだぞと話し続けました。今ではちょっと違いますが、うちの子供は右翼か?なんて思うくらいだった時期もあります。当然、日本の国旗には敬意を払い、君が代を聞けば自然に直立不動になるような子供でした。
これが良いのか悪いのかは別にして、そういう気持ちがあるから日本を忘れない、日本を大事にする、当然日本語や日本の習慣をも自ら覚えようとするんですね。また海外では必ず経験する人種差別、そしてそれを原因とする虐めに対しても強い子になると思います。これは極端かもしれませんが、そういう風に育てても、いつか日本を捨てて現地人として生きていくことを選択する子供達が多いということを忘れてはならないと思うのです。ただ自分の子供が日本を捨てようとしているときに、それはそれで構わないと思うのならまた話は別です。
日本の公立校は誰でも受け入れなくてはなりませんから、海外子女でも、たった1ヶ月でも受け入れてくれます。それを利用して日本との関わりを保ち続ける家庭も結構多いですね。それと何年かづつ行ったり来たりするとか。でもこれも進学を考えるとなかなか難しくて、結局は子供だけ日本に返すとか(子供だけ他国に出すケースもある)、あるいは家族全員で引き上げるなんてケースも決して少なくない。面白いのは、日本の学校に何度か行かせていたら、やっぱり日本が良い、帰りたいと言い出す子供もいたこと。ヨメさんの親友家族はこれが理由で日本に引き上げました。ヤブヘビ。
まぁ、臨機応変にやるしかないわけですが、海外に出たから素晴らしいことが起きるなんてことが無いのは間違いがないと思います。大事なのは日本で育つ以上に子供が孤立するケースが多いわけですから、親子の絆を強くすることは大事だし、そしてその為には親は絶対に自分の味方であるということを信じさせなくてはなりませんし、必ず経験する人種差別に対しても、「我慢しろ」は禁句で、「どうにか仲良くやれるように努力しなさい」も絶対駄目で、親としてあってはならないことには断固抗議することも大事だと思います。日本人はマイノリティであって、それこそ皆に囲まれて虐めにあうなんてことは何度もあるはずで、そういう体験から日本人であることを隠そうとしたり、現地人になりきろうとしたり、そういう問題からは背を向けて知らん顔するようになる日本人子女も決して少なくないんですね。心の痛みからは理屈は別にして逃げようとするのが当たり前で、でも戦うときには戦えと育てるのは簡単ではありませんが、私はそのように育てましたし、援護射撃もやりました。
この差別や虐めに関しての話は今回書いた以上に長くなりますから書きませんが、これは一度や二度の経験じゃなくて常に起こることですから、それから逃げることなく逆にそれを利用して家族の絆作り、日本人としてのアイデンティティ作りに利用するべきだと思います。
今回はバイリンガルに関して書きましたが、現実的にはバイリンガルはかなりハードルが高いということ、そして下手をすると日本語を一切しゃべらない日本人になることも決して少なくないこと。どうしても馴染めずに引きこもり、登校拒否になったり日本に帰らざるを得ないなど、そういうまさかが簡単に起きますから親としては細心の注意が必要だと思います。
うちの場合は絶対に大丈夫。こういう自信過剰が一番危険だと思います。これは子育てに限らずロングステイや海外での起業もそうですし、俺は大丈夫、この盲信が失敗する最大の原因だというのは忘れるべきではないと思います。
バイリンガルであることって本当に大事なのか?というのも真剣に考えるべきだと思います。日本人は外国語に関してはかなり強いコンプレックスを持っているのが普通で、他国語を操れることに関してはどうしても憧れを持ってしまう。でも、ここで今一度原点に返って、本当に外国語って必要なのかどうか、また必要であってもその優先順位は?他に大事なことがあるんじゃないかってことを考えるべきだと思うのです。
私が思うに、能力としての言語はまず一つの言語に関しては完璧である必要があると思います。でも下手に海外で育つと、2-3カ国はそこそこ出来ても、どれも中途半端、日本語さえも中途半端になるケースが多いということ。これは今海外子育て真っ最中の小さな子供達を見るのではなくて、20歳を過ぎた連中がどの程度の語学レベルか見れば簡単にわかると思います。つまり、海外なんかに出なかったほうが良かったという結果にさえもなるってことで、ここはしっかり自分の目で調べるべきだし、どういう計画を持つべきか真剣に考える必要があると思います。
そして子供達もいつか社会に出て仕事をするわけですが、社会は我々が想像するほどバイリンガルを求めていないんじゃないでしょうか。言語よりも専門性が重要視されるのが普通で、外国語は意思疎通ができれば大丈夫程度のほうが普通だと私は考えています。ですから、中途半端な語学留学なんて私は無意味だと考えていますし、大学に行かすにしても将来どんな専門家となるのかが一番重要だと思います。もちろん言語の専門家という道もあるわけですが、これは普通に海外で育って普通に学校行ったくらいでどうにかなる話じゃないのはわかるはず。
海外で育つ、あるいは学ぶということは、語学だ、専門性だとは別に、他民族とのふれあい、全く違う価値観との出会いなど、様々な利点はあると思います。でもそれを指して、国際人になるだの、グローバリズムを理解する青年になるだの言うのはちょっと大げさではないでしょうか。逆を言えば、日本で育って日本で学んだ子供達は国際社会でまるで役に立たないのか?日本では何も学べないのか?って話になっちゃいますよ。
私としては国際的にどうてらこうてらとか、グローバリズムを理解できるのか、他民族との共同作業ができるのかどうかとか、そういうのは個性に関わることが大であって、海外で育ったから、海外で教育を受けたからとはほとんど無関係だと思っています。嘘だと思うなら、海外育ちをしっかり見てください。また海外で活躍している日本人の多くが海外育ちかどうか見てください。それどころか海外で育ったがゆえに使い物にならないという子女も多いのがわかるはずです。これは子供だけじゃなくて、日本の社会を知らずに海外でだけの仕事経験しかない大人たちが、日本の社会常識さえ知らない人が多くいるのがわかるはずです。マレーシアにもいるでしょ、そういう現地化してしまった大人がいくらでも。
でも海外で育てば、海外で勉強すれば何かいいことがありそうだと思いますよね。もしかしたらそれは幻想かもしれないと見つめてみるのも大事ではないでしょうか。得るものが何も無いと私は言ったことはありません。でも失うものも確実にあるってこと。
海外に出たら青い鳥がいるような気がするのは錯覚だと思います。
それと子育てに関しては海外に関係なく、絶対に失敗だったという親はいないんですね。最初の目標とはたとえ180度違う方向へ行ったにしても、間違えでは無かったと必ず言います。そして良かったところばかり強調する。世の中に存在する話はそういう話ばかりだと考えるべきだと思います。本当のところはなかなか見えてこないでしょう。
移民仲間は子供を中心にして知り合ったケースが多く、子供達が小さいころには親達は皆同じような夢を持ち、どうやって育てようか話したり情報交換をします。でも段々と月日が経つにつれて、目標はみんな似たようなはずだったのが子供達の育つ方向性がかなり違ってくるんですね。言語にしてもそうで、ほとんど日本語はカタコトみたいに育った子もいれば、英語は全くしゃべろうとしない不思議な子もいるし、まぁ、どちらも流暢にこなす子もいる。でも私の周りにはバイリンガルと言えるほどの子はいません。で、親同士でたまに話すのは、昔はこんななるとは思わなかったよね、って話。バイリンガルにしても、そんなことを夢見たときがあったねー、でもまぁ、両方ともそこそここなせるからいいよね、とみんなで笑ったり。でもそういう話が出来るのはまだ幸せで、問題を抱えたままの家庭も決して少なくない。
これは海外ロングステイも同じで、来たばかりは\(^o^)/状態で喜んでいる人ばかり目立つけれど、黙って逃げるようにいなくなる人もいる。でもそういう人たちに一体何があったのか、何を感じたのか、それを知ることはまず不可能で、活字になることもまずありません。そして当の本人に聞いても本当のところを言う人はいないでしょう。
でも周りから観察しているといろいろ見えることはあるわけです。でもそれを口に出してはいけないんですね。こういうブログに書いてもいけない(笑)。
でも子育てに関しては私は書きますよ。大人はどうでも構いません。好き勝手に選んだ道なんですから、いつまでも\(^o^)/していれば良いと思います。でも子供は自分の意思で来た訳でもないし、自分で環境を選べないわけですから、半端じゃない苦労をするはず。それを親は常に理解しないと駄目だし、でも過保護もやっぱりまずいし、先手先手を打つ必要があるのは海外も国内も同じこと。ここで大事なのは、海外に出たからいいことがあると親が夢見ている状態だとやばいってこと(こういう親は決して少なくない)。子供は全く違うことを考えながら生きているはずですから。
海外だから経験できることは多いとは思いますが、そればかり強調するのはおかしいと思います。日本にいたら何もわからない、ただのバカに育つでも言うのでしょうか。海外で育ったがゆえに箸にも棒にも掛からない、使い物にならない変な日本人になる可能性だってあるわけです。我が子もそうかもしれません。
海外に出て良いと思うことは、自分の今までの環境や常識、価値観の違う世界でどう生きていくか体験できること。これは子供も大人も同じだと思います。でもそういう適応力や頑張る力って、では海外に出なければ身につかないことなのでしょうか。私は絶対に違うと思うし、疲れ果ててその環境に流されることを選ぶ人もいるわけです。海外でそうやって流れて生きる方法を選択した場合どういう人間になるか、私はそれの怖さのほうが気になります。そして自分の子供達を見ても、そういう部分が少なからずあるのがわかります。高い目標を持ってそれだけを見つめて邁進できる人間なんてそうは多くはありませんから。
それと多くの人が勘違いしていると思うのは、海外育ち、海外で教育を受けた場合、就職にも有利じゃないかと考えているフシがあるということ。これって逆で、マイナスにこそなりプラスにはならないんですね。海外に出ることを推奨するまえに、こういう帰国子女の問題点もまず最初に知っておくべきことだと思うんです。
海外の経験はプラスになります。それは日本なら日本という基礎があってそれに海外がプラスされた場合のことであって、日本という基礎がなく海外しか知らないとなると日本人みたいなでも外国人みたいなわけのわからんやつでしかないってこと。
そういう意味では、ちゃんと日本に育ち、日本の文化も言語も理解し、そして日本で教育も受けて大学も出る。そしてその上に海外での教育なりなんなりをプラスしていく。これが大事だと思うのです。あるいは海外で教育を受けて、日本でも学位を取るとか。これじゃないと相手にしてもらえないという現実があります。
親はそれを知らずとも子供はそれを知っていますから、ある日突然、その国の人間として生きるなんて言い出すのでしょう。
我が家の息子達は今就職戦線にいるのですが、非常に苦労しています。二人ともオーストラリアで教育を受けていますからその延長線上の就職を狙うしかなく、日本企業には全く相手にされません。ただそういう若者に興味を持つ企業や部署もなくはありませんが、決して主流ではないんですね。またオーストラリアではバイリンガルだからどうってことも全くありません。言語に強いというので優遇されるとしたら日本と関わりのあるサービス業の便利屋さんとしての仕事があるぐらいでしょう。つまり大事なことって言語じゃないってことなんですね。あくまで専門職としてのスキルが一番重要であって、それは世界中どこへ行っても変わらないと思います。
留学に関しても同じで、下手に子供を海外に出すと、まずはその地の言葉を習得することに精一杯で一番大事な専門性を手に入れるには至らないことがあるってこと。まずは大学付属の語学学校で勉強したけれど、結局大学には入れず、あるいは入ったとしても卒業できずという日本人子弟がどれほど多いか、そういう現実も忘れるべきではないですね。海外駐在組が決してみんな家族同伴ではないのはどういう理由か考えてみたら良いと思います。彼らの多くは下手に海外で育てるとうまくないことを良く知っているからでしょう。
また日本の現実から逃げるために海外に出る人っているんですね。子供が突然留学したいと言い出すのもそういうケースが多い。私もそうでした(笑)。でもそれって問題解決には至らないケースがほとんどなのね。親は喜ぶみたいだけど(笑)。オーストラリアでもハワイでも西海岸でも留学生の実態を知ったら驚くんじゃなかろうか。まともに勉強してスキルを身につけて帰る子女って10分の1もいないかも。でも親も子も良い経験をしたと言うのね。それを世間が認めることはないにしても。結局遊んじゃった留学にしても無意味だとは思いませんよ。それも普通じゃ出来ない良い経験でしょう。でも大事なことって他にあるんじゃないかってことなんですよ。
あ、そうそう。一つ重要なこと。
子供達は必ずいつか太平洋戦争のことを学校で学びます。日本が世界に対し、アジアに対して何をしたかを学びます。これを子供達に事前に話をしておかないと、多くの日本人子弟は「それは嘘だ。そんなことがあるわけがない。」とクラス内で主張しちゃうんですね。で、みんなから寄ってたかって叩かれる。同じクラスに隣国の子供がいた場合にはかなり面倒なことになるようです。これは大学での一般教養の授業でも、隣国の学生がいかに日本が卑劣な国であるか演説をする場面があるとのこと。
我が家ではこれに対処していませんでしたので大変でした。ある日、長男が泣きながら帰ってきまして、「パパ、日本人ってそんなに最低な民族なの?そんなに卑怯なの?嘘だよね?」と私に食って掛かるんです。
私としてはその通りだという言い方はできませんし「お前もパパもママもヒデ(弟)もいつも正しいことをしているかというとそうじゃないよな?間違えることはあるのが人間だよな?国も同じで、自国や世界の為に良かれと思ったことでも、結果的に間違えだったこともあるんだ。」とその場を切り抜けました。
小さな子供に日本が一体何を目指して何をしたのか、それがどういう結果になったのかを話すのは簡単ではないと思います。また個人、家庭によってその辺の考え方の違いもありますし、子供にどう教えるのかはそれぞれでしょう。ただ、どちらにしても、その時が必ず来るのは覚悟して準備しておく必要があると思います。これが原因で友人間で問題が起きたとか、子供の心の傷つきようは半端じゃないですから細心の注意が必要だと思います。
おまけ。
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