【米中関税引き下げ合意】に思うこと

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「米中関税引き下げ合意」で馬鹿げた報復関税は無くなったにしても「高率」なのはそのままで、でも株式市場は即、これに反応して上がった。

ま、あのキチガイじみた関税がそのまま続かないのは良いにしても、市場は「トランプのブラフ」に振り回されている感じがします。

「米中関税引き下げ合意」そのものに関して私が思うのは、「中国を交渉の場に引っ張り出した」という点に関しては大成功で、合意の内容に関してはなんてことないって感じがしています。

米中関税引き下げ合意に関して、いつものレバナス一本リーマンさんはこんな解説をしている。

私はちょっと違うんじゃないかと思っていて、彼の言うことはわかるけれど、それは「関税戦争が始まった時点」でわかりきっていたことだと思うのね。

そもそも「関税は誰が払うのか」にしても【買う側】なのははっきりしていて、当初、世界が大騒ぎになった時も「違うんじゃないか」と私は書いたし、それは変わりのないことで、「困るのはアメリカ」なのは間違いがない。でも世間は面白いもので「輸出側が大変だ」と大騒ぎする。もし日本が石油や天然ガスに大きな関税を掛けてもカタールやサウジアラビアが大騒ぎすることはなくて、日本国民が大騒ぎになるだけで「必要なものは輸入しなければならない」とすれば、困るのは「輸入側」じゃないですか。当然、「量は減る」にしてもです。

ではなぜトランプがそれを仕掛けたのかですが、貿易不均衡の是正と言っても「それは簡単には行かない」のははっきりしているじゃないですか。「アメリカ国内で製造業を盛り上げる」のも同じで、それは「理想」ではあるもののトランプがそれを狙っているとは思えない。彼の任期は4年。来年は中間選挙で、それまでに結果が出ることもありえない。

私が思うに、やっぱり「アメリカ政府は負債の大きさで首が回らない状態」なのが一番の問題で、だからこそすぐにイーロン・マスクは「歳出削減」に動いたし、それの効果は微々たるものにしても「トランプ政権のやる気を見せる」上で必要だったし、そして「歳入増を狙う」のが車の両輪のはずで、それは「増税しかない」じゃないですか。でもアメリカ国民や企業に所得税、法人税をごっそり掛けるわけにも行かず、「関税の大幅アップというアメリカ史上初の大増税方法」をトランプは選んだ。

これも私達には理解しがたい部分があるけれど、「アメリカの歴史」を見るとそれも理解できるわけで、当初、アメリカという国は「関税でやりくりしていた国」だという点。所得税ができたのは後で1913年の話。

実際にアメリカから見た他国からの輸入に課税される税率は他国のそれに比べて低いわけで、「関税を上げるという増税」は仕方のないことと受け入れられるはずで、そのために「貿易不均衡」を大げさに言っているだけだと思うのね。「あいつらが悪い」と。でも現実はそう簡単じゃないわけで、だからこそ今、中国との「合意」でも「棲み分け」が言われているわけで、そんなのは当たり前と言えば当たり前。

でもトランプが変えたいのはそこじゃないと思うわけです。

これに関しては、私の好きな須田慎一郎氏はこんな解説をしている。

トランプが変えたいと狙うのは3つあるという。

◯ 中国政府が「補助金」を使って輸出価格を下げて、【デフレを輸出している】(太陽電池、EV、鉄鋼などの戦略物資)
◯ 他国企業が中国で起業する場合、「強制的な技術移転を迫る」
◯ スパイ技術による【盗用が横行している】

ま、それらもそのとおりだと思うのだけれど、問題の核心はそこじゃないと私は思っていて、

◯ 資本の自由化がなされていない。でも中国企業が海外に出ると「資本主義の恩恵を目一杯利用している」
◯ 共産党による「外国企業の支配」があって中国国内で自由な活動ができない
◯ 中国元安

もし「自由貿易をしたい」のであれば【相互主義が根底にあるべき】なのにそれがないじゃないですか。外国企業が中国企業を買収してコントロールすることも不可能。でも中国企業(政府)は海外ではそれを自由にできる。

私は「ここにメスを入れない限り中国を変えられない」と思っていて、でもそれは「中国共産党の一党独裁」に関わることだから、中国は簡単に変えることはありえない。でもトランプはそこに話を持っていくしかないんじゃないですかね。でも中国が「それは飲めない」というのであれば、トランプは「アメリカに進出する中国企業にも同等の足かせをする」「中国製品の禁輸措置あるいは非常に高い関税」を正々堂々と世界に向かって言うことが出来る。私は「今はそれに向かう準備中」だと見ていて、「相互主義を取らない」のならば、トランプのことだから、アメリカの中国企業の解体、資産の没収ぐらいのことは言い出すかもしれない。それも当然、「ブラフ」にしてもです。

当初の大げさな高関税も「とっかかり」でしかないと私は思っていて、中国が交渉の場に乗ってきたから「これから締め上げる」んじゃないかと。そして当然、「中国元が安すぎる」というところにも攻め込むつもりだと見ています。

そして基本として絶対に外すことが出来ない喫緊の課題である「アメリカ政府の歳入を増やす」のと「今年中に償還され借り換える必要のある莫大な国債1300兆円の金利を下げる」ことに集中するしかトランプが来年の中間選挙で勝てる見込みはないと思う。

でも「株価と景気は犠牲にする」こともあるんじゃないかと思うのね。「株価と景気を維持したままトランプが狙うことの実現は不可能」だと思うから。

でも「アメリカは変わった」という【大筋】をアメリカ国民が認めれば、来年の中間選挙では勝てるかもしれない。また来年には「株価を上げる秘策」もあるのかもしれない。

そしていつも高橋教授が言う「諸悪の根源は中国元安」であるという点。ここにトランプが切り込まない限り、アメリカの劣勢、そして「中国の一人勝ち」の図式を変えることは出来ない。

だからこそ巷では「プラザ合意の再来」である【マールアラーゴ合意(プラザ合意2.0)】が言われるんでしょう。

アメリカは「日本が一人勝ちしていた」のをプラザ合意をきっかけにして叩き潰した成功体験があるから、日本より中国は遥かに強敵ではあるもののそちらに動くと私は思う。

でも中国を狙い撃ちにするのは簡単ではなく、「アメリカの輸出を伸ばす」のであれば「ドル安に持っていく」のが良いけれど、現実的には「アメリカには世界に輸出するべき製品の製造業が衰退している」わけで、【輸入超過である今、ドル安になると輸入金額が上がる】ことを意味するし、それプラス高関税があったらアメリカ経済は一気に潰れるんじゃないですかね。

私だったら、「ドル高」に誘導すると思う。な~~んてド素人が考えても意味はないですが、「ドル高とは輸入品が安くなる」ことを意味するし、輸出側も輸出しやすいはずで、「高関税はドル高で相殺できる、影響が少ない」んじゃないかと。つまり「高関税政策は取りやすくなる」ということかと。

私が何よりも注目しているのは「アメリカ政府の莫大な負債」であって、伸び続ける負債額を解決できない限り、貿易不均衡が是正されようが「アメリカ政府の没落は見えている」はず。MMT理論は破綻していると私は見ていて、「自国通貨で借金できる国は借金を増やし続けても大丈夫」とは到底思えない。金利負担だけでもアメリカの莫大な軍事費を超え、その額は日本の国家予算よりも大きい。これを放置するどころか、「同じ調子で負債を増やす」なんて出来るわけがないと思う。でもトランプがばら撒きをしないとならない可能性は大きいとも思う。

そしてどうにかしないとならないのは、上にも書いた「今年中に償還し借り換える1300兆円の国債」で、金利を下げないと、後の利払いで大変なことになるのは目に見えている。1300兆円って日本の国家予算の10倍以上の大きさ。

それらを無視して、「貿易の不均衡の是正も何もない」んじゃない?

「貿易の不均衡の是正」なんて何年も掛かることに注力する余裕がトランプにあるとはどうしても思えないわけです。

だから「関税で大きな増収を狙う」のはトランプが必ずやらないとならないことで、そして「金利を下げる」ことが何よりも重要だと思う。当然、「犠牲にするもの」が出てきてもやらざるを得ないし、もしも世界やアメリカ国民が喜ぶようなことをしても、解決すべきことを解決するつもりがないのなら、トランプ政権の価値は無いと断言しても良いと思う。

私としては「世界が大きく変わる瞬間」の目撃者でありたいと願うばかりです。私は「アメリカに日本が叩き潰される」のを実体験しましたが、是非とも、中国にもやってほしいと思う。中国の一人勝ちがこのまま続いたら世界は本当に恐ろしいことになると思うから。

このグラフを見るとアメリカを皆で食い荒らしてきた感じがします。「海外からの投資を積極的に呼び込む」ということになるんでしょう。中国は頭が良いと思います。海外から投資を呼び込んでも「実権は握らせず、お土産を持ってくることを義務付けている」のですから。そして「自力でも出来る」となれば、その外国資本には儲けさせない、あるいは潰す。新幹線も同じようなもんでしょう。

日本は「他力本願真っ盛り」で「売れるものは何でも売る」「安い労働力を入れる事ばかり考える」し、アメリカと同じ道を辿るのだと思いますが、どうなりますか。かつての日本は「長期的な作戦を練る」のに長けていたのに、今じゃアメリカの真似(強制)によって「短期的なことしか考えない国になった」と私は見ているし、そのしっぺ返しは必ず受けることになると思っています。

参照:日本は471.3兆円の黒字…主要国の対外純資産額(2025年公開版)

 

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