今月に入ってから銀行の定期の金利が上がってますね。あのいつも金利が安いHSBCも5年ものは4.15%だとペナンのリカさんに教えてもらいました。
この金利上昇を喜ぶ人が多い。ま、それはそうだろうと思います。他に利益を出す手立てが無ければ尚更でしょう。
でも私は逆のことを考えています。
なぜ定期の金利が上がるのか?
これは銀行にお金が足りないから金利を上げてお金を集めようとしているわけですよね。
ではなぜお金が足りないのか。景気が良くて投資も活発でもっと資金が欲しいのか?
私は逆だと思っているんですよ。
今、中国がどういう状況にあるかをきっちり把握するのは難しくて、そもそも統計数字は常に操作されていると言われているわけで、実態はそこから見えてこない。
ただ中国の金不足は半端ではなくて、今まで海外に出て企業を買いまくっていたのが「売りに転じた」「選択と集中に舵を切った」のはあちこちから聞こえてきます。また国有企業や優良企業ではない、一般の企業が資金調達をするのはシャードーバンキングだとかP2P金融だと言われていますが、これの破綻が増えているのもニュースとして入ってきてますよね。企業の倒産も半端じゃない状態。大手の債務不履行も増えている。
当然、中国とずっぽりだったマレーシアから中国マネーは引き上げているはずで、マレーシアの市中にはお金が足りない状態が出てきているんじゃないですかね。
だからどうにかお金を集めて注入しないとならない。発展のためではなくて存続のために企業が高い金利でもお金を必要としているというのが私の見立てです。だから当然、銀行の定期金利も上がる。
では政府の政策金利はどうなっているのか?
2019年3月5日のニュースに「マレーシア中銀、政策金利を3.25%に据え置き 予想通り」とロイターの記事があった。(ここ)
もし据え置きじゃないとしたら、政策金利を上げるのか下げるのか、どちらの方向に政府は動いているんでしょうか。
世の中の景気も良くて投資も活発でインフレ懸念が高まれば「政策金利を上げる」のでしょう。でも景気の先行きに不安があれば「金融緩和をして金利を下げる」。
さてマレーシアはどちら?
ロイターの記事を見てみると、こういう記述があります。
エコノミストらは、マレーシアの輸出需要は底堅いものの、米中貿易戦争が引き続きマレーシア経済成長の重しとなる得る主因だと指摘。キャピタル・エコノミクスは、マレーシアが弱い物価圧力と低調な成長見通しに直面する中、中銀が第3・四半期に利下げする必要が出てくる可能性があるとの見方を示した。
つまり、マレーシアの中央銀行は「先行き不安」を想定しているってこと。でも今の時点では「金利は下げないこと(据え置き)を決めた」ということ。
将来に不安があるのに金利を上げる馬鹿はいない。
でも銀行の定期金利は上がっている。
なぜ?
多くの企業が資金ショートになる傾向が強まったってことじゃないんですかね。だから金利が高くてもお金を集めないとならない。
中国がまさにそれで、市中の超短期金利は10%超えていると言われている。でも表向きはそんな金利じゃないんですね。中国が発表する銀行の金利ってそれは政府によってコントロールされていて、誰でもその低金利でお金が借りられるわけじゃない。だから一般企業は自由市場からお金を集めるしかなくて、その金利は瀑上げしている。倒産、債務不履行が急増中。
さてマレーシアは?
世界が将来の不安を抱え混沌としている時に、アメリカはすでに金利は上げないことを決めたし、下げることもありうるようなニュアンスの報道がされている。そしてマレーシアも「中銀が第3・四半期に利下げする必要が出てくる可能性がある」と言われている。
それなのになぜ銀行の定期金利は上がるのか?
これって資金ショートに陥ってる企業、そうなりつつある企業が増えているからだと私は判断します。
つまり中国とどっぷりだったマレーシアに、どこよりも早く「中国の影響が出ている」んじゃないかと。
ということで、私は「マレーシアリンギットの資産は減らす」ことを決めました。
今までもマレーシアリンギットは必要最低限しか持たないとか、リンギットを持つにはデメリットが有るとか書いてきましたが、それでもそれなりのキャッシュはあるわけです。
それを減らす方向で行く決断をしました。
世界が混沌とした状態になるであろうという読みが基本にあるわけですが、発展途上国って「世界が好景気に沸いている時」にしか伸びないというのが私の持論。為替もそうで、世界が不安定になると外資は外へ逃げて為替も落ちる。当然、国内は資金ショートして景気は悪くなる。そして世界はリスクオフとなって円高になる。
中国は問題を抱え、EUもかなりの落ち込みが予想され、そして日本は増税で景気は間違いなく減退するだろうと私は考えているわけですが、そういう世界の動きが一番早く、そして強く出るのが発展途上国。
マレーシアを見切るにはまだ早過ぎると思いますが、マレーシアリンギット建ての資産は極力減らす方向で動こうと思います。
でももしリンギットが政府によって管理されておらず、世界市場で普通に流通する通貨ならそんなことをしないで済むんですね。つまり、もしそうなら間違いなくリンギットのFXや先物が存在しますから、「リンギットが下がると思えばそれでヘッジをすれば良い」だけなのね。本体を動かす必要なんか全く無いわけですよ。
本体もキャッシュだけじゃなくて不動産とか動かせない資産(定期や債券もそうかもしれない)があった場合、その資産を売るとか解約しなければ「他の通貨に乗り換えは不可能」ですよね。でもFXや先物があれば、「リンギットが下がると読めば、リンギットをショート(空売り)すれば良いだけ」となる。
通貨の乗り換えって交換手数料が高いから簡単じゃないんですね。ましてやリンギットは主要通貨じゃないから不利ですし、FXも先物も無いって本当に困る。
前の日記に「MYR/USD」の上昇トレンドは終わったと書きましたが、また上昇トレンドに戻りつつあるように見えます。
これをチャンスと私は見ることにして、リンギットを減らす方向に行くつもり。
ちなみに「MYR/JPY」、日本円に対しては下げトレンドに入ったと読みます。つまり「円高方向へ動いている」ということ。ただし、私が「MYR/JPY」に関してブログでもほとんど言及しないのは、私が円資産も収入もないこともあるものの、リンギットって大きな目で見ると円に関しては安定しているんですね。
リンギットって「複数通貨バスケット方式による変動相場制」でどの通貨をどういう割合で組み込んでいるのかわかりませんが、対日本円では大きく動かないんですね。長期で見ると大きな変動があるのは当たり前ですが、私はあまり気にならないのです。これには明確な理由があるわけでもなくて、単に気にならないだけの話。
やっぱり日本円を持っていないことと、リンギットを減らすにしてもそれは米ドルに替えるのであって日本円には替えませんから、興味が薄いのは当たり前かもです。
「USD/JPY」、ドル円に関しては今は円高トレンドに入っていると見ています。
さてこれが今後どうなるんでしょうね。私は「未来は神の領域」と思っていますから、一生懸命読もうとは思いませんが、上にも書いたように、世界の不安材料は盛りだくさんで、ましてや米中貿易戦争は貿易戦争ではなくて「新冷戦時代に突入」したと読んでいますからそれの動きによって世界経済は波乱含みになるのは間違いがないだろうと思っています。そしてその時には円高に動く。
ですからもし私が円資産を多く持っていたとして、そして最近のマレーシアの銀行金利が高いからといって、予定以上の日本円をリンギットに替えて定期にしようとは全く思わないってこと。金利で稼いでも「為替でやられる可能性大」だと思うから。
じゃぁ、日本円を後生大事に持っていてどうする?ってのがありますよね。日本円を多く持っていても利益を生みませんから。
でもやっぱりインフレかデフレかってのを意識するべきであって、そして為替を無視してはならないと思うわけです。
頭の体操として、「自分の資産全てをリンギット建てで計算してみる」とか「米ドル」でもやってみたら面白いんじゃないですかね。そしてその推移を見てみる。これをやると、「とにかく金利が大事」という思い込みは消えていくはず。どんな時にはどんな通貨を持っていたら良かったのか、過去の数字と過去の世界の動きを思い出して見比べてみたら良いんじゃないでしょうか。
少なくとも「常に日本円で考える」というのは百害あって一利なしと私は思います。
日本国内では日本円しか流通していませんが、もしも日本国内で「普通に」米ドルや豪ドル、マレーシアリンギットが流通しているとしたら、一体どの通貨を持ちます?配分するとしたらどんな割合?
そんな頭の体操って無駄にはならないと思います。私達は海外にいるわけで、通貨は何を選んでも良い状態にあるし、日本円を主体に考えなければならない理由はないでしょ?あるいはいつか日本に帰って日本円が必要になるときが必ず来るにしても、ではそれまでどの通貨を持つのが良いんですかね。
マレーシアに住んでいるからマレーシアリンギットってのもわかりますが、もし通貨危機が来たり、とんでもないインフレになったり、あるいは今のマレーシア中央銀行が考えているように「将来の利下げ」があったり、不況に突入すれば金利はもっと下がるわけで、新興国の為替は全面安なんて時代も来るかもしれない。そんな時にはどうするのかシミュレーションをするのも良いんじゃないでしょうか。
でもいつも書いていますが、「諦める」という選択は決して駄目だとは思わないんですよ。逆にやる気を出してわけわからないことに手を出せば、元も子もなくなるというのが古今東西、世の決まり。
それと「定期は作るけれど、債券投資はしたことがない」方も債券をちょっと調べてみると良いと思うんです。社債ですね。
利回りが良いものって結構あるんです。それこそ10%以上に回るものがいくらでもある。でもそれって「ジャンク債」と呼ばれる危険な債券で、「破綻するリスク」があるから金利も高くなるんですね。そうじゃないとリスクと合わず買い手はつきませんから。ソフトバンクの米ドル建ての6.5%という債券を前に紹介しましたが、この%を聞いて、ソフトバンクって太っ腹だねぇなんて思っちゃ駄目なのね。そもそも債券は自由に売買されて値は市場参加者が決める。つまり最終利回りはソフトバンクじゃなくて市場参加者が決めているということ。「この会社って危ない」と市場参加者が考えるから債券の値も上がらないわけで、結果的に利回りが良くなるってことでしかないのね。
債券を見ていると「利回りが良いからと単純に喜べない」のがすぐにわかります。また債券を買う時に必ず信用度(格付け)のチェックをしますよね。でも私達が絶対に忘れてはならないことは、リーマンショック時のリーマンブラザーズの格付けはどうであったかです。
あれは例外であるという考え方もあると思いますが、我々一般も企業も「まさかの出来事で破綻する」という事実を忘れてはならないと思っています。つまり「想定外のこと」が起きるから破綻するのであって、駄目な企業だから破綻するわけじゃない。中小企業も同じで、順風満帆でやっていたのにある日ある時「まさか」が起きるのね。個人も同じでしょう。
外貨投資もなかなか難しいものがあって、インフレ率も高くお金がいくらあっても足りなければ利回りの良い金融商品を出さざるを得ないわけですが、好景気に沸いているなら世界からお金が集まりますが、借金苦でお金が足りない国もあるじゃないですか。だからお金をガンガン刷るのと同時に借金もする。これじゃお金の価値がなくなってどうしたって「為替は安くなる」。
そういう国の金融商品の利回りが良くても、ちょっと前のギリシャもそうですが「破綻」したり「返済不能」に陥ったら元も子もないわけです。そして破綻しなくても為替はどんどん安くなる。ギリシャは逆にユーロ圏に入っているから「為替を安くすることが出来ない」んですね。だから自力再生ができない。これと同じことが他国でも起きてくる可能性は言われていて、ブレグジットも含めてEUのあり方が見直される時期に来ているはず。
世界が好景気に沸いているときなら高金利の金融商品に乗るのも一つの手ですが、景気が下降局面にある時には「お金がない。このままじゃ潰れる」という企業の焦りがそこにあると想像しないとならないんですね。
マレーシアの銀行も債券を発行していますが、それを調べてみるのも大事だと思います。
定期金利に関しては他銀行と比べて高いとか低いとか考えますが、その銀行の債券の利回りとその銀行の定期の利回りと比べることが大事です。信用がない銀行は債券を発行しても高い利回りを設定しないと買い手がつきません。でも定期だと他行よりほんのちょっと利率を高くすれば顧客は「ラッキ~~」なんて考えて定期を作る。
どちらにしても破綻リスクが高かったり資金ショートが問題になりそうな銀行や企業は資金集めに苦労しますから、債券も定期も利回りは良いはずなんですね。そうしないとお金が集まらない。
破綻というのは極論ですが、私はこれから世界は混沌とし長期低迷の時代に入ると読んでいますので、世界の新興国への投資は自ずと減ってくると思っています。当然、為替は下がる。そして金利も下がる。金利が高いのは焦って金集めをするところだけかもです。
「破綻なんかしないだろう」と自信があるのなら利回りがメチャ高いジャンク債を選ぶのも良いし、預金者保護の制度もありますから危ない銀行の定期を気にすることもないのかもしれません。ちなみに預金者保護、つまり預金保険機構はPIDMと呼ばれ上限は25万リンギット。(PIDMはここをクリック)
そして何度もしつこく書きますが、世界が動けば為替変動も大きいのをお忘れなきよう。
ただし、世界は不況に突入するはずだと「決めて」対策を立てるのはやっぱり駄目で、不況に突入しても大丈夫な状態を維持するべきと私は考えているだけです。
今回の私の「リンギットを減らす」ことにしても、FXや先物があるのならそんなことまでしないで良いわけで、「大きな変動に対処できない通貨を減らしたほうが良いだろう」と考えているだけ。