お米の値段が上がって、政府は備蓄米を放出したのに価格上昇は続いているという異常事態。
ここまで来ると私も一体何が起きているのかいろいろ調べてみようと思うようになりました。
ま、あちこちからいろいろな話が入ってきて、「それぞれが原因の一つ」だとは思うものの、これぞという決定的な問題が見えないのね。
不思議だなと思って、ニュースや評論家の話じゃなくて「農家の話」を聞いてみたらなんとなく見えてきたことがある。
それは「米の価格がそもそも安すぎる」という点で、多くの米農家がそれを言う。
値上がりが起きて価格が2倍になれば誰でも高いと思うけれど、実は今までが安すぎたと。
備蓄米の放出も、流通業者に渡せば小売店にも回るのに、政府は「JAに9割以上の米を売った」し、その米が流通に乗ったのは放出米の0.3%でしかないらしい。これじゃ放出の意味もないし「JAが悪い」ということになるし、JAとしても米が高いほうが手数料も多いわけで、「利益を独り占めにしている」なんて声も聞こえてくる。
でも実態は「JAも米の売値を下げたくない」のは「農家を守るためでもある」可能性が見えてきた。
世界中で農業は守られていて、どの国も莫大な補助金を出しているけれど、「日本の米農家には補助金が出ていない」のが現状なんですと。いやいやそんなことは無いだろうと思ったけれど、「減反には補助金が出る」状態。国は「減反政策を止めた」けれど、【転作には大きな補助金を出す】ので、結果的には「米を作らないほうが利益が出る」状態とのこと。だから「米農家に補助金が出ている」という意味では間違いがない。
で、赤字の米農家が多くて、働く人達の時給を計算すると「100円にも満たない」農家も多く、2024年度には4万件の米農家が廃業したらしい。倒産件数のデータも公表されていてその数字は毎年増えているものの2024年度は42件という数字。大した件数じゃないと思ったら、それらは「大規模農家」と言って良いような農家らしい。そして2024年に廃業した4万件という数字は「千葉県の米農家の数と同じ」らしい。
流通量が少ないのは、天候の問題があって2等米が多かったとか、生産高の見通しをミスったとか、米の流通量を実は増やしていないとかあるにしても、「やっぱり米の生産力が落ちている」のは間違いがないそう。
このある農家の説明も興味深い。
彼は「販売者(転売屋)が増えた」のは間違いがないけれど、それは「儲かると思えばどんな業種でも同じだ」という。ところが彼が注目して欲しいというのは「値上がりが続いて、米不足なのがわかっているのに【新規生産者の参入がない】のを不思議に思わないか?」という点。こんな産業は他には無いというのね。転売ヤーなり販売業者が増えて値は上がっているのに「生産をしようとはしない」なんてあり得ないと。
つまり「米の生産は儲からない」のを誰もが知っているからで、せめて大きな補助金でも入ってくれば新規参入も増えるけれど、赤字、廃業が増えるのが米生産の現状らしい。
今まで、下の図の様に「米価格は下がり続けてきた」ことを無視したら、今回の米騒動の根本問題を理解できないかもしれない。
調べてみると同じようなことを言う農家って多くて、「今後も米の価格は下がらないだろう」という農家もあった。それどころか「経費も上昇を続けていて儲からないのだから、多少は農家に儲けさせて欲しい」とまで言う。
農林水産省、族議員、そしてJAの「利権構造」があるのは間違いがないしても、問題の根本はそこではなくて「米作りは儲からない」のが最大の原因で、補助制度もあるけれど「その申請を通すのはまず不可能」と言われるような厳しさなんですと。
一般的な「米の価格が下がらない理由」としてのニュースはこれが面白いと思った。
旧態依然とした「農政」を変えることが重要なのはわかりきっているけれど、そんなことは昔から言われていることで「誰がそれを始めるのか」が問題。でもトランプが自動車や米に関しても文句を言い出しているので、「これをチャンスとしてとらえることは可能だろう」という意見もある。
米の問題って多岐にわたっていてそれぞれが深刻で、簡単にどうなることではないと思うけれど、私は「高い米も認める考え方」が必要だと思った。と同時に、国は動かなくても民間で頑張る人たちもいて、「時間が解決する」部分もあると思った。今の米農家の従事者の平均年齢は71.1歳に達していて、小さな田んぼをまとめて大規模にすれば「輸出でも競争力がある米が作れる」のに、「田んぼを借りることさえ難しい」と。ただし、農業従事者の「次世代」は割り切った考え方をする人も多く、「頑固親父が死んだ後、すぐに大規模農業に賛同して協力する農家もある」と。
しかし日本って政治の世界でも年寄りが居座っているし、「改革ができる状態ではない」のをあちこちに感じます。
農政改革に手を付けた安倍さんですが、あの時、彼は「アメリカからのプレッシャーを利用した」と私は見ていて、それがあったからこそ「日本のバターは高い、数量が足りない」状態なのを、JAが「バター生産を増やそうとする、あるいは新規にバター生産をしようとする農家には原乳を売らない、意地悪をする」という慣習を変えることも出来た。
でもま、石破さんにはそんな力もやる気もないのは間違いがないと思う。
↑のような解説が多いけれど、米が高いのは大問題だというところに焦点を当ててしまうと、もっと根本的な大事なところが見えないかもしれない。
減反政策は終わったけれど「転作に補助金を出す」のはそのままで、その額は年間3500億円にも達する。そして「輸入米に日本が掛けている高い関税を維持するために海外からお米を関税ゼロで輸入しなとならないミニマム・アクセス」でも【買値より安く売る】ことから年間、600億円以上(だったかな?)の経費がかかり、累積赤字は6300億円を超える。
このお金を「日本の米生産を強靭にする」ために使ったらいろいろできるんでしょうね~。大規模米農家の「原価」も海外での競争力があるところまで下がってきたようで、その方面を伸ばせば、アメリカみたいに「短粒米の本格的な輸出も可能」になるかもね。それは上に紹介した「News dig」でも専門家、生産者が言っている。
どちらにしろ、政府の備蓄米をもっと大量に、そして流通にそれを乗せれば間違いなく米の価格は下がるのに、なぜそれをしないのか不思議に思っていましたが、そんなことをしたら「毎年減りつつある米農家の【首を絞める。とどめを刺す】ことになる」のは間違いがなさそう。
それは政府も全農(JA)もわかっているのかもしれない。でも「これが適正価格です」なんて言おうものなら国民が大騒ぎになるんでしょうね。
ということで、「お米の価格は下がらない」と考えるのが正解なのかもしれないし、なんでも値上がりするこのご時世に「米は値下がりを続けてきた」ことを無視してはならないと思う。
要は、政府も国民も「米の生産を守ろう」という考え方がまったくなかったのが今回の米騒動の最大の原因だと思う。その溜まりに溜まった問題点が、ちょっとしたことで爆発したように私には見えます。
それでも政府は「転作を勧める」し、国民は「価格の高さに文句を言う」だけ。
このままでは「美味しい日本米の生産を続けることは出来ない」ことに注目する人は少ない。
でも米農家の意見を聞いたり、実情を知ると「大変なことになっている」のがわかるし、JAも悪者と決めつけてはならなくて、地方のJAでは真剣に問題に取り組んでいるところがあるのもわかる。でも政治家を含め「上層部にその危機感がない」様子。
せめて国民の中から「米農家を守れ」という声が上がって欲しいと思うし、それのみが「農政を変えるきっかけ」になるんじゃないですかね。
米の価格が上がればそりゃ「家計は大打撃を受ける」し、飲食店も大変だと思う。でもそのしわ寄せが「米農家にのみ押し寄せていた」のは盲点でした。また私は「米農家は大きな政府からの補助を受けている」とばかり思っていた。でも実際は逆で「米生産をやめて転作しないと利益が出ない構造」になっている。そして「米を作り続けたい」と頑張って来た米農家は赤字、あるいは微々たる利益しか出ずに、2024年には4万件の米農家が廃業し、大規模農家でも2024年に42件が倒産。
今は米の生産も販売も自由になった。だから私が日本在住だったらSNSを通して頑張っている農家も見えるから、そういう農家から直接「高くなった価格でも良いから買いたい」と思う。「かつては高かった」ことを国民も忘れるべきじゃないんじゃないですかね。
そしていつの日か弱小米農家をまとめるとか、「都市開発」をしたのと同じように「農地改革」をすれば「コストも大幅に下がる」のはわかりきっているわけで、やり方一つで「安く米を安定供給も出来て、米農家も国民もその恩恵を受けることができる将来」は作ろうと思えば作れると思った。当然、それを後押ししない政治家は「当選できない環境」も作れるはず。実際に「農家が票田」と言われる自民党も、農家は減り、弱小農家は儲からず、農業従事者は高年齢で、この数十年の「常識」がもう通用しない時代に入っているのは間違いがないはず。
注目されていないようだけれど、江藤農水大臣が「これからは米生産を守る方向に動く」と言ったのは「現状の農政に問題があることを理解しているから」なはずで、でも「現状や減反政策を強く進めてきた過去に問題があった」と認めるわけにもいかない立場はあるんだろうと思う。
だから「大きく変化する可能性はある」はずで、「問題は誰がそのきっかけを作るか」だけかもしれない。そしてそれを成功させるためには「国民が米農家を守る」という強い意志表示が必要なんだろうと思う。
今一度、価格の変化のチャートを出します。
「安さは正義」なんて考えていたら「日本の米生産の将来は危うい」のは間違いがなさそう。でもここで農政に大きな変化が起きれば、コストの大幅削減も可能で「短粒米の輸出にも希望がある」とも言われているわけだし、それはつまり、国内価格も下がることを意味する。ではなぜ今、生産コストが高いかと言えば、それは零細農家が90%以上を占めているかららしい。技術革新は進んでいるのに「合理化が出来ない農家ばかり」の状態。
たまに「米生産現場の技術革新が進んでいる」というニュースを見るけれど、それは「成功している大規模米農家」の話で、大多数の米農家は大型の機械も導入できない。また大規模農家も「細かく区分けされた散らばった農地を借りている」ケースが殆どで、大型機械を入れても有効に使えないと。でも農地をまとめて大きな田んぼにできれば合理化とコスト削減はかなり進むと言われている。
今こそ、頑張る米農家と美味しい日本のお米を守ろうと思う国民の「連帯」が必要な時かもしれない。それ以外に「農政を変える方法は無い」とも思う。そして「過去のしがらみから逃れられない政治家」を変えることができるのは国民のみだと思う。そして政治家もJAも「このままでは駄目だ」というのは皆さん、気がついてる様子。
今こそが「変革を推し進めるチャンス」かもしれない。
JAでも頑張る人達がいる。でも上層部が駄目だと。