海外で育つと身につかないものがある

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私たちの子供は二人。両方とも男。日本生まれですが、長男3歳、次男1歳の時にオーストラリアに移住。彼らはこちらの日本語補習校には通いましたが、日本の教育は受けていません。

二人ともとっくに成人していますが、彼らは日本の企業に勤めたこともありません。だから日本流の仕事をまるで知りません。

「日本流」って一言で括ってしまうと良いも悪いもごちゃ混ぜで糞味噌一緒になってしまうのですが、やっぱり日本が世界に誇れるものってあると思っています。その分野はプロダクトマネージメントと言って良いと思うのですが、目標を定め、計画を練り、それを素早く実行するところ。これは日本の産業界では常識だと思うのですが、オーストラリアはゴールドコーストみたいなノンビリ、チンタラしたところで育ちますと、そういう日本みたいな動きを見ることも無ければ聞くことさえなく、ましてやその中に自分もインボルブされて動くことはありえません。全くの別世界。

でも彼らにとってはそれが常識で、世界ってそんなもんだと思っているんですね。製品の完成度をあげるためにどれだけ苦労するかなんて知らない。これはサービスも同じ。

私が海外で子供を育てて気になるのはこの辺。

確かに自由で伸び伸び育っているのはわかるんですが、今の時代に要求される大事なものが欠落しているようにも思うんです。

そんなことをいつも考えているのですが、今日、こんなニュースを見つけました。

わずか4時間足らずで・・日本の技術を各国エンジニアも賞賛、「すごすぎる」「奇跡としか言いようがない」ー中国ネット ← クリック

中国メディア・看看新聞網は22日、2013年3月に行われた東急東横線の一部地下化に伴う代官山駅ホーム地下化工事がたった4時間足らずで完成したことを紹介する記事を掲載した。

記事は、東京メトロ副都心線との接続のため、東急東横線が渋谷駅から代官山駅までの区間を地下化したと紹介。1日に242万人という利用客に影響を及ぼさないために、8年の準備を経て1200人を動員し、同3月15日の終電後から翌16日の始発までの4時間弱のあいだに工事を完成させたとした。そして、午前5時の始発電車が通常どおり出発したと伝えた。

記事は同5月に行われた学術シンポジウムで上映されたという動画を紹介。動画は各国のエンジニアから大きな賞賛を浴びたという。

これに対して、中国ネットユーザーからは以下のようなコメントが寄せられた。

「ますますこの国に敬服の念を抱くようになった」

「日本の計画実行能力は確かに世界屈指だ」

「日本人の技術や勤勉さが体感できた」

「これはすごすぎる」

「恐るべき民族だ」

「大和民族は、人類の希望だ」

「いったいどうやってそんなことができた?本当に不思議だ」

「本当に敬服する!“小日本”と呼ぶ人はもう止めろ」

「映像を見た。奇跡としか言いようがない」

「日本は工業においては無敵だ」

「これこそ国力ってことだ」

「土木事業関係者として、言葉が出ない」

「笑わせるな。ここ35年間、中国の都市化のスピードは実に世界を驚かせたものだ」

「確かにすばらしいが、中国でも遜色はない。中国の都市では、地下鉄や高層ビル、鉄道などは日々斬新な変化がある。日本に劣ることはまったくない」

(編集翻訳 城山俊樹)

この工事は去年2013年の3月に行われたそうですが、私は全く知りませんでした。

そしてこれがどんな工事だったのか、調べてみましたところ動画を見つけました。

確かに見てみると「嘘だろ?」みたいなことをやってのけている。そして日本ってこういうことをやるんだよね、と思いました。日本の政治家を含む指導層ってなんだか良くわかりませんが、実際に動く実働部隊の底力って凄いものがあって、これが「日本の力」だと思います。

こういう私も日本を離れて長いですし、サラリーマン生活も数年しか経験をしたことがありませんが、そんな私でも目の回るような思いをしたり、「みんな、こんなことをやっているのか」「ここまでやらないと生き残れないのか」と思ったことは何度も何度もあります。また今でも不思議なんですが、日本では社命が下れば「単身赴任」だろうが「世界の僻地への赴任」だろうがそれに従う。

社命じゃ無いにしても「客からの要求」あるいは「それが必要」と思えば、自ら動く。チンタラしない。ブツブツ言わない。当たり前のように動くんですね。日本ではそれが普通ですから、自分も知らないうちにそうなっていく。この能力って学校で勉強したり本を読んで身につくものじゃ無いんですね。現場でのみそれを習得することが出来る。

ところがそんなお国柄では無いオーストラリアに育つと、これら多くのことが「嘘でしょ?」ということになる。「そんな馬鹿なことをやる奴はいない」とか「出来るわけが無い」そして「そうする必要なんか無い」という考えになる。

ここなんですよ。問題だと思うところは。

でもそれで生きていけるのね。

ただそれは【たまたま】そういう環境下にあるからそうなのであって、「今はそれで大丈夫なだけ」かもしれない。世界はどんどん動いているし、血眼になって勉強し、働く人たちが数多くいるのに「それは他国の話。俺たちには関係ない」で将来も済むのかどうか。

でもそういう競争が激しくなり、自分たちも変わらなければならないときが来るとしたらどうなるのか。「その時に考えれば良い」というのが多くの人の考え方だと思うし、「楽が出来る内は楽をしてしまえ」と考えるのも一理あると思うんです。もしかしたら「その時は来ない」かもしれないんですから。

でもそういう人たちが多い国は衰退していくんだろうと。そして本人も気がつかないうちに「自分の立ち位置」がどんどん下がっていくんだろうと思うわけです。

これがノンビリした自由なオーストラリア(ゴールドコーストというべきか)で子供を育てた私の心配。

でも、「これじゃヤバいかもしれない」と気がついた若者は自らそういう中に入って自分を磨こうとする。これは凄いのは日本だけじゃ無くてどこの国にもそういう「しっかり学べる環境」はあるわけですから。

でも「俺はやっぱり今の自由を大事にしたい」と考えたらどうなるのか。

実は私自身がそういうタイプで、「このまま日本にいたらおかしくなる」と感じたのが18歳。それに気がつかせてくれたグアムに学生時代からどっぷり入り浸ったわけです。そしてグアムで生きていこうと思ったし、後にはアメリカ本土に渡ろうともした。アメリカにはやっぱり自由があると感じたからです。でも結局それは形にならず、日本にどっぷり浸かってあくせく働きながら、気がついたら結婚もし、子供も持っていた。

そんな子供達の寝顔を見ていたときに「こいつらも私と同じことを考え、挫折し、我慢し、この日本で生きていくんだろうな」と思ったわけです。でもどうしてもそれを受け入れたくなかったんです。たとえ馬鹿だ、無能だと言われようと、そして実際それが事実だろうと、「自分の好きなことができる人生」を送らせるのが親の責任だと思ったんです。でも日本にはそういう環境がないと私は感じていましたから、海外に出ることを決心した。それが39歳の時でした。38歳か。

でも今60を過ぎて感じることは「それでよかったのか」ということ。無い物ねだりでしかないのだけれど、私は本当に子供達がこれからますます競争が激しくなり、今まで以上に知識や経験、問題解決能力が要求される時代に生きていけるのかどうか、それが気になるわけです。

でもオーストラリア人を見ていると「そんなの関係ないね」というゴーイングマイウェイである部分を強く感じることもあるんです。ですから子供達もそういう風に思うのかもしれませんが、私はやっぱり日本的考え方を捨てきれませんから「他人に後れを取る」ことが気になります。また「日本では使い物にならない」なんて言われるのも悔しいじゃないですか。多言語が多少使える程度、外人とうまくやる能力があっても基本的なものがアウトならどうにもならないわけで、日本にはそういう帰国子女って結構いるんですね。彼らは就職に有利どころか、働く場所が限られていると私は感じます。

なるようにしかならないのは確かですが、親の育て方一つで子供は変わりますから(親が変えるのではなくて、親が選んだ環境によって変わるという意味)、自分の責任の重大さを今でもヒシヒシと感じます。

それもあって、息子の日本での就職もやめさせて、我々夫婦とともにマレーシアに渡るような話に持って行きました。でもそれはマレーシアに渡ってチンタラ楽しく生きようよとうことでは全くなくて、「自分の足で自分で立つ能力を彼に得て欲しい」という思いからです。でもそれは口で言うほど簡単ではないわけで、そんなことは貧しい国でも豊かな国でもみんながやっていること。ただ私としては「環境を不本意ながら受け入れる」ことなく、「世の中はそういうものだ」と諦めることなく、「自分の意思で自分の生き方を決める喜び」を手に入れて欲しいと思うのです。

そんなことが可能なのか。(格差の大きなアメリカですが、アメリカ人はそんなの当たり前でしょという考えの人が普通。ここが私のアメリカは凄いと思うところで、そうできる環境とチャンスがあの国にはある。オーストラリアは似ているようでチト違う。でも方向性は同じで、いつかアメリカみたいになると思います。でも日本は違う方向を向いている)

出来ると思っています。私が今そうやって生きていますし、考えてみると若い頃からそうやって生きてきたのかもしれないとも思います。ただ私の場合は「自分のそうしたいという欲望」が強かっただけで、それで生きていく「能力」も「将来の見通し」もまるでありませんでした。でも人生ってそんなもんだろうとも思うのですが、この歳になりますと、そうやって好き勝手な生き方をしていつのまにか消えていった、あるいは結果的に想像以上の苦労をすることになった人の方が圧倒的に多いのがわかるわけで、それと同じ道を子供に歩いて欲しいなんてことも思わないのです。

「僕はこれが好きなんだ」、なんて馬鹿の一つ覚えみたいな綱渡りの生活をしようとしている子供に、「頑張れ、やってみろ」とは親としては言いたくありませんし、それは親の責任放棄だと思っています。そんな人生を歩んでもらいたくてこの世に出てきてもらったわけではありませんから。でもそんな中から「光る逸材」が出てくるのもわかっていますが、自分の子供を見ていれば天才肌ではないのは簡単にわかるわけで、野球で言えばイチローみたいになることに目標を置くのでは無くて、「俺はビルゲイツより成功してみせる」なんてのも良いのですが、私としてはもっと「現実的」で、しかし「自由と尊厳」を確保して、着実に上に上っていく方法があると思っています。

マレーシアに長男を連れて行くというのは、私の理想を実現するためのその理論、計画に長男も乗ったと言うことで、そろそろそれが稼働します。

どうなりますかね~~~。

私の「平民の逆襲」プランに乗った第一号が長男ってこと。またそれは「日本では使い物にならないヤツ」だとしてもそれを容認するという考え方です。私がモロそれです(笑)。でも「数年先の今頃はどこで何をしているのか」を「自分で決める」ことができて、それは「妥協の産物」でもなく「自由と尊厳を確保」した上で「経済的に自立した」生き方。そして「老後の心配もない」生活。あはは、書いていてなんて欲張りなんだろうと思いました。無理かな?(笑)

次男坊?あいつは「適当にしておけ」って親が思うほど上昇志向が強い努力家で、「金」「権力」「地位」が好きな嫌なヤツで、放っておいてもどんどん先に進んでいきます。ま、その内、出鼻を砕かれ、挫折を繰り返しながらていろいろ勉強していくのでしょうが、まだ23歳ですからそのくらい鼻息が荒いくらいの方が良いだろうと・・・。 (笑)

ああ、それとですね、海外で育った子供って結構褒められることがあるんですね。日本から来た人とか、仕事上でもそう。これを聞くと親としては思わずニヤリとするし「連れてきてよかった」と思う一瞬なんですが、これもよーーく考えてみたら面白いと思います。

その褒め言葉って、まず「お世辞」と思って間違いがないはずで、まさか「お宅のお子さんはこんなことも知らないんですか?出来ないんですか?」なんて言うわけがないんですね。まあ実際に大したもんだと思ったにしろ、それって一体何と比べてそう思っているのか。きっと褒める人たちは、「海外育ちは日本語もろくすぽわからない、日本の常識、習慣、文化もしらない」と思っているからでしょ?いわゆる「(日本人として)馬鹿に決まっている」と思ってるということ。

ですから褒められてニコニコしてばかりじゃうまくないわけで、褒めた言葉の背後に「でも日本だったらこのレベルじゃ使いものにならない」と思っていると想像したほうが良いと私は思っています。

実際に我々が海外に行くと、その地の人々を見て、「凄いなぁ」と思うこともあれば、「こいつらどうしようもないな」と思うこともあるじゃないですか。でもその地に自分の子供が育てば、間違いなくそういう方向で育つってことなんですね。いくら理想論を言って育てても子供に取っては「現実ではない」わけですから通じない。子供も「日本人って凄いんだねぇ~~」なんて言うかもしれませんが、自分も頑張って追いつこうなんてことは考えないのが普通。

つまり大人になって「日本的なもの」を身につけた上で海外を経験するとそれがプラスアルファになるんでしょうが、子供は日本を知らないわけですからプラスアルファもなにもないんですね。親が理想とする「国際人」マイナス「日本人」になると思ったほうが良いはず。あるいは日本的なものはせいぜいオマケ程度か(笑)。海外にはその地に溶け込んだ日系人がたくさんいますよね。見た目だけは日本人。ハワイやアメリカ本土、南米もそう。自分の子供は彼らと同じ方向を向いているのを忘れてはならないと思います。

もしそういう日系人を見て、あれが理想だ!と思うならそれはそれで良いと思いますが、その代わり、子供がその地で生きていけるように「永住権」あるいは「市民権(国籍)」が取れるようにするのは絶対に忘れてはならない親の責任だと思います。それが無いと子供は「親が夢見た国際人」しかし実態は「行くあてもない難民」となります。

 

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