銀行から「納税義務のある国の確認」メールが来た。CRS(口座情報交換のあれ)の為ですと。

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香港の口座を持っている銀行から「口座の主の【納税義務がある国はどこか?】の確認メールが来ました。

こういう風に銀行から確認を取るメールを受け取るのは今回が初めてですし、世界的にこういうことをちゃんとやりだしたということを読者の方々にお知らせしたくて書きます。

多くの国の間で「非居住者の口座情報を交換する」CRSがありますよね。それに届けるために「口座の持ち主の納税義務がある国」の確認ですと。

Name of reportable person :XXXXXXXXX XXXXXX (私の名前)
Reportable jurisdiction(s) : Malaysia

とあって、「これに間違いがなければそのまま放置してください。」「もし違っていたら、あなたのRelationship Managerに連絡をし、必要な手続きをとってください」と。期日は4月30日まで。

このCRSのレポートを香港の国税庁に提出するのは5月31日だそうです。そしてそれは2019年分の私のその国の口座情報はマレーシアの当局に渡るんでしょう。(ビッグデータにそれが乗り、マレーシアだけではない国もそれを見ることは可能なのかもしれない)(またCRSで交換される項目は全くわからない)

そしてCRSで口座内容を交換するのは「Automatic Exchange of Information (AEOI)」システムというらしい。(初耳)

この納税義務地の確認をすること、それをその国の国税庁にいつどの様に連絡をするのかとかは国によっても違いがあるんでしょうが、今まで20年以上の付き合いがあるこの銀行からこういう内容のメールを受け取ったのは初めてです。ですから他の国の銀行でも同様のことが始まる、あるいはすでに行っていると思われます。

ちなみにこの銀行ではこの数年、「日本の居住者」「オーストラリアの居住者」には口座の開設すら認めておりません。他の国の居住者に関しても同様だと思いますが、個別の国名はわかりません。絶対に間違いないのはアメリカの居住者。世界一五月蝿い税制ですし。(笑)

では「なぜマレーシアの居住者なら口座を開けるのか」ですが、それはマレーシアは「海外を源泉とする所得には課税しない」という税制があるから。つまり、マレーシアの居住者はこの銀行の口座を使って「マレーシアの当局に対し財産隠し、収入隠しをすることはありえない」、あるいは「マレーシア当局はこの口座に関知しない」ということだと思います。ところが日本やオーストラリアは「海外の所得にも課税する税制」ですから、もしこの銀行に口座を持ち、その存在やそこで生まれる所得を本国(日本やオーストラリア)に口座の主が申告しなかった場合、当然、脱税となりますよね。

申告するか隠すかは銀行ではわからないわけで、もし口座の持ち主が脱税でもしようものなら、銀行は「脱税幇助をしている」みたいに各国の当局から見られることがあるってことじゃないですかね。

特にプライベートバンク部門を持っている銀行は、かつては「脱税の温床」と言われてもしょうがないようなことをやってきたわけで、時代も変わり、「そういうことはしていない」という世界に対するアピールも必要なのかもしれませんね。「当銀行では貴国の居住者の口座開設をそもそも認めておりません」というのはアピール度も高いはずですから。

前にこのブログに書きましたが、日本にあったCitiのプライベートバンク部門、あるいは旧三和銀行のある海外部門は「海外に資産を出しませんか?」という営業をやっていたわけですから、そしてそういう銀行は未だにいろいろあるはずで、「当銀行はそういうことはしない」というアピールは大事なんだろうと想像しています。日本にあったCitiのその部門はある時、当時の大蔵省の指導があって閉鎖したと聞いています。また旧三和銀行は、日本国内ではその業務はせずに海外にその拠点を置いていました。では旧三和銀行が何か悪いことをしていたのかと言うとそうではなくて、「日本の税制に従って行っていた」のは間違いがないんですね。でも「海外に移住して、資産を海外に出せば【相続・贈与対策になる】」と客を集め、なおかつその資産はタックスヘイブンに置くようにしていましたから、日本の当局としては面白くなかっただろうと思います。

それもあるからその部門を日本国内には置かなかったってことですね。そして海外から定期的に来る担当者は「このことは絶対に口外しないでください」と何度も何度も念を押していました。30年前の話ですから時効だと思って書いちゃいますが、当局に目をつけられるとそれはそれはいろいろと意地悪されると言っていました。突然、ある支店に来て「監査をする」とか始まると。当然、支店では仕事にならず大騒ぎになると言っていました。

また海外、特にタックスヘイブンにある銀行は日本の国税庁なんて関係ないですから、もっと露骨にやっていたんですね。「あなたの口座情報は秘匿されなければならないと、我が国の法律で定められています」なんてのが売り文句。国の法律で口座情報を外部に出してはならないと決まっていますから、他国の国税庁が「誰それの情報が欲しい」と言ってきても「断らなければ法律違反」となる。

きっと今でもその法律を固持している国や地域もあると思いますが、近年のその手の情報は私は全く持っていません。

ただそういう国、銀行を野放しにしない、というのが今の世界のコンセンサスですから、そういう銀行は「アメリカでの活動はさせない」とか「送金もさせない」とかそういう扱いをうけるのかもしれないと思います。かつてUBS銀行(プライベートバンクでは有名)から顧客情報が盗まれて世に出てしまい、特にヨーロッパでは大騒ぎになってドイツの大物政治家が辞任に追い込まれたりした覚えがあります。また皆さんも御存知の「パナマ文書」「パラダイス文書」のリークですが、私はあれは「情報が盗まれとした、意図的なリーク」じゃないかと邪推しています。つまりその情報を出さないと「仕事ができなくなる」あるいは「訴訟を起こす」という大国からのプレッシャーがあったのじゃないかと。

アメリカの北朝鮮、イラン、ロシアがらみの企業や人物に対する制裁を見ていると、やるときはやるってのがわかりますよね。あんな感じで「かなり追い詰められていた銀行やコンサルタント会社」ってあったんじゃないですかね。だから「リークされたと情報を出すしかない」ことが起きたと想像しています。アメリカはフランス大手のBNPパリバ銀行に約9000億円の罰金と1年間の米ドルの決済停止したのは記憶に新しい。(パリバは米国が金融制裁の対象としたスーダンやイランとの間でドル送金などの金融取引を続け、その事実を隠していたのが発覚)

だから「隠し財産が多い銀行」はかなりビビったはずで、そして近年決まった「非居住者の口座情報を交換する」ことに対しても「積極的に関わるしかない」んじゃないかと。

時、同じくして、ペナンのリカさんのブログに「CIMBがビザのない人の口座を閉じ始めた」という記事がありました(ここ)

内容はリカさんのブログを見ていただくことにして、要は「CIMBがビザのない人の口座を閉じ始めた」という話。

マレーシアは「居住者でなければ銀行口座は開けない」ことになっていますから、ビザのチェックを厳しくした。これってまさにCRS関連での動きと考えても良いんじゃないですかね。多分、マレーシアの銀行は「MM2Hビザを持っている人は【居住者である】」という考え方で「誰の口座情報をCRSにわたすか」をフィルタリングしているのかもしれませんね。

でも前にも書いた通り、こういうのっていくらでも抜け穴があって、「MM2Hを保持したまま、友人宅の住所を借りる」ようにして、自分は日本に住む(日本の居住者、納税義務者)ようなことをしてもマレーシアの銀行は誰がどこにどんな風に住んでいるのかは調べませんから、わかりようがない。

前に読者から、「イミグレにあるその人の出入り記録を調べて、居住者か否かの判定をしているはず」とコメントをいただきましたが、私はそこまでやっていないと思います。そもそも居住日数だけで居住者か否かは判定できませんから。そして日本みたいに183日ルールがない国はお話にもならない。

ですので、どの国も「居住者の判定」って適当なところで妥協しているはずだと思っています。

一番上に書いたメールが来た銀行ですが、「マレーシアの居住者なら口座を開けます」ということになっているものの、それをどう彼らがチェックしたかと言うと、私達が持っているビザです。MM2Hがあるかどうかチェックしただけ。そしてその銀行の決まりでは、年に一度、「実際に会って」状況に変化がないかのチェックをするようになっています。つまり、マレーシアに住んでいたけれど、今は日本に帰っているなんてのが分かれば、「口座は閉鎖します」ってことになるのね。

そしてCIMBもMM2Hビザのチェックを始めたってのは同じようなことをしていると私には思えるのです。

ただし、前にも書いたように、CIMBが、MM2Hビザを持っているのは「マレーシアの居住者とする」のかどうかの確証はないですよね。想像でしか無い。だから国籍がある国へ情報が流れるようになっているのかどうかも調べようもない。また日本国籍の私達が、実はオーストラリアに住んでいたなんてのはマレーシアの当局が調べようもない。

なおかつマレーシアではないどこかの国で「マレーシアの居住者」として口座を開けば、まさに私がそうであるわけですが、マレーシア以外に私の情報は流れない。

だからこの条約はザルでしかないと思うわけです。隠そうと思っている人は簡単に隠せてしまう。(私が香港の銀行に口座を持っているのは隠すためではなくて(笑)、何度も書いている「お金にはお金の住みやすい場所がある」という考え方から、アジアで一番の金融都市に口座を持っているわけです。世界中のありとあらゆる金融商品にアクセスするのも簡単ですから。奄美大島の銀行より東京の銀行のほうが良いというのと同じ)

でも隠すつもりもなくてのほほんとして、しかし居住国に所得の申告もしていなかったような人は、このCRSであぶり出されてくるんでしょう。

そしてCRSは始まったばかりで、これから当然、進化するはずで、また銀行がこれに積極的に協力をして「資産・収入隠しは認めない」という各国の目標は達成できる日がいつか来るんでしょう。

今回は「自分の資産・収入を知られたくない」という前提で書きましたが、私自身はその考えはありません。もしその考えを持っていて隠すようなことをするのならまずマレーシアには来ません。私達は「マレーシアに在住している限り、隠さなくても無税」なんですから。相続税・贈与税も無い。(ただし日本在住者が海外に出た場合、10年間は相続・贈与は日本の税法に従う10年縛りがあるのは何度も書いていること)

どちらにしても、海外の口座を使って「隠す」「脱税する」という時代は終わりに近づいているというのをヒシヒシと感じる今日このごろ。

 
 
 

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