TPP再び

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なんでこんなブログにTPPの事やわけのわからんことを書いているのかと自分でも思うのですが、今自分としては非常に興味があることですので日記に書いています。

TPPの討論会を見ました。延々3時間近くですが、自民党、民主党、立ち上がれ日本の現職国会議員、そして大学助教授、ジャーナリスト、作家たちが集まり、非常に内容の濃い論議でTPPの問題点が非常に良く理解できました。

主催がチャンネル桜と言う保守系の中の保守であること、また参加者皆TPP反対派であることから偏った意見があるとは思うものの、TPPの内容、どうして今TPPなのか、また私がどうしてもわからなかった、どうして政府を筆頭にマスコミから経済界から皆TPPに賛成なのか、その理由がかなりはっきり理解できました。

また、背後にあるアメリカの動き、何を彼らはTPPに求めているのか、それがTPPの大本であるわけでそれが分かったのは大きな収穫でした。

その話の延長で、今日本で、現政権下で何が行われているかも見えてきて、非常に驚く場面もありました。例えば私がこのブログに何度も書いている日本の移民政策。500万で投資ビザが取れるという話ですが、民主党はそれをもっと緩和しようとしているとのこと。また在留資格がある人は家族があれば当然、妻、あるいは夫、そして子供が同伴できるのは当たり前ですが、両親(4人)もそれに加えようという方向に話が進んでいるとのこと。留学生にも企業チャンスを与え在留できるように(もちろん家族も)する方向のようです。

そういう様々な規制緩和に関して、3月の6日7日にまたレンホー議員が中心になって、事業仕分けではなくて「規制仕分け」が行われるとのことです。今まで長い間時間が掛かっていた規制緩和をたった二日間でばっさりやる計画だそうです。

必要な規制緩和ならいいですが、内容としては実は議員が見つけた問題ではなくて陳情や経済界、学者の言う「緩和すべし」が中心となるようで、本当に国のためになるのかどうかは疑問。来月早々行われるのですが、2月26日の時点で担当議員は内容を何も知らないそうです。業界なりなんなりで話題になっている規制を探してきて、いかにも自分が問題を見つけてきたような態度で「緩和しなさい!」というパフォーマンスをやるのではないでしょうか。

そもそもどうして日本に不利なこのTPPを経済界さえも推し進めようとするのかという私の大きな疑問に対する答えですが、それはグローバル化がキーワードの様です。企業はグローバル化によって自分たちの利益の出る国を選べるようになった。そして大企業の背後にいる投資家、株主は決して日本、そして日本国民を考える立場の人たちではないということ。

つまり企業と国民の利害関係が一致しない状況になってきて、例えば就職難、賃金が上がらないという問題も、日本にとっては大問題ですが企業としては自社の利益が上がるわけで非常にいい状態。そしてそれを維持するように企業の力が政治をも動かす状態だとのこと。また政治家も自分たちで分かることの範囲は狭いわけですが経済諮問会議のような様々なグループを立ち上げ、そこに企業の利益を優先する人たちが入りこんでその人たちの意見を聞くようになっている。日本は問題山済みなのに、大企業は史上最大の内部留保を溜め込んでいる。そしてなおかつ法人税減税を政府は言うわけですが、法人税を減税すれば投資活動も増えるという理屈は企業の理屈で、本来なら投資をすればそれに対して減税をするというだけで済むはず。

TPPに関しても、輸出企業にとって為替は駄目。国内は駄目。ですから今更関税撤廃するまでもなく、すでに率は低くなっているのにまだそれを欲しがる経済界の願いがあること。しかしTPPによって国が蒙るであろう被害は輸出企業には関係がない。

日本の企業は日本の国を考えているはずだと思うのはどうも甘い期待のようです。そもそもソニーにしても日産にしても誰の会社なのでしょうか。自分たちの利益を最優先する外国資本、外人株主がどれほど入り込んでいるのでしょうか。我々が日本の企業だと思っていても、実際はもうそうではないというのが現実だと思いました。国を売っても自分たちは儲ける、生き残るという彼らの論理があるのでしょう。それだけ世界における生き残り競争は熾烈だということなのでしょうが、生き残りだという言葉で果てしない欲望を隠しているような気がしないでもありません。

大企業を企業と考えるのはきっと間違えで、一つの国家だと考えると理解しやすいような気がします。

近年の韓国企業の躍進ですが、彼らは為替が有利であるのと同時に韓国政府に厚く守られている。しかし、実は日本以上に韓国の企業有利な政策に韓国では企業の競争力が高い状態を維持するために国民が犠牲になっているという話にもびっくりしました。あれだけ韓国企業が躍進しているのに国民はその恩恵はうけていないとのこと。賃金も下がるばかりで、また30代後半でリストラされるケースが普通という話も聞いていましたが、政官民一体となって躍進しているのかと思いきや、企業論理で動く国になってしまっているようです。

TPPの主な狙いは、やはり中心は関税撤廃なんてところではなくて、全ての市場へのアクセス、公共サービスへの参入、政府自治体への物品納入、日本の巨大な保険、金融の世界への参入であるとのこと。オバマが日本に来た2009年の演説時にオバマはTPPにも振れていて、これはアメリカの雇用拡大のためであると明言していたそうです。なおかつ彼はアメリカの貿易倍増を公言していますし、日本へ門戸開放してどうぞ売りに来てくださいという立場ではないのは明白。

そしてニュージーランドでもTPPの反対派がいて、彼らが危惧するのはTPPの中のISDという部分だとのこと。これは何かと言うと外国企業を「内国民待遇」し「外貨規制」をなくし全ての分野への投資、参入を認め、なおかつ外国企業に政府に対する賠償請求権を認めるというのがあるとのこと。

これは既にカナダでも問題になっており(NAFTA条約)、アメリカ企業が地元に進出しそれがうまく行かない場合、その原因は「不十分な規制緩和」「市場への自由アクセスの制限」など条約に違反している部分が理由ではないかと政府を訴える権利があるということ。これで莫大な損害賠償を政府が企業に払うこともあるそうです。

つまりTPPは条約であり、日本はそれを締結した場合、その中の多くの項目は努力目標ではなくて絶対にやらなければならない拘束力を持つという事。アメリカの軍事産業が巨大で強力なのは誰でも知っていますが、当然自衛隊への武器弾薬備品、レーダー、ミサイル、戦車、戦艦からヘルメット、制服まで納入権利も約束されなければならず、それに制限があった場合は日本政府は賠償責任を負わされるということ。日本の防衛産業は壊滅的打撃を受けるのでしょう。

また、公共サービスへの参入という事は、日本の防衛に関係する各地の飛行場や港湾施設、羽田や成田でさえもアメリカ企業が買おうとしたらそれを阻止する事ができない。資本の自由化がありますからNTTだろうとTBSだろう読売新聞だろうと外資の傘下になっても何もいえない。もちろん、農地や山林を買う自由も保障されなければならない。

もし農地取得や企業買収で何らかの障害があった場合、TPP条約の中の上に書いたISDが発動され日本政府は訴えられ損害賠償責任を負わなければならない可能性があるということ。

ここで初めての話を聞きました。TPP参加国にこれらの権利が与えられた場合、日本の最特恵待遇である中国にもそれが自動的に認められ、アメリカ企業には売るけれど中国企業には売らないということが出来ないそうです。中国企業が産経新聞を買収する事も可能になるってこと。朝日新聞やJR東日本なら喜んで身売りしそうです。(笑)

これら外国企業を自国の企業と全く同じに扱わなければいけない「内国民待遇」はあのWTOにも無い項目だそうで、しかしアメリカが関わる条約には必ずこれをいれようとしてくるとのこと。既に発行したカナダ、メキシコとのNAFTAでもこの条項により、カナダの農業の集荷、加工、流通の分野の80%はもうすでにアメリカ企業の傘下に入ったそうです。農産物の輸入は農産物の輸入だけじゃなくてその業界の利権集団も入ってくるという事。巨大農産国のアメリカですから日本の農協、JAを傘下にしようとしてもまったくおかしくないですね。金融界への参入という面でもJAを欲しいんじゃないでしょうか。JAを傘下にする方法なんか私の頭では考えられませんが、何か仕掛けてきそうな気がします。

農協が外国企業傘下になる日。そんなことを国民は想像もしないだろうしそれを求めているとは思えません。でもTPPはそれを可能にしてしまうかもしれない。

TPPが動き出せばアメリカのメリットは計り知れないですから、世界を自由に動き回ってる何百何千兆円といわれるお金がアメリカ側について資金的バックアップもするんじゃないでしょうか。お金の行き場所がなくて今でも困っているんですから。そして日本国内への大型資本参入が相次ぐ。つまり円は大量に買われ、円高はもっと進み輸出は壊滅的打撃を受け、他国からの輸入は益々増えてアメリカに追い風。オバマの雇用拡大、輸出倍増計画にはどうしてもTPPが必要だってのが見えてきます。

日本の多くの政治家、マスコミ、理想主義者たちは、規制緩和、改革、自由化、そういう言葉に酔っていて何が待ち受けているか知らないのではないかとの話。また、とりあえずTPPを受けて、駄目ならその時考えろと言う気軽な論調が巷に多いとも言っております。

農業の自由化ひとつとっても、日本の自給率はエネルギーベースで40数%なのは有名ですが、穀物にいたっては28%だそうです。つまり海外への門戸開放はすでにどの国以上に行われていて、穀物だけは100%の自給率をドイツも達成している。日本に安い穀物が入っても高級品を輸出すれば良いなんて言う論者もいるが、穀物とは戦略物資であり高級品などはいつどうなるかわからない、かつあってもなくてもいい食料品。

また戦略物資というとすぐ石油を思い浮かべますが、石油産出国は石油を売って生きている国であって買ってくれる国がいないと困る生産品。ところが食料品とは自国消費が優先されるのは常識で、輸出は余剰分で調整弁の役割でしかなく、旱魃などの不作が起きただけで輸出は当然ストップする。でも困るのは輸入国だけで、輸出しないと食えない石油産油国と農産物輸出国は違うとのこと。他国では基本の穀物の輸入がストップし混乱があった例がいくつもある。ましてや食料は命の源で石油以上に重要な戦略物資(穀物は常温で保管できる最高の戦略物資)だとのこと。この辺は昔から言われてきた事ですが、そういう分野でもアメリカは日本を完全に掌握しようとしているのがミエミエ。TPPとはまさにオバマが公言しているアメリカの雇用対策であり輸出倍増計画の一環。

また、私の持論でもある労働市場の解放、競争促進、非効率部門の淘汰などこのTPPの利点はインフレ対策にはなるけれどデフレ下では大変な事になるという点。デフレ下は労働者保護、社会的規制の強化が必要でTPPはこれに逆行するという点。ここも大事なところだと思いました。だからやるにしても決して今じゃない。でも日本市場を狙える相手は今だからこそやりたいということになりますね。

延々3時間にも及ぶ討論会ですが、中身はさすが濃いと思います。

TPPそのものは第一話、第二話に詳しいですが、第三話はそもそも日本の何に問題があるのか、私にとって一番興味のある部分でした。

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