初めてのブログの読者からメールを頂きました。
要約しますと、
○ 日本株投資暦は20年を越す
○ 思ったような結果は出ていない
○ 優良株、優良低位株中心
○ 長期投資
で、私の相場がらみの日記を偶然見つけて、その方の考え方と私は正反対ですので、何が駄目なのか聞かせて欲しいとのことでした。
私はそういう投資方法を駄目だと書いているつもりはまったくありません。良いか駄目かは「結果」次第で、良い結果が出ているのなら全く問題はありませんよね。でもこの方は「思ったような結果は出ていない」ということなので、多分、駄目なんでしょう。
では何が駄目なのか。これは日本株投資(買いのみ)、優良株狙い、長期投資が駄目なんじゃないんですね。その分析方法とか売買タイミングがうまく行っていないと考えるべきだと思うのです。(これは投機やデイトレ、スキャルなら良いというのではないのと同じこと)
昔から優良株狙いの長期投資というとタートルズ、FAI、そして人物としてはウォーレンバフェットが頭に浮かんできますが、彼らが狙う方向と自分が狙う方向は同じだとしても、やっていることが同じなのかどうか、ここがポイントだと思うんですよ。特に有名なウォーレンバフェットの書籍や名言集を読んで思うのは、この人こそ投資の王道を行っていると私も思いますが、私は彼に大きな罪があると思っています。それは彼の金科玉条に大事な一項目が抜けている点。
○ 私と同じことが貴方にできるかどうかはわからない。
ってこと。オーストラリアにはいまだに金鉱堀が結構いるんですが、小は馬と小さな荷物を持ち放浪するタイプから、大は自前のジェット機を持ち、上空から地形を見るだけではなく電波を飛ばしたり最新技術を使って金鉱探しをするわけですが、彼らの本質は同じでも内容が違うじゃないですか。同じ結果が出るとは誰も思わない。
でも投資をする人たちは、向いている方向が同じならどうにかなると「信じている」。ここに問題があるんじゃないでしょうか。
また細かい話になりますが、自分は何をしたいのか、しようとしているのかを第三者的な視点から冷静に考える必要があると思っています。まず、優良株探しですが、優良株ってそもそもなんなんでしょうか。何から計るんでしょうか?業績?将来性?健全性?人気?この要素はいろいろ挙げられるでしょうが、上の金鉱探しと同じで、まずそれを見つけられる能力とは何か、自分にそれがあるのか、あるいは将来持てるのか。またもしそれがあったにしても、その銘柄は現在格安じゃないと意味がない。また将来、上がってくれないと意味がない。
私の考える優良株は全く違っていて、値が動いている銘柄。そしてトレンドが続く銘柄。内容は全く関係ありません。大きく動いてくれるなら全てが優良株であると言って良いと思うくらい。つまり、どんなに内容が素晴らしくても動いていない(注目されない)銘柄を優良株と呼ぶことはできないと思っています。
ようは、将来上がるだろうから優良株を探すんですよね?上がらなくても優良株に投資したいという考えを持つ人もいるのかもしれませんが、上がってくれなければ投資する意味がない(配当等での利回りは無視する)。
ではなぜ株価は上がるのか?これは多岐に渡っていて、これだ!というはない。ただ、時代によって、世界環境によってそれは常に変わっていて、為替、自国の景気、世界の景気、世界に溢れる投資資金の多少、そして業界の動向や将来性、人気などでどんどん変化する。でもその変化を読むのは難しいですよね。ここが問題で、この読むのが難しいことを、読むのが難しいからといって目を背けて、その銘柄が「優良か否か」、これは勉強すれば読める可能性がある項目なので、それにしがみついてしまう傾向があるんじゃないでしょうか。つまり、美人コンテストで言えば、はっきりわかる「顔」が「良いのか悪いのか」、そのわかりやすい一点だけに集中して見てしまう傾向と同じ。
つまり、自分が優良株を狙うのは優良株を探したいのではなくて「上がる可能性が高い銘柄を探しているだけ」だと自覚すると見方が変わってくるはずなんです。この発想がなくその銘柄が「優良か否か」に拘っていると、多分去年の大きな値上がりも取れなかったはず。また、今の値下がりに狼狽するはず。だからこんな時になって自分のやり方に疑問を持ち、私にメールをくれたのだろうと想像しています。
私は「株価はその企業のファンダメンタルズに『いつか』帰結する」というのは正しいと思っていますが、株価を決定する要素(優良か否かも一つの要素でしかない)があまりにも多く、そしてその変化が非常に早い時代になってからもうすでにかなり長い年月が経っていると思っています。いかに鈍感な人でも、ソニー、シャープ、パナソニック等の急変に対処するには、今までの考え方ではどうにもならないのに気がついたはずなんですね。どんな優良株でもあっという間に優良株ではなくなる時代に、どうして優良株探しに固執するのか。
また、それと同じ理由で、長期投資は非常に難しい時代になっているのは誰しもが感じているはず。これはウォーレンバフェットも機関投資家も同じなはずで、将来の長期予測は今まで以上に難しい。たった数年の中に大きな変化が起きてしまう。あまりにも多くの要素が恐ろしい速さで変化している時代どうすれば良いのか。ウォーレンバフェットは知りませんが、機関投資家もヘッジファンドに資金を多く投入しているのはもうかなり前から言われていますよね。
また、大手と個人は全く違う環境にありますから、評論家、エコノミスト、アナリストの見方に我々個人が一生懸命耳を傾ける必要もないと思っています。個人は自由に何でも出来る立場ですから、利益が出ればなんでもOKなんですね。ですから常識に囚われることなく、自分の限られた技量で一体何ができるのか、そこを考えるべきであって、頑張れば自分もウォーレンバフェットになれるような錯覚は捨てるのが始めの一歩かもしれません。どうしてもウォーレンバフェットに着いていきたいのなら、彼の会社に投資するべきだと思っています。
動く銘柄は「優良株」であると考え、株を買うだけじゃなくて空売りも積極的に取り入れ、動きについていくにはどうするべきか冷静に考える必要があって、大手のようにインデックスよりプラスならOKとか、馬鹿な考え方は捨ててどんな時代にでも勝てるチャンスが我々零細投資家だからこそあるというところに目を向けない限り、この世界で生きる道はないと思っています。
まぁ、結局、優良株対象の長期投資は駄目とは言わないけれど非常に難しいと思うということになりますね。時がゆっくり流れた数十年前でさえもそれを目指して結果が出せなかった人は多くいるわけで、「優良株か否か」より「投資とはタイミング」であるところに目を向けるべきだし、そのタイミングの取り方も変化が短い期間に起こる今の時代、益々難しくなっていると思います。
でも私の考える「投機」に勝つチャンスは多いという方向へ世界が動いているのは、大きな問題がありますよね。庶民がお金を貯めてそれを直接あるいは間接的に株式市場に投資して、そして会社は育ち大きくなり値上がり益や配当ももらいWinWinの関係を目指した時代があった。ところが今の市場では人間の数百倍のスピードで売買を繰り返すHFTなるものが取引の半分を超えるという異常な事態。投機がどうのどころの話じゃないですね。これを健全化しようとする動きもあるようですが、実需を上回る金が世界を飛び回り、ITの進化でどんどん新しい手法も出てくるんでしょう。そしてその有り余った金は証券市場だけではなくてもちろん債券、商品、不動産へと津波の如く流れ込んではまた引いていく。資本主義ってこんなことを目指していたのかとは思わないけれど、ある線を越えてしまって何でもありの世界になってしまった。たった20年かそこらの間にこれだけの変化のある、そしてとんでもないスピードで変化する世の中で、どうして優良株だの長期投資だの昔さながらの考え方に拘るのか、私はそれが不思議に思うくらいです。
もしかしたら投資じゃなくてイデオロギーに拘ってる?