私はそもそもベーコンがあまり好きではないものの、マレーシアでは美味しいのが見つからず困っていました。
やっぱり自分で作るしか無いか・・・・
ということで作ることに。でもベーコンがあまり好きじゃないのは「ベーコン特有の燻製の匂い」なんですわ。だからベーコンは好きじゃなくてもパンチェッタやスペックは好きで、料理につかうというよりそれをそのまま、生で食べてしまうくらい。
でもパンチェッタは熟成で3週間は寝かせますから、温度も湿度も高いマレーシアで作るのはちょっと不安。
な~~んてことを考えていたら何も出来ないので、とりあえずトライしてみました。
基本的に私のレシピは欧米人のプロやアマが作るのを手本としていて、ネットで出てくる「日本式」とはかなり違う点があると思います。特に「亜硝酸塩(ピンクソルト)」を使う人って日本ではほとんどいないみたいですが、私は使う。硝酸塩が世の中に存在するからヨーロッパでソーセージやハムが広がったわけで、それが無かったら歴史が変わっていたかもしれないんですね。それはボツリヌス菌が代表する菌類との戦いがあったから。
ソーセージという名の語源はボツリヌスから来ていると聞きましたが、「岩塩」を使うと菌類にやられないのを人類は発見した。後の科学発展でその理由は「岩塩に亜硝酸塩が含まれている」からなのがわかった。
だから欧米ではプロはもちろん家庭でソーセージやハムを作る場合には「殆どの場合、亜硝酸塩を使う」のね。常識と言って良いくらい。
ところがネットを見ていますと日本のアマチュアはまず亜硝酸塩を使わないのね。それどころかどうも亜硝酸塩は「発色剤」と思われているみたいで、確かに赤い色がきれいに出るのは間違いが無いにしろ、発色が目的じゃないんですね。
ではプロはどうかというと、「当社は亜硝酸塩は使いません」と言っていながら「岩塩」は使うとか。また亜硝酸塩は日本では「野菜に含まれるもの」として有名で発がん性が言われていたり。
確かに亜硝酸塩の毒性って半端じゃなくて、小さじ一杯でも大人が死ぬらしい。
なんでそんな物を使うのか?って思うでしょうが、それを使うのがソーセージやハムでは普通だし、私の調理実験は「元祖に近いものを作る」のをモットーとしていますし、ソーセージやハムを今の時代に繋げてきた先人たちに敬意を払いたいと思ったり。(笑)
亜硝酸塩は危険ですから、それを「大量の塩」と混ぜたものが売られているのが普通(亜硝酸塩の含有量は6.25%)。でもそれをただの塩だと思って使うと大変なことになりますから、ピンクに着色してある。だから「ピンクソルト」と呼ばれるわけで、あるいは「キュアソルト」とか。でも今の時代、ピンク色の塩が出回るようになって間違えたら大変なことになるから気をつけないとですね。
ピンクソルト(キュアソルト)には二種類あるのですが、#1は亜硝酸塩が入っているもの。#2はそれに硝酸塩が足されているもの。#2は長期に保存するもの(サラミみたいな)に使われるのが普通で硝酸塩は時間と共に亜硝酸塩に変わるから「効力が長続きする」ってことなのね。
マレーシアで売っているのを見つけられなかったので(日本でも見つけるのは難しい)、アメリカから取り寄せました。
とりあえず豚バラで少量作ってみることに。
あまりスパイスを使いたくないのですが、高温多湿のマレーシアですからしっかりスパイスを使うことに。
最近なぜかフェンネルに凝っていまして、フェンネル、ナツメッグ、黒胡椒、そして塩とピンクソルトを混ぜて豚バラに刷り込み、それを冷蔵庫で保存。
1週間後に取り出しますが、結構ドリップが出ていました。塩をまぶしてありますから浸透圧で水分が出るんですね。
随分、硬くなって縮んでいます。
これを「乾燥と熟成」させるわけですが、どうしましょう。
って冷蔵庫しか選択肢はなくて、15,6度の気温ならまだしも30度を超えるマレーシアで「その辺に吊るしておく」わけにはいかず。
また一般的にパンチェッタは気温は15.6度、そして湿度が60%程度が良いとされているんですね。でも冷蔵庫は湿度が低いですから、乾きすぎるかもしれない。
「乾かす」「水分を抜く」のが目的だという人が多いですが、私はそれは違うと思っていて、「熟成」が目的ですよね。だから早く乾燥させれば良いってわけじゃない。
もし早く乾燥させるなら、「セロファンで包んでシリカゲルの中に入れる」のが一番早いと思います。これって魚の開きを作る製法の一つでかつては「灰干し」と言われる「灰の中に入れて干す」があったけれど、今ではセロファン+シリカゲルだそうです。
あるいは「ピチットシート」を使うのも良いし、セロファンで包んで砂糖(塩ではない)の中に入れればピチットシートと同じことが起きる。セロファンの場合、塩を使うとセロファンを通して塩が(若干)中に入っちゃうのね。また、セロファンなら何でも良いのではなくて、防湿性のセロファンが大量に出回っていますからセロファンを入手する時には注意が必要。(花屋やベーカリーで使うセロファンじゃ駄目ってこと)
でもその方法だと早く乾きすぎるんじゃないですかね。
パンチェッタを「そのまま冷蔵庫で干す」作り方もあるわけですが、とりあえず「キッチンペーパーで撒いて冷蔵庫に放置」する方法を取ることに。一番コストも安いですし。(笑)
ちょっとだけ食べてみます。ここで塩加減が強ければ、塩抜きをしないとならない。でも塩気は問題なさそう。ただスパイスが・・・。使いすぎだ~~、アホ~~。
水に漬けておけば、塩抜きと同じでスパイスの香りも飛ばせると思いましたが、なんとなく水に漬けたくないのでこのままで行くことに。
冷蔵庫に入れて3週間後がこれ。
かなり硬い感じがします。でもこれでOK。欧米で良く言われていることは「元の重量の35%軽くなる程度」で仕上げるらしい。それだけ乾かすと、肉の水分である「自由水」は完全に飛ぶんでしょうね。で、まさにこの自由水の中で細菌は活動するわけで、自由水をなくすのが長期保存の要なんでしょう。ちなみに他の水分はタンパク質と結合している「結合水」でその中まで細菌は入らないとのこと。また結合水は乾燥しづらい。
とりあえず試食。
ちょっと炙るぐらいにして食べてみたのですが、しょっぱ~~~~~~~い。(T_T)
かなり塩は抑えたつもりでいたのですが(3%以内)、効きすぎ~~~~。食べられないほど塩っぱくないけれど、塩っぱい。(T_T)
そしてスパイスをごっそり付けすぎましたね。スパイスの香りが強烈~~~~。
またそのスパイスの色が付いたのか、綺麗な色はなくなって茶色。塩漬けした後もこんな色だったけれど・・・・。
これって食欲が湧きません。
失敗ですねぇ、これじゃ。
まずいわけじゃないですが、美味しいとはお世辞にも言えない。危ない匂いも味も無いのだけれどスパイスが強すぎ。(T_T)
捨てるほど酷くはないので、これでカルボナーラでも作りましょうか。これとオイルだけでも良い感じのができそう。
パンチェッタパスタなんてあるのかどうか知りませんが、パンチェッタを主役にしてキノコを入れたりいろいろできそう。
そうでもしないといつまで経ってもなく減りませんもんね。食べるのは私だけだし。(笑)
マレーシアへ来てからはじめてのパンチャッタは大失敗。残念でした~~~~~。