ウクライナ戦争はこれからどんどん激しくなるような動きですが、そもそも「この戦争の責任はアメリカにある」という研究者が出てきた。
私にしてみると、なんで今頃・・と思うぐらいで、こんなことは専門家でなくても「世界の近代史」とこの10数年の動きを見ていれば誰でも気がつくことじゃないんですかね。
でもそれを口にだすことは「タブー」だったのだろうと思っています。
確かにプーチンは悪い。そしてロシアの戦い方も異常。
でも私が何度もこのブログに書いてきたことは、「あのプーチンが戦争をするように仕掛けた存在があるんじゃない?」ということでした。
でも世界の近代史に興味もない、ヨーロッパで何が起きてきたのか、アメリカが世界で何をしてきたのかに興味を持って見ていなかった人にすれば「狂ったプーチンが善良なるウクライナに突然攻め込んだ」という風にしか思わないんでしょう。
地震じゃあるまいし、突然襲ってきた大災害とは違うじゃないですか。いや、地震だってその土地の過去、現状を見ていると「大地震が起きるかもしれない」というのは専門家が常に頑張って観察し調べていること。でも彼らとて「来るぞ~」と思ってもそれを公表するのは難しいのは戦争も同じかもしれない。
日本の真珠湾攻撃も同じで、どうして日本がそんな無謀なことをしたのかは、それ以前の世界の動きを見なくてはわからないじゃないですか。でもどの国の国民も、自分の生活のことを考えるのに忙しくて、世界で何が進行しているのかなんて気に留めない。だから「何かが起きたとき」に「て~~へんだ~~~」と騒ぐだけで、「どうしてそんな事が起きたのか」は考えない。そして「問題を起こした張本人だけを非難して終わる」のが世の中の常。
この記事を書いたのは「遠藤誉女史 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士」とのことだけれど、彼女は記事中に「筆者の【バイデンが起こさせた戦争だ】という見解と一致する。認識を共有する研究者が現れたのは、実にありがたい。日本で筆者1人が主張しても、ただバッシングの対象となるだけで、非常に数少ない知性人しか理解してくれない。」と書いている。それほど、このことは「口に出してはいけないこと」だったんでしょうね。でもしっかり見ていた人なら我々のような一般人でもわかること。
フランスの歴史学者エマニュエル・トッド氏が言っていることはこういう内容。
●感情に流される中、勇敢にも真実を語った者がいる。それが元米空軍軍人で、現在シカゴ大学の教授をしている国際政治学者ジョン・ミアシャイマーだ。彼は「いま起きている戦争の責任はアメリカとNATOにある」と主張している。
●この戦争は「ロシアとウクライナの戦争」ではなく、「ロシアとアメリカ&NATOの戦争」だ。アメリカは自国民の死者を出さないために、ウクライナ人を「人間の盾」にしている。
●プーチンは何度もNATOと話し合いを持とうとしたが、NATOが相手にしなかった。プーチンがこれ以上、領土拡大を目論んでいるとは思えない。ロシアはすでに広大な自国の領土を抱えており、その保全だけで手一杯だ。
●バイデン政権のヌーランド国務次官を「断固たるロシア嫌いのネオコン」として特記している(拙著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』の第五章、p.159~p.160にかけて、オバマ政権時代、バイデン元副大統領とヌーランドがどのようにして背後で動いていたかを詳述した)。
●アフガニスタン、イラク、シリア、ウクライナと、米国は常に戦争や軍事介入を繰り返してきた。戦争はもはや米国の文化やビジネスの一部になっている(拙著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』の「おわりに」――戦争で得をするのは誰か?に書いた内容と完全に一致する)。
アメリカの学者というのは(このブログの読者ならご存知であろう)ミアシャイマーのことで、こんなことを言っている。
●アメリカはウクライナがどうなろうと、それほど気にかけていません(20:34)。アメリカ(バイデン)は、ウクライナのために戦い、兵士を死なせるつもりはないと明言しています(20:39)。アメリカにとっては、今回の戦争が、自国存亡の危機を脅かすものではないので、今回の結果はたいして重要ではないのです(20:43)。しかし、ロシアにとって今回の事態は自国ロシアの存亡の危機であると思っていることは明らかです(20:49)。両者の決意を比べれば、ロシアに圧倒的に強い大義があるのは、自明の理です(20:50)。(筆者注:筆者自身は、この点はミアシャイマー氏と意見を異にする。但し、ミアシャイマー氏が言いたかったのは、前半で繰り返し話しているように、プーチンは何度もNATOの東方拡大を警告し、話し合いを求めたがNATOが無視をして逆の方向に動いたという事実なのだろう。あまりに長いので省略したが、ミアシャイマー氏は、プーチンには切羽詰まって危機感があったと言い、太平洋戦争を例に取ったのは、切羽詰まった危機感を感じたときに何をやるか分からないということのようだ。)
●ここで起こったことは、アメリカが、花で飾られた棺へと、ウクライナを誘導していったことだけだと思います(21:30)(これは正に筆者が書き続けてきたことで、拙著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』の第五章で詳細な年表を使いながら解説した内容と一致し、表現は異なるが内容的には2月25日のコラム<バイデンに利用され捨てられたウクライナの悲痛>とも一致する)。
●アメリカは棒で熊(ロシア=プーチン)の目を突いたのです(21:58)。当然のことですが、そんなことをされたら、熊はおそらくアメリカのしたことに喜びはしないでしょう。熊はおそらく反撃に出るでしょう(22:12)
このミアシャイマーの発言はユーチューブに出ている。上の文章の()の中にある時間はその動画の中の時間。
日本語訳付き。
またミアシャイマーは以前から、NATOの東方拡大には反対していたし、「今回のことは予見していた」と言っても良いはず。この辺も前に紹介したアメリカ在住の「伊藤貫氏 国際政治アナリスト」が説明していましたよね。(ここ)
ただし、どれほどアメリカが汚いことを企もうと、【手を出したやつが悪い】のは世界の約束事で、プーチンが糾弾されるのは当たり前。どんな言い訳も通用しない。と同時に、私たちはアメリカ-NATOが何をやってきたかを忘れてはならないし、ウクライナ内部でも大きな問題があって戦闘が何年も続いていたじゃないですか。ネオナチにしても、ウクライナにそういう勢力があって過去から問題を起こしているのは報道もされたし公式に公表もされていたのに、なぜか今になると「ネオナチなんて存在しない」みたいな世の中の動き。アゾフ大隊ってなんなのか、ちょっと調べるだけでいろいろわかるのに。
しかし戦争の決着は付かず、ドイツもアメリカも今までとは違う「重火器」、また他国からは「戦闘機」の供与も始まって、戦火は拡大するばかりなんでしょう。
そしてやっぱり忘れてはならないのは、プーチンが何度と無く「核兵器の使用」をほのめかしているということ。
力による現状変更は絶対に認めてはならないはずで、どれほどプーチンに理があろうと、彼がやったことやっていることは認めることは出来ない。つまり特に西側諸国としては「ロシアに勝たす訳にはいかない」ってことだろうと思うんですよ。私もここのところはそう思っていて、「力による現状変更は認めない」という世界のコンセンサスが必要だし、それを犯したら「徹底的に叩き潰される」という【見せしめ】も重要だと思っています。絶対に、見逃すわけには行かないし、「勝てば官軍」というわけにもいかない。
となれば、プーチンは核兵器を使ってでも「負けないようにする」であろうことは簡単に想像がつくわけで・・・。
これからウクライナ戦争がどう動くか。また日本はそれにどう対応しているのか。世界はどう動くのかのこの対談は非常に興味あることを話しています。
「アメリカは本気になっている」と。そして「プーチンは戦術核は使うでしょう」と。そして岸田はどうしようもないアホだと。(笑)
★出演者
長谷川幸洋(ジャーナリスト)
梅宮万紗子(女優)
石橋文登(元産経新聞政治部長・千葉工業大学特別教授・政治ジャーナリスト)
高橋洋一(数量政策学者)
今の懸念事項は「プーチンが核兵器を使うか使わないか」ではなくて、プーチンが核を使ったら【アメリカ-NATOがどう動くか】じゃないんですかね。
プーチンが核を使うにしてもそれはウクライナに対してであって、NATOは動けない。
ただそうなればNATOの枠組みを超えて「人道的に放置はできない」という大義名分が西側にできる。かと言って、ロシアに同じく戦術核を打ち込めば大規模な第三次世界大戦に入る可能性もある。
私は「消耗戦に持ち込めばプーチンは勝てない」と思っていて、NATOがウクライナに派兵することがあってもロシアを徹底的に叩きのめすことなく、「諦めさせて戦争前に戻す」ことができれば上出来なんだろうと考えています。「プーチンの顔を立てつつ、撤退させる」ことが私は重要だと思っていて、これを機会にロシアを叩き潰す様な行動になれば、それこそプーチンの「第2段階の【窮鼠猫を噛む】ことが起きる」と思うわけです。つまり、大規模な世界大戦への突入。
でもそういう可能性をプーチンも考えているはずで、一発のたとえ小さな戦術核にしても「核を使ったときの世界の反応」は簡単に想像できるわけで、やっぱりこのままダラダラと戦火は大きくなるだけなのかも。
でも消耗戦になればロシアは負ける。それもプーチンには受け入れられることじゃないわけで、どこかで落とし所を見つけたいのはプーチンも同じじゃないんでしょうか。
でも西側はクリミアの併合を認めるわけには行かないし、でもウクライナ東部の「独立」は飲むしか無いのかもね。
この戦争の行方をジッと見つめている中国のことも忘れてはならないわけで、やっぱりプーチンの思うようにさせることは出来ないんじゃないですかね。
あああ、上に紹介した対談の中で面白いことを言っていました。
中国は、あのバイデンと岸田なら「今こそがチャンス」と思うかもしれないと。
確かに、もし岸田氏のあとにバリバリの保守系の総理が出たり、アメリカでトランプが返り咲くようなことがあれば、中国にはチャンスが無くなる。