ほんとに長い道のりでした。ひとつの料理を作るのにこれだけ試行錯誤したのは初めてのはず。
でもま道中でいろいろ勉強になりましたわ。茹でる、煮る、蒸す、圧力鍋を使う、スロークッカーを使う、低温調理をする、それらの特徴、そしてそれらを組み合わせる方法も分かったし、素材としてのバラ肉そのものの性質、部位によって大きく違うのもわかったし、角煮を追い求めたことでわかったことは多くありました。
でも角煮と言っても私の頭に常にあったのは日本の角煮ではなくて、また中華の一般的な東坡肉でもなくて、「昔、五反田にあった上海苑という店の角煮」だったんです。だからそれが本式なのか亜流なのか邪道なのかは私にはわからない。でもあの味、あの食感をずーっと追い求めてきました。
それもやっと完成の域に達した様子。かなり満足できるレベルになりました。
この成功のキッカケは何度も書いているようにホテルにお勤めの読者から聞いた、「ローストポークの作り方」。これを基本にやったらあっさりできちゃった。今までの苦労はなんだったんだろう、みたいな感じでした。
今回の東坡肉に関する日記はここ。
ただどうしても解決できないことがあったんです。それは最終的に「皿に盛った時の味」が定まらないってこと。特にですね、タレが私が追い求めていたものとは随分違う。どうしたもんかと悩んでいたのですが、昨日、ひらめきがありました。
「美味しいタレを別に作れば良い」
ってこと。気がつけば「だよねぇ」って思いますが、気が付かなければ煮汁をいかにおいしくするか悩み続けるのね。馬鹿みたいでしたわ。
結局、冷えて味も付いている肉を温めなおす時に、「新しいタレ」を作ることにしました。
入れたものは
◯ 前からの煮汁
◯ オイスターソース
◯ 豚ストック(この味が決め手になる)
◯ みりん
◯ 片栗粉でとろみを付ける
醤油を入れないと駄目だと思っていましたが、全く必要ありませんでした。何度も何度も味見をしながら、昔食べた五反田の上海苑を思い出していました。そして私が大事に思うことは
◯ タレだけをご飯に掛けて何杯も食べたくなるような味
◯ 添えた葉っぱ類も美味しく食べられる味
ですから、濃すぎても駄目、薄すぎても駄目で、これを調理途中の煮汁で調節するのは私には不可能でした。ところが別に作るとなれば簡単で、あれやこれやをチョビチョビ入れては味見を繰り返し、ご飯にかけたらどうかとか脳内シミュレーションを繰り返せば、間違いなく今まで以上のものが出来る。
昨日作ったものをこのタレの中に煮ていくわけですが、煮ていく最中にまたタレの味が変わっていくので難しいと思いました。でも基本的には「豚の味」が強く出てくるのでOK。あとから作ったタレという感じはなくなって一体化していきます。
皿によそってから、タレに片栗粉でとろみを付けて掛けるだけ。
完成~~~~。
美味しい・・・・。大満足。今までで最高の出来。肉もプルンプルンで箸で持つのも難しいぐらいの柔らかさ。赤身の部分の固さ、繊維質は全く感じられない、固めの豆腐みたいな。
問題はタレですが、75点かなぁ。あの五反田の上海苑のうまさには到底届かない。でもタレだけ舐めてみても美味しいと思うし、肉を食べ終わったタレだけでもご飯をもういっぱい食べたくなる味。余ったタレを捨てたらもったいないと思うような味。
やっぱり中華のポイントってこの「残ったタレ」にあるような気がします。魚を蒸したものもそうだし、蟹を炒めたものも同じ。最後は「皿を舐めたいなぁ・・・」って思うくらいじゃないと駄目なんじゃないかと。(笑)
ま、そういう意味で私の東坡肉も完成の域に近づいた。
でも料理って甘く見るとしっぺ返しを食らう世界で、もしかしたらここがスタートであって、本当の美味しさってきっとこの先にあるんだろうと思ったり。
ま、ジジーの調理実験としては上出来かと。少なくともこれより美味しい角煮、東坡肉を近年どのレストランでも食べたことはないですから。でも私が追い続けてきた「五反田の上海苑の角煮」が亜流なのか邪道なのか、そこは私にはわからないのは上に書いた通り。ま、自分のツボにはまっていればそれで良いかと。
ヨメさんに味見をしてもらって、どう?と聞いたら、ニヤリと笑いました。上海苑大好きだったヨメさんのテストはパスでしょう。
しかしあの五反田の駅の近くにあった上海苑って不思議な店だったと思いますわ。普通の中華料理屋でしかなかったのに半端じゃなく美味しかった。
私たち夫婦の新婚旅行は香港でした。まぁ毎日毎日あちこちの店にいって食べて飲んでいましたが、主目的は「フカヒレ」だったんです。専門店は全て回った。またある店で食べていた時に、隣のテーブルに座った人たちと話をするようになって、彼らが「あの店も美味しい」と言うのを聞き出して、そのままその店へ向かってハシゴをしたり。
でもフカヒレの旅の結果は「上海苑のほうが美味しくない?」って結果で、香港から帰ってきた日に上海苑でフカヒレを食べてチェック。「やっぱりここが一番美味しい」と確認しました。
この話を知人の香港人に話しましたら顔を真赤にして興奮しまして、「今度、香港に来るときには必ず連絡しろ」と。(笑)
そもそも中華のフカヒレと日本のフカヒレと味付けも違うし、「何を大事にするか」が違うんですね。上海苑のフカヒレは日本人向きだったと思う。
だから今回の角煮、東坡肉も同じかと。