マレーシア人、それもマレー系だけが優遇されている金融商品のことを聞いたことがあると思います。これってマレー人優遇政策のブミプトラ(Bumiputera)の一つ。
当然、マレーシア人でも中華系、インド系は駄目。ただ私にはわからないことですが、イスラム教徒なら良いのかどうか。あるいはマレー系でもキリスト教徒も決して少なくないわけでその人達はどうなのかはわからず。
これって「定期預金」ではなくて「ファンド」です。Amanah Saham Bumiputera (ASB) fundと呼ばれるもの。優良会社の株式に投資するファンドで、元本保証でありながらかなり良い利回りを叩き出してきた。歴史的にどんな感じだったのか見るとため息が出てきます。(笑)
ユニットは1リンギ単位で、それに対する配当ですからそのまま「利回り」と考えて良いはず。
年々利回りは落ちていますが、それでも7%って凄いですよね~~。
ただし、上限がある。それはRM200,000。二十万リンギット。だから560万円ぐらいですかね。これ以上は投資できない。でもASB口座に上限があるわけでもなく、ユニットプライスが上がればそこそこの資産になるのかもしれない。(この辺はまだ調べていません)
これには裏技みたいなのがありまして、「借金してこのASBを買う」なんてことも出来るのね。ま、日本で言う信用取引みたいなものですが、それを真剣に考える人も少なくない様子。
このASBを扱う金融機関は以下の通り。
○ Maybank
○ RHB
○ CIMB
○ Affin Bank
○ Pos Malaysia(ノンバンク)
もちろんこのASBを持っていればそれを担保に借金も組める。借金できる率は100%ですって。
上限が20万リンギって少ない感じがしないでもありませんが、
○ 預貯金や投資の奨励
○ 収入補填
としてはかなり威力があるんじゃないですかね。今でこそマレーシア人の収入は上がってきましたが、これが満額あれば「給料と同額かそれ以上」を得ることが出来た人、時代もあったんじゃないでしょうか。時代によってはこれで「遊んで暮らす」ことを夢見た人たちもいるかもしれないですね。またこれがあるだけで「老後は安心」ってこともあるんじゃないでしょうか。
ちゃんとした仕事、収入がなければ借金もできませんが、「借金して買うスキーム」も銀行が用意しているようで(利子は低い)、「これに投資しないやつは馬鹿だ」ってことかも。
でも配当は毎年下がり続けていますね。これからどうなるんでしょうか。
今までは「マレーシアの経済発展による利益を国民に広く享受してもらう」という点で素晴らしいと思うんですよ。一部の金持ちばかりが儲けて格差の大きな国ですし、金儲けが上手い中国人でもなく、コネもなく、普通にコツコツと働くだけの人たち(適当な仕事しかしたくない人たちも)にも恩恵があるんですから。
でも経済が伸びている間は良いですが、世界に波乱が起きたらどうなるのか。借金して買っている人たちは逆ざやになる時も来るはず。
リーマンショック時はどうなったか、そこのところだけを見てみます。
落ち込みは小さかったものの、リーマンショック前の配当に戻ることはなかった。
ああ、マレーシアの株式市場はどう動いてきたかを見てみましょう。株価が上がっても配当がそれに同期しているわけじゃありませんから、利回りは低くなるのは当たり前ですよね。
このASBというファンドは「元本保証」という素晴らしいファンドですが、利回りの最低保証があるとはどこを読んでも書いていません。つまり何か起きた場合、借金して買った人たちが多かったらとんでもない大事になるんじゃないですかね。一般的マレーシア人が一体何を考えているのか私には全くわかりませんが、「借金してでもASBを買うべき」という時代があったであろうことは簡単に想像できます。またローンは20~30年とのこと。
ちなみにこのASBファンドが投資している会社、その割合はこんな感じらしい。
でもこれらの会社の業績が落ちてきて配当も下がったらどうなるんでしょうか。
今まで十分すぎる配当をもらっていたからしょうがない、なんて考えるのは金持ちの考え方で、一般市民はASBの配当も「収入の一部」として生活設計するのが普通のはずで、マレーシアの「景気の悪化」は「内需にも大きな影響を与える」ということになりませんかね。
日本で言うサラリーマンのボーナスも、実際にはボーナスではなくて「生活給の一部」と考える人が多いのと同じで、このASBからの収入が減るとかなり困るんじゃなかろうか。
ま、我々には一切関係のないASBですが、大手企業がコケるとマレーシアの内需もかなり危ないことになるかもしれないという想像は大事だろうと思ってこれを書きました。
上のデータなどは以下のサイトから転用しました。以下のサイトを中心にして、またそこから飛んでいくと詳しいことがわかるはず。
「Amanah Saham Bumiputera (ASB) Explained」
「How to Get Above 10% Returns from Your ASB Investment」
私はこのASBに関してはサラッと上辺だけ調べただけで、良くわからないところが多々ありますし、今回書いた中にもおかしいなぁと思う部分もあります。勘違いもきっとあるかもしれない。その辺を是非、御理解の上、より正確で詳しいことを知りたい方は是非、ご自分で調べてみてください。
とりあえずは、こんな感じのファンドがあるという話。
しかし不思議だと思うのは、マレーシアってあちこちに利権がある国なのにTPPに加盟してやっていけるんだろうか。我々が自由に参入できない業種とかいろいろあるのに、それって後々、ISD条項(多国間における企業と政府との賠償を求める紛争の方法を定めた条項)違反で訴えられないんですかね。つまり外国企業でも「内国民待遇」をしなければならず、「マレー人はOK、でも君は駄目だよ。認可しない」とかってのが全部、訴訟の対象になるんじゃないですかね。また「めちゃ高い輸入自動車。安い国産車」とかってのもこのまま通るんだろうか。不思議だ・・・。