マレーシアの銀行で、口座開設をしようとしたらマイナンバーを出せと言われた、そんな話が聞こえてきますね。
この根本にあるものはもう皆さんご存知だと思いますが、2014年のOECDの合意のはず。
当時それに関してこのブログの日記に書きましたが、その合意内容を引用します。
富裕層の税逃れを防ぐため、海外に住む個人の金融口座の情報を多国間で交換する経済協力開発機構(OECD)の新ルールの詳細が30日、明らかになった。各国の金融機関に海外居住者すべての口座情報を毎年1回、税務当局に報告させ交換するのが柱だ。2015~16年の導入を目指す。
主要20カ国・地域(G20)もOECDルールの活用で合意しており、9月にオーストラリアで開くG20財務相・中央銀行総裁会議でも詳細を確認する。
米国は海外の金融機関に米国人の口座情報の提供を義務づける法律を10年に成立させ、海外口座情報管理を強化。これを機に、多国間で情報を交換すべきだとの機運が国際的に高まった。
新ルールに参加する国の税務当局の間で、海外に住む人の情報を交換し、資産隠しや税逃れに歯止めをかけるのが狙い。
日本の国税当局が米国に送るのは、日本の金融機関に口座を持ち、米国に居住する日本人や米国人らの情報だ。逆に米国の当局は米国で口座を持ち、日本に居住する米国人や日本人らの情報を日本の当局に送る。
各国の金融機関に海外居住者が持つ預金口座や証券口座の情報を税務当局に毎年1回オンラインで提出することを義務付ける。海外居住者が持つすべての口座の名義人、住所、残高、利子や配当の受け取り記録などを報告の対象にする。
金融機関の事務負担を減らすため、残高100万ドル(約1億円)以下の口座はシステムでの検索など簡易な方法での確認を認める。一方、100万ドル超は営業担当者への聞き取りや保存する書類の確認など、より詳細な作業を求める。
口座情報の交換は当初15年末までに始めるとしていたが、準備が間に合わないため、16年末まで延期することも検討する。
各国はこれまでも税逃れを防ぐために、租税条約を結んで情報を交換してきた。ただ、不定期に情報が入ったCDなどを郵送でやりとりする程度だった。
新ルールでは年に1回オンラインでやりとりするため、情報の質や更新頻度が高まる。ただ、金融機関の手間やコストの増加につながる。日本の金融機関は口座を特定する作業が膨大になることを懸念し、一定額以上の残高がある口座に対象を限定するよう求めていた。新ルールにはOECDに加盟する34カ国などが参加する見通し。G20の枠組みで新興国にも広げ実効性を高める方向だ。
これが2014年ですが、その後この合意がどう広がり、また内容にも変更なり追加があったのかもしれませんがそこのところは私にはわからず。ただ、マネーロンダリングや租税回避対策の為に「各国が協力する」という、そして世界中の国民がそれによって「恩恵を受ける事ができる」わけで、反対する人は「なんらかのグレーかブラックな思惑を持っている人だけ」ってことですよね。当然、私はこの合意は良い事だと思う側です。(笑)
OECD以外の国々の参加、そして「一億円」という数字が合意に出ていますが、金額的にも変更があるかもしれず、コンピュータでの名寄せは難しくないわけですから、「ろくでもないことは考えるべきじゃない」と思っています。
ところが困ることがあります。私達家族は「マイナンバーを持っていない」ってこと。マイナンバーは「住民票」が基本になっていますから住民票を持っていなければマイナンバーももらえない。この辺を調べて見ましたが、「日本の非居住者」は日本に帰って住民票をいれるしかマイナンバーをもらえない様子。
日本に住民票を置くことに何の問題もない人は良いですが、私たちは「日本の非居住者」であり続けたいですので、住民票を入れるなんてまっぴらごめん。
どうしたら良いんですかね。
とりあえず今のところは「新たな銀行口座」を持つことは考えていませんし、口座を持っている銀行からは何の連絡もありません。でも将来的には「マイナンバーを出してくれ」と言われてもしょうがないですね。出さなければ「口座の閉鎖」を言われるかもしれない。
そんなことになるとかなりややこしいことになりますが、ま、それに関しては「その時に考える」ことにしています。(笑)
実は前にブログに書いたことですが、あれは2016年か2015年だったか、その時点では私たちはオーストラリアの居住者でしたが、「銀行口座を持つ【ある国】の銀行」から連絡が来ました。「オーストラリアのタックスファイルナンバーを知らせてくれ」と。これって日本で言うマイナンバーですが、私たちはタックスファイルナンバーを知らせました。もしそれを拒否したらどうなったのかはわからず。
ですからこれは「世界がそういう方向に動いている」ってことでどうしようもないし、「これは良いこと」であって、困るのは「犯罪予備軍」だけですから、受け入れるしかありませんね。
もしも今の時点で「マイナンバーはいらない」という銀行があったにしても、そうじゃなくなるのは時間の問題だと思っています。
私達がマレーシアで口座開設する時にはマイナンバーを出せとは言われませんでしたが、「日本の住所が必要」だと言われました。私たちに日本の住所なんかないわけですが、「無い」というと銀行員が不思議そうな顔をしたのを覚えています。
そもそもMM2Hというのは「Malaysia My 2nd Home」の略であって、セカンドホームがマレーシアならどこかにファーストホームがあるはずですから、その住所を書けということなんですね。これって非常に困りまして、オーストラリアでは非居住者ですし、日本でも非居住者、でもパスポートは日本ですから「日本の住所を書け」と。
すったもんだしたあげく、「戸籍のある住所」を書いたらそれでOKでした。どこの住所を書いたところで調べるわけではないんでしょうね。証拠を見せろとも言われなかった。でもこの辺も変わるんじゃないですかね。嘘の住所を書かれたら何の意味もありませんし。
で、移り変わることがある住所より「納税者番号を重視する」のは当たり前の動き。
ここで次のような考えが出てきます。
「今はマレーシアの居住者」なら「マレーシア以外の国で銀行口座を開く」場合はどうなるのかってこと。
基本的に「納税は居住地で」ってのが基本で、これは多くの国が採用している「属地主義」の考え方。でもアメリカやフィリピンは「市民権を持っている限り、本国の納税義務がある」とするのが「属人主義」。でもこの「世界各国間での【非居住者の口座情報の交換】」は属地主義で考えられているはず。
つまり、今、マレーシアの居住者なら、(例えば)シンガポールで銀行口座を開く場合、「その口座情報はマレーシアに渡される」ってことのはず。
またマレーシアの居住者であれば、マレーシアの銀行にマイナンバーを登録しようが、「口座情報は日本には渡らない」ってことじゃないんですかね。
ただし、「マレーシアから出て、日本に戻る、あるいは他国に移る」ことがあれば、本来は「マレーシアの口座は維持できない」はず。マレーシアでは「居住者しか銀行口座を持てない」ことになっていますから。
じゃぁ、国外に出る時に「それを銀行に知らせなかった」らどうなるのか。もしこれで問題がなければ、その口座情報は「(たとえば)日本には伝わらない」ことになる。
ここで重要なのは、「外国人」=「非居住者」ではないってところですよね。情報交換されるのは「外人の口座」ではなくては「非居住者の口座」であることは、まず頭に叩き込んでおかないと「余計な勘違い」が始まります。
だからマイナンバーを登録したところで、その情報が(たとえば日本)に渡されるわけじゃないってこと。本人が「マレーシアの居住者である限り」ってことになりますが。
はっきり書きますと「マレーシアに隠し口座を持ちたい人」って多くいるんでしょうし、マレーシアのロングステイが終わってから日本に帰っても「口座はそのまま維持する人」も多いんじゃないかと想像しています。でも私は遅かれ早かれ「その手は使えない時が来る」と思っています。
そもそもですね、「海外に隠し口座を持つ」なんていう発想は、私は【古い】と思っています。
でも実際にはそれが利用されて、世界中で「巨額の脱税」が行われていたわけで、それを是正しようと各国はやる気満々ですし、全世界でそのコンセンサスは取れていて厳しくなるばかりですから将来的には簡単には行かないと思います。つまり、今は良くても「口座の維持が不可能」となったら、その金はどこに送るのかの問題が出てくる。海外に隠し財産を持つ多くの人は「自国に持って帰らなければ大丈夫」だと思っているんじゃないですかね。さて、その時が来たらどこへお金を送るのか。
ところがですね、世界にはタックスヘイブンと呼ばれる国や場所がある。
かつてのスイスでは「名前もない口座番号だけの口座」も存在していましたし、また「個人の名前が出てこない【トラスト】」というのは今でも存在するんですね。
どうしても「個人名を隠したい」のであれば、それを使う手は残っていますが、本来ならタックスヘイブンでは法律で「一切の情報を出してはならない」と決まっているのに、「データ流出」という形で今まで色々あったのはご存知だと思います。関係ない人は全く興味がないでしょうが、数年前にUBSというプライベートバンクでも有名な銀行から「情報が流出した」ことがあって、それで名前の出たドイツの高官が辞任するまでになった。その情報を得たドイツは世界に公表はしなかったようですが、他国の政府間でどういうふうになったのかはわからない。でもあのときの衝撃は凄まじかった。
そして近年、パナマ文書も出たわけで、「正式、公式なデータ」ではないけれど、本来データが出ないはずのタックスヘイブンからも出てくるようになった。
またタックスヘイブンも「かなりの圧力」が掛けられているんですね。なんせ「脱税の温床」ですから。
ですからそういうところで「脱税目的の口座」ではないにしても「口座開設が難しくなっている」ということがあるようです。
私は趣味でそういうことを調べて体験するのが好きなのは古くからの読者はご存知のはずで、かつて20年以上前ですがグランドケイマンに(旧三和銀行のお膳立てで)ペーパーカンパニーを持ちましたし、近年ではオフショアで「トラスト」もあったのですが(すでに解約)、その時は「オーストラリア在住者では開設不可能」だったのです。でも「マレーシアに移るのなら」ということでMM2Hのビザを見せることで了承されたなんてことがありました。
なぜオーストラリア在住者は駄目なのかはわかりますよね?
オーストラリアの在住者は「世界所得に対し納税する義務がある」からです。ですから上に書いた「属人主義」の税制を持つ、アメリカ人、フィリピン人は「どうやっても口座開設、トラストを設定することも不可能」なんですね。そして属地主義でもオーストラリアと同じく世界所得に対して納税しなければならない国、日本もそうですが、口座も開かせない。トラストも作らせない。
でもマレーシアは「国外で生じる所得には課税しない」という国ですから、マレーシア居住者はOKとなる。一般的な海外銀行口座だろうがトラストだろうが、個人名が出てこないタイプの口座だろうが、マレーシアは一切感知しないわけですから。
でも「隠し口座」なんて発想がもう古いと思うべきじゃないですかね。
ところが「穴」はまだまだ存在する。でもそういう穴も「段々と外堀を埋められている状態」じゃないんでしょうか。この辺はタックスヘイブンで生きている国や地域に取っては死活問題ですが、それを潰す方向に世界は動いているのは間違いがないと思います。
それとですね、「個人の名が出ない口座」とか「トラスト」ですが、そりゃ良いや、なんて思っても「口座管理料」がかなり高いんですね。トラストなんてそれを持っているだけで手数料が取られますし、またそこを中心にして「投資」をすると「その利益からも手数料が取られる」ということ。
だから普通の銀行口座とは全く逆なわけで、「金を預ければ、預けたほうが手数料を払う」ことになりますから、なかなか思うようにはならないと思います。
そしてそれも近未来には個人が簡単に作るのは出来ない方向になるんでしょうし、上に書いたように、ある日ある時、「自分の名が全世界に晒される」こともあるわけです。
節税ならいろいろな方法はあるわけで、「隠し口座」なんてのは【あまりにも簡単で幼稚な手法】だと考えるべきじゃないんでしょうか。
これからの時代は「節税方法」で頭を使わないと駄目じゃないんでしょうか。
マレーシアだとすれば「ラブアン法人」をどう使うかとか、やれることは色々あるはず。
(追記)
マレーシアの銀行の場合ですが、「非居住者の口座情報を交換」するのではないかもしれないと思っています。まずマレーシアが「居住者、非居住者をちゃんと分けているか」が私にはわからないのです。これは銀行で話をした時に得た「感触」でしかないのですが、そもそもマレーシアは「非居住者は口座を持てない」ことになっていますから、「他国に出すべき情報もない」ってことになりますよね。
でもその辺がちゃんとしているかというとそんなことはなくて、マレーシアは「海外からお金を呼び込みたい国」であるのは衆知の事実で、マレーシアの税制を考えても、「各国が、あるいは情報交換をしようという組織」がマレーシアをどう見るかってことも重要じゃないかと思うんですよ。
「脱税の温床となりうる国」と見られれば、「居住者」ではなくて「外国人」の口座情報を出す可能性もあると思うんです。「我が国では非居住者の口座は存在しない」なんてことが通用するのかどうか。
今一度考えないとならないのは、MM2Hはセカンドホームであって、ファーストホームがあるはずだという考え方が基本なのは間違いがないし、だからこそ、銀行で「日本の住所を書け」といわれたんじゃないかと。これっておかなしなことで、MM2Hを取得してマレーシアに住み、マレーシアの居住者なのに「新たに銀行口座を開く時には同じことを言われる」んですね。マレーシアの住所だけではOKしない。
つまりですね、マレーシアそのものが「MM2H保持者を居住者と見ていない」のかもしれない。
「MM2H=居住者ではない」ってところがポイントじゃないでしょうか。どこの国でも同じですが「居住者の定義」はどんなビザを持っているかは関係ないですよね。国籍があっても居住者とはいえないわけですから。
私たちは居住者のつもりですが、IDカードはもらえないし(かつてはもらえた)、この銀行の決まりにしてもそうで、「何か変だなぁ」と思いが払拭できないんです。
つまり、私達の頭の中では「税法上の居住者非居住者」の考え方が基本になっているけれど、マレーシアの考える「MM2Hは居住者か否か」ってのとは微妙なズレがあるような気がするんですよ。そもそも税法上ではこの国には183日ルールが存在しますし(日本にはない)、183日以上滞在すればそれすなわち「居住者であり納税義務者」であるわけですが、そもそもMM2Hの様な「退職者用のビザ」の場合、当然外人だし、出たり入ったり、またその年によっては2、3ヶ月しか滞在しない(非居住者)。でも10ヶ月以上滞在(居住者)することもあるなんて、いわゆる「長期旅行者」とやっていることは同じなんですね。
ですから、これを「非居住者」として扱う方が、私は合理的だと思うんですよ。MM2Hホルダーがマレーシアの居住者か非居住者かはマレーシアの銀行にはわからないし確かめようがないんですから。
でもマレーシアから「非居住者の口座情報」としてそれが日本に送られた場合、日本国内でのデータと照らし合わせた時に日本では納税されていないとなれば「日本の税務署あるいは国税局からお尋ね」が来るんでしょう。
その時に「いやいや俺はマレーシアの居住者だ」とか「そう言えば去年は3ヶ月しかいなかった」とか、そういう日本とのやり取りは「MM2H各人がやってくれ」というのがマレーシアみたいな。
これは想像でしかありませんが、マレーシアはきっちり決め事を守っている国ではないことを考え合わすと、上に書いたこともあり得るような気がします。
どちらにしましても、かつてペナン在住だった日本人が、(詳しい内容は知りませんが)日本で脱税をしたとして「巨額の追徴金を課され名前も晒された」ことを忘れてはならないと思います。
簡単に取れるMM2Hで、マレーシアに銀行口座を作れば「お金を隠せる」なんて、そんな簡単なことがまかり通るなら、今まで世界中であの手この手のを使っていた人たちは「ただのバカ」ってことになりませんかね。
でもかつては使える手があって、今はもう使えないとか、この世界には長い長い歴史があるわけで、そういうことを知らない人たちが「簡単に考えて」ある日ある時、ゾッとすることが起きるってことじゃないかと。
日本(海外でも同じ)の当局は、我々がどんなビザを持って滞在しているかなんか関係なくて、それぞれの国の「規定」によって判断する。だからMM2Hを持っていさえすれば(日本の)非居住者だなんてことはありえないんですね。銀行は当然、居住者か非居住者かはわからない。
つまり、我々のマレーシアの銀行口座の情報は「全て」日本に送られている可能性すらあるってことじゃないかと。
ネットの中にはマレーシアを利用して「明らかな脱税幇助をする」会社があるのもわかりますが、ま、スケベ根性を出さないのがよろしいかと・・。
私としてはこのブログで「裏技」「バレない方法」みたいな情報は一切書きませんし、そんな情報交換は絶対にしませんので、その辺はご理解ください。