マレーシアに住む日本人が去年と比べて倍増し(倍ですよ、倍)、2万人台に乗ったという話を聞き、それの裏取りをしてみました。
まずデータのソースですが、外務省が毎年10月1日付けで出している統計を利用します。
外務省 海外在留邦人数調査統計 ← クリック
ここには平成9年から平成24年までのデータがありますが、PDFで見やすいようになったのは一昨年から、そしてエクセルでデータを加工できるようになったのは去年から。
PDFで概要が掴めますが、こんな感じ。まずは世界の日本人。
なんだか汚くて見づらいグラフですが(これがオリジナル)、世界の動向はこれで掴めます。
世界の在留邦人数は124万9577人。前年より6万7020人(5.67%)の増加。リーマンショックで一時停滞したようですが、海外に出る日本人はかなりのスピードで増えているのがわかる。
ここでこのデータの基本を考えないとなりませんが、このデータは海外の大使館、領事館に届出が出た在留届の数字だということ。つまり
○ 届出を出さない(変更しない)人はかなりの数存在する。
○ 届出が必要ない三ヶ月未満の滞在は入っていない。
私としてはロングステイヤーの視点からこのデータを見たいのですが、上記の二点を考えただけで、かなりアバウトな数字しか把握できないと思います。また、市民権を得る(国籍を変える)人も長い目で見ると非常に多いわけで、いわゆる日系人と呼ばれる人たちは何百万人というオーダーのはず。
そしてこれから細かい数字を見ていきますが、滞在者は
○ 永住者
○ 長期滞在者
の二つの大きな区分に分かれています。ところが国によって永住権が取りやすい国、難しい国がありますので、ひとつの国の中での数字を見るのなら良いですが、他国との比較はかなり難しいはずです。たとえば、一生その国に住もうと思ったときに、永住権が取れるなら取ってしまうでしょう。でもマレーシアの様に永住件の取得が難しいとなれば、違うビザ、あるいはMM2Hで簡単に長期滞在できるとなればそれを取るのが普通。でもカテゴリーとしては前者なら永住者、後者なら長期滞在者のグループに入ってしまう。
ただ、長期滞在者のグループは細分化されていまして、
○ 民間企業関係者(いわゆる駐在組み)
○ 報道関係者
○ 自由業関係者
○ 留学生・研究者・教師
○ 政府関係職員
○ その他
このそれぞれのカテゴリー別の数字が出ていますので、ロングステイヤーとしては「その他」の数字を見ればよいと思います。
そしてその「その他」と「永住者」の数字を合わせたものが「永住を含めたロングステイヤー」の数字として良いと思います。ただし、繰り返しますが、3ヶ月以内の滞在の場合は基本的に在留届を出しませんし、また多くの国で3ヶ月未満の滞在であるならば観光ビザで滞在できるのが普通ですし、数としては一番多いであろう短期中期のロングステイヤーはそれに該当しますし、今までの観光旅行とは全く形態が違う近年増えだした「ロングステイ」の実態を知ることは不可能だと思います。
ま、それはそれとしてデータを見ていきますが、大きな数字としては
○ 長期滞在者は83万7718人で在留邦人全体の67%である。(33%は永住者)
増加した地域は多い順で
アジア (3万226人増)
北米 (1万8000人増)
西欧 (1万2042人増)
○ 永住者は41万1859人で全体の33%。
増加した地域は多い順で
北米 (6693人増)
大洋州(2761人増)
アジア (955人増)
注目のマレーシアですが、
○ 永住者+長期滞在者数で、増加率トップはマレーシアの96.56%で、二位のインド(28.41%)を大きく引き離している。
○ 都市別ではクアラルンプールが世界ダントツの一位で120.44%の伸び。二位は蘇州の46.52%。
ま、世界の動きはこんな感じで、アジアがどんどん延びているのがわかります。
ただ、何度も書きますが、これは海外在留邦人の合計であって、我々が知りたいロングステイヤーの実態はこれからはわかりません。
国別のデータを見ていきます。
在留邦人数上位20国
マレーシアの順位としてはまだまだですが増加率では異常と言っても良いくらい。
とりあえず全体像を掴んだところで、マレーシアの細かい数字を見てみます。
次の表が一番大事ですのでクリックして拡大して見てください。
比較のために他の国も載せています。また赤枠がマレーシア、そして一番右の青枠がMM2Hを含む長期滞在者。数字の一番左は在留者合計で、その次に永住者、そして長期滞在者、そして長期滞在者の内訳です。
永住者ですが、マレーシアの場合は現地の方と国際結婚をして永住権を手に入れ、国籍は日本のままという方々がほとんどじゃないでしょうか。
ただ、ロングステイヤーであるはずの一番右の「その他」の数字そのものを見てみますと、マレーシアは決して多いと言えるほどじゃないのがわかります。シンガポールと同じような数字。またシンガポールの場合は永住権を取得して渡る日本人も多いので、それを足すとまだまだシンガポールのほうが多いと言えるはず。
ただし、昨今、金持ちがシンガポールへ移住しているという話を良く聞きますが、では移住者の数字はと見るとたいしたことはない。つまりこれはマスコミが騒いでいるだけで現実は全く違うのがわかります。あくまでごく一部の金持ちの現象と考えるべきだと思います。またロングステイ先としてマレーシアと比べられることの多いタイやフィリピンですが、永住者や長期滞在者のその他、つまりロングステイヤー数ではマレーシアより多いのがわかります。
この表は細かく見るとその国々の事情が見えてくるようで非常に面白いと思います。
これで現状が見えてきますが、では過去のデータと比べるとどうか。ここが一番面白そうなところですが、過去データはこのデータの様にエクセルで提供されているわけではないので比較はちょっと面倒です。
とりあえず、簡単にマレーシアの数値だけ出してみますが、
平成24年 平成25年
合計数 10401人 20444人
永住者 1276人 1594人
長期滞在者 9125人 18850人
企業関係 7065人 14609人
その他 1407人 2869人
これを見てはっきりしますね。企業関係者が倍増しています。1年間で7500人以上増えている。その他、つまりMM2Hが含まれる人たちも倍増。1400人増えている。ただ、企業関係者の増え数が全体の80%以上であるということ。決してロングステイヤーが爆発的に増えたからマレーシアの在留邦人が増えたということではない。これはこれでひとつの結論だと思います。
またもっと前、平成18年度の「その他」の人数はマレーシア全土で992人です。その数字から見るとMM2Hだロングステイだと大騒ぎしている割には増えていません。これは、マレーシアに限らず、ロングステイの特徴である3年ー5年で一区切りつけて帰る人たちが多いと読むことができるのかもしれません。でもその動きもこの一年でガラリと変わったわけで、平成25年が真のマレーシアロングステイの幕開けなのかもしれませんね。
この企業関係者とはまさに駐在組みのはずですが、この1年の増え方はすごいですね。中国からマレーシアへの避難、あるいはマレーシアへの新規進出が増えているのでしょうか。この辺も日系企業の数の推移が外務省のデータにありますから、何か読める流れもあるのでしょうが、ご興味のある方は調べてみたら面白いと思います。
また、私として気になるのは、永住者と長期滞在者の中のその他の合計の、それぞれの国の変化です。つまり増減ですが、その増え方の数字が大きい国が一番人気であるはずで、そのランキングを知りたいと思います。多分これはロングステイヤーの一番人気はマレーシアであるというラインキングとは全く違うはずです。
アメリカを含む北米は常にダントツで、上に数字を出したようにこの1年で永住権を取って渡った人だけでも6693人。これはマレーシアのロングステイヤー総数より、そして今までのMM2H取得者の累計よりも多い。
これが不思議なんですよね。ハワイだ西海岸だと渡る人は半端じゃない数なのに、なぜ今マレーシアが一番ということになっているのか。
一番なのが悪いと言っているんじゃありませんから勘違いをしないでくださいね。
要は、実際に渡る人たちの数とそのランキングがなぜ一致しないのか、それが不思議だと思う。それだけのことです。
ただひとつ間違いがないのはマレーシアへ渡る人は間違いなく増えているということ。そしてそのスピードは他の地域を圧倒している。今の時点で数は決して多くはないですが、マレーシア人気はまだ始まったばかりなのかもしれませんね。
私としてはこの勢いが数年続くだけで凄いことになると思うわけで、非常に楽しみです。
数は需要、購買力でもありますし、日本人相手のビジネスやサービスがどんどん増えるのでしょう。そして質も高くなるのだろうし、逆にわけのわからないサービス、あるいは詐欺も増えてくるのかもしれませんね。それこそカモがあちこちにウヨウヨっていう状態になるかも。これって冗談じゃなくて、日本人は常に世界ではカモの部類ですから、嫌な話も増えるんでしょう。
でも、そうやって日本人も普通の外人になっていくのだろうし、大きな日本人街とか大きな日本人コミュニティが海外にできるのは非常に良いことだと思ってます。数は力。楽しみだ~~~~。
ビジネスを考えてみると、日本人相手の店はまだまだ行けるのでしょうか。飲食店はかなり多いですが、(本物の)日本的な店の需要って増えるような気がします。居酒屋、小料理屋もなーんちゃってじゃない店が増えたら楽しいですね。特に海外のどの都市でも「まともな和食屋」は駐在組の数に支えられている現状ですし(だから駐在組みが非常に少ないゴールドコーストはどうにもならず)、客の視点からはうれしい動きだと思います。
また駐在組みが倍増したという動きは日本人だけではないでしょうし、Expatsと呼ばれる人たちの市場は大きく動くはず。不動産の賃貸は面白いかも。そういう意味で、マレーシアの不動産市場にITを利用して新風を吹き込みたいという意気込みの「ナカノプロパティ」さん(ここをクリック)も益々忙しくなるかもね。
不動産を購入して投資対象とする場合、私だったら自分が欲しいと思う物件じゃなくて、賃貸に出しやすい物件を選ぶべきだと思うのだけれど、家賃でRM5000ぐらいまでのところはまだまだ伸びそう。
この家賃がRM5000ということは年間でRM6万で、それの利回りが6%だと仮定すると不動産価格はRM100万となるわけで、外人の不動産購入最低価格をRM100万としたマレーシア政府の読みは非常におもしろいと思います。
ではRM100万以上の物件を買うしかないわけですが、それを賃貸に出した場合はどうなるか。私はマレーシアの賃貸市場がわかるわけではありませんが、Expatsの掲示板やフォーラムを見ているとやっぱり月額RM5000を超えると需要は少なくなるようだし、大手企業のトップクラスでも月額RM1万が会社が出せる限度だ、みたいな話があるようです。
でもそれを逆手に取って、利回りは低くても良いと思えば、非常に魅力的な賃貸物件になるはずで、空き室のまま放置なんてことは少なくなるのかな?
でもそれはすでにそういう状態になっていると私は見ているわけで、KLに行ったらちょっと高級物件に住んでみたいと思うのはそれが理由。物件の価格が高いから、賃貸も高いというイコールでは決してない状態が今の時点であると思っています。
あと面白そうだと思うのは教育市場かな。日本人に限らず子供の教育に一生懸命な人は多いし、海外に出ると不安があるから教育にはけちらない傾向があると思ってます。
実は、我が家の子供たちが小さいころ、英才教育の塾に通わせていたことがあります。
英語圏だから放っておいても英語は大丈夫ってことは、実はそうでもないんですね。不思議にオーストラリア人でも読み書きが不得手という不思議な子供がいる。ここに目をつけたオーストラリア人がいまして、勉強とはまずは読み書きという信念を彼は持っていて、かなり小さいころから本をすらすら読む子供を育てる塾を開いていました。
私には彼の理論を良く理解できなかったのですが、英語をローマ字読みするような感じの法則が存在するというのです。で、それを幼少期に覚えちゃうと、知らない言葉でもどんどん読み書きができるとのこと。実際に彼はそれを自分の子供に教え、なんとその子は単に読み書きが堪能ということじゃなくて、頭そのものになんらかの変化が起きたのか、なんと有名な天才少女となり、9歳(12歳だったかな?)でボンド大学に入学してしまった。
そんな子供が大学に入るのが良いのか、それは別にして、英才教育としての効用があるのは間違いがなさそうで、そんな塾を彼は経営していました。で、私もそれに期待を持って小さな息子たちを通わせていました。
また学校に入るようになってからは、IT技術を使った数学専門の塾にも通わせた時期があります。学校の教科書に沿った内容をPCで遊ぶがごとく反復練習されるという塾。ま、その手のプログラムって昔からありましたが、わざわざ塾に通うところがミソだと私は思っています。競争心を適当に煽って、そして出来るようになると滅茶苦茶褒めるんですね。これのイベントにはもちろん親も参加するわけですが、落ちこぼれを減らす、また面白ければどんどん先に進んで、つまり常に予習している状態になるわけで、学校での成績はどんどん上がるという効果がありました。子供にとってその塾が苦痛ではなくて、楽しみになっていたところがポイントだと思います。
きっとこんな時代ですから、塾とオンラインを併用して効果を上げるシステムはいくらでもありそうですし、また日本式の面白い英才教育っていろいろあるんですよね。マレーシアでもかなり普及しているのかな?私としては公文の様なものは当たり前すぎて興味がありませんでした。またあの手の塾、勉強は子供にとってかなりの重荷になるのね。
ま、人が集まるところには新しいビジネスも生まれるわけで、マレーシアはこれからが面白いのかもしれませんね。これからが本番か。
ただし、リーマンショックの時、マレーシア経済を支える大量のExpatsが国外に出てしまったこと。日本人も多くの人たちが帰っていった。こういう事態は日本人的発想だとなかなか理解が難しいと思います。日本国内で、市場からそういう見込み客が大幅に消えてしまうなんてことはあり得ませんから。
またマレーシアの不動産投資も決して簡単にはいかないと思うのも似たようなもんで、日本の都会で誰も住んでいない部屋が半分以上占めているコンドミニアムなんか考えられない。でも熱海や地方に行くとそういうところはいくらでもある。つまり別荘なわけだけれど、こういう場所は海外にはいくらでも存在する。ゴールドコーストも同じ。つまり、投資としての需給と供給、それと不動産投資熱に大きく左右されるわけで、実需が支えているわけじゃない。これが混在している市場で、この手の不動産と実需がある不動産との見分けが出来ない場合、かなりうまくないことになると思っています。