かつては世界に何か起こると「ドルが買われ」、「有事のドル買い」と言われていましたよね。世界の中心のドルを持っておけば安全で、でも投資するなら他の通貨だと。豪ドルがまさにそれで、世界が安定している時には豪ドルが買われるのですが、何か起きると「徹底的に売られる」。そして米ドルが上がる。
それがいつの頃からか、「有事の円買い」と言われるようになり、米ドルではなくて円が買われて上がるようになってきた。でも「有事の豪ドル売り」は変わらない。(笑)
どうしてなんですかね。
円は安全だから?日本は経済的にも安定しているから?
でも東日本大震災の時には不思議に思ったはず。地震直後は「円が売られた」んですね。そりゃそうだろうと思います。福島原発にしても東日本が壊滅する危険性だってあったんですから。
ところがその後、円はどんどん上がって、地震の前より高くなってきた。
この頃に「有事の円買い」って「安全だから」という理由じゃないというのがはっきりしてきたんですね。リーマンショック時の円高は「日本の傷は浅いから」かもしれないと思っていましたが、基本的には同じだったんでしょう。
逆に、豪ドルは「世界に何かあると売られる通貨」ですが、オーストラリア経済に大きな関係があるとも思えないのに、なんで徹底的に売られるのか。リーマンショック後の豪ドルは酷いもんで、3ヶ月で対円で約半値まで叩き売られた。
リーマンショックに関しては、日本はバブル崩壊時の経験もあるので、他国に比べると被害は少なかったと言われていますが、ではオーストラリアは直撃を受けるほどひどかったのかというと、そういうこともない。でも徹底的に売られた。
結局、「有事の円買い」「有事の豪ドル売り」ってのは、その国の安定性とか通貨の安全性とは関係がないってことなんですね。きっとかつての「有事の米ドル買い」という時代も同じだったのかもしれない。
では何が一番のポイントなのか。
それは「金利差」だと言われている。
金利の差があれば、どうしたって金利が高い方へお金は流れますよね。これはマレーシア在住のロングステイヤーとて同じで、金利がほとんどつかない円をリンギットに替えようとする。これは「円売り」の「リンギット買い」となり、もし世界中の投資家が同じことを考えれば、大きな流れとしては「リンギット高」になる。
もしここで「世界が不安定」になってきたとして、さてリンギットを売って円に戻しますかね。
個人が自分の資産を円だ、リンギットだ、あるいは他通貨で持っていたとしても、頻繁に動かすことは考えないのが普通じゃないですかね。世界が不安定になったところで、リンギットが下がり、円が上がるというのが理解できませんし。
ところが視点をプロのビッグプレイヤーに移すとその動きの意味が見えてくる。
多くの会社は「他人の金で仕事をしている」わけですよね。それは株式市場からの調達であったり、社債発行を含む借金であったり。これは投資会社も同じで、「借金をして投資をしている」と考えるとわかりやすい。
我々個人とて、もし借金して投資するとしたら、「金利の安い通貨で借りて、金利の高い通貨に投資をする」のが基本になるはず。
つまり、世界が安定していて「リスクを取って投資を増やそうと考える」(これをリスクオンという)の時には「円での借金が増える」ということ。そしてそれをアメリカなり、諸外国へ投資する。つまり、「借りた円を売って外貨を得る」わけで、この円売りが「円安をもたらす」。
ところが世界の様子がおかしくなって、「投資を縮小しよう」(これをリスクオフという)と考えた時には、投資対象が何にしても「それを現金化して【借金を返す】」行動が増える。つまり、円で借りているわけですから、「円を買い戻さなければならない」。そして円高になる。ここが重要で、「積極的に円を買う」という意味ではなく「円を買わざるをえない」ってことなんでしょう。
これが「有事の円買い」の正体だと言われている。「円高は【新規の円買い】」ではなくて【円の買い戻し】によって起こる」
言葉を変えるなら「有事の【金利の低い通貨】買い」ってことですね。世界が順調な時には「好景気の【金利の低い通貨】売り」となる。
これの裏返しは「有事の【金利の高い通貨】売り」であって、「好景気の【金利の高い通貨】買い」となる。
これで今までの豪ドルの動きは完全に説明がつくわけです。今までの豪ドルの金利はメチャ高かったですから。
そしてこの動きがあるのがわかっている世界中の弱小トレーダーもその動きの方向に乗って為替の動きが増幅される。(そして【リスクオフ】の動きが広まれば為替は大きく動くけれど、そのパニックが収まれば【もとに戻る】と見て良いわけで、チャンスがそこにあると見るのも良いはず。これも過去の例を見ればわかるはず)
ここで大事だと思うのは、この為替の動きは「その国の実情」とは無縁と言って良いかもしれないってこと。もちろん日本や米国、あるいはユーロやスイスフランなどの「世界の主要通貨」の話であって、もしマレーシアリンギットの金利がゼロ%であったにしても、世界の投資家がリンギットで借りて米ドルに投資するという動きが大きくなるとは思えない。
私たちは「為替の値はその国の国力である」と考えがちですが、そう考えていると為替の動きは全く読めないってことじゃないですかね。
そして円に関してですが、日本は世界最大の債権国で、世界のあちこちに資産がある。金も貸しているんでしょう。
もし、日本国内に何が起きた場合、あるいは世界が不安定になった場合、それらの海外資産を日本に戻そうという動きは必ず起きるんですね。海外には金はあるけれど、日本国内の本社にはキャッシュがないなんてことになったら大変ですから。
この海外資産を引き上げる動きは「円に戻す」という動きですから「円高に動く」。日本の将来が危ういと見れば「円高」になるという、感覚とは逆の動きになる。
では本当に日本が危なくなったらどうなるか。それは日本に投資している外資や日本に住む国民が、「海外に逃げよう」という動きが出るほどひどい状況になれば、「円安」になるわけですが、そこまで酷いことはまだ経験していないわけで、またそんな時が来るのかどうかはわからず。
この辺の為替の動きを専門家が説明しているコラムがありました。前にも紹介しましたが、再度ここに出します。
この辺は積極的に為替を売買しないにしても、我々のような海外在住者は常識として知っておくべき原則だと思います。
さて一歩進んで、日経平均と為替の関係です。
鶏と卵の関係でどちらが先かは別にして、日経平均と為替は【相関関係】があるんですね。
なぜ?
これは日本の株式市場に投資する投資家の内、約30%が外資であるのが関係している。そして短期投資に限って言えばその率は50%以上であり、「超短期」の目先の動きで利益を出そうとする投資家の場合、90%が外資だと言われている。
つまり、外資の行動基準がわからなければ、日経平均と為替の関係はわからないということになります。
上に書いたように、「円で借りて日本株式に投資するケース」もあれば、海外の年金基金を含む「機関投資家が日本株式に投資する場合」ですが、「その通貨を円に替える」必要がありますよね。つまり円を買うわけですから、その動きは円高となって出て来る。
ただ株式が上がる時には円安で、それだと株式の上昇と円安が相殺されて、自国通貨でのパフォーマンスが下がってしまう。運を天に任すなんてことをプロはしないわけで、先物を使うなりして「将来の円を売る」ことによって、(株価が上がった場合の)利益を確保するんですね。
この場合は、売り買いが同時に行われるので、「為替に大きな変化はない」と言って良いのでしょう。
ただし、株価が動くのと同時に、その為替ヘッジも変化させるんですね。最初のまま放置することはあり得ない。
このヘッジの動きが為替の動きに大きな変化を与える。
この辺の説明はかなりややこしいので私がここに書くのは控えます。でもこのコラムを見ると理解できるはず。(それでもかなりややこしい)
ま、これが「為替の動きの基本」、いや一部なんでしょうがこういう動きがある。
じゃ、我々はどうするべきか?ってことなんですが・・・。
これから先は私の個人的な考え方で全く一般的ではありません。
まず、上の説明ですが、「なるほど」とは思うものの「後講釈」でもあるんですね。過去に起きたことを後から説明するのは簡単。誰にでもわかる。
でもその過去の動きを理解できれば、将来もその考え方は有効であると言える。
でも私はそれも疑問だと思うんですよ。
まずですね、今回の北朝鮮危機にしても、あるいはシリアへのミサイル攻撃、フランスの大統領選挙、また過去のアメリカ大統領選挙もそうですが、「危機」というのは簡単ですが「それの規模」「期間」「結果」もわからないんですね。
これって私に言わせれば「何も分かっていないのと同じ」で、後講釈を聞いて「なるほど」なんて思ったところで、将来の事はわからんわけです。
ただ単に「評論家ぶったり」「競馬の予想屋」みたいに、「こうなるであろう」なんて喋るのは簡単。
でも虎の子を実際に投資する場合、「呆然とする」のが我々一般人だと思うんですよ。あるいは「ちょっとだけ」投資してみる。でもそんなのは「遊びと同じ」で、思惑通りに行かなければ簡単に諦められるんでしょうが、「思った通り!!」なんてことになっても、「当てたという満足感」以外に得るものはないんですね。
じゃ、「大きく勝負するか?」なんて考えても、そんな度胸はない。
それとですね、我々一般人は「ヘッジをしない」のが普通。ここがプロとの大きな違いだと思うんですよ。だから「読みが外れたら」大変なことになる。
ではヘッジを勉強してプロの真似をするにしてもですね、「臨機応変にヘッジを変化させる」ってところまでは出来ないんですね。それどころか、思惑が当たった、外れたにしても、「どこで撤退するべきか」もわからない。
「撤退」が早すぎたり、「時期を逃して元の木阿弥で塩漬け」なんてのが我々は得意なわけで(笑)、プロの真似をしようとしてもどうにもならない。
じゃ、何もしなければよいのかってことですが、それはその通りだと思います。特にジジババは「失敗した場合、取り返す方法がない」わけですから、余計なことはしないほうが良いはず。
これを書きながらあるファイナンシャルプランナーの助言を思い出すんです。著名なFPですが、「低金利下では外貨投資も考えるべき」だと。そりゃそうだろうと思いますが、「リスクとして30%減価することもありうる」と。
こいつ馬鹿か?と思いましたよ。仕事をしている若者ならまだしも、退職して年金しかないようなジジババにそれだけのリスクを取れっていうんですから。
それとですね、外貨投資も良いですが、どういう外貨をどういう基準で選んで、外貨のどういう金融商品に投資するべきか、そして何よりも大事なのは「タイミング」ですよね。でもこれらの記述がまったくないんですよ。
これって「株式投資をすれば儲かる」「貴方の為のFX」みたいなのと全く同じで、「カモを呼び込む釣り記事」にしか私には思えない。
ではどうするか。
このブログで私がいつも書いていることですが、「チャートの見方」ってのは経済活動をする者全てにとっての「基礎知識」じゃないかと思うんです。
ま、私はチャートアナリストで、全くファンダメンタルズを考慮しないという「古いタイプ」なんですが、「チャートだけでは勝てない」というファンダメンタリスト(長期投資はそのとおりだと思う)でも「チャートは見る」んですね。
だって、例えば将来的に「下がる」と読んだ時に、それがいつ始まるのか、その動きの大きさ、力関係はチャートに出ますから、必ずチャートを見てタイミングを取るはず。
そうじゃなければ、「明日」「来週」「来月」「来年」「あるいは起きないかもしれない」のに「投資を開始(あるいは撤退)すること」は不可能じゃないですか。
この辺は多くの経験者が自覚していると思いますが、「株式投資をしよう」と決めると何故か短期間に株を選んですぐ買っちゃうのね(私もそうでした 笑)。これっておかしくないですか?市場の動きのタイミングは見ずに、「投資すると決めた」場合、すぐに買わないとチャンスを逃すような気がするんですね。そう言う風に「心理は動くもの」なんですね。これでうまくいくことがあるにしても、結局は「高値掴み」だったり、利益が出てもそれは「偶然」であって「腕」ではないし、そんなやり方だと「いつか必ずやられる」わけです。
でもその心理を押さえ込むのは簡単ではなくて、その為にも「チャートを見る」癖をつけるのは大事だと思うんです。
また逆に動いたらどうします?
そういう「将来のことはわからない」にしてもありとあらゆる「動きを想定」して「対処方法」は「投資する前からある程度決める」のが普通だと思うんです。でも多くは「うまくいく事だけを考えて、神様に祈るだけ」ってのが多いハズ。これは投資じゃなくてギャンブル。
でも動きはチャートに出るわけですから、それで判断をするってことは絶対にしないとだめじゃないですか。
投資だなんて大げさなことじゃないにしても、円資産をリンギットに替えるとか、それが年に一度だとしてもあるいは毎月、毎週だとしても「チャートでタイミングを取る」と有利にできるわけですよ。
ただ「チャートを見る」というのは「チャート分析をきっちり学ぶ」という意味でもありますが。
私がなぜこのブログに「トレード」のことを書くのかというとそれが理由です。
「俺にはわからない」と言いつつ10年も20年もそのままっておかしいんじゃないですかね。
これって「英語ができればなぁ・・」と数十年、勉強しようともしないのと同じで・・・。