マレーシアの新たな「長期滞在ビザ【Malaysia Premium Visa Programme (PVIP)】」に関して

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今まで人気の的であった「MM2H(Malaysia Second Home)ビザ」が大きく変更されて、新規での所得が難しくなったわけですが、マレーシアはその【上位】に当たる新たな長期滞在ビザ【Malaysia Premium Visa Programme (PVIP)】を設定し、2022年10月1日から申請受付を始めると発表。

Malay Mail

PUTRAJAYA, Sept 1 — The Home Ministry has launched the new M…

【Malaysia Premium Visa Programme (PVIP)】

◯ 有効期間: 20年 (更新に関しての記述は見つからず)
◯ 年齢制限: 無し
◯ 帯同可能者: 配偶者、子供、両親、義理の両親、家政婦
◯ 仕事の許可: 合法的な事業活動を行ったり、働いたりすることも許可 (これに関しては「The Edgd Markets」を参照)
◯ 就学の許可: 就学可能

ここまでを見ると良さそうに思えますよね。

ところが、問題は「お金」に関するところ。

◯ 申請費用: 20万リンギ(約600万円)。帯同者は一人それぞれ10万リンギ。もし家族6人でこのビザを取ってマレーシアに住むには20万ドルプラス10万掛ける5の70万リンギ(約2100万円)が必要。
◯ 必要な収入: オフショア収入が月額4万リンギ、年額48万リンギ(約1440万円)
◯ 必要な定期預金: 最低100万リンギットの定期預金(約3000万円)(一年後は不動産購入、健康、教育のために50%は引き出し可能)

MM2Hとの大きな違いは、【就労可能】という点だと思います。いわゆる「MM2Hは退職者向け」で、この「PVIPはビジネスマン向け」ということなんでしょう。でも申請に必要な所得や(人質の)定期預金の大きさ。申請料の高さは異常に思えます。

MM2Hの改変によって、一般人には手が届かなくなりましたが、新たなPVIPに関してはそこそこのビジネスをしている人たちにはどうにかなる条件だと思います。

ただ、ビジネスをマレーシアで展開するにしても、このビザを取得する必要があるのかどうかは疑問。

でも「母国に居たくない事情がある人達」には【長期の滞在が可能なビザ】は魅力的なはず。

MM2H(改)にしてもこのPVIPにしても「香港を含む中国人をターゲットとして見ている」のは間違いがないようですね。香港や中国に住む富裕層は今までもアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア等に【逃げ出す(?)】動きがはっきりありましたが、彼らの多くは何十億円、何百億円もの資産がある人達で、マレーシアは「その次のレベルの富裕層」を狙っているのだと思います。

ただやっぱりこの新たなPVIPにも大きな問題があって、有効期間は20年と長く、就労可能だとしても【決して永住権ではない】という点。MM2Hビザは、私は「長期観光ビザ」だと思っているのですが、PVIPは「長期就労(投資)ビザ」でしかなくて、やっぱりマレーシアはビザの保有者を守ろうという気は全くないし、絶対に【居座ることは認めない】、そして【金づるとしてしか見ていない】のがはっきりわかります。ここがアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアとの大きな違い。

でも長期にわたってマレーシアに渡ってくる外国人も、そもそもいわゆる「永住や移住」を考えている人は少ないのははっきりしていて、「腰掛け」でしかないのは明白。マレーシア人でさえも、他のアジア諸国と同じ様に、【裕福になったら先進国へ永住権を取って家族もろとも移住する】傾向があるのは歴史的なものでもあって、逆に裕福な外国人がマレーシアに家族で渡ってきて、そこで生活の基礎を作り、働き、収入も得て、子供を育て、【いつかマレーシアの土になる】つもりの外国人が多いとは思えない。

ここがアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなどへ渡る移住(永住)者との大きな違いだけれど、そんなことはマレーシア政府もよーくわかっていて、まさに【金銭的な、それも目先のギブアンドテイク】だけを重視しているのでしょう。

特に、中国の将来や各国との関係を見ていますと、先進国への移住(永住権を取る)するのは今後益々難しくなるでしょうし、「中国(香港含む)脱出」を考えた場合、それの受け皿としてのマレーシアの意味はあるはず。これはお隣のタイも同じで、時期を同じくして「新たな長期滞在ビザ」の発表をした。2022年9月1日から受付開始。(Bloombergを参照)

マレーシアは多民族国家と言われるけれど、決して「移民大国ではない」のであって、【新たな国民、準国民として外国人を受け入れる気は全く無い】のがわかりますね。

また「更新が間違いなく出来る」とするなら、「そのビザで永住が出来る」と考える人がいるのは間違いがなくて、マレーシアでも過去に「MM2Hで永住できる、出来ない」という論争があったのは私も覚えています(私はMM2Hビザで永住は不可能派)。そして多くの人が「マレーシアに骨を埋めることを選んだ(私の両親も同じ)」。

ところがMM2Hの改変がある時に多くの人は「現実を見た」わけで、マレーシアは決して移住者に優しい移民国家ではないのがはっきりしましたよね。運良く、すでにMM2Hビザを持っている人たちの更新はほぼ問題なく可能ということで決着は付きましたが、「それをマレーシアはいつでも変更できる」ことに気がついた。

だから「超長期で海外に住むのなら【永住権は絶対に必要】」だと私は何度も何度もこのブログに書いてきたわけで、多分、夫婦であるなら、そしてもう年寄りであるのならば、【自分たちの時代はどうにかなる】にしても、子供たちは成年すれば「彼らは自分で滞在ビザを取らなくてはならない」し、MM2Hは更新できない。そんな時に子供たちはどうすれば良いんですかね。

他の国へ行くか、母国へ帰るしか無いわけで、【世の中は好きなように住む国を選べるようにはなっていない】現実の大きな壁にいつの日か必ずぶつかる。その時はその時、子供たちが自分で考えれば良いという親もいるのでしょうが、「子供は生まれ育った国、地域を故郷と慕うようになる」のが普通。でもその国から「ある日、ある時、出て行けと命令される」わけです。

これって私達みたいに、日本生まれで日本で育ち、日本を故郷だと思っているのに、【日本から出て行け】と言われるのと同じだということ。

海外移住~~♫と有頂天になる人、やっと夢が叶ったと言う人は多いけれど、子供たちはどうなるのか。

でも永住権があれば、「出て行け」と言われることはなくて、就業の自由もあれば様々な社会福祉を受けることが出来る。だからもし子供が「この国でこのまま生きていたい」と望む可能性があるとするなら、それが可能なように永住権を取るのは「親の義務」だと私は思っているわけです。あるいは、子供たちが「この国に住み続けたいと思わないように育てる」必要があるけれど、そんなことが出来ますかね。お前たちは「国際人」なのだからマレーシアにこだわらず世界へ羽ばたけという?今の時代でも国際人という言葉に憧れを感じる人は少なくないけれど、私は国際人なんていうカテゴリーは無いし、国際人に憧れるのは「ネイティブの英語に憧れるのと同じ」で、そして実態は「国際人=根無し草」だと思っています。

でも「いつか日本に帰る」とか「他の国へまた移る」計画を持っている人には関係ない話で、そういう人たちにとってはMM2Hや今回のPVIPでも全く問題はないんでしょう。そもそも「腰掛け」「長期滞在」でしか無いのですから。

今、激動の中国もそういうニーズが高まっている状態じゃないかと思っています。

「とりあえず、すぐにでも中国を出たい」場合、外国で長期滞在するのに観光ビザってわけにも行かないし、就労ビザも簡単には降りないし、制約も殆どなく長期滞在ができるかどうかわからないとすれば、【とりあえずマレーシアのMM2HでもPVIPでも取っておこう】と考える人達はかなりの数、存在するんじゃないですかね。とりあえずそのビザがあれば、マレーシアで10年以上は住めるわけですし、中国にも「行ってきま~す」と言って大手を振って海外に出られる。そしてマレーシアに来てしまえば、後は自由で好きな時に好きな国へ行けるし、本来、行きたい国の永住権、市民権を将来的に取る道が開ける。

まずはとりあえずマレーシアに腰を落ち着けてから、次に行くべき本命の国探しを始めるんじゃないですかね。そうじゃないと、自分たちは問題がなくても、子供や子孫のことを考えると「マレーシアに住み続けることは出来ない」のははっきりしているわけですから。

かつて歴史的に、多くの中国人がアジアへ流れ、そしてハワイ、アメリカ西海岸と広がり【華僑文化・経済圏を作った】歴史があって、今現在マレーシアに多くの中国人がいるのもその流れ。

マレーシアは、中国に再びその動きが起きているのをしっかり見ているんでしょうね。新たなPVIPプログラムの参加者は【初年度に少なくとも1000人の参加者を目標としている】とのこと(MM2H含む)。「(年間の)国の推定収入は RM2 億で、定額貯蓄は RM10 億です」とさ。

それだけの人たちが毎年入ってきたら、再び大きな開発プロジェクトにも火が付くだろうし、売れ残った大量のコンドミニアムもどうにかさばけると読んでいるんでしょう。

獲らぬ狸の皮算用のような気がしないでもありませんが、私は今の中国を含む世界情勢を見ていると、「マレーシアが何もしない方がおかしい」と思うし、それなりの実績は作るんじゃないかと思っています。

世界広しと言えども、

◯ 制約が殆どなく長期滞在が出来る
◯ VISAの取得が比較的簡単
◯ VISAの維持に制約が殆どない
◯ 税法上の優遇制度がある
◯ 英語が問題なく通じる
◯ 投資家、起業家にも妙味がある
◯ 子育て、教育でもアドバンテージがある
◯ 民主主義で自由や人権は大事にされる
◯ 物価も安く安定している

こういう国ってありそうでないのね。もちろん地球の裏側とか、南海の孤島、言語はローカルな言語、経済的にも面白くない国では「あの手この手を使って金持ちを呼び寄せようとしている」のは間違いがないものの、マレーシアやタイほど条件が整っている国は私は他に知りません。

思い起こせば、MM2Hに変更を加えるという話が出てきた時点で、マレーシアは「中国の動きをつかんでいた」のではないかと思ったし、それが理由かもしれないとこのブログにも書きましたが、あの時点で、「中国からの申請が押し寄せていた」のかもしれませんね。

で、金もなく銅色の卵を産むガチョウはもういらない、金色の卵を生むガチョウを呼び寄せようと動いた、ってことなんでしょう。

しかしそういう意味で、マレーシアもタイも「機を見るに敏」ですよね。大したもんだ。

日本では岸田さんが「留学生を30万人に増やす」と言って大騒ぎ。留学生の多くは中国人でしょうし、彼らは金色の卵は【国に帰ってから産む】のでしょうし、日本に留学中は日本政府から多額の補助金が出る。日本人子弟は「返済義務がある奨学金」で苦しんでいるのに。

日本にもマレーシアの「したたかさ」があればなぁといつも思う私。

マレーシアって「開かれた国」の様に見えるけれど、私は全く逆だと思っています。外国人には非常に冷たい国。でも金儲けをさせてくれる外国人には門戸を開く。でも絶対に「期限付き」で居座ることはさせないし、「金の切れ目は縁の切れ目」で簡単に追い出される。

開かれた国かどうかは、この2つの事柄だけでもわかると私は思っています。

◯ 永住権を取ることの難易度
◯ 「お宅の娘さんと結婚したい」と外国人から言われたときの親の反応 (笑)

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