私は男の癖に宝石が好きです。綺麗だし、夢があるし、見ているだけでも飽きません。
日本にいるころ宝石業界に長くいました。二次問屋で百貨店や量販店への卸、オーストラリアに来る直前は販売コンサルタントをやっていました。でも宝石そのもののプロって感じではなくて、宝石をどうやって売るのかの販売戦略が主でした。直接消費者への販売経験はほとんどありません。
まぁ、GIAというアメリカ宝石学会の鑑定士の勉強はしましたが、忙しくなってそれも途中で放り投げましたし、宝石で食うには食ったものの、いわゆる宝石のプロではありません。たまたま商品が宝石であったという感じでしょうか。
そんな当時、仕事で知り合った宝石の鑑定士がいました。今ではダイアには鑑定書、他の石には鑑別書をちゃんとした鑑定士の資格を持った第三者の立場の人・機関が添付するのは常識になりましたが、その基礎を作ったような人(昔は販売者が適当な鑑定書鑑別書をつけるのが普通だった)。
彼と一緒に国内国外を回ることも少なくなくて、いろんなことを教えてもらったのですが、ある日、彼がダイアモンドを歯に埋め込んでいることを聞きました。
びっくりしましたよ~~。
歯にダイアモンドだなんて、歌手でそういうのがいましたが、何で普通のオヤジがそんなことをするのか全く理解の外。それも笑うとピカッとするように埋め込んでいるのではなくて、奥歯に隠し持っているというのです。当然、それがあるのかないのか外からは全くわからない。
彼は、リスク管理のためにそうしているというのです。
宝石を扱っていると、仕入れで世界の変なところへ行くこともあるんですね。タイの北部であったり、コロンビアであったり。そういうところへ行くときには銃を持った警備スタッフが付いたり、みずから銃を持つこともある。ま、それは大げさにしても観光で大都市を回るわけではありませんから、普通じゃ考えられない危険がある。また、大都市だとしても強盗にホールドアップされるなんてこともあるわけです。
さぁ、財布もパスポートも取られたらどうするか?そこが問題。場所によっては駆け込む日本大使館も領事館も、助けを求めるすべが全く無いケースって多々あるわけです。その彼はそういうところへ年に何度も行くような人でしたから様々な経験があるのでしょう。
で、ダイアモンドを隠し持つようになったということ。
世界中、どんな国のどんな都市、どんな辺鄙なところでも必ず質屋があるんですね。そこへ宝石貴金属を持ち込めば必ずキャッシュを手にすることが出来る。それでやっとその日の宿泊なり食事なりにありつけるし、日本領事館があるところまではどうにかたどり着ける。また日本に帰るだけの費用はまかなえる。
で、彼は私にもそうしろって言うんですよ。(笑)
入れ歯でもあるならどうにかできるでしょうが、私は歯だけは健康でしたし、歯にダイアモンドを埋め込むなんてことはできませんでした。でも指輪は持つようにしました。まぁ、指輪って目立ちますから強盗にでもあえばそれも盗られるだろうとは思いますが、何もないよりいいだろうという考え方です。
結婚指輪よりちょっと大きな感じですが、ダイアモンドでっせ~~~みたいな感じではなく、というかできるだけ目立たないようにした1キャラオーバーのG VVS1程度の品質のもの。
これがあれば大体どこで叩き売っても30万以上にはなりますので、身包みはがされてもどうにかなるだろうと思っています。いまではこれなくして海外出ると、なんだかパンツをはいていないような不安感があります。(笑)
普通、宝石貴金属をこういう理由のために保有するなんて一般的な日本人には考えられないことだと思いますが、海外に出るとそういうことも考える必要があると思います。マレーシアを基点として、アジアを旅して回る人も多いですが、万が一の場合はどうするのか、そういうことも考えているのか聞いてみたいと思うことがあります。
海外、特にアジアでは万が一のために宝石貴金属を持つ人は多いのは誰でも知っていることですが、やはりそれにはそれなりの理由があるわけで、自分もそういう世界に入ったのならそれなりのことを考えるのは良いことだと思います。
日本国内でも一般の顧客に仕事を離れて販売することはしていましたが、中には三国人もいまして、やっぱり彼らは普通の日本人とは違う考え方を持っているのがわかりました。不法滞在しているわけではありませんが、万が一ってことを考えているんですね。もちろん過去に嫌な思いをした経験を持つ人が多いこともあるのでしょうが、宝石貴金属をごっそり溜め込むほど保有している三国人も過去に何度かあったことがあります。
お金も持って逃げるには大きすぎるし、今すぐ逃げる場合には銀行に行ってなんてこともできませんし、不動産を引っ剥がして持って逃げるのも不可能。そして金(ゴールド)は重すぎるんですね。だから宝石。
あああ、私の自宅の斜め前の家にイラン人が住んでいるのですが、かつてイランの動乱があったときに国外に逃げた人たちです。宝石だけ持って逃げたと言っていました。あのパーレビ国王でしたっけ?彼もそうらしいですね。自家用飛行機で逃げたときに何百億円の宝石貴金属だけ持っていったと嘘か本当か知りませんがそんな話を聞きました。
ま、世界って広くていろんな人がいていろんな事が起きる。でもそんなことは平和の中で過ごしてきた日本人には考えられないことばかりかもしれません。まして日本の歴史の中で先祖もそんな経験をしたことがありませんから想像さえしないのでしょう。
でもアジアに出て周りの人たちの話を聞くとびっくりすることがありませんか?特に華僑の人たち。彼らが考えるリスクコントロールは、これからアジアに向かおうとする我々にも参考になると思います。
まず、資産を国外の安全な場所に移すんですね。当然、通貨は世界の基幹通貨。
この辺を考えるとハッとしませんか?
ほぼ全財産をアジアの小国に持ち込もうとしている日本人は決して少なくないし、通貨は当然その国の通貨。数パーセントの利子の違いに喜ぶ姿って何か違うんじゃないかって思いませんか?
通貨って為替がどう動くとかそういうことでもなくて、安全な通貨っていったいなんなのか、どういうことなのか、そういうことも考える必要があると思うんですよ。
東京から沖縄に引越しするような感覚でアジアの小国に出て行っても大丈夫なのか?
私が古いだけなのか・・・・・