同じ素材をいかに美味しく調理するかって非常に興味があるわけですが、タコの茹で方を調べている間に面白いものを発見しました。
北海道の業者で、「タコの柔らか煮」を売っている業者があるのですが、そのタコは非常に柔らかいそうで評判も良い。そして注目すべきは、その製造方法の特許を取っているということ。で、特許となればそれを調べれば作り方がわかっちゃう。(笑)
【発明の名称】 タコの肉質軟化方法(第2920514号)(冗談だろうと調べたら特許電子図書館にありました。ここをクリック)
ま、簡単に言うと、(詳しい内容はここをクリック)
1 水揚げした生蛸を頭部および適宜の数本の足に捌き、内蔵を除去して個体に形成してから洗浄する。
2 次に、一旦冷凍処理し
3 その後解凍して90~95℃の温水に個体の大きさに応じて3~8秒間浸して加熱する。
4 加熱した個体は水等によって冷却した後、100度の沸騰水で30~50分間煮込む。
5 煮込んだ個体は冷却し、冷凍して保存する。
北海道立網走水産試験場のレポート(ここをクリック)には「原料の凍結解凍処理は、生原料に比べ、煮熟後の肉質が2~5割り柔らかくなることがわかりました。また緩慢凍結に比べ急速凍結が柔らかくなりました」とあります。面白いですねぇ。官民揃っていかに美味しく作るか研究して地元の産物が売れるように頑張っているわけですが、水蛸をいかに柔らかくするかに拘っているんですね。で、調べてみると「浜茹ですれば美味しい」みたいな単純なものじゃないのね。
まずは「冷凍すると柔らかくなる」ってのが面白いと思いました。そしてこの特許のキモは3番の3~8秒間、90-95度の温水に浸して過熱するってところ。これなくしては駄目だそうです。で、それを冷やして、また煮込むとどういうわけか柔らかくなるというのを発見したんですね。で、特許を申請したら下りちゃった。(笑)
真似してみようじゃありませんか。
ところがですね、話はまだここで終わらなくて、この特許が出た後に違う人がまた違う特許をとったんですね。【公開番号】特開2010-29086(P2010-29086A)(詳しい内容はここをクリック)
この新しい特許では、上の特許に関しても言及していて、それでは駄目なんだと。だからこうすれば良いという新たな方法が示されています。この方法を取ると「従来の技術には無い生蛸の旨みと、脂の乗った、つるりとした生蛸独特の食感を残し、軟らかく簡単に噛み切れ、高齢者や子供まで、幅広い年齢層に食してもらえる上質な肉質の、蛸の加工方法と加工食品を提供することができる」となっています。
ワクワクしますね~。で、その工程ですが
1 生蛸を蛸足の大きさに応じて200g~500g程の個体に切り分け、オイル(好ましくは、オリーブオイル)を全体に絡める前処理工程、
2 前記前処理した個体を真空包装する包装工程
3 前記真空包装した個体を冷凍する冷凍工程
4 前記冷凍した個体を60℃~80℃で加熱する加熱工程
5 前記加熱した個体を自然冷却する冷却工程
つまり、オイルに浸けてそれを絡ませろと(浸透するらしい)。そしてそれをやっぱり冷凍するんですね。この冷凍ってのはやっぱり柔らかくするキモでもあるんでしょう。そして、な、な、なんと60~80度で過熱するって、これ、まさに低温調理じゃないですか。真空包装もするとありますから真空調理、Sous videそのものです。そして加熱時間ですが「重量200gの個体は40分間、重量500gの個体は60分間を目安とする」とのこと。
なるほどねぇ。
ま、我々が手にする水蛸は冷凍されて流通していますから、「冷凍する」という点はクリアですね。そしてそれをオリーブオイルにつけて真空パックする。そしてそれを低温調理すれば良いと。
これによって「明らかに従来には無い生蛸の滑らかなつるりとした食感を残し、軟らかく噛み切れる上質の肉質に処理する事ができる」ですと。
面白いなぁ。これって誰かが適当に理屈を捏ねて言っていることじゃなくて、特許ですもんね。本当にそうなるんでしょう。
これだとオイルでヌルヌルするんじゃないかと思いますが、刺し身や寿司にできるとありますから、オイルは落とすのかな?でもオイルって水に流しても落ちないでしょ?洗剤で洗う?(笑)
これ、実験する価値がありますね。当然、やってみます。(笑)
しかし、こんなんで特許がおりるんですかね。ということはこの製法を真似たら特許侵害ってこと?マジっすか?我々がやるにはどうってことないけれど、水蛸の加工業者がこの方法をとったら特許侵害に間違いがない?
なんか変だな。海外のSous vide、つまり真空調理(低温調理)の方法を見ていますと、オリーブオイルを入れて低温調理するなんてのはあまりにも一般的過ぎますから。