最近のニュースでは日本の貿易赤字が大きく、円安が日本を救うと思ったら輸出は伸びておらず、輸入が増大し、先行きは暗いような論調が多いですよね。
私はこれからは真実は見えないと思っていて、ではどこをどう見れば良いのかもわかりません。ただ、こういうニュースってどの新聞、メディアが出しているのかを見るのは大事だと思ってて、そして安倍叩きをずーっと繰り返しているメディアの存在も忘れてはならないと思っています。つまり、こういう日本の貿易危機論も安倍叩きの一貫かもしれない。
ただ見えてきたことは、今まで輸出に貢献していた産業の多くはもうすでに海外移転が進んでいて、日本からの直接輸出の数字には出てこないのが多いということ。
そして日本は完成品ではなくて資本財、中間財の輸出が多く、間接的な輸出で利益を出している、あるいは他の輸出国の根幹を握っているということ。この後者をどう見るかというのは大事なのが最近言われるようになりました。でも面白いのは反安倍のメディアはそういうことは言わないのね。
それに関して産経のニュースが興味深いと思いました。
日本の本当のお客様は中国ではない 付加価値貿易統計でわかる世界 SankeiBiz ← クリック
ポイントは何かというと
「たとえば、日本が中国に700ドルの液晶パネルを輸出し、中国がこれを使って1000ドルのテレビを製造、米国に輸出した場合。従来の貿易統計だと、日本から中国への輸出が700ドル、中国から米国への輸出が1000ドルとされ、日本の対中貿易黒字と中国の対米貿易黒字がそれぞれ拡大した-となる。
だが、中国から米国に輸出された1000ドルのテレビには、日本で生み出された700ドルの液晶パネルが含まれている。その「付加価値」ベースで考えると、700ドルは日本で生産されて最終的に米国に輸出されたことになり、中国で生産し米国に輸出された「付加価値」は300ドルとなる。こうして、最終財の価値を付加価値ベースで輸出国に分割、そこから輸出された形に組み替えるのが「付加価値貿易統計」だ。」
これを図で見ると
韓国も同じで、韓国が今の状態で、なおかつ日本製品の不買運動をするなら、日本から資本財や中間財の輸出を止めて制裁するべきという評論家も少なく無いですが、こういうことなんですよね。世界を席巻したサムソンのスマートフォンや液晶テレビにしても日本なくしてそれの生産は出来ないということ。
また対米貿易にしても、アメリカから見れば日本との関係は縮小しているように見えるし、これからは米日ではなくて米中関係が大事だという方向へ動いているけれど、それは表面的な見方でしか無いというのも、アメリカに対してしっかり主張するべき。東日本大震災の時も、世界中の製造業に多大な影響があったのを忘れてもらっては困る。
でもこれは産業界から見るとそういうことであって、日本国民としては諸手を上げて喜べることじゃないわけで、要はかつて日本にあった製造業が他国に流れた結果、今があるという証拠でしかないですよね。
それを考えれば、特区の存在や、首切りの容認、そして賃金の更なる低下がないと、この傾向は強まることはあっても減ることはない。だから日本全体を考えれば今の安倍政権の方向性も理解できるわけですが、では一般市民はどうすればいいのか。困ったもんですよね。
でも家内制手工業が全盛だった時代から地方からの集団就職時代を経て、そして機械化、合理化でどんどん人員削減に動いてきた歴史は間違いなくあって、今はそれの延長線上でしか無いと思えばその通り。では国内で仕事がなければどうするかといえばアメリカもオーストラリアもそうだけれど、海外に職があれば先進国でさえも出て行かなくてはならないのが道理で、出稼ぎは何も開発途上国だけに起こるわけでもない。
グローバル化を皆が叫ぶのもそういう背景があるのだろうし、でもそれは明るい未来のためというより、集団就職でまだ幼さが残る10代半ばの青年たちが都会に送られてきたように、地元に固執していても生きていけませんよ、という恐ろしい時代が来るということなんでしょう。
中国や東南アジアに仕事があるのなら、そこに出て精々現地の給料プラスアルファを狙うのか、それとも日本国内での低賃金化を容認するべきか。そういう風に考えると、2つある毒饅頭のどちらを食べるのかという選択と同じで、同じ毒饅頭なら私は後者を取るしかないような気もしてきます。それなら産業は日本に戻ってくるでしょうし、GDPも間違いなく上がるのかもしれない。
でもそれって対処療法にしか見えなくて、本来日本が進むべき道じゃないと思うわけです。でも根本治療としてどんな手があるのかは私の頭では想像することさえも不可能。
日本が伸びるためには更なる円安が必要だというニュースも見ましたが、それで国内産業に活気が戻るのかは疑問。でも今は少なくとも「人材不足」があちこちで顕著になっているようで、このまま行けばそれで良いのか、財政投資が縮小し、オリンピックも終わったらどうなるのか。
ああ、それと輸入が拡大している件ですが、当然エネルギーの輸入増が大きいのは間違いがないものの、輸入拡大は日本国内の需要そのものが拡大している証拠で、決して悪いことではないという見方があるのも間違っていないと思います。ただ、それは金額ベースで見ていたらわからないはずで、今回のこのニュースの様に、その辺がわかるもの。例えば数量ベースでも良いですし、それを見ること無く輸入が増えてこのままじゃ大変なことになるという論理を信じるわけにはいかず。でもそれが「原発再稼働」の根拠にもなっているはずで、今の輸入増は良い傾向だという評論家の声はかき消されている状態。
日本再生に向けて頑張って欲しいけど、何をターゲットとして進めば良いのかわからず。ただ、日本中のインフラ整備は何が何でもやらないとまずい状態に入っているのも間違いがなく、高速道路や橋の修復、補強、それを含めた「日本強靭化計画」に私は期待しています。でも公共投資というと、何が何でも駄目という勢力が強い状態だけど、このまま日本がボロボロになっても良いんだろうか。
そんな事を考えさせられたニュースでした。