去年の4月からMM2Hの審査が止まっていて、先月から再開されたのは皆さんご存知の通り。
そして気になる「MM2Hビザ取得条件」も発表されました。
これをパッと見た限りでは大きな変更はなかったと言う感じ。
私が気になったのはこの部分。
OFF-SHORE INCOME
1 If the applicant is unable to meet the RM10,000 off-shore income, he/she may submit income from spouse to support the application. However, the applicant’s income should exceed the spouse with a ratio of 7:3.
2 The applicant who declares that he / she is employed, is not permitted touse other sources of income such as rental agreements, investment benefits and others as sources of income instead, the applicant MUST submit the salary slip and bank statement as proof of an offshore- income.
3 Applicant is required to provide both Salary Slip and 3 months ofcurrent Bank Statement as an evidence of salary credit by the employer.
Effective date: 4 March 2019
基本的に「毎月1万リンギットの収入」がないとならないわけですが、「申請者だけでは足りない場合」、「配偶者の収入も合算することができる」という点。ただし、申請者の割合は7:3を超えなければならない。
つまり、「申請者は7000リンギット以上の収入がないと駄目」ってことですね。申請者6000リンギット、配偶者5000リンギットで合計11000リンギットでも駄目だということ。申請者は「夫」、配偶者は「妻」という決まりはなくて、奥さんのほうが収入が多ければ奥さんが申請者となればそれでOK。
また申請時に「給与所得者」としての申請だった場合、彼らが重視するのは「給与所得」だけであって、不動産所得や投資関連の所得をそれにプラスすることはできない。
これって「Effective date: 4 March 2019」となっていますが、もうすでに申請書は提出していてこれに合致していない申請ってのはあるんじゃないですかね。申請者を収入がない配偶者としていたとか。その場合は許可は下りないのか、それともすでに申請を「受理したもの」は除外されるのか。そういうケースは申請代理エージェントなり、自分で申請した場合は直接聞いてみるしかないですね。
ただ私が気になるのは、「給与所得者としてではなく申請した場合」はどうなるのかっていうところ。
これは私の息子が申請したときもそうで、息子は「給与所得者ではなかった」わけです。「収入は投資による収入のみ」。
必要な収入である毎月1万リンギットは超えていましたが、それで「許可が出るのかどうかははっきりしない」と申請代行エージェントであるペナンのリカさんに言われていました。そしてこれは10年前の私の申請時も同じで、私には給与所得がありませんでした。そしてもう少し前になりますが、私の両親もMM2Hを取ったわけですが、彼らにも給与所得はなかった。ただ年金はあったものの、国民年金ですから数字的には全く届かず。
MM2Hを申請する大部分の方は「給与所得者である」のでしょうが、私と似たような立場でMM2Hを取る方もそれなりにいるわけですが、私はそういう場合の「はっきりした条件」を見たことがありません。
ラーメン屋をやっていたとか、保険の外交、セールスマンであって、給与所得はないけれど収入は問題なくある場合はどんな書類、証明が必要なのかとか、私みたいに投資による収入しかない場合も同じでどうなのかもわからない。
「でもま、申請してみましょう」と申請したら取得できちゃったということでしかなくて、確かな基準はわからない。
つまりですね、それらの収入って「定収」じゃないわけですよ。ラーメン屋でもセールスマンでもFXや先物トレーダーも同じで、儲かった月もあれば損失が出た月もある。では年収で見たところで結構デコボコがあるのが普通じゃないですかね。
だから「直近の三ヶ月」の所得証明が出来たとしても、それはたまたまその直近の3ヶ月だけ儲かったということもあるし、逆にいつも儲かっているのに直近の三ヶ月は調子が悪かったなんてこともあるわけで、マレーシアの担当官は何をどう見るのかがわからない。
株式投資で年間数千万円の利益を出しているけれど、毎月、収入があるわけじゃないとか、「定期や債券」を持っていて年収は充分あるけれど、毎月の収入はないとか。あるいは債券ですが、ゼロクーポンだったらどうなるんですかね。ゼロクーポンって償還の時にがっぽり入るわけで、毎年の収入があるわけじゃない。でも償還時の収入を年月で割って、「みなし月収、みなし年収」を算出することは可能だけれど、それを当局がどう見るのかは全くわからず。
また月収、年収は多いけれど、借金も莫大で「返済と支払い金利」は収入を超えるなんてことも商売人には起こりうる話ですが(不動産投資も同じでしょう)、そういう負債の分までマレーシアは関知しないってのも変な話。
ま、少なくとも「直近の三ヶ月はがっぽり儲かった」「直近の1年では大きな収入があった」時にその証拠を添えて申請するのが普通でしょうけれど・・・。(笑)
どちらにしてもこのマレーシアのMM2Hの条件っておかしいですよね。
年収1500万円のサラリーマンならまず問題なくビザはでるのでしょうが、その人がマレーシアに渡った時には年収がゼロでも構わないという条件なんですね。こういう収入とか資産を長期滞在ビザの条件につける場合は、「移住してからどうやって生活をするのか」を基本として考えるのが普通なのに、マレーシアは全くそれは無視。
結局、収入があろうとなかろうと、資産があろうとなかろうと「あるレベルのそこそこの人なら誰でもオッケイ」ってことなんだろうと思います。
MM2Hというビザは長期の観光ビザと同じで、国は一切面倒を見ないし、就労の自由もありませんから、「食えなくなったら勝手に帰れ」というビザでしか無いんですね。だから詳しく調べることはしないんでしょう。
でも永住権となれば、国はその人を無視することは出来ませんから根掘り葉掘り調べるんでしょう。でもマレーシアは基本的には永住権を出さない国と言って良いくらい、永住権の取得が難しい。
永住権はいらないよという考え方もあるし、私もそう思います。でも期限があるビザを更新しながら生活する不安ってのはあるんですね。そのビザは定期的に更新する必要があって、更新できなかったらアウトですから。
ま、私達家族は「腰掛け」のつもりではないけれど、「死ぬまで」なんて考えていないわけですが、「マレーシアの都合で追い出される」ことがあると非常に困るんですね。だから永住じゃないにしても長い年月、生活するとなれば永住権を手に入れるのは万国共通ですが、マレーシアで永住権を得るのは至難の業。
ま、「ロングステイで楽しんでください(お金を落としてください)」というビザでしか無いのは間違いがないと思うし、我々もそのつもりで計画をたてるべきだと思っています。
あああああ、もうひとつ大事なことを書くのを忘れるところでした。
MM2Hビザを取得するために人質定期を入れるケースが多いですが、1年後にその定期の一部を引き出すことができるという特例。50歳未満は15万リンギット(引き出せるのは15万リンギット)、50歳以上は10万リンギット(引き出せるのは5万リンギット)は定期として残しておかなくてはならない。
巷では「家を買うという理由で引き出せなくなる」みたいな噂もありましたが、それはない様子。
○ 家を買う
○ 車を買う
○ 医療費
に必要であるならば人質定期の一部を引き出すことが可能。
基本的な条件はこのページから。
それと余談ですが、あるブログで「世界中を定住せずにウロウロしていれば【日本に納税する必要がない】」と書いているのを見ました。
私はこれは「自分の都合の良いように考えているだけ」で、それは成り立たないと思います。
日本には183日ルールはなくて「日本に183日以上滞在しなければ納税義務も無い」と考える人もいますが大きな間違いだと思います。そもそも各国が持っている183日ルールとは「183日以上滞在したら納税義務が生じる」という意味であって「183日以内の滞在なら納税義務はない」という意味じゃないんですね。
また租税条約を「どちらの国で納税するか決める条約」だと勘違いしている人が大半ですが、A国で納税したらB国には納税しないでよいという条約じゃないんですね。「第一課税権がどちらの国にあるのか」を決める条約だと考えたほうがすんなり理解できるはず。例えば日本の居住者(納税義務者)がアメリカの不動産なり、アメリカの会社から収入を得た場合、当然、アメリカでその利益を申告して納税しなければならない。だからもう日本には納税しないでよいのか?なんてことにはならないんですね。日本の納税義務者は「世界収入」に課税されますから、当然、日本でも納税しないとならない。
でもアメリカの税制では25%の税金、日本の税制では50%だとしましょう。もし両方に納税すれば25%+50%で75%になってしまう。これを2重課税というわけで、それが起きないようにしましょうってのが租税条約なんですね。実際にはアメリカで25%納税し、日本での申告時に「アメリカで25%納税しました」という証拠があれば、それが日本で【税額控除】となる。つまり差額だけ日本で払うと考えれば良いんじゃないでしょうか。この場合、両国で納税しているわけですが、これを二重課税とは呼ばないわけです。ここを勘違いしている人が非常に多いので注意が必要だと思います。
また居住者(納税義務者)の判断ですが、日本では「居所がどこにあるか」が判断基準ですが、では「居所とはなにか?」の規定がはっきりわかりません。半年以上海外に住んでいるという日数的なものは「一つの判断基準」にはなるとは聞いていますが、それだけでどうなるわけでもなく、また「住民票を抜いているから非居住者だ」なんていう自己申告も通用しない。
例えばですが、豪華客船に乗って一年中船の上にいたとしても、日本の居住者とみなされる。また、子供を他国に留学に出して6年経っていてもその子供は日本の税法上の居住者だったり(金は日本の親が出しているから)。海外を放浪していても日本の居住者。
だから日本の非居住者、納税義務者ではないという立場を確保するとしたら、まず定住先の国をはっきり決めて、少なくとも183日以上は滞在し、その国の居住者、納税義務者になる。当然、居住に必要なビザもちゃんとしたものを持っているべきで、観光ビザで出入りしているようでは駄目でしょう。そして「収入の源泉」がどこにあるか。自宅はあるのか、家族はどこに住んでいるのかなど、「客観的に海外在住である」ことが重要で、「旅行で海外を放浪しています~~~」なんてのが通用すると考えるべきじゃないと思います。
マレーシアってのは一面、タックスヘイブンであると言って良いと思うのですが、それの恩恵を得るためには少なくともMM2Hビザなり、就労ビザを持つ必要があって、巷で言う「ビザラン」をしながら「私はマレーシアの居住者であって日本の非居住者」なんていう主張は笑い話にしかならないんじゃないですかね。
日本の当局はそう簡単に「納税する必要はありません」なんて認定してくれないと思ったほうが良くて、このブログにも何度か書きましたが、「武富士の息子に対する2000億円の贈与事件」を検索してみてください。香港に在住し、香港で仕事をし、一般的に見れば香港の在住者としか思えない武富士の息子に対して、日本の国税は「お前は日本の居住者・納税義務者であるから税金を払え」と訴えた事件。
これは最高裁では武富士の勝利となりましたが、すくなくとも国税は「居住者とみなした」という事実。裁判の第二審では「国税が勝った」ということも忘れてはならないと思います。
海外を定住せずにプラプラしていれば大丈夫だよ、なんていうのは「申告しなくてもわかりはしないさ」というレベルと同じで、まともな人間が考えることではないと私は思います。
ただ私はそういう生活そのものを否定しているのではなくて、「だから日本に納税しなくてよいのだ」という考え方は違うんじゃないかという意味でしかありません。
ちょっと国税局にでも電話をかけて「観光ビザで海外を転々としているのですが、日本に納税義務はありますか?」と聞いてみたら良いと思います。(税務署だとわからないかもしれない)