以前、「マレーシアに子連れ教育移住 関連動画」という日記を書きました。BSジャパンのアジアンタイムズという番組の紹介です。7月6日放送。今回はそれの続き。7月13日放送分。
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考えて考えぬいて、これがベストと思うならそれをやるしかないのだけれど、やっぱり私はこういうのを見ると、「何か違うんだよなぁ」というのを感じてしまいます。皆さん想像で話をしているのね。この動画にも経験者は一人も出ていないし。
いくつか思ったことですが、登場する親御さんの話の中で
「選択肢が多いほうが良い」という点。これだけを聞けばその通りなのだけれど、では「考えられる選択肢に何があるのか」というツッコミが大事だと私は思っています。また幼い頃から海外で育つことによる「選択肢からはずれるもの」もあるはずで、具体的にその辺を考えずに、「何か良いことがあるはず」的な考え方は何も考えていないのと同じだと私は思います。子供が何を選ぶにしても「国籍」「永住権」「ビザ」という大きな縛りがあるのに、それを無視して子供に何が選べるんでしょう。ある日ある時、それらが巨大な壁となって目の前に立ち塞がって唖然とするのが普通なのに、それに言及している人の話も聞いたことがありません。好きな国で好きなように生活し、仕事もできるなら苦労なんかないも一緒なのに。
また外人と普通に丁丁発止できるようになって欲しいと思うのはわかるけれど、海外に子供の頃から生活しないとそれができない、なんて考えるのはとんでも無い大間違いで、自分が決めた「海外での教育」を後付で言い訳してるだけでしょ。日本国内育ちは外人とディベートも出来ない馬鹿になる?
ではその辺の具体的な話はというと、世の中に何十年も前から海外で子育てをしている人は何十万人もいるわけですから、彼らを観察すればかなりのものが見えてくるはず。まずは海外移住組の2世3世のチェックが必要でしょう。彼らの多くは永住先に同化する傾向が強く、いわゆる現地で放っておけばどうなるかの一番の見本。
また帰国子女もどこにでもごっそりいますし、親の苦労話を聞こうと思えばいくらでも聞けるわけですから大事な情報源だと思います。こういう動画を見ていて思うことは、あるいは海外移住を考える人、勧める人の多くは「自分では経験していない」「経験途中」「メディアの言うまま」「期待と夢」「自分勝手な想像」が多いと私は感じています。これは海外で子育てをするということじゃなくて、子育てそのものにも同じことが言えると思いますが、「過去の事例」という膨大な情報を無視してはならないと思っています。でもそれを追っていくと、自分が考えているのと違う内容も多く、「そんなはずじゃない」という気持ちが育ってくるのかもしれない。でもま、それはそれでOKで自分が信じる道を行けば良いし、それしかないですね。
それと「子供の頃から異文化に接することが重要」だと信じている人が多いようだけれど、本当にそうなんですかね。そもそも「異文化」ってなんなんでしょうか。親にとって「異文化」でも子供にとっては子供を取り巻く文化が「普通の文化」でしかなくて、親があたりまえだと思っている「日本の文化」こそが子供にとって「異文化」だということを忘れているように感じます。つまり親が期待しているような「日本文化+アルファ」にはならないんですね。子供は「異文化+日本文化を少々」となるのが普通。それでも良いのなら海外で育てるのは楽勝かも。
日本人だっていろいろで同じように育った兄弟でさえ性格も考え方も違うのは当たり前で、だからといって「XXX人」というくくりは意味がないと考えるのは統計の概念がまるで無い人の考え方だと思います。私は「これが日本人だ」というのは無いにしろ、「日本人の傾向」は間違いなく存在しているし、しかしそれの全てが良いわけでもないし、悪いわけでもないし、「日本人の傾向」を子供が持たなくても良いのかどうかの判断は難しいと思います。
でも海外に出て誰しもが思うことは、「約束を守らない」「時間にルーズ」「言い訳が旨い」「自己主張が強いだけで中身が無い」とかいろいろ感じているはずで、ではなぜ多くの日本人がそれを感じるのかというと、日本ではそれらを受け入れる文化ではなく、育っていく内に自然と身についた「傾向」だろうと私は思うんです。
では外人全部がいい加減かというとそういうこともないし、日本人に嘘つきは居ないのかって話になりますが、そういう論理展開をする人は頭がイカれているわけで話を続ける必要はないと思うのだけれど、放っておいても日本で育つと身につくことが、海外でそれを身につけるのは難しいことも理解する必要があると思います。これは家庭内でどういう育て方をするのかが重要だと思うのですが、一歩外に出れば誰も気にしないようなことを家庭内で厳しく育てるのは「限りなく不可能」に近いんですね。
ま、そういうことを事前に考えて準備して育てる親もいれば、行き当たりばったりの親もいますし、同じ場所、同じ学校で育った日本人子女でもまるで違うように育ちますから、こうすればこうなるなんてことは無いにしろ、「傾向と対策」は大事なのに変わりはないと思っています。
やっぱり大事なのは、「ちょっとでもおかしいと思ったら進路変更する」ってことだと思います。子育てに王道なんてないはずで、常に臨機応変に変わっていく必要があるはずですが、これが簡単じゃないんですね。転校、帰国、兄弟別々の国、父と母は違う国、そういう大きな進路変更も想定して、常に動けるような環境に留まるのはかなり難しい。それは兄弟であり、また親の仕事であり、収入の確保であり、次から次へと出てくる問題を解決するのに忙しくて、子供中心に考えた大きな進路変更なんて出来なくなるのが普通。
そもそも海外で教育を考える人達の多くは小さいお子さんを持っているケースが多い。つまり、そういう子供が小さいころなら動きやすいってことの証明だと思います。でも子供はどんどん大きくなっていくし、親のいうことなんて聞かない歳にもなっていく。反抗期も来る。そんな時に進路変更が簡単にできるわけがないんですね。でもそのまま流されたら一体何のために海外に出たのかわからなくなるような事態になる。でも、そういうふうになるのは一部の家庭だけで多くはどうにかなっているんじゃないかと思ったら大間違いで、順調に行くほうが珍しいと考えるべきだと思っています。子育てそのものもそういう傾向がありますし、海外に出て日本にいるのならないであろうストレスが親にも子供にも掛かることを忘れるべきじゃない。もちろん、日本では普通のストレスが海外ではないこともあるでしょう。でもそういう風に「良い点」ばかりみたら落とし穴にずっぽりはまって当然だと私は思っています。
海外に出れば何か良いことがあるような、青い鳥が居るような、そういう風潮、またそれを煽る人たちが居るのは本当にうまくない現象だと思っています。日本国内に居て「うちの子はXXXX私立に入ったから安心」と考える馬鹿な親は少ないと思いますが、海外に出れば何か良いことがあるように錯覚している人はゴマンと居る。これはジジババのロングステイも同じでしょう。
この番組に出ている方は「いろいろあった」と涙を流していますが、泣くほど苦労すればどうにかなることでもないのね。また子供が小さい頃は問題らしい問題なんて無いのが普通で、子供が大きくなったらどうなるのかと思いました。で、どうにもならず四面楚歌で家族離散なんてことも結構あって、日本に引き上げればどうにかなる内はまだ良いほうかも。過去の話ですが知り合いで、家族は日本に帰ったのに子供は帰るに帰れず、精神的に病んで入院したのに家族は誰も来なかったなんてこともあったし、家族で教育移住していたのがうまくいかず、世間体もあるからと子供だけ一人、他の国(の問題児が集まる学校)に送ることになったり、まぁ、本当に信じられないことがいくらでも起きているのが現実。とりあえず高校の卒業証書だけでも手に入れたいと、詐欺師に引っかかって2000万取られたなんて事件もありました。馬鹿な話だけれど、そう動かざるを得ない状況も理解できるんです。そしてその辺を熟知していて儲けようとする輩もいる。
要は失うものも同じようにあるってこと。でもジジババのロングステイはOK。嫌になれば帰れば良いんですから。でも子連れ移住はそう簡単にはいかないでしょ?
それと、これもいつも書いていますが、親としての自分の問題もちゃんと考えないと。海外で仕事を見つけられたにしても退職したらどうします?どうやって生きる?あるいは退職前に病気になったら?
こういうことを現地で働いている人たち(駐在員じゃなくて)に聞くのはタブーですが、ちょっと考えてみればすぐに答えがわかるじゃないですか。
海外で生活してみたいなんて夢を追うことによるデメリットってもの凄いものがあるんですね。そしてその問題が見えてくる頃に慌ててもどうにもならない。自分もそうだし、子供も同じ運命で良いのか?若い内はこんなことは考えないのが普通ですが、考えなければならない年齢になって考え始めても遅すぎる。これは断言できます。
そのデメリットを見て見ぬふりをするのか、それともちゃんと対処するのか。それが海外生活の運命の分かれ道だと思っています。そして見て見ぬふりをした人は知らないうちに消えていく、流れていくのが普通です。