マレーシアのインフレを考える

我々退職者にとって、いや退職者に限らず海外に出る場合、気をつけないとならないのがその国のインフレ率だと思います。その国で働いて所得を得られるのならインフレ率によって所得も変わるのが普通ですからさほど問題がないにしても、他国(例えば日本)に所得の源泉があるとか、所得は定額である場合、住む国のインフレはボディブローのようにかなり強力に効いてきますので、注意が必要だと思います。

私たちがオーストラリアに来たのは1991年。この22年間のインフレはすさまじく、何でも倍以上になっています。日本はデフレでしたので、日本人はどうしてもデフレの感覚しかわかりません。また、日本でもインフレの嵐が吹いたことがありますが、その時の怖さを知っている人は皆無だと言って良いと思います。

何言ってるんだ?と思うでしょ。その時代も俺たちは生きてきたと。

でも考えてみてください。田中角栄の列島改造論の時がそうですが、恐ろしいインフレでしたが、それと共に収入もどんどん上がったじゃないですか。もしあの当時、所得が定額だとしたら大変な思いをしたと思いますが、今の退職者の世代はほとんどそういう経験が無いはずです。当時、年金生活をしていた人、あるいは利子所得で生きていた人はどうだったんでしょうか。ただ、私は当時の金利は知りませんが、日本では金利が5-7%という時代もあって、今ほど金利生活が難しいということはなかったと思っています。

さて、まずは過去を見てみます。日本、マレーシア、オーストラリアのインフレ率の推移です。1980~2013年。画像を右クリックすると違う窓で画像が表示されます。

chart

このグラフを見ていますと、いろいろなストーリーが思い出されます。

まず私がびっくりしたのは、オーストラリアのインフレはとんでもないと思っていたのに、この20年ではマレーシアの推移と大して変わっていないということです。ということは、この20年のマレーシアのインフレも凄かったんでしょうか。

ここでマレーシアに関してですが、ニュースで来年のマレーシアのインフレは加速し、3%を超えるのは確実だというのがありました。

マレーシア、電気値上げでインフレ加速 来年見通し  ← クリック

長くなりますがニュースは後で消えていきますので転載します。

——————SankeiBiz
マレーシアは来年1月から政府が電気料金を引き上げることを受け、インフレが加速する見通しだ。バンク・ネガラ(中央銀行)は引き上げにより、同月の物価上昇率が前年同月比で0.4ポイント程度押し上げられると予想している。現地英字紙スターなどが報じた。

同国エネルギー・環境技術・水資源省によると、1月1日から実施する電気料金の引き上げは、マレー半島が1キロワット時当たり0.0499リンギット(約1.59円)で値上げ率は平均14.89%、サバとラブアンが同0.05リンギットで16.85%となる。産業用電気に関しても16.85%引き上げて同47.92リンギットになるという。

値上げは財政赤字縮小を目指すナジブ政権の補助金削減政策の一環。政府は今年9月2日にもレギュラーガソリンと軽油の価格を1リットル当たり0.2リンギットずつ引き上げ、それぞれ2.1リンギットと2リンギットとした。

この措置を受け、同国の消費者物価は上昇傾向が加速し、8月に1.9%だった前年同月比の物価上昇率は9月に2.6%、10月に2.8%となった。来年1月からの電気料金引き上げで中銀が許容ラインに設定しているとされる3%を超えるのは、ほぼ確実な情勢だ

中銀のゼティ総裁は「石油などの市場価格が変動するなか、補助金は維持できない」として削減は不可避と主張、物価上昇の加速は一時的な現象にとどまるとの見解を示した。(シンガポール支局)
——————

私には3%という数字からはどの程度のインフレであるのか感覚的に良くわからないのですが、オーストラリアでの自己の体験と過去のグラフを照らし合わせて想像すると、そしてマレーシアはどんどん成長してることもあわせて考えると、マレーシアのインフレはかなりインパクトがあると言えるかもしれない。

また、前の日記に書きましたが、私はインフレには3種類あると考えています。インフレという言葉をあえて違う意味で使ってわかりやすいように書こうと思いますが、

  • いわゆる政府発表のインフレ率 これを我々は一般的にインフレ率と読んでいる。
  • 生活向上によるインフレ ここを見逃しがちですが、経済の発展拡大と共に、米を食べる量は増えないにしても、より良いものが世の中に広がって来る。例えばかつては一人ひとりが電話をもつなんてことはありえなかったのに、今では皆が携帯電話を持っている。また、私が見ているたった5年間のマレーシアでさえも、ホーカーズで安い食事をするのが一般的だったのが、どんどんリッチで現代的な店が増えて、メインで食べることが多い中華もどんどん豪華になっている。コンドも同じ。どんどん良いコンドが立っている。つまり、衣食住、そして娯楽にしてもレベルがあがっているのがはっきり見える。これはインフレ率では見えてこない生活向上インフレと言って良いようなインフレ。選ぶものが変わってくるんですから。
  • 年齢によるインフレ 子供が小さい時には2LDKでも良かったのが大きくなってきたらそれじゃ済みません。自動車もカローラで良かったのが、SUVが欲しくなる。いつかはクラウンなんて古い言葉がありますが、年齢と共に、良いものが欲しくなる。子供も幼い頃は裏の公園で遊ばせていれば良かったのが、大きくなるとあちこち見せる必要もあるし、ハワイに行きたいよ~~なんて言う様にもなる。またそうじゃないにしても、子供を考えた場合、幼い頃と大学へ行く時期を考えると、生活費に何倍もの違いが出てくる。私はここは非常に大事な点だと思っていて、例えば日本で考えてみても、小さな子供を抱えているような年代だと年収1千万あったら良いなぁと思いますが、では子供も大きくなって住宅ローンも抱える50代になると、1千万でも決して豊かとは言えないんですね。これが現状なのに、若い人は意外にそこに気がつかない。今の収入のままで子供が大きくなったらとんでもないことが起きるのに気がつかない。

インフレに対してどう生きていくのかは、この3つのインフレを足して考えないとならないと思っています。

この日記で何度も、早期退職を簡単に考えるべきじゃないと書いていますが、こういうことなんです。ちょっとやそっとの資金があってもどうにもならない。我々のような退職者の年代はまだ救いがあります。この先、何十年も生きることがありませんから、どうにかなるかもしれない。ところが30代、40代で子連れで海外に出る場合、20年、30年先を想像することが大切だと思います。

でもそんな先のことがわかるか、と思うのが普通。だからこそ、10~20年も経つとみんなどこかへ消えていくということが起きるんですね。私がオーストラリアで見てきたのはまさにそれです。来た当時は、皆さんルンルンしてるし、それなりの生活をしていた。ところが5年もすると、こんなはずじゃなかったというのが見えてくる。私たちの子供ですが、幼稚園からオーストラリアで育ちましたが、1年生と12年生を比べただけで学費は8倍にもなりました。でも今はもっと酷いことになっていると聞いています。そして大学。家から通わないとしたら、また海外の大学って日本みたいに安くないですし、とんでもない金がかかります。(もし子供が出来る子で、アメリカのアイヴィーリーグへ留学なんて話が出てきたら、生活費込みで卒業までに5千万円近くはかかるんじゃないでしょうか。)

ですから当地ゴールドコーストの場合ですと、早い人は5年目、そして10年も経つ辺りでは、もう駄目だと引き上げる人が続々とでてきました。

現地でそれなりに良い仕事を得た人、また事業でうまく行った人しか残っていないというのが現状です。

こんなことはしっかりシミュレーションすればわかるんですね。20年後のことなんかわかるかと、そこで思考停止するとかなりうまくない。ちょっとやそっと資金があっても、それで食うことなんか不可能に近いんですね。まず税金、そして利息や配当から食うわけですが、それで元本は減らないにしても、インフレ対策ができていなければ、実質的な収入も資産もどんどん減るわけです。これは本当に恐ろしい。

ではどのくらいの元本、利回りが必要か考えてみますと、いくら元本が大きくても10%やそこらで回しても全く追いつかないのがわかるんですね。それだけ税金やインフレって恐ろしいってこと。もし一切使わないにしても実質的な資産価値を維持するのさえ難しい。早期退職を考える人はネットの中に結構いるのがわかりますし、このブログにも検索で飛んでくる方が結構多いのですが、この辺を簡単に考えている人がほとんどだと感じますので、ここは特に強調したいところです。(マレーシアで無税になる所得がある場合はマレーシア行きは非常に大きなメリットになる)

だからやっぱり資産、元本は関係なくて、どんな時代にも稼げる能力が大事だということ。これに尽きると思います。資産は所得を稼ぎ出す種でしかない。大事なのはやっぱり所得。

そんなのは無理だ~~というのが多くの場合のシミュレーションの結果だと思いますが、早期退職や海外生活ってのはまさにそれを乗り越えないと長続きはせずに、いつのまにか消えていくことになるはずです。自分で稼いで資産を作った人なら問題はないでしょうが、親からの遺産だとか、不動産を売ってちょっと大きな金が入ったから、なんてのが早期退職の動機だとしたら、かなり早い時期に退場させられる可能性があると私は思っています。

また稼ぐ手立てはあっても、では病気になったらどうなるか?とか、社会保障はどうなのか、その辺も考えないと危ないと思います。そしてビザ。どういう理由があろうと、仕事が出来ない状態になったらビザの延長は出来ないのが普通。これはジジババのMM2Hも同じで、食えなくなったら帰るしかない。日本に何もなかろうと帰るしかない。海外では日本人を騙す日本人が多いと言われますが、こういうこともバックグラウンドにあるんじゃないでしょうか。そうでもしなければその地に留まることが出来ない人たちがいる。

何度も書きますが、まだ退職者のロングステイは気楽なもんです。耐乏生活を受け入れればどうにかなるケースが多いはず。でも最近増えている、若い方々の早期退職、海外移住に関しては簡単に考えるととんでもないことが起きるって事です。子供を海外で自由に育てて・・・、あるいは放射能が・・・・なんて思っても、帰らなければならないケース、その確率ってかなり高いってこと。

でも夢と希望がパンパンに膨れている状態で、そのシミュレーションを冷静にするのはまず不可能なんですね。実行することに意義を感じていますから、後のことはどうにかなると考えてしまうのが普通。私もそうでした。でもそれだといつか真っ青になる時が来るのね。ここで踏ん張れるかどうかが運命の分かれ道で、生き残るにはどうするかというと、これまた繰り返しますが、「現地でしっかり稼ぐ能力をつける」これしかありません。これが出来ないと、その国に居たくても追い出されますし(永住権、市民権がある場合は別)、日本に帰ってまたゼロからやり直し。(そういえば、日本へ帰ってゼロ出発は厳しいから、ゼロになる前に見切りをつけて帰る人が多かったように思います)

そして馬鹿にしてはならないのが保険や社会保障。健康でやる気満々の人はそれをないがしろに考える傾向があるはずですが、長い人生には必ず何か想定外が起きるのが普通なのを忘れてはならないと思います。それと若いうちには考えない人が多い年金。海外暮らしはジジババになってから不労所得の年金も無く、かなり悲惨なことになるであろうことを覚悟する必要がある。また良い職があったにしても退職金が無いのも普通。そしてジジババに健康保険がなくても大丈夫なのか?民間保険で問題ない?

つまり、社会保障も年金も当てに出来ない国で生き残るには、若いうちから長い年月に渡ってしっかり稼げる技能を得ないと大変なことになる。あるいはガッツリ稼いで資産形成する。でもその資産はインフレでやられっぱなしになる可能性も高いってこと。これって日本で生きる以上に難しいと考えるべきで、もし若者で今の円安程度のことでヒーヒー言っていたら遠い将来は真っ暗でしょう。そして若い今、どうにか食えてるからまぁ安心だなんて思ったら大変だということ。ましてや銀行の定期が3%4%で喜ぶなんてとんでもない的外れだということ。インフレだけでも3%だというのに将来どうします?

何十年先じゃないにしても、2年後4年後6年後10年後にどの程度のお金が必要か、自分は間違えなくもっと稼げてるのか、少なくとも子供の大学卒業までの見通しが付くようじゃないとうまくない。そして、その間に病気にかかったらとか、事故にあったらどうするとか、それも考えて保険にも入らないとならないし、そしてその後は自分が老いて行くのに必要なものの確保を考えないとならないはず。そう考えていくと、若い時からスタートして備えるべきことも見えてくるはずなんですね。

そしてビザ。ここなんですねぇ、問題は。ご自分が持っているビザにどういう制限があるのかよーーく考える必要があると思います。住んでいたいならいつまででも住めるのか、それとも状況が変わると追い出されるビザなのか。海外で命の次に大切なのはビザだと私は考えています。

ちょっと見方を変えて将来の支出増、収入、社会保障、年金、ビザと、考えれば考えるほど海外生活ってゾッとするはずで(現地でちゃんと稼げて、追い出されることの無い滞在許可(ビザ)はもちろん社会保障や年金、保険がちゃんとしてるなら話は別)、海外旅行の延長で考えていたら大変だし、マレーシアの物価は安くて助かるなんて思考方法だとうまくないでしょ。確かにマレーシアは「ロングステイ」に関してはトップだけれど、移民移住となるとどうしてアメリカやオーストラリアカナダに何倍もの多くの人たちが向かうのか、そこをしっかり考えるべきでしょう。物価も高いし問題があっても、有利な滞在許可を含めて、一生のこととして考えるとやっぱり移住先としてそういう国々を選ぶほうが「得」、あるいは「楽」、結果としての「幸福」という答えが出るんじゃないでしょうか。でも中途半端の歳ですと永住権を取るのも簡単じゃないし、だからやっぱりビザ取得が簡単なマレーシアとなると思いますが、でもマレーシアに限らず、どうして多くの東南アジアの人たちは先進国へ移住しようとするんでしょうか。やっぱりそちらの方が生活が「楽」、「幸せ」であると考えているはずで、楽しいとか、好きだとか、そういうレベルで見たら駄目だと思います。もし好きとか嫌いとかそういう判断基準、あるいはビザが取れる取れないという判断基準だとしたら、あるいはどうしてもマレーシアに住みたいと思うのであれば、その分、実は将来かなりの苦労、それも日本を含む他国ならしなくても良いような苦労をしなくてはならない現実を受け入れるしかないと思います。また、青い鳥はもしかしたら日本にいるのかもしれないと原点に返って考える必要もあるんじゃないでしょうか。何かから逃げれば、次は何か他のものに追われることになる。世の中にうまい話はどこにも無いのに、うまい話を探す投資家に似ているかもしれない。

将来、いろいろ体験できて良かったね、で終わってそれで良いのか、それとも当初の計画を何が何でも完遂するのか、その辺は腹をすえて考えることが大事だと思い、これを書いています。

人生には上り坂、下り坂、そしてまさかの坂があるというのが口癖の友人がいますが、私もジジーになって振り返ってみますとまさにそのまさかの坂でどう生き残るかが一番大切だというのがわかります。想定外のことは必ず起きる。それを念頭に置いて計画を練っていただきたいと願っています。

貴方の為じゃなくて、貴方の子供の為に。親は好き勝手なことをやってどうなろうと構いませんが、その時、子供は犠牲者になる。

ジジババはどうにかなるケースが多いですが、そういうジジババの中に入って、同じような情報収集をして同じような考え方で移住じゃ子育てじゃと考えていたら、若い方、子連れの方は大変なことになると思います。

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もう一つ面白いニュースがありました。

各国で「今年の漢字」を選ぶのが流行っているようですが、今年のマレーシアの漢字は「漲」。

「漲」

満々と水などが満ち溢れる様を表していて、インフレ、物価高を念頭においての選出とのこと。

     
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