久しぶりにネットの中で「低温調理」を検索してみました。
結構広まっている感じがしますね。嬉しいです。
ただ、やっぱりわけのわからんことをやっている人が目につきます。もしかしたらここの読者かもしれませんね。(笑)
気がついたことですが、「殆どの人が芯温を気にしていない」ってこと。
例えばローストビーフのミディアムレアは56度だとしましょう。でもそれは芯温なわけですよ。水温じゃない。
また食品安全の立場から様々な基準が設けられていますよね。前もちょっと詳しく書きましたが、例えば63度で30分だとしましょう。でもそれって芯温でしょ?湯温が63度だろうが100度だろうが芯温が63度より低かったら意味が無いじゃないですか。そういうことがわかっていない方は情報の読み方が悪いと思います。もし63度で30分だとするならば、それを言っている公的機関の文書をちゃんと見ないとだめなんですよ。芯温って書いてあるはず。
でも、芯温だか湯温だか関係なくて、ただ63度で30分。だから1時間にするなんて書いている人もいました。それって、30分以内に芯温が63度になってそれを30分続けるって意味ですよね?そんなことが可能なんですか?薄切り肉じゃあるまいし。そもそもどこからその知識を手に入れてたんです?誰かのブログを見たなんてのは絶対に駄目なんですよ。私のブログも信用したら駄目。安全って「他人任せ」に出来ないんですから、ちゃんと情報の大本を見て確かめないと。また病院とか給食はまた基準が違うはずです。
そしてそれとは別の自分の基準があるわけですね。
63度で30分だ。これは「死守」するなんて思ったらもうローストビーフのロゼは一生食べられなくなります(笑)。でも世の中には牛のタタキも霜降り肉の鮨もあるでしょ?それって一体どうなっているんです?
でも自分が使う素材はそこらの店で買ってきた肉だし、怖いと思うなら注意したほうが良いですが、こういう人も今日、見つけました。
その女性は「料理研究家」で私と同じ低温調理器を使っていました。その方のレシピですが、ローストビーフを60度で1時間ですと。大きな肉の塊を60度のお湯に入れて、1時間で終了ですと。
面白いでしょ?どこが変だかわかりますよね?
これって炊飯器の保温(大体70度ぐらい)を使って作るのと同じ発想なんですね。時間で調節するという「癖」が付いてるのね。
でもねぇ、料理研究家を自称するなら、せめて「芯温」に言及して欲しいわけですよ。大きな肉の塊を60度のお湯に1時間浸けておいたら芯温は何度になるのかきっと実験したこともないんだろうと思いました。
これと似たようなことをしている人が結構いるんですよ。
ですから、大事なのは芯温だということ。是非このブログの読者はそれを頭に叩き込んで下さい。そして低温だとグツグツ茹でるような火の通り方じゃないってことも。そしてヨーグルトメーカーを使っている人はもっと注意しないと。設定温度が60度なだけで芯温どころかお湯の温度も冷たい肉で温度が下がったままなんてことがあるわけですから。あの有名なヨーグルトメーカーでも25ワットしかないんですよ。そう簡単に温度は上がりません。だからこまめに温度計を使って「今何が起きているか」を何度もチェックしないと。
だから、これで出来上がりと思っても、取り出してから芯温は必ず計るほうが良いと思います。
それとこれも何度も書いていますが、「長い時間調理を続けても火の入りすぎることはない」ってことなんですよ。もちろん「目標温度で調理する」という大前提がありますが、これこそが低温調理の醍醐味なんですよ。
わかりますよね?
ここがわかっていないと思われる人も何人かみました。沸騰したお湯に浸けるのなら「時間」が非常に大事になりますが、55度で設定したら太陽が西から昇るようなことがない限り55度以上にはならないんですよ(笑)。でもそれに気がついていないって本当に面白いと思います。つまり、例えば63度のお湯で、ローストビーフのロゼを作ろうなんて「筋違いも甚だしい」ってことに気がついて下さい。63度じゃ火の通り過ぎ。もちろんうちのヨメさんみたいにウェルダンこそ食べないものの、ちょっとでも赤いと「生だ~~」という人もいて、63度が調度良い人もいますね。でも本来その温度はミディアムを超える温度だってのは頭に入れておかないと。
それと「芯温が何度になったら出来上がり」という調理を何十年も続けていると、その温度をキープしようという発想が出てこないんでしょうね。でもここで良く考えて欲しいんですよ。55度でミディアムレアになって、その温度をキープしたらミディアム、そしてウェルダンになっちゃうなんてこともないんです。
だから私は「熟成」のことも書くわけです。芯温が55度になったら出来上がりも良いけれど、その温度を1時間ホールディングスると2日間エージングしたのと同じ効果があるいうこと。また海外では48時間低温調理をするなんて人も結構いるんですよ。でも55度は55度ですからミディアムレア以上にはならないんですね。
この辺がどうもピンと来ないのかもしれませんが、一度10時間ぐらいキープしてみてください。そして肉がどうなるか見てみたら良いと思います。「低温調理」とは「適温調理」であって、その温度をそのまま保っていても大丈夫なんです。ここが一番重要なポイントです。極論ですが、長すぎても構わないぐらいに考えたほうが良いと思います。
それと低温調理は「密封調理」だというのも忘れないで下さい。味は逃げないけれど、臭みも閉じ込めるってこと。だからローストビーフを調理前に「しっかり全体に焼き目をつけましょう」という人はまだ経験がない人だというのも見抜けるようになって下さい。これは「真空調理」の基本中の基本なんですよ。「密封調理」だというのをちゃんとわかっていれば調味料の使い方も変えないと駄目なのがわかるんですね。
私がひとつ危惧していることがあります。それは私が持っているAnovaですが、新型、そしてNomikuもそうですが、最近流行りの「スマホで管理」が出来ますよね。そしてアプリもあって、自分が作りたい料理を選ぶと「勝手に温度と時間の設定」までしてくれるようになってる。私はこれは一つの目安、あるいはアンチョコ程度に考えるべきであって、そんな作り方をしていたら何も覚えないんですね。車の運転をしていてGPSばかり使っているとまるで道を覚えなくなるでしょ。あれと同じ。
そもそも低温調理をするのだから低温調理のことを知ろうとするってのは駄目だと思うんですよ。
参考にするとしたら「一体プロが何をしているのか」ってところが大事で、それに「低温調理器を使ってどう近づくか」という発想じゃないと駄目なんですね。あるいはプロの世界では「スチコン」が広まっていますし、彼らは「真空調理」を勉強しないとスチコンは使えないんです。だから我々が勉強するとしたら、低温調理器をいじってる素人(私も含めて)の話なんか聞く必要がないってこと。
もちろん肉のタンパク質が何度で固くなり始めるか。水を出す分水作用は何度か。脂肪は?コラーゲンは?そういう「アタリマエのこと」はまず「常識」としてしらないと駄目なんですよ。そしてまず本当にその温度で調理したらどうなるのかを、小さな肉片でも使って実験しないと。面倒くさいと思いますが、それをやって「なるほど~~、こういうことか」とわかったら一生それは忘れないんですね。
で、その温度、温度分布が頭に入っているからこそ、「今日の鶏肉はどんな感じで仕上げようか」ってのが出来るわけですよ。でも何度でどんな変化が出てくるかわからなかったら「全て運任せ」で作っているのと同じでしょ。
私は今日、ちょっと低温調理のことを検索して、広がりがあるのがわかって嬉しかったのと同時に、こりゃきっと大きくは広がらないな、という感じも受けました。つまりですね、多くの方が初歩の初歩も知ろうともせずに、「とりあえずやってみた」レベルなんですよ。これでうまく出来るわけがないですから、きっと長続きしないと私は思いました。
でもね、おおーー、この人は凄いって人もいた。オタク系の人じゃないですが、料理をちゃんとわかっている人。私は単なるオタクでしかなくて、料理そのものは勉強はしているもののまだ初心者レベルで、ああいう凄い人を見ると羨ましいと感じます。きっと良い包丁も持ってるんだろうなぁ、みたいな人でした。(笑)
そういう人は料理の何たるかをまず知っているんですね。だから低温調理器を手に入れたとしたら、きっとその日から使いこなせるはず。
そもそもステーキを自分が思うとおりに焼けない人だったら、あるいは何度でどうなるのかもわからなかったら低温調理器を持っても何も出来ないんですよ。
あああ、どうもこのブログを読んで低温調理に興味を持ったという人も多いようですし、低温調理で飛んでくる人もおおいですから、逆に、そういうすごい人を見つけたらその人を紹介するようにしましょうかね。
やっぱりハードルってところどころにあって、それをちゃんと越えていかないと、「やーーめた」となるかもしれない。これってもったいないと思うんですよ。
いつかプロに「え?これ貴方が作ったんですか?」なんて言われる日が来るのを夢見て(笑)、ちゃんと学ぶことは学んでやりましょう。
でも勉強するなら「スチコン」の調理理論、そして「真空調理」は「密封調理」だと学ぶべきで、なおかつこれは「適温調理」だという理論を知らないと何も出来ないわけで、それはプロのサイトで勉強するべきであって、このブログを見に来ているようじゃ駄目ってことです。(笑)
でもま、みんなで楽しくできたらそれでいいかな。
明日は鶏レバーのコンフィをゴマ油で作る予定で、仕込みはもう済んでいます。これは読者の方に教えてもらいましたが、こういうやりとりが出来るのが私の楽しみ。
Let’s enjoy Sous Vide!!