Cという自動車メーカーが日本にありました。評判が良く世界中で売れています。
この会社は独自で輸出もしますが、アジアオセアニア地区に関してはそこの注文をまとめて取り仕切る販売子会社をタックスヘイブンに設立しました。コントロールは日本の本社でしていました。C社の輸出は輸入国へ直接輸出されますが、注文は子会社が取ったことにして、注文書はその子会社を通していました。いわゆる三国間貿易です。そして儲けの大きな部分がその子会社に落とされていたのです。
その子会社が存在する地はタックスヘイブンで、利益には課税されません。
こういうことを大手の会社が平気でやっていた時代があったんですね。1社で何十、何百億という所得をそのタックスヘイブンにある子会社に割り振っていました。商社からメーカー、銀行、生命保険、ありとあらゆる業種の大会社がタックスヘイブンに子会社を持って、利益を分散させていた時代があった。今ではそのような子会社も本社と連結決算しなくてはならなくなり、この脱税まがいの節税策は昭和53年租税特別措置法により封じ込められました。
村上ファンドがシンガポールを拠点にしてる?かつてヤオハンが香港に本社を移した?
かつてホンダの本田宗一郎氏が言った言葉を思い出します。これ以上法人税を上げるのならば、ホンダは本社を海外に出すと。この一言は大きな衝撃を世の中に与えました。今のトヨタは年間一兆円を稼ぐ会社になりましたが、こういう会社が海外に移ったらどうなるんでしょうね。歳入不足があるのに、法人税の減税をしなくてはならない国も可哀想です。
でも大丈夫なんですね。文句も言わないサラリーマンからがっぽり取れるし、消費税が上がるのはしょうがないと国民に思わせることに成功してますから。
しかし、こりゃたまったもんじゃないと個人も防衛策に出ます。
Aさんが全額出資で投資会社を設立しました。代表取締役はAさんで、株主もAさんだというのが謄本からわかります。
この会社が投資をしました。債券の購入。株式への投資が主体です。
その会社に利益が出るので、当然税金を払います。ところが、この会社の所在地はシンガポールで、これらの収入に対してはまったく税金を払わないでいいことがわかりました。
株主であるAさんの資産評価額は増えていきます。
ところがAさんはその会社から給与も配当も受け取っていません。
さて、Aさんは税金を払う必要があるのでしょうか。
これも残念ながら課税されることになっています。日本の居住者も内国法人も扱いは一緒。
次にBさんが自分の資金を投入して会社を設立しました。株主はBさんのみ。全額出資です。
ところが、その会社の謄本を見ると、株主がアメリカの銀行になっていて、代表取締役も全く関係ない見ず知らずの人。Bさんとの関係は全く見えません。
では、アメリカのその銀行とBさんはどういう繋がりがあるのか。それを調べても何もわかりません。そしてBさんとその銀行の間になんの契約書もなければ、お金をやりとりした形跡も無い。
その会社が儲けて大きくなっていったときに、Bさんは税金を払う必要があるのでしょうか。
当然これもAさんと同じ事ですから、納税義務があるわけです。ところが、Bさんとその会社との関係は見えませんし、その会社が存在する国では法律で守秘義務が課されており、どの国の国税局が調査しようとしても、その会社の内容を見ることが出来ません。
これを使って、節税したと喜んでる人がいますが、これは節税ではなくて脱税です。バレなければいいんですが、安心して眠れるのでしょうか。
Cさんが困っていると、Dさん、Eさんが、俺もだよと言い出しました。
では3人で一つの会社を作ろうという話になりました。持ち株は33%ずつ。タックスヘイブン対策税制では子会社の株式の50%以上保有というのが一つの目安になっています。つまりこの場合、その会社はCさん、Dさん、Eさんの子会社には当たらないわけです。社内的には事業部制にして、C,D,Eの活動がはっきりわかるようにしておけば何の問題がありません。3つの会社が便宜上一つになったのと同じ事です。
つまり、この場合、この会社の利益を子会社としてC、D、Eは連結で合算する必要が無くなると言うことになります。
これで、大丈夫でしょうか?こんなことで国税局がOKすると思います?
まぁその他、みなさん様々な手法を頭をひねって考えているのだろうと思いますが、私はやっぱりそういうことをやるのは異常だと考えるようになりましたわ。グレーゾーンは確かに存在して利用のしかたによってはそれで節税できるのかもしれませんが、そこまでしてお金が欲しい?と自問自答したときに、答えはノーです。そんなことに頭を使うなら、稼ぐ方を頑張った方が良いと思います。
今でも大手の会社、あるいは資産家の個人がいろいろやっていると思います。その道専門の公認会計士もいっぱいいます。かつてその手のことを日本で大っぴらにやっていたあの有名な銀行がこのようなことも含めて大問題となり、日本でのプライベートバンキング部門を閉鎖しましたね。
私も実は18年前にその銀行のプライベートバンキングの顧客でした。いや、顧客というのは違います。結局彼らの示した計画には乗らず、何もしませんでしたから。バリバリの公認会計士が直接出てきて、絶対に大丈夫ですと言い切ったあの自信には当時びっくりしましたっけ。
まぁ世の中の勉強という意味では面白かったです。
あの銀行にそういう部門があるということは、他の銀行にもあるだろうと思っていろいろ調べました。取引の長い都市銀行の支店長に聞きましたが、うちにはそういうのは無いですねぇと言う返事。
ところがですね。どこでどういう情報を仕入れたかわかりませんが、向こうから私にアプローチしてきたんですよ。今じゃ合併して3つの銀行の名前が付いている大手銀行のある一部門でした。
彼らが一番最初に私に聞いたことは、日本を出て移住するのですね?ということです。これを何度も何度も聞かれ、確認していました。で、日本を出るということで彼らは安心したのでしょう。手の内を私に見せてくれましたが、それはそれは凄い物でした。あの外国銀行のプライベートバンキングより至れり尽くせりでしたね。
ある時、彼らは私に誰か紹介してくれませんか?ということも言っておりました。仕事内容が内容ですから、広告宣伝するわけにも行かず、口コミで静かに進める必要があるんですね。で、条件は移住して日本国外へ出る人ということでした。
移住するような知り合いはいませんね、という私の答えに対して、彼らは、では資産家のご友人はいませんでしょうかという質問に変えてきました。相続税対策も任せてくれというんですよ。
その内容は、やっぱり海外に出るのが条件でした。資産家の息子を海外に移住させていろいろやるわけですが、その時はアメリカ、オーストラリアが対象でした。当時アメリカの永住権を取るのが大変だったので、そう簡単にいくのかと思ってこれまた聞き出したのですが、
1 最低でも1億5千万の資金を投入し、現存の会社を買い取る。
2 その会社の選定、そして運営はその銀行の子会社が全て行う。
3 永住権の申請、取得まで銀行の子会社がバックアップする。
3 日本に残した不動産などの資産がある場合、その管理も銀行の子会社が行う。
4 他の財産は第三国のタックスヘイブンに送り、その地でその銀行の子会社が管理運用する。
5 本人はハワイでもどこでも好きなところで遊んでいればOK。
私はその話を聞いて笑い出してしまいました。さすが日本の銀行というべきでしょうか、至れり尽くせり。そしてこんな事も言っていましたわ。
裏金でも何でも任せてください。ちゃんとやりますから。
これですもんね。あの大銀行が裏に回ればこんな事を平気で言うのかと思いました。そして、この一連の事は絶対に秘密にしてください。口外無用。取引のある支店にもこのことは話さないようにしてくれと、これまた何度も念を押されました。
あれから18年も経ってますから私はここで暴露してるわけですが、もしその銀行がそういうことをやっているのが当局の耳に入った場合、かなりうまくないとも言っていました。当局は黙ってみていることはせずに、合法であろうと、違法であろうと、グレーゾーンだろうと取りあえず調査という形で入ってくると言ってました。営業中の支店に大勢で乗り込んできて、シャッターを閉めさせて調査をするそうです。そういうことが実際にあったのかどうかは、私は知りませんが。
私は結局この銀行にいろいろお願いすることはありませんでしたが、ちょっとだけ利用はさせてもらいました。この部署というのは、日本国内在住の日本人相手ではないわけですね。あくまで海外の在住者、あるいは海外に出る予定の人対象です。ということで、その部署の本拠地も日本国内ではなく、海外の支店の中にありました。部署としては国際金融部の中の一部門で、航空会社に飛行機のリースをしたりする部門だそうです。本拠地は海外ですが、国内にも当然彼らと連動して動く部隊があり、実働部隊の子会社もあったわけです。またアメリカ、オーストラリア、そして他の国にもネットワークは張られていたのだろうと想像します。
そういえば、彼らの多くの顧客は華僑だと言っていました。インドネシア、フィリピン辺りの大金持ち華僑は儲けた金を海外に持ち出すというのが常識らしく、その手伝いと運用を主にやっていたそうです。台湾も多いと言ってましたっけ。
その部署は国際金融部にあり、為替に関してはどうも一般的な外為部門と違うらしく、為替交換に関してはその取引自体から利益を出す必要がないと言っていました。ですので、当時為替の交換をすると何円単位で取られるのが普通でしたが、まさに今で言うFXのような何銭単位で交換してくれたのです。これは大いに利用させていただきました。当時オーストラリアドルの売り買いのスプレッドは確か3円以上あるのが普通だったような覚えがあります。でもそれを数銭でやってくれました。
そんなこんなで、私にしてみると有益な情報源でもありますので、離れず着かずお付き合いさせてもらいましたが、その後の銀行の度重なる合併の中で、その部門は縮小していったようです。今では付き合いが全くありません。
海外に出るとわけのわからない大金持ちとかいますね。オーストラリアにもいますが、やっぱり本場はアメリカです。こちらに渡ってる日本人と持っている金の桁が違います。特にハワイあたりには一体この人は何?なんて日本人がうじゃうじゃいますが、その中の多くの人たちはこの手の銀行のサービスを利用しているのかな、なんて思ったりします。
また、つい最近ですが、武富士の贈与。凄かったですねーー。いくらでしたっけ?2000億円近い額でしたよね。あれだけのことをやるのに、そこらのコンサルタントがやるわけがないし、大銀行ががっちりバックアップした上で、組織を総動員して成し遂げたのだろうと想像しています。
それと、その銀行もそうでしたが、だいたいプライベートバンキングというのは、預かり金額の0.25%を取るのが普通ですね。スイスとかリヒテンシュタインの銀行も同じ。最近のシティバンクとかHSBCにあるプライベートバンキングはそういうことはないようですが、私から見ると、昨今流行っているプライベートバンキングは名ばかりで、単なるオフショア口座で、様々な金融商品をお選びください。プロがバックアップします程度にしか見えません。その点、0.25%取るところは内容の濃さと自由度が違うようです。本人の名前が出ないように会社を設立して、日本国内の不動産に投資したり、まぁやりたいことはなんでもやってくれちゃう。
なんていいましょうか。黙っていればわからないなんてのは節税じゃなくて脱税なわけですし、若い頃は多少危ないこともやろうかなんて考えたことも無くはないですが、そろそろ自分の人生のまとめをしないとならない歳になると、こんなことは馬鹿げてるとしか思わなくなります。
やっぱり、正々堂々、稼ぐ物は稼いで、払う物は払う。でも払わないで良いのなら、絶対に払いたくない。www
まぁ、世の中にはいろいろあるねぇ、という与太話でした。