昨年1年間に全国で震度5弱以上の揺れを観測した地震は68回に上り、気象庁が統計を取り始めた1926年以降で最多となった。とはいえ、最近、都内では大きな揺れを感じなかっただけに、新年早々ドキッとさせられた人は多いのではないだろうか。1日午後2時半ごろ、関東から東北にかけた広い地域を震度4の揺れが襲った。震源は鳥島近海で、マグニチュード7.0。元日から地震と縁が切れないスタートとなった。
気味が悪いのは、この地震と前後するようにクジラが相次いで海岸に打ち上げられていることだ。2日午前6時ごろ、小田原の海岸で体長約6メートル30センチのザトウクジラが死んだ状態で発見された。ザトウクジラは先月も静岡県で2頭打ち上げられている。
実は、このクジラの座礁は大地震の予兆として有名だ。昨年2月のニュージーランド大地震前には、同国南島南西沖で107頭のゴンドウクジラが海岸に乗り上げていたし、日本でも3・11の1週間前に、茨城県鹿嶋市の海岸でカズハゴンドウクジラが約50頭も打ち上げられていた。
<“地震のツカイ”が静岡に現れた不気味>
琉球大名誉教授の木村政昭氏(地震学)が言う。
「クジラは音に敏感で、超音波を聞いて方向を決めているといわれています。地震の発生前にも音波が出ることから、座礁との因果関係は否定できない。ただ、それよりも注目されているのがリュウグウノツカイです。めったに姿を現さない深海魚ですが、地震の前に現れるといわれている。東日本大震災前にもいろんな海岸で打ち上げられたと聞きました」
実際、3・11の1年以上前、09年11月ごろから、富山や福井、京都、兵庫、山口、長崎などで何十匹と見つかっていたことから、話題になっていた。そのリュウグウノツカイが昨年12月21日早朝、静岡県牧之原市の静波海岸で見つかった。静岡県といえば東海・東南海・南海地震の3連動地震だ。昨年末、政府の有識者会議は、その震源域の従来想定を見直し、約2倍の範囲に広げることを盛り込んだ中間報告を公表したばかりである。想定マグニチュードも従来の8.7から9.0程度に引き上げられる見通しだからゾッとする。
ここ数日の不気味な動き。用心に越したことはない。
週刊現代 2012年1月5日 掲載