MM2Hだろうがどんなビザだろうが、国外に居住していて「相続」が発生した場合、現地の法律に従わなければならないわけで、かなりややこしくなるみたいですね。
ただし、マレーシアの場合は、「相続法の上に遺言がある」と私は聞いてて、「遺言書があればその通りに相続が行われる」と解釈しています。またマレーシアでは銀行口座などを「ジョイントアカウント」にすることが多いですが、他の国では「一方が亡くなっても残った一方が自由にその資産を動かすことが出来る」のが普通ですが、マレーシアではそれが簡単にはいかないと言われていますね。
片方が亡くなったのを銀行が把握した時点で「口座は凍結される」ことになっていて、自由に出し入れできなくなる。そうなった場合、相続人全てに連絡を取ったり、またマレーシアでは裁判所の決定を待たざるを得ずそれには数ヶ月から数年掛かると言われている。
だから「遺言書を作れ」と言われているわけですね。
その遺言が「公正証書遺言」なら話ははやいと。
それで名義を替えてしまえば「相続は終了」になると考えがちですが、ここでややこしいのは、「日本人である限り日本の国内法が相続には適用される」ということ。
つまり、もし日本に相続人がいた場合は、彼らにわけなくてはならないし、遺言書に「隣のヨシ子さんに全て譲る」と書いてあっても駄目なんですね。つまり日本には「遺留分」という仕組みがある。
また今の時代、再婚同士の夫婦も多く、前の婚姻時に「子供がいた」なんてことになると話はもっとややこしくなる。その子供は離婚してから30年一度も会ったことがないにしろ、「法律的には遺留分を相続する権利がある」。
別れた前妻(前夫)の子供には一切財産を渡したくないと遺言書に書いたところで、遺留分はわけなくてはならない。
つまり、マレーシアにある資産を「現在の妻(夫)」に全額、移すことが出来ても、日本にいる「法定相続人」には遺留分を受け取る権利があって、後にそれを請求されることがあるということ。
別れた子どもたちには「残したくない」と思っても無理。あるいは子供が日本に何人かいて、でも遺産は「妻(夫)」だけに残したいとか、長男だけに譲りたいと思ってもそれは不可能となる。
別れた時に「相続は放棄する約束をした」なんてのも意味がないわけで、相続放棄を被相続人(死ぬ人)が生きている間には出来ない。相続放棄は「相続が始まってから出来る」もので、相続が起きていなければ「相続放棄の約束は無効」となる。
いや、ちゃんと約束したから・・・なんてのは全く意味がなくて、「気が変わった」と言われればそれで終わり。
ただし、「遺留分の放棄」は生前でも可能なので、「家庭裁判所で正規の手続きをして、遺留分放棄」をしてあればOK。
ここで私達がしっかり認識しないとならないのは、「税制」とか「非居住者」とかそういうことにはそれなりに調べ知識はあっても、「相続」そのものは「本国法主義(被相続人の国籍を基準とする)である」ということ。日本国籍を持つ限り、海外在住でも関係ない。
また「法定相続人」と「遺留分」をごっちゃに考えてしまうと駄目で、遺留分は「兄弟姉妹には権利はない」という点。
遺留分に関しては
1:配偶者
2:子(代襲相続人)
3:直系尊属
のはず。
(遺留分の帰属及びその割合)
第千二十八条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一
引用元:民法第1028条
日本の非居住者だから「納税義務者ではない」とか「海外に出て10年経ったから相続税を日本に収める必要はない(10年縛りはクリヤー)」だとしても、「誰が相続するのか」「遺留分」に関しては「どこに住んでいても日本の法律に従わなければならない」ということ。
マレーシアの場合は、相続が起きたらそれを銀行が知る前に「銀行からお金を引き出してしまう」ことは可能だとしても、MM2Hビザの為に人質になっている定期の場合はそうはいかない。だからやっぱり「遺言書」が必要なわけで、でもそれを含めて引き出したとしても、相続は完了とはならない。日本にいる法定相続人がそれを知った場合、遺留分は請求される。
ややこしいですね。
またマレーシアってイギリス系の法体系になっていますから、「不動産については財産所在地の法律が適用される」ことになっているはず。これを「相続分割主義」と言って、アメリカ、イギリス、フランス、中国などがそれ。日本の場合は「相続統一主義」で全ての相続財産は一律に扱われる。またそれも2つに分かれていて「被相続人の最後の住所地を基準とする住所地法主義」と日本のように「被相続人の国籍を基準とする本国法主義」がある。
だから不動産がある場合は国際相続に詳しい弁護士を頼まないと駄目だろうし、動産(定期やキャッシュ)だけだとしても、「日本の法定相続人」を無視することは出来ず(遺留分があるから)、簡単にはいかないんじゃないですかね。
マレーシアには「相続税がない」なんて喜んでいても、法定相続人が日本に在住していて(あるいは海外に出てから10年以内)の場合は、その分は当然、日本に相続税を納付しないとならない。
「オレが死んだらヨメさんに100%譲って、相続税はゼロだ」なんて思っていても、日本にいる法定相続人が遺留分を請求すればそちらに分けなくてはならないし、なおかつその分は日本の相続税が掛かる。これは日本の法定相続人が気がつく前に、マレーシアで譲ってしまおうと思っても意味がなくて、遺留分は後からヨメさんが請求される。
ちなみに、遺留分は「相続を知ってから1年以内」、あるいは「相続が起きてから(それを知らなかった場合)10年以内」に請求しないと無効になるらしい。
また上にも書いたけれど、渡したくない法定相続人がいて、その本人も「遺留分を放棄する」という意思がある場合は「家庭裁判所でその証書を作る必要がある」とのことで、手書きの覚書みたいなものだと「裁判になる可能性あり」なんでしょう。
相続って、仲の良かった兄妹でも骨肉の争いになるなんてことは世の中の常識で、「生きている間」はニコニコしていても「死んだら豹変する」なんてことが普通に起きる。
困ったもんだ。
でも「飛ぶ鳥跡を濁さず」とするならば、その辺も想定して、生きている間にきっちりさせておくのが大事なんだろうと思います。
ちなみに我が家は、ヨメさんには一切の財産を残さず、二人の息子が全て相続することになっています。ヨメさんも承諾済み。でも「遺留分の放棄」の手続きはしていないので、私が死んでから「やっぱり私の分はもらうわ。遺留分は4分の1よね?」なんて言い出して、格好いい若者と手をつないでどこかにいっちゃうかもだ。(笑)
また「私には隠し子はいないから安心しろ」とは言ってあります。(笑)