豚の角煮は卒業、もう作らないけれど・・・・

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豚の角煮に関してはかなり悩み続けて、でも試行錯誤のすえ、最初に低温調理、そして一晩寝かせて、次の日に蒸すという方法でどうにかなるのは前に書いたとおり。使う肉も大事で、皮が硬いようなばら肉より、薄くて柔らかいばら肉ブロックのほうが良い物ができる。

ということで、一件落着。もう角煮は良いわと思っていたわけです。

でもねぇ、気になるんですよ。

なぜ私が角煮が好きかというと、昔よく食べた「東坡肉」が忘れられないから。東坡肉も角煮も同じじゃんというかもしれませんが、私はやっぱり中華の角煮「東坡肉」は違うと思っています。それも昔、五反田にあった上海園というごく普通の中華料理屋のそれの旨さが忘れられません。

やっぱりあんな凄いのを作ってみたい・・・・ (笑)

ということで挑戦しました。

今回はあくまで東坡肉ということで、拘ったところは

◯ 当然、皮付きのバラ肉。でもどこにでも売っている皮の硬いもので試してみる
◯ 脂身が多いほうが良しとする
◯ 和風ではなくて中華風にする
◯ とにかく柔らかくなるように考えられることは全てする

その代わり、一つ諦めることにしました。それは「豚の旨味」。

柔らかくフワッとさせて、脂はしっかり抜けていてゼラチンがフルフルで、しかも「豚の味がちゃんとしている」のがベストですが、中華は味が濃いですし、豚の味を犠牲にしてもあの「食感」を優先しました。

それにはあまり使いたくない

◯ 重曹
◯ キウイ

これを使ってタンパク質を柔らかくしました。キウイは良いものの、重曹はかなり効き目がありますが、素材の味を損ねるんですね。だから使いたくないわけですが、今回は「味は二の次」ということで重曹とキウイを使い、一晩漬け込みました。醤油などは入れません。

次の日、それを濯がずにそのまま5時間、約58度で低温調理。

出来上がったものはお湯で軽く洗い、味付けをして約90分、コトコトと煮込みました。この時に使った調味料ですが

◯ 紹興酒
◯ オイスターソース
◯ 中国醤油(ダーク)
◯ ニンニク
◯ 砂糖(代替甘味料)
◯ 少量の五香粉

そしてそのまま一晩放置。次の日には上に白い脂の層が固まっています。それを綺麗に取って、そこから90分、弱火で蒸しました。

結局

◯ 重曹とキウイに浸けて一晩寝かせる。
◯ 58度で5時間の低温調理。
◯ とろ火で90分の煮込み。その後、一晩寝かせる。
◯ 弱火で90分の蒸し。

かなり時間はかかりましたが、それぞれはほぼ放置ですので、面倒なことはありませんでした。

最後に汁を綺麗に濾して、十分濃い味なので煮詰めることはせずに片栗粉でトロミをつけて、それを肉に掛ける。出来上がりです。

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やっぱり「重曹」と「キウイ」の効果でしょう。柔らかいなんてもんじゃ無くて、箸では持てないような柔らかさ。スプーンで持ち上げないと崩れてしまいます。

問題は赤身の部分ですが、口の中で「ほどける」のではなくて「溶ける」感じ。大成功です。

これを完璧ということは出来ませんが、昔食べた東坡肉に一歩近づいたのは間違いがありませんし、今まで作った「角煮」より間違いなく美味しい。

問題は諦めていた「豚の旨味」ですが、結局、東坡肉の旨さはオイスターソースと醤油などの味付けにあると思うわけで、豚そのものの旨味は拘るほどのことでもないかもしれません。そもそも中華は和食とは違ってそういう傾向がありますし、これはフカヒレも同じで、フカヒレって本来、かなり味も香りも無いと言って良いほど弱いんですね。限りなく「無味無臭」に近い。でもフカヒレの姿煮が美味しいのはあの食感と汁なわけで、それと東坡肉も同じような考え方があるのかもしれません。

つまりですね、味を損ねるのがわかっていても「中華では重曹を多用する」ってことかもしれないと思いました。中華の牛肉料理はフニャフニャなんてもんじゃないのが出てきますが、「柔らかくて良い肉を使ってる」なんて思ったら大間違いで、あれは重曹なんですね。エビ料理がプルプルするのもそうで、「新鮮で良いエビ」だからじゃなくて重曹のせい。

でも多くの中華料理は味が濃いですから、それで誤魔化せるんでしょう。でも新鮮な素材が入る地域は違うのでしょうし、和食のような薄味にすると「なんか変」だというのがバレちゃう。そもそもあんなフニャフニャ、あるいはプリプリってのは不自然なんですね。そういう「本物」がなかなか手に入らないからこそ、そういう風に見せる料理法が発達したのかもしれません。

でも私はそれで良いと思うんです。美味しい~~~って思うから。どうせその程度のレベル。(笑)

色が濃いですが、これもあえてそう作りました。作る前には赤麹米を使って赤い色をつけようと思いましたが、まずは東坡肉らしく中華醤油のダークの方。ドロッとしてるあれです。色がかなり濃く付いて東坡肉らしくなりました。でもやっぱりちょっと濃すぎる感じもあって(笑)、ある中国人のレシピではダーク(色が濃くてドロリとしてる)とライト(普通の醤油)と半々で使っていたのを思い出し、こういうことかと思いました。

恐ろしく柔らかい東坡肉になりましたが、これを日本の角煮の味付けにしてしまうと駄目だろうと思います。和食の場合は、柔らかく、しかしそれなりの歯ごたえも残っている方が良いと思います。でも和風だろうが中華風だろうが、肉の繊維が硬いようなのはアウトですね。

ヨメさんがこれを食べて「やったじゃん、美味しい~~」と言ってくれました。でも「なんでホウレンソウを茹でなかったの?これじゃ合わないじゃん」ですとさ。ま、確かにその通りなんですが、やっぱり簡単には褒めてくれないヨメさん。ニクタラシイヤツダ・・・

今回、私としてはかなりの達成感があります。その理由は、

◯ 柔らかくて角煮や東坡肉に合っている豚肉を使ったのではないということ。使ったのはそこらで売っている皮がゴムみたいな豚バラです。

◯ 日本人はなぜか「素材の良さ」に拘りますし、自分も知らず知らずそういう風になっていますが、調理によってはいくらでもごまかせること。

この2つがはっきりわかったので一歩前進した実感があります。豚肉ですが柔らかくて良い豚バラを使うと比較的簡単に美味しい角煮が出来ますが、ゴムみたいな硬い皮の部位は赤身もそれなりでなかなかうまく行かないと思っています。また何度かブログにも書いていますが、豚によってまるで肉質が違うんですね。

これって重要な点で、国が変われば肉も違う。そして日本みたいな多様性のある国ではありとあらゆる種類の肉があるということ。先日、ブランド豚を調べていてわかったのですが、肉質やら味やら、彼らがどれだけ拘って作っているか。

つまりですね、「角煮なんかスロークッカーで作れば簡単だ」なんて話がいかにいい加減かってことが分かるんですね。どんな肉を使うか、また調味料の使い方、下処理のしかたでまるで変わるのが普通で、作り方が同じなら同じに出来るなんてことはあり得ないってこと。でも今日は、今までは作るのが難しいと思っていた安い肉で美味しく出来たので、良い肉ならここまでやる必要はないはずですが、一つの自信につながったのは間違いがありません。

そして中華は味が濃いのが多い。そして濃い場合にはかなり誤魔化すことが出来るということ。中華料理屋の厨房に入ったことがある人はわかると思いますが、日本人が「え?」と思うような素材を結構使うんですよね。ある中華料理屋の知人は素材の匂いを嗅ぎながら使っていたのを思い出します(笑)。そもそも中国人が買い物に行く市場を我々日本人が見るとどう思います?こんな肉や魚を使うのか?ってびっくりしますよね。

つまりそういう素材でもそこそこのものになる調理法だということでしょう。

これは韓国料理にも同じようなものを私は感じました。彼らのレシピを見ていますと、血抜きへのこだわりが異常なほどだと思うのです。買ってきた美味しそうな牛肉を1-2時間、流水に浸けて茶色く変色するまで放置するんですから。あれって、「新鮮なものが手に入らない時代」の名残じゃないかと思っています。洋食では肉の血抜きどころか、「血も旨味の内」という文化を感じますが、それとはかなり違う。

ま、料理ってその国、地域の特色、時代背景があって出来上がっているのがよくわかるような気がします。

そういう意味で、日本人が日本人流のこだわりを持って他国の料理を作るとかなりややこしいことになるんじゃないでしょうか。

でもプロはそれをやるんですね。日本にはミシュランの星をもらったレストランが多いのもそういうことじゃないかと思ったり。

でも私としては「誤魔化せる物は誤魔化せば良い」というのを今回の調理実験で学ぶことが出来ました。(笑)

 
 
 

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