ヨーグルトメーカーで「低温調理」するときの注意点

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このブログって面白いもんで、調理関係、特に低温調理に関する日記にアクセスが集中しています。マレーシア関係の10倍はあるかも。(笑)

その中でも最近、目立つのは「ヨーグルトメーカーで低温調理はしないほうが良い」という日記のアクセス。これは必ず、毎日、それなりのアクセス数があります。

ネットで「ヨーグルトメーカーで低温調理をしよう」みたいな広がりがあるんですかね。

でも私としては「ヨーグルトメーカーで低温調理はしないほうが良い」と今でも考えていて、それに文句を言う人、ヨーグルトメーカーでも大丈夫だと主張する人、私を貶めたいと思っているとしか思えないコメントやメールを頂くことがあります。

人それぞれ考え方が違って良いのに、なぜこういう反応が来るのか理解に苦しみます。反論されると「自分の人格まで否定されていると感じる日本人の特性」があるからですかねぇ。

私がなんと言おうとヨーグルトメーカーで十分だと思うならそれを続ければよいし、それどころか「炊飯器の保温機能」や「鍋と温度計」だけで低温調理を楽しんでいる人はいくらでもいるわけで、自分の思う道を行けば良いだけの話。

ただし、ネットの中の「ヨーグルトメーカー」で低温調理をする人のレポートを見ていて、こりゃ、危ないと思うことがあるのでそれははっきり書いておこうと思います。

○ 芯温を必ずチェックすること

低温調理は「湯煎」でやるケースが多いわけで、ヨーグルトメーカーも同じですが、ヨーグルトメーカーの多くは「熱量が足らない」わけです。低温調理器は一般的には800ワットとか1000ワットなんてのが多いですが、ヨーグルトメーカーはそもそも「低い温度」「長時間」温め続けるのが主な仕事ですから、大きなワット数はいらないんですね。大体25~30ワット程度じゃないんですか?

だから、たとえば肉の塊を「65度」で低温調理するにしても「半端じゃない時間が掛かる」わけです。容器の中の水をその温度にするにも時間がかかるし、なおかつそこに「大きな肉の塊」、それも「冷蔵庫から出したばかり」ならどうなるのか。ヨーグルトメーカーのワット数は大体25ワットとかその程度が主流で、理科系の人ならその容器に18度のお湯を何ミリリットル。温度は5度程度で800グラムの肉の塊を投入した場合、芯温が65度になるにはどれだけの時間が掛かるか計算できる人もいるでしょう。私には出来ませんが。(笑)

どちらにしても半端じゃない時間がかかるんですね。そしてなおかつその温度を数時間維持するのが普通。

ところがネットを見ていますと「うまい具合に出来ました~~~」という写真付きのレポートの中に、「芯は50度にも達していないだろう真っ赤っ赤の状態」だったりする。

これって低温調理したつもりで調理できていないわけですが、それに気がついていない人も多いのがわかります。

50度にも達していないってことは「生状態」と同じで、これを子供や年寄りが食べても大丈夫なのか。もし素材に問題があるようだったら病院行き、あるいはユッケを食べて死ぬ人もいるわけだから、ちょっと失敗しちゃった~~じゃすまないと思うわけです。

これってワット数の大きな低温調理器を使っても同じで、

「最初の内は必ず【芯温】を測ること」

が大事だと思っています。

またそれを続けていると、どのくらいの大きさの肉なら芯温が何度になるにはどのくらい時間がかかるかってのもわかるようになるのね。これって大事なことで、「その温度でどのくらいキープするか」ってのも低温調理では大事ですが、その計算もできるようになるということ。

ちなみに「設定温度より高くなることはありえない」わけですが、長時間、例えば55度で牛肉を保持すると「熟成効果」がある。だから「時間が長い分にはOK」という考え方を私は以前持っていて、その様に書いていたこともあるんですが、実際にいろいろやっている内に「熟成効果」というより「煮込んだ肉に食感が近くなる」こともわかってきて、やっぱり適度な温度、時間ってのがあると思うようになってきました。

つまり「肉本来の柔らかさ」と「低温調理で柔らかくなった」のは全くの別物だということ。

柔らかくなればそれで良いと言う考え方もあると思いますが、ステーキにしてもその二種類の柔らかさって全く違うわけで、特にステーキの場合の「低温調理よる柔らかさ」には私は違和感を感じます。これって「重曹」「パイナップル」「キーウィー」などを使って柔らかくするのも同じで、「柔らかさ」が違うのね。

低温調理を「安くて硬い肉を柔らかくする」為に使うのはどうなんでしょうか。「硬い肉を硬いまま食べる」よりは良いかもしれませんね。でも「高価で柔らかい肉を低温調理してみる」のも是非やっていただきたい。そういう肉だからこそ「理想の焼き加減で食べたい」と思うわけで、そこにこそ「低温調理の出番」があるんじゃないですかね。

また55度で数時間ホールドしても、その後は58度とか59度、あるいは60度で仕上げたほうが美味しいとか、好みの違いもありますのでそういうこともやるようになった場合、「火力が弱くて温度コントロールが難しい」ってのが問題になってくるんですね。長時間かければ良いじゃないかと思うかもしれませんが、ある一定の温度は「早く通過しないと危ない」こともあるじゃないですか。特に低温調理は「雑菌が運動会をする温度帯」も使うんですから。

これって保存のために料理の温度を下げるときも同じですよね?一気にある温度まで下げずにダラダラやっていると「雑菌が運動会を始める」わけですから。冷蔵庫に入れる場合、「常温になってから」と考えるのは一般的ですが、プロの多くは「自然放置」なんかせずに、氷水で一気に冷やすのが当たり前だということも忘れてはならないと思います。

ですから、ヨーグルトメーカーを使う場合は「芯温」にかなり神経質になる必要があるし、温度の上昇にどの程度の時間がかかるのかの把握は絶対に必要になってくると思います。つまり、低温調理器を使うよりいろいろと考えなくてはならないことが多いってこと。これって「危険回避」の為に必ず考えないとならない。

また低温調理中に、容器の「上部」と「下部」にどのくらいの温度差があるのかも知る必要があります。

これって意外に大きくて、「真冬のお風呂状態」と言っては大げさですが、意外に温度差があるんですね。これは「鍋と温度計」を使う場合も同じで、この温度差を出来る限りゼロにしないとうまい具合に仕上がらないのね。

「一度違うだけで仕上がりがまるで違う」

最初の内はこの辺って適当で、なんせ炊飯器の保温機能を使っても「うまく出来た~~~\(^o^)/」なんて思うのが普通なんですね。私はそうでした。

ところがやっぱり炊飯器じゃ温度が高すぎると思うようになってきて、どうしたら良いのか悩むわけですよ。でも炊飯器は温度調節が出来ない(出来るのもある)から「時間で調節をしよう」と思うんですね。

でもこれがまた難しいなんてもんじゃなくて、それが簡単にできるなら、そもそも湯煎の低温調理じゃなくて「オーブン」を使えば良いってことなんですね。

オーブンの使い手っていくらでもいますが、私にはこれほど難しいものはないと思うんですよ。

何度で何時間焼けば良いのか。それも大きさが違ったり、いびつな形の肉ならどうしたらよいのか。だから「芯温を常に測れる温度計を使う」なんてこともするわけでしょ。でも何度やっても、肉の大きさ、形が違っても「常に同じものを作る」のは至難の業。

これはプロとて同じで、だから大量生産するような店、職場では大型の「スチームコンベクションオーブン」とか使うんじゃないんですか?

ステーキを焼くのも同じで、どうしてもバラツキが出来てしまうけれど、プロの世界はそれでは困るわけで、やっぱりスチームコンベクションオーブンや湯煎の低温調理器を使う店って結構多い。

「安定した仕上がり」ってのが大事なわけですが、これこそが私達素人の味方になるんじゃないでしょうか。「偶然狙い」は皆無になるし、常に同じもの、常に狙ったものを作れるようになる。

それには「温度も正確」じゃないと駄目で、容器の上と下と温度がもし2度違ったとしたら、上の方は「ミディアムレア」で出来ても、下の方は「レア」のままになる、なんてことが起きる。

特にわかりやすいのが「温泉卵」で1度の違いでまるで違うものが出来るんですね。私が驚いたのは、このブログの読者の方で「0.5度」単位で調整する方もいらっしゃったこと。

うそ~~と思うかもしれませんが、やっている内にそうなってくるんですよ。

自分にとって「完璧なもの」が作れるようになるからなんですね。

私は温泉卵はそこまで拘りませんが、牛肉に関しては「ミディアムレアのレア寄り」が好きなんですよ。そういう細かい調節が簡単にできるのが低温調理の良さであって、それには「温度が正確であること」が重要となります。

これは「実際の温度との誤差がない正確さ」という意味ではなくて、「鍋の中が同じ温度であること」が重要なんですね。

これって従来のオーブンも同じで、近年出てきてる「コンベクションオーブン」ってのはそれでしょ?熱風で内部をかき回し熱するわけで、上から、あるいは下から熱すると温度が一定にならない。上下で熱するならまだ良いんでしょうが。

あああああ、もしかすると「オーブンを使って悩んだことが無い人」には低温調理がなぜ良いのか、低温調理のどこに注目するべきかがわからないかもしれない。

もちろん実際の温度と表示されている温度との誤差が大きいのは困りますが、そもそも正確な温度計って一般的な低温調理器よりも高いのが普通なのね。だから「適当な温度計しかついていない」前提でいないとならないわけですが、たとえば「56度と表示」していたら「鍋の中は全て同じ温度」であることと、「同じ様にしたらいつも同じ温度」であれば問題がないわけです。

表示は56度だけれど、実際の温度は57.3度だったなんて誤差があっても「他人とデータ交換をしない」のであれば、「自分にとっての56度は一定」であればそれで構わないわけです。

でもそれと同じ結果を違う機械で出すことは不可能と思ったほうが良いわけです。それぞれの低温調理器に誤差があるから。だから他人が言う温度をそのまま信用してはならないんですね。表示温度は同じでも実際の温度は違うのが普通。

でも低温調理器に「キャリブレーション機能」つまり、表示温度の誤差を修正する機能があると一歩前進ですね。

そして「鍋の中の温度は一定」でないと場所によって出来上がりが変わりますから、低温調理器の「撹拌機能」が重要になるわけです。

これは「鍋+温度計」でやっているときもそうでしたが、長い時間調理すると「温度のブレそのもの」は時間で吸収できても、「上部は熱い」「下部はぬるい」ってのは駄目なわけですよ。

また低温調理をやっているといろいろ手を出したくなりますし、大量に作りたいなんてこともあるわけで、「大きな容器が必要」なことも出てくるんですね。それに対応するには「強い熱源」と「大きな撹拌力」がないとばらつきが出てしまうわけです。

ここまで読んで、「そんな細かいことまで気にするのか?」って思う方がほとんどだと思います。

私だってまさかそんなことまで・・・と思っていたわけですよ。ところがやっている内にだんだんそうなってくるんですね。ちょっとした違いで出来上がりに違いが出るのがわかってくるし、「自分の理想の出来上がり」を追求するとそういう細かいことも大事だというのがわかってきます。

そんな~~面倒な・・・と思う人も多いと思います。上に書いたように「炊飯器の保温機能」で満足する人もいるんですから。

でもどんどん突き詰めていくと、面白さが倍増するのが低温調理の魅力だと思うんです。上に書いた「温泉卵を0.5度単位で調節する」このブログの読者もその面白さにとりつかれたはずで、これが面白いんですね。そして何度も書きますが、一度わかれば「何度でも同じものが寸分の狂いもなく作れる」ってことなんですね。だから低温調理こそ、素人向けだと思うわけです。

私としてはそこまで凝っていただきたいとは思わないものの、「基本的な性能が必要」ってのはあると思っていまして、ヨーグルトメーカーは取っ掛かりとしては十分に使えると思うんですよ。炊飯器の保温機能も同じ。

私もスタートは炊飯器でしたし、次に「鍋+温度計」となり、そして「温度調節が出来る料理器具」に移り、結局はそういうのは使いものにならないと思うようになり「低温調理専用機」になったわけです。

でもこれが最終かと言うとそんなこともなくて、低温調理専用機でもいろいろ特徴があるんですね。だからやっぱり上位機種を欲しいと思うようになる。世界の低温調理オタクって違う種類の低温調理器を何台も持っている人が結構いるんですが、そうなる気持ちもよく分かる。(笑)

そして・・・・

家庭用のまともなスチームコンベクションオーブンが欲しい・・・と思うようになる。(笑)

でも普通に家庭用に売られている多機能オーブンの温度管理じゃ役不足なのね。

ヨーグルトメーカーでも抑えるところを抑えれば使えるはずで、そんなのは絶対に駄目だなんて思わないわけです。「鍋+温度計」だってかなりのことが出来ますし。

でも私としては「たった一度でこんなに違うのか」というのを経験してもらいたいし、「やっと自分の理想のものが出来た~~」という喜びも是非感じてもらいたいんですよ。

そしてそれって決して「偶然」じゃないんですね。ここが非常に重要なところで、「これだ!」というのがわかれば、いつでも何回でも、素材の大きさや形が違っていても「常に」同じものを作れるってこと。

でもヨーグルトメーカーだとその域に達するのは難しいと思うってことでしか無いんです。必ず壁にぶち当たるはずだと私は確信しています。

ある時期ちゃんとした高性能の低温調理器を手に入れればよいのですが、まずは家にあるヨーグルトメーカーを使うならまだしも「ヨーグルトメーカーを買って低温調理をやってみよう」というのははなはだ疑問であるとしか言いようがないのです。

最近は低価格の低温調理専用機が売られているようですし、私は低温調理器でヨーグルトや納豆を作るぐらいで、あえてヨーグルトメーカーを買う時代じゃなくなったんじゃないですかね。またオーブンにもその機能がついたものが出てきましたし。

ま、低温調理と一口で言っても非常に奥が深くて「野菜やスープの低温調理」もありなんですね。日本の土瓶蒸しとか、中華のツボ料理とか、あれって低温調理なのがわかってくるし、広がりも半端じゃない。

それと今までブログには書いたことはありませんが、低温調理って「真空調理」でもあるわけですが、「真空パック」ってのも結構大事で、「袋ごと水に沈めて空気を追い出して密封する」という方法を使う人は多くいますが(ストローで空気を吸い出すなんてことも私はやってました)、空気は極力排除しないと加熱ムラが出来たり、また「強い負圧を掛けられる真空パック機」って味を染み込ませることが出来たり、真空パック機の違いが出来上がりの違いにも出てくるんですよ。

ま、道具に拘るとキリがありませんが、でも最終的には「調理器具じゃない」ってのもわかるのね。

それに気がついたときの落ち込み方って半端じゃないですが・・・。ま、こればかりはしゃーない。(笑)

Let’s Enjoy Sous Vide Life !!

 
 
 

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