TPPって話が出てきた当時からなんか変な条約だと感じる「匂い」があちこちから漂っていて、自由貿易だのグローバリズムだのそういう単純なお題目だけで賛成する人たちは無視するにしても、では大事なところがちゃんと議論されているのかどうかがまるで見えてきません。これはメディアも政治家もそうで、農産物に焦点を当てられているけれど「日本の農業を守りたい」という感情論は横に置いといて、本当に一体なんの利益があるのか、なんのデメリット、リスクがあるのかを隠しているぐらいに感じます。
最近私はちょっと見方が変わってきた部分もありまして、制度的な問題点と言われるISD条項とか、後戻りできないラチェット規定は恐れずに足らずどころかこれがないと意味が無いかもしれないぐらいに思うようになってきまして、この辺を強調してきた中野剛志氏の主張に誇張さえあると感じています。
まぁ、基本的には国対国というより、国境なく活動している一部の多国籍企業が自社の利益を最大限にするための条約であって、これで国が良くなるとか、GDPが上がるとか、仕事が増える、売上・利益が上がるなんてのはただの期待論であって、そもそもそういう条約ではないと考えています。ましてこれはFTAもそうですが、新興国や体力のない企業にはチャンスどころか、潰される危険がある条約で、最近はそれに気が付きだした国民、そしてその声を無視できなくなった国も出てきているようで、白紙撤回出来るならそのほうが良いはず。でもそれが不可能なら、要求すべきところは要求すべきで、「聖域を守る」なんて消極的な対応の仕方じゃやる意味が無い。
でも結局、その聖域を守れるのか否かというところに注目が集まってしまって、どんどん本当の問題点から離れているような気がするとともに、この聖域にこだわるのは他の問題を隠す策略かもしれないとも思うのです。そもそも農協が反対するのは「日本の農業」を守るためではなくて「農協」というシステムを守りたいのが主であるのは最初からミエミエでしたし、本筋とはずれるそれを政府も目標としてやってきたことに違和感を感じています。
そして声はなかなか大きくならないものの、本丸は「医薬と医療、保険」という大きな市場への食い込みであるのは前から言われていて、その辺がトーンダウンしているところが気になります。そしてアフラックの保険を大々的に郵便局が扱うのをTPPに先駆けて決めた政府には相当の圧力が掛かっているのは想像できるし、もうこの分野は差し出して、そして「聖域」の一部を守って、「頑張りました」という幕引きにしようとしているような気がしてしょうがない。
TPPがどうのこうのというより、どうしてこういうわけのわからない体質が日本にあるのか、それが私には理解できず。
TPP反対論者は多くいますが、私が注目していたのは東谷暁氏。やっぱりこの人はいうことが違う。施光恒氏の書籍は読んだことがないけれど、鋭い視点を持っていると思いました。