はい、また尖閣諸島の話ですいません。
中国が尖閣を日本の領土として見ていたという「証拠」となる地図が出てきました。これが今までと違うのは1969年という近代の地図であることと、この発行元が「中華人民共和国国家測絵総局」という国の機関であること。
詳しいことはこの動画で。
へー、こんなのがあったんだと思うものの、不思議なのはこの地図の存在をマスコミも外務省も知っているとのこと。でもこれを公にはしない。今までいくらでもチャンスがあったのに。なんでなんでしょうねぇ。
尖閣に関しては、私は「領土問題が存在するのを日本は認めたことがある」と考えていて、それは1997年に日中で取り交わされた「日中漁業協定」です。この中では尖閣の海域を除外しており、協定とは別に当時の外務大臣であった小渕恵三氏は別途書簡を中国の全権大使に送っています。その内容ですが「中国国民に対して、当該水域において、漁業に関する自国の関係法令を適用しない」と書いてある。(でも違法操業ということで取り締まろうとしたら体当たりを食らったのがあの事件)
この件は後に国会でも取り上げられ、平成24年の第181回臨時国会で当時新党大地の浅野貴博衆議院議員が質問書を提出。これに同時の国務大臣であった岡田克也氏が答弁している。この内容は非常に興味深いです。
要約すると、「「かつてその海域に入り込んだ中国人に対し、関係法令を適用した事例、あるいはしなかった事例はあるか」との問いには「お答えすることは困難である」との答え。つまり、あの衝突事故の一件には触れていない。また質問書のハイライトである「どうして我が領土である尖閣諸島を含む海域において、漁業に関して我が国の法令を適用しないとの意向を中国側に示す必要があったのか」という問いには答えていない。無視。」
この国会答弁に関しては「かつては衆議院のサイトに存在」したんですが、今では削除されています。これらのことは過去の日記に色々書いていますが、ここを読めば全貌がわかります。(クリック)
どうも我々国民が知らされていることと、国なり外務省が考えていることに大きなギャップがある様子。今回の地図は今までのものより説得力があるのに、それを世に出そうとする動きが政府や大手メディアにはない。それどころか無視しようとする。日中漁業協定のことも同じで、小渕親書の話題は一切出てきません。これはネットの中でも同じで、これに関する情報は本当に少ないです。また保守系もこの話は一切しないのが普通。
まぁ、都合が悪いことは隠すのはわかりますが、今回の地図のように「1969年まで中国は尖閣を日本の領土としてみていた証拠」があるのに、それを公にしないってなんなんでしょうか。
でも出したら出したで、中国は小渕親書の原本を持っているわけで、泥仕合に突入するのは間違いがなさそうです。「はっきりさせるべきことははっきりする」のが良いと思うのは多分私のような脳天気な国民で、「わかっちゃいるけど言えない」事が多いのが外交なんでしょう。
良いにしろ悪いにしろ、我々一般人って常にプロパガンダの対象となるだけで、真実がどこにあるのかは全く知らされないという現実をこのことからも感じます。
私は右傾した考え方を持っていますが、近年増えてきた「保守系」、特に若い人たちの多くはこれまた保守系のプロパガンダに乗せられていると感じます。今までは左派の言いなりで自虐史観を持たされていたことに対する反発があるんでしょうが、だからといって今度は右派のプロパガンダに乗るって、結局同じじゃないですかね。
私としては時間がかかっても事実がどこにあるのか知りたいと思っていますが、事実って一つじゃないんですよね。ある事象を観察する人が10人いたら真実は10存在すると言っても良いわけで、「俺の言うことが正しい」と言い合っていても何も解決しない。でも日本人ってそれをどう乗り越えるかのノウハウを持っていて、適当なところで手打ち式をするし、過去のことは水に流す、という考えようによっては「適当な民族」なのかもしれませんが、それがなかったらアメリカともうまく付き合えるわけがないですね。また「自分が悪かった」ということで話を収めようとする傾向が非常に強い「変わった民族」で、それが通用しないのは昨今の日本を取り巻く環境を見ればすぐにわかること。
きっと政府は「どこを押して」「どこを引く」か考えながらやっているのでしょうが、とりあえず一国民としては今日のような「地図の存在」はきっちり覚えておこうと思います。と同時に「日中漁業協定の不思議さ」も忘れてはならないと思っています。「尖閣を閣議決定で日本領土とした」いきさつも細かい時系列を見ていくと、なんだこれ?と思います。その件も他の日記に書いていますので、興味がある人は是非見てみてください。
また「歴史問題」というのは日本が関わっているとどうしても考えてしまいますが、実はそれをいう国の「内政問題」だと考えるべきだと思ってて、「事実は事実」で突っぱねれば良い話じゃないと思うんですよ。だからといって認めろということじゃなくて、それなりの作戦を考えるべきであって「正しいことは正しい」なんてどれだけ吠えても駄目だと思っています。それと忘れてならないのは「日本は敗戦国」であるということ。正義と正義のぶつかり合いが「戦争」であって、それで白黒をつける勝負に日本は負けたんですね。「戦争には負けたけれど正義では負けていない」という(私も含めて少なくない日本人が考えている)論法が通じるのかどうか。
今回の地図に関してですが、間違いなく当時の中国は「日本の領土」として見ていたのでしょう。でも中国はそれには触れず「盗まれたのだ」と論点を微妙に変えてきたらどうなるんでしょう。というか、私は中国の立場はそれだと思っていて、そもそも尖閣は台湾の領土。それを台湾とともに取られ、後に「日本は尖閣を返さなかった」という論法じゃないでしょうか。だから当時は「日本の領土」として出していてもおかしくないってことになりませんかね。これって「沖縄」も日本の領土ではないという論法と同じで、また韓国の言う「対馬」も同じ論法で、「盗まれたのだ」というのが基本になっている。
しかしまぁ、こういうことを調べていると「福沢諭吉の脱亜論」がいかに的を得ていたか、感心してしまいます。
--------(後記)----------
国会での答弁ですが、私が最初見つけたところから移動していたようで、本文を見つけました。
質問主意書 浅野貴博衆議院議員 ← クリック
答弁書 岡田克也 内閣総理大臣臨時代理 ← クリック
この質問はかなり問題の核心に迫った質問だと思います。それに対する答弁は「お答えすることは困難である」とうまく逃げているのがわかりますし、一番のハイライトの問9「なぜ領土である尖閣諸島を含む海域において、漁業に関して我が国の関係法令を適用しないとの意向を中国側に示す必要があったのか」という点に関しては「完全無視」で答えていません。