皆さんは冷凍マグロをちゃんと解凍できますか?
我が家の解凍方法では全く美味しくなかった
私は今まで全く駄目だったんですよ。真空パックされた状態で氷温解凍をしていたのですが、水っぽくて美味しくなくて・・・。だから家で食べる場合は良い冷凍マグロって買ったことがなくて、安い「キハダマグロの赤身」ばかり食べていました(あるいは冷凍ではない冷蔵物)。水っぽくて口当たりもボソボソで美味しくないけれど、【ヅケ】にしてごまかしたり。
近年、流行りだした【温塩水解凍法】でやってみた
でも今回、ちょっと真剣にやってみようと「温塩水解凍」をしてみました。
1 冷凍の柵を水道でさっと表面を洗い、「切りカス」を落とす。
2 50度の温水に塩を(ごっそり)入れて、3-4%の塩水にする。そしてそれにマグロの柵を入れて、3-10分、表面が数ミリ解ける程度まで。
3 さっと流水で塩水を落とす。
4 水分をしっかり拭き取り、真空パックして「氷水」に入れる。半解凍程度まで解ければオッケイ。(これをせずに、すぐに冷蔵庫に入れる方法を取るプロも多い)
5 水分をしっかり拭き取り、キッチンペーパー(マレーシアのだとくっつくから駄目)で巻き、ラップで包んで冷蔵庫に入れる。
この時点で半解凍になっていれば、たとえ芯が凍っていても、切って食べる準備に入ってオッケイ。
この実験に使ったのは「キハダマグロの赤身の冷凍」です。どこで買ったものかは忘れましたが、高いものじゃありません。
冷凍庫から出した状態。
パッケージから出した状態。
50度の温塩水に10分程度浸けた状態。表面の数ミリが解けているだけで、中はまだカチンカチン。温塩水の塩分濃度は3-4%。かなりしょっぱい。海水と同じかもうちょっとしょっぱい程度。
これを真空パック(ジップロックでOK)して、氷水に20分程度浸けた状態。まだ真ん中はカチンカチン。
これをキッチンペーパー+ラップで包み、冷蔵庫で数時間。中まで完全に解凍出来ました。
これを取り出した時に、ドリップが出ていないのに驚きました。今までのやり方だと、この時点で何重にも巻いたキッチンペーパーはベチョベチョなのに。(だからかつては「ピチットシート」を使ったりしていた)
解凍の方法だけでこれだけ違うのか・・・
まずはちょっとだけ切って味見。
が~~~~~~~~~~~~~~ん、全然、違う~~~~。
って言えば大げさですが、いわゆる冷凍マグロを解凍した時の「水っぽさ」「スカスカした歯ごたえ」はなくて、もっちりしていて臭みもなくてマグロの味がちゃんとわかる。ヽ(^o^)丿
かなり濃い温塩水に浸ければ「塩っぱくなる」と思っていましたが、まったくそれは無い。不思議ですねぇ。
でもねぇ、舌触りが駄目なんですよ。やっぱりツルっとしていなくて違和感があるのね。(ザラザラという程じゃないにしても)
そこで閃きました。
包丁、切り方による違いもはっきりわかった
包丁を変えてみようと。
最初はそこそこ切れる三徳包丁で切ったのですが、普段はまず使うことがない「かなり切れる柳刃包丁」で切ってみたんですよ。それもいかにもプロみたいに「刃渡りを全て使って一気に切る」みたいな。
これだけで、口当たりがかなり変わったのには再びびっくりしました。
これなんですよね~。家で刺し身を切ると美味しくないってのが良くわかりました。
断面もつやつやしていて、舌触りがまるで違うのね。
今まで自分が食べていた「冷凍のマグロ」ってなんだったんだと思いました。かなりもったいないことをしていた。
でも抜群に美味しいかというとそういうこともなくて、所詮、安いキハダマグロの赤身に変わりはありません(ヅケにしたら全く問題なく食べられる)。そしてやっぱり和食店のプロが扱う「冷凍マグロを解凍したもの」とは大きな差があると思いました。
この差ってなんなんでしょうね。
そもそも冷凍する時が大事で、チンタラ冷凍したマグロなら(氷結時に細胞が壊れる)どうしたってスカスカ、水っぽくなるだろうし、また家庭用の冷凍庫で寝かしておいた場合の変質もあるのかもしれない。
こればかりはド素人の私には全くわからず。是非いつかチャンスがあったら、同じ冷凍マグロをプロが解凍し、切り分けたものを食べ比べてみたいです。
でも「私の今までと比較すれば」【かなり大きな違いがある】のは間違いがなくて、これなら「もう少し良いマグロを買っても無駄にはならないかもしれない」と思いました。
これなら良いマグロを買っても無駄にならない
ということで、まずは本マグロではなくて「バチマグロの赤身の冷凍」を【旬鮮マーケット】に注文してみました。
そもそも私は「キハダマグロは好きではない」ので、まず和食店で食べることはありません。せっかくの和食店で好きでもないキハダマグロを食べる意味がないと思うから。(美味しいキハダマグロを食べたのは我が人生で一度だけ)
そりゃ本マグロ(クロマグロ)が一番ですが、高いですよね。キハダマグロの4倍ぐらいの価格は当たり前ですから。
でも「バチマグロ(メバチ)」も私は結構好きなんですよ。赤身ね。身がネットリしていてなんとも言えない美味しさがあると思うし、価格も本マグロほどじゃない。(江戸っ子はバチマグロ好きが多い)
この「バチマグロ(メバチ)」の赤身を売っているマレーシアのお店って私は【旬鮮マーケット】(JMG)しか知らないのですが、キロ単価はRM250。これが大トロですとRM390で、本マグロとなるとその3~5割増しぐらいになるはず。
若い頃はマグロと言えば大トロでしたが、50歳を過ぎた頃から「赤身の美味しさ」に目覚めて(サシがばっちり入った和牛を食べれなくなったのと同時期)、今じゃ「美味しい赤身はないか探す」様になりました。大トロも良いけれど、2巻(二切れ)も食べれば十分。そういう意味じゃ中トロが良いですが、マレーシアでそれを手に入れるのはまず無理。
だからやっぱり私には「赤身」で十分で、それを好きに食べられたらそれだけでかな~~り幸せになれる。(笑)
結論:解凍方法と包丁を変えるだけで「世界が変わる」
しかし「解凍方法」と「切れる柳刃を使う」だけで、これほど違いが出るとは思わなんだ。
今頃、そんなことに気がつくなんて、この数十年、随分、もったいないマグロの食べ方をしていたんだなと反省。
ところで解凍方法ですが、ネットで調べると「プロでもいろいろ」なのね。今回私がやった「温塩水解凍法」ってやっぱり近年、流行りだしたみたいで、古くからの「マグロ専門業者」は「(濃い)塩水を氷温にして、それに半解凍状態になるまで浸けるだけ」というのも多い様子。
間違いがないことは「塩水を使う」というところ。これは100人中100人が同じ様子。
だから「冷蔵庫で自然解凍」なんてのは全く駄目なのは間違いがない。
番外編:切り方も大事
それとですね、「切り方」も今回、勉強しました。
安いキハダマグロの冷凍は「スジが多いもの」が普通で、そこそこ切れる包丁でも綺麗に切れないのね。
でも「スジの方向、それも中に斜めに入り込んでいる方向を見るのが大事」なのがわかった。基本的には「スジに対しては(できるだけ)直角に包丁を入れる」のは常識だとしても、そのスジがどういう方向で「中に入り込んでいるか」を私は気にしたことはありませんでした。でもそこも大事なポイントで、「スジが流れている方向に包丁を動かすのが重要」だというのも今回初めて知りました。
上から見たスジには(ほぼ)直角に包丁を入れたにしても、スジがどういう方向へ流れているのかを見ずに切ると「刺し身がばらばらになる」のも実験してみて良くわかりました。
それを教えてくれたのは、このユーチューバー。
これってかなり重要だと思う。
このユーチューバーが「解凍方法」も解説しています。
ただ、冷凍時に「ある温度帯を素早く通り過ぎるのが重要」なのはわかりますが(だから急速冷凍を使う)、解凍時にもその温度帯を素早く通り過ぎるべきだという理屈は私には理解できませんでした。
番外編:これからの時代はもっと凄い「冷凍技術」が普通になる
余談ですが、近年の「冷凍技術」はどんどん進歩していて、超音波や磁場を利用した「CAS冷凍」というのがあるのを知りました。
水は0度で氷結しますが、水に刺激を与え続けていると「零下になっても氷結しない」んですね。例えば「超音波を照射」して微細な振動を与え続けて冷やすと氷結せずに「過冷却状態」になる。そして、その超音波を止めて「ショックを与える」と、【その瞬間に全体が瞬時に凍る】という技術。
そもそも水分が氷る時には「膨張する」わけで、それが「組織を壊してしまう」んですね。だから解凍すればドリップが出るのも当たり前。
ところが、その「段々と凍って膨張する温度」を【凍らせずにその温度帯を下回った状態にし、刺激を止めると一気に凍る】方法だと細胞が壊れないんだそう。それも「死後硬直」前にそうやって冷凍してしまうそうで、後に解凍してから死後硬直が始まるとのこと。
凄いですね~。
これって魚だけではなくて、多くの食材にも使える技術で、凄いスピードで普及しているらしい。マイナス60度で急速冷凍という技術は前からありましたが、「凍らないまま温度を下げて、一瞬で凍らせる」という瞬間冷凍の時代に入った。
どうもこれが可能な「家庭用冷凍庫」も世に出ているそうで、私が今もし日本にいたら、欲しくて欲しくてウズウズするであろうこと間違いなし。(笑)
本当に世の中の進化って凄いですね。
それを自分は見続けることが出来ないのが非常に残念。(笑)
50年後の日本人はどんなマグロを食べているんだろうか・・・。