生まれてこの方、こんなに真剣に、そして精魂込めて作った料理は初めてだと思います。
なぜ次男坊のため?
彼はクリスマスと正月を家族と一緒に過ごすためにシドニーから来てくれましたが、明日帰ります。
今度いつ会えるのか、どこで会えるのか、全く想像さえ出来ません。
去年、私は二人の大事な人を亡くしました。一人は私よりずーっと若い義妹。もう一人は30年来の付き合いの友人。どちらも「まさか」の別れでした。
60も過ぎてくるとこういう別れは多くなり、新しく知る人も少なく、また知り合うときの感激なんて無いに等しく、しかし別れはずっしりと重みを感じるような悲しさがあります。そして自分だっていつどうなるか全くわからない。まさかが起きないとも限らない。
ですから息子たちと会える時を大事にしたいのです。彼等はまだ20代で、そういう別れなんか想像したこともないはずですが、いつか来るその日の為に少しでも多くの思い出を作っておきたいのです。
だから次男坊のための料理。オックステイルの煮込みです。
オックステイルそのものは随分作りましたので、どうやったらどんなになるかの想像は難しくありません。でも最終的な味付け、そしてソースにはまだまだ迷いがあります。そこで今回は赤ワインをメインにしたソースを作ってみました。我が家にはブラウンソースもデミグラスソースもありませんが、スープは結構頑張って作ったので良い味が出ています。それをかなり煮詰めまして、トマトペースト、赤ワインで最終的な味付けをしました。
いつもの自画自賛ですが、これはきっと今の私が作れるベストの料理だろうと思います。ただ材料がいろいろあるわけでもなく、付け合せの野菜もありませんし、上からかけたクリームもサワークリームのほうが良かったはず。グリーンなテイストが無く全体の味が濃厚なので、イタリアンパセリとオリーブオイルを混ぜ、ちょっと酸っぱみのあるソースも添えてみました。そしてカリカリに焼いたバケット。
スープはマロウボーンから取りました。いわゆる牛の骨で真ん中に骨髄がある骨です。これを一度煮こぼしてから圧力鍋で90分。かなり良い感じのベースになったと思います。
そしてオックステイル。
まず流水に浸けざっと血を流してから水分を拭き、それに小麦粉をまぶししっかり焼きました。これでかなり脂が取れました。ああ、オックステイルを焼く時に、フトひらめきまして、余分な脂を最初に外したのですがそれを刻んでフライパンでカリカリになるまで焼き、そのときに出た脂ヘットでオックステイルを焼くことにしました。カリカリになった油かすですが、これはこれで美味しいのでオックステイルを煮こむ時に一緒に投入します。
ミレポアも多めに、そしてしっかり焦げ目が付くように炒めました。
骨からスープを取っている間に準備完了。
骨のスープを漉し、そして上の素材を全て投入。ハーブ類は黒胡椒を粒のまま多めに、ローリエ数枚、ガーリックとショウガを少々。それだけです。ああ、クローブも少々。この時点では、最終的な味付けをどうするかは決めていません。
沸騰してきたら火を弱め、浮いてくるアクを丁寧に取ります。そして頃合いを見て圧力をかけました。35分。その後、浮いている脂をできるだけ取り去り、味見をした時に、これは洋風にしたほうが良いと直感し、ウースターシャーソース、醤油&オイスターソースを少々、トマトペーストを入れて、また30分ほどコトコトと煮込みました。
これでベースは完成。
全体の4分の1程度のスープを漉して、違う鍋に移し、赤ワイン、トマトペーストを入れ煮詰めました。そして塩コショウで調整。それでソースは完成で、出来たのが一番上の写真のもの。
かなりイケてると思います。特にソースがうまく行ってかなり本格的な味になりました。
それを息子たちに食べさせたのですが、あえて感想は聞きませんでした。聞きたくないと思いました。
きっと彼等はこの美味しさのオックステイルはもちろん牛肉の煮込みを食べたことがないはずで、何を感じたかはそっと心の中に仕舞っておいて欲しいと思いました。
そしていつか、オヤジって料理がうまかったんだよね~~なんて勘違いしてくれれば嬉しいし(笑)、またオックステイルを見たり食べたりする時に私を思い出してくれればそれで十分。よし、俺もオヤジの真似をして作ってみようなんて時が来るかもしれない。
明日の早朝、次男坊はシドニーに帰っていきますが、こんなに息子との別れが心にずっしり来るのはこれが初めてです。
ジジーこくとこういう風になるんでしょうかねぇ。それとも私が変わってる?