低温調理関連でこのブログに飛んでくる方が増えていますが、ちょっと気になることがあります。
皆さんがどの日記を読んでいるのかが統計で出てくるのですが、結構古いものを読まれているんです。ま、検索でヒットするのは古いものが多いのだろうとは思うのですが、是非、新しい日記を読むようにして頂きたいのです。
私も日々トライアンドエラーの連続で、数カ月前には「これはこうだ!」なんて思っていたことが今になればまるで的外れであるのがわかった、なんてことの繰り返しなんです。でも過去の日記にそれを書き加えたり変更することは不可能です。
ですからタグなりブログ内検索で低温調理の日記を読むにしても、必ずその日付を注意してみてください。よろしくお願いします。
ついでですが、低温調理を始めたばかりの方々にいくつか注意点を。
温度を何度にするか、調理時間はどのくらいにするか全くわからないケースがあると思いますが、絶対に忘れてはならないことがあります。それは
○ 温度とは芯温のことだと認識すること。
先日、私と同じ調理器具を持っている方のサイトを偶然見つけたのですが、その方はローストビーフを作るのに30分の過熱で、「生過ぎた」「温度が低いのかな?」みたいなことを書かれていました。これってお風呂にちょっと浸かっただけで芯まで暖まっていない状態(笑)。たとえ沸騰しているお湯でも直径10センチ、厚さ10センチあるような肉の塊の場合、芯温がそれなりの温度になるには結構時間が掛かるんですね。ましてや58度とかそういう水温の場合はなおさらです。
ですから、取り出した後は「芯温を計る」癖を付けるのは大事だと思います。
また低温調理はターゲットの温度で調理しますから、芯温が狙った温度以上になることは絶対にあり得ないんですね。ですから時間が長すぎるという心配はまず考えなくても良いくらいだと思います。もし、温度を高めにして、調理時間で火の入り具合を調節しようとしたら、それじゃ何のための低温調理かわからなくなります。
そしてこのブログ内を検索していただくと見つけられるはずですが、ローストビーフの場合、55度で1時間キープすると2日間冷蔵庫で熟成させたのと同じ効果があるというプロの話があります。ですから55度で5時間ホールドして、その後に目標温度である56度でも58度でもあるいは60度に変更して、またそこから2時間調理を続けるというやりかたでも全く問題がないわけです。厳密に言えばいくらでも時間が長くて良いということではないはずですが、時間が足りないのはお話になりませんから、まずは十分な時間を取ること、そして芯温に気をつけることが大事だと思います。
オーブンで焼く場合、「芯温がXX度になったら調理完了」という考え方がありますが、低温調理の場合もそれでも良いですが、その後放置したところでオーブンのように温度がどんどん上がるということは起こりえませんから、すぐに取り出さないと駄目ってこともないわけです。
○ タンパク質の温度による変化を学ぶこと。
一体何度の温度で調理するべきかは、このタンパク質の変化をどう考えるかによるわけです。私が基本にしているのはタンパク質が変性を始める58度前後。そして(縮むことによって)水分を出すのが68度前後。これを基本に考えています。ただこれも、様々な意見があって、またタンパク質もいろいろありますし、鶏肉と牛肉とは全く違う、また鶏肉でも胸肉と腿肉とはこれほど違うのかと思うくらい違いますので、簡単ではありませんが、その温度による変化がわからなければ温度を決めることも出来ないんですね。
それを頭に入れてから試行錯誤をしないと駄目だと思います。その知識無くして経験を積んでも一体何のためにそれをしているのかがいつになってもわからないかもしれません。ま、自分が美味しいと思うのは何度かというアプローチ方法も大事だとは思いますが。(笑)
その練習をするのに適しているのは、私は「温泉卵」だと思います。ご存知のように黄身の固まる温度と白身が固まる温度が違いますから、それを利用して白身は柔らかく、黄身はちょっと硬くするのが温泉卵ですね。これを練習すると、たった一度でこれだけ違うのかとびっくりするはずですし、黄身と白身のことが理解できてくると、自分の好みで黄身の硬さ、白身の硬さを変えられるようになります。面白いでしょ?
私は67度で30分が好きなのですが、最近ちょっと飽きてきまして、63度で60分とか75度で13分とか、どちらかと言うと温泉卵ではなくてポーチドエッグに近いものを作るようになりました。我が家は私とヨメさんと好みが違うのですが、どういう好みでもそれに合わせた温泉卵が作れるようになりますから、それを一つの練習課題とするのは面白いと思います。卵かけご飯に一番合うのはどんな卵か、なんてのにトライするのも面白いと思います。私は卵かけご飯が大好きなんですが、今では生卵で食べることはなくなりました。またお蕎麦に入れるとか、パスタに乗せる場合の卵はどうあるべきかやってみるなんてのも面白いと思っています。(私は味付け温泉卵の実験をしています)
それをやっていると、温度の微妙さとか、時間の掛け方とか、低温調理の基礎が知らない間に身につくんじゃないでしょうか。卵での実験はコストがほとんど掛かりませんし、比較的短時間で済みますし、練習には最適。
理屈さえわかれば低温調理は楽勝で、ローストビーフにしても今日は生まれて初めて3キロの固まりで作るとか。あるいは歪な形だけれどどうしようとか、そういうことにも一切悩まなくなるはず。これが私は低温調理の醍醐味だと思っておりまして、オーブンではまず素人には不可能なことが簡単に、そしていつでも、同じものが作れるという凄いことが起きる。(笑)
○ 安全を考える。
低温調理は雑菌が大喜びで運動会を開く様な温度を使うこともありますから、それなりの注意が必要だと思います。基本的には肉の内部には雑菌はすくないのかもしれませんが、ローストビーフで言う55-58度辺りはまだ危ない温度ですから外側はしっかり焼くにしても、肉の扱い、包丁やまな板の扱いも気をつけないと、ある日ある時とんでもないことが起きるかもしれません。
私としてはこの3つさえしっかりしていれば、どんどん経験が積み重なっていって面白くなると思っています。
逆に適当なやり方をしていると、なんだ、こんな程度かってなもんで興味も薄れてくると思っています。そのためにも、興味が出てきましたら「それなりに精度の高い温度調節が出来る機器を入手」するのも大事だと思います。温泉卵を作りますと、2度違ったら全く違うものになりますからそのへんもわかると思います。
また温度ですが、一番大事なのは芯温だと書きましたが、基本的に低温調理では素材を密封しますから常時芯温を計るのは無理なんですね。ですから一番大事なのは「水温」と言っても良いことになりますし、低温調理機もこの水温を計れないタイプだと難しくなると言えるんじゃないでしょうか。
また水温も真冬のお風呂を想像すればすぐにわかるように、きっちり対流させないとホットスポット、コールドスポットが出来るんですね(この温度差はかなり大きい)。ですから水温を測るにしても、測る場所によっても変わってきてしまう。ましてや水温ではなくて容器の温度や、伝熱部の温度を測る場合は、もっと大きな誤差が出てきますから、きっちり狙ったものを作るのは難しくなるはずです。
でもま、たまには水をかき混ぜてみるとか、水温を測っていれば、どういうセッティングだと水温はどうなるかがわかるようになるはずで、それをやっていれば問題無いと思います。
低温調理って本当に面白いと思います。興味のある方は是非頑張ってトライしてみてください。
また低温調理の情報に関してはアメリカがかなり進んでおりまして、英語ではSous Videと言います。語源はフランス語ですが、これで検索するといくらでも情報が出てきます(Youtubeがおすすめ)。凝ってる人はハンバーグまで低温調理したり、48時間調理したりしますから面白いです。(笑)