ベトナムのフォーって奥が深くて、あんなのはストリートフードの類だと思っていましたが、調べれば調べるほど凄くて、ベトナムではあのスープを作るためだけに一晩寝ずに付きっきりで煮込むし、材料も牛の骨やら肉やらふんだんに使い、煮こむ時にもコトコトと絶対に煮立たせず、ましてや圧力鍋でスープを取るなんて野蛮なこともしない、かなり繊細なのがわかってきました。
今まで牛骨から作ったり、手抜きで牛ミンチ+牛ストックで作ったりしましたが、考えてみればあのフォーのスープはコンソメスープに限りなく近いわけで、今回はコンソメスープを作るイメージでフォーのスープを作ることにしました。
用意したのは1キロの牛ミンチ。これを全てスープの為だけに使います。もったいないけれどこれも実験。1キロで8ドルの牛ミンチ。
これにカップ1杯くらいの水を入れ練ります。練って練って練ります。親の敵のつもりでネットリするまで練ります。調味料のたぐいは一切なし。
それとコンソメならミレポア(玉ねぎ、ニンジン、セロリ)を合わせて煮こむわけですが、今回はフォーを作るのが目的なので、入れるのはこれだけ。玉ねぎ2個。
これをぶつ切りにしてミンチに混ぜ込みます。玉ねぎは細かくしたほうが良さそうですが、細かくするとスープが濁るというのがコンソメ作りの常識だそうで、適当な大きさに切ったものを合わせます。
さて、これに卵白を混ぜるわけですが、コンソメづくりではミンチ100グラムに対して卵白一個ぐらい。ということはミンチ1キロですから卵白は10個分。10個分の卵白って黄身はどうするんだ?
ということで、卵白だけ買ってきました。
これをミンチに混ぜてここでもしっかり練ります。
これを大きな鍋に移し、水をコップ2杯ぐらい入れて緩くします。そして熱した牛ストックを入れるのですが、牛ストックがない。そもそもスーパーで買う牛ストックが美味しいわけでもなく、どうしようか悩みましたが、これだけの量のミンチですから、お湯だけで作ることにしました。
お湯を入れて撹拌。なんだか怪しげな感じがしないでもない。
そしてスパイス類を投入します。
◯ 生姜のぶつ切り
◯ スターアニス(八角)
◯ シナモンスティック
◯ クローブ(丁子・チョウジ)
◯ フェンネルシード
◯ コリアンダーシード
◯ カルダモン
これらを鍋で炒って、香りが出てくればそれらを投入します。
これを強火で煮るわけですが、卵白が鍋の底にくっついてコゲるんですね。だから木ベラで常に混ぜます。ただスープを混ぜるのではなくて、底に卵白がこびり付かないように底をゴリゴリ混ぜます。
温度が上がってくると固まった卵白が底に着くのがわかります。木ベラを動かすとキュッキュという音がしっかり聞こえる。これが聞こえなくなるまでこびり付かないように混ぜます。
温度が上がってくるとある時からこのキュッキュという音が聞こえなくなります。温度を計った所、80度ぐらい。つまり卵白が固まりつつあるってことですね。そしてミンチも火が通って浮いてくる。
こうなったら一切触らずに、そして絶対にボコボコさせないように弱火でコトコト煮ます。段々と透明なスープが見えてきます。
上の方に火の通ったミンチが卵白で繋がって浮いて来るのがはっきりわかります。この時に、上の方に層になったミンチに穴を開けて、スープを閉じ込めないようにします。地球内のエネルギーを火山の噴火によって逃がすのと同じこと。
そのまま二時間。かなりいい感じになってきました。
ここで火を止めて、上澄みだけを取り出します。面倒だからといって漉し器に流そうとするとスープは濁っちゃうのね。
取り出したスープに味付けをしますが、まず味見をしてびっくり。チョ、チョ、チョ、チョージ(丁子=クローブ)の匂いが強い。(T_T)
フォーの味付けに使うスパイス類ははっきりわかりますが、量の加減が難しい~~~~。そしてあんなにミンチを入れたのに牛らしい味が無い。orz
やっぱり牛ストックを入れないと駄目なんでしょうね。でも市販の牛ストックを使うのはなんだか嫌だったので使いませんでしたが、やっぱりミンチを使うなら牛ストックを使うしか無いんでしょう。それが嫌なら最初から牛骨を使って何時間も掛けて煮こむしか無い。
またここで牛スープの素みたいなのを入れようと思いましたが、スープを若干お椀に取り出して、そこにスープの素を入れましたが、二種類試したものも全てぶち壊しの味になりました。あの手のスープの素ってもっと味の濃い料理に使うのが良いんでしょうね。繊細な味を求める場合には使えないのがわかりました。でも味の素のコンソメを試したらいい感じになったので、ここは妥協して味の素のコンソメに頼ることに。(T_T)
その他、ここで入れるものは
○ 塩
○ パームシュガー
○ ベトナム産ニョクマム
これだけ。何度も何度も味見をしながら、それなりに自分が思うあるべきフォーの味になってきました。それと本来は牛骨から煮込むわけですが、牛骨を使うとどこが違うか。私が思うに大きなポイントはゼラチンだと思うわけで、ここでゼラチンを混ぜてみました。味は変わりませんが、深味が出たような感じがします。当然ネットリするほどは入れない。(笑)
とりあえず、美味しい~~~~。(笑)
フォー用の黄金のスープの出来上がり。\(^o^)/
「良い匂いがするね~~~」と長男が様子を見に来ました。フォーを作っているんだけれど、ちょっと味見をしてみろと伝え、彼が味見をしたのですが・・。
「美味しい~~~~~~~。本格的だ~~~。」と大絶賛。\(^o^)/
ところがですねぇ、
「これ、美味しいけれど、これに野菜だ麺だ入れるとなると味が薄いんじゃない?」ですと。
ううううう、確かに。あいつ、結構鋭い・・・・・。 (T_T)
先日、ヨメさんが買ってきたベトナムのフォーガ(鶏のフォー)のカップヌードル。それが結構美味しかったんですよ。でもカップを見てみると内容物のところに「アーティフィシャル・チキン・フレイバー」と書いてありました。つまり化学薬品で鶏の味を出しているのね。でも美味しいんですよ。
つまり、世の中にはあの手のものがいくらでもあって、そういうのを使って店ではフォーを作っているんだろうね、と長男と話しました。まさか牛骨だの牛肉だのを使って本格的にスープを作ったらそれこそ毎日何十キロの骨、肉が必要になるわけで、そしてとんでもない時間がかかる。フードコートにあるような店がそんなことをしているとは思えず。でも結構美味しいんですね。ってことは我々もそういう「スープの素」があれば牛骨がどうじゃ、生け贄にする牛肉やミンチがどうじゃと悩む必要がなくなります。
そもそも、本格的に作ったものとそういうスープの素で作ったものとの違いなんかわかるようなベロを持っていないんですから。和食なら出汁の違いはわかるにしても、ベトナムのフォーじゃ・・・・
結局、こうやって拘って作るのも、なんだか自己満足以外の何物でもないって感じがしますねぇ。
フードコートで使っている牛スープの素、教えてくれ~~。欲しいぞ~~~~~。