ISILですが、前に書きましたが、不思議だと思うことがあるんです。
あれほどメチャクチャなことをやっているのに、どうしてすぐ隣のイスラエルと戦闘状態にならないのか。またISILはイスラエルを敵国として非難した話も聞いたことがなければ、イスラエルがなぜ「有志連合」に参加しないのかもおかしいと思っています。
その理由を想像すれば、「ISILとイスラエルは手を結んでいる」ということしか考えられませんよね。そしてそれには当然アメリカも関係している。だからアメリカのISIL戦略も中途半端に見えるのではなかろうか。
こういう疑惑をかなり前から感じていました。そしてどうもそれは「その通り」である様子。(無料)購読している「田中宇」という国際情勢解説者からの国際ニュース配信(ここをクリック)にそれが書かれていました。
この中東のごちゃごちゃって、私にはなかなか理解が難しかったんです。「バカの壁」が自分の中にはっきり存在するのがわかっていて(笑)、理解しようとしても途中でわけがわからなくなってくるのね。ところがこの解説を読んだ所、こんがらがった糸が簡単にほどけてきました。
この辺を理解するには、ちょっとISILのことは横に置いといて、時計を戻してみれば簡単だと思うのです。
そもそも、アメリカっていつシリアを爆撃するのかって世界は恐々としていたんじゃなかったっけ?
アメリカがイランを攻撃する口実を探していると思われる時期もありましたよね?
その内、イスラエルとイランが戦争をするのではないかと世界中が心配していたんじゃなかったっけ?
こういう状態がしばし続いていたとするならば、当然、イスラエルもアメリカも「反シリア勢力」「反イラン勢力」をバックアップする。この辺まではニュースで我々も知ることができていた。ちょっとイランはおいといて、シリアに関しては「反政府勢力」にアメリカは加担してモサド政権を倒そうとしていましたよね。
で、ISILとは?彼らはシリアの反政府勢力。まさにISILはアメリカの支援対象。
つまり、ISILが生まれた背景がアメリカの「イラク侵攻」にあるのははっきりしていますが、アメリカはISILを支援していたという事実は「表には出てこない」のが現状。また支援は過去形なのか、それとも現在でも繋がりがあるのかどうか。ここが問題ですよね?最近はアメリカが地上軍を出そうかという話が出ているわけですから、そして爆撃はしているわけですから、まさか現在もISILと繋がりがあるとは思えない。
ではイスラエルは?ココがポイントだと思うのです。イスラエルとアメリカは一心同体では無いにしても、深い関係があるのは周知の事実で、イスラエルが今でもISILを支援しているとしたら、アメリカはそれを全く知らないハズがない。
では明らかにイスラエルはISILを支援しているのかどうか?
これに関しての多くの情報が、田中宇のレポートに出ていました。(ここをクリック)
要約するとこういうこと。
○ シリア南部とイスラエル北部の間にあるゴラン高原は、もともとシリアの領土だったが、1967年の中東戦争でイスラエルに侵攻され、それ以来、イスラエルは同高原の東側の9割の土地を占領している。
○ シリアでイスラム過激派を中心とする反政府勢力が武装蜂起して内戦になった後、反政府勢力の一派であるアルカイダの「アルヌスラ戦線」が、ゴラン高原のシリア側でシリア政府軍を打ち破り、支配を拡大した。
ここでゴラン高原で「イスラエルと対峙していたシリア」の構図が変わってきたんですね。イスラエルとシリアの間(シリア側)に「アルヌスラ戦線」の支配地が出来たということ。イスラエルから見れば、敵国との間に友軍が入ってきたのと同じ。だから当然これを支援する。
ただし表面的にはそれが見えてこない。なぜなら「アルヌスラ戦線」は「イスラエルを敵の一つに名指ししている」から。
でも実際には、「イスラエルとアルヌスラの戦争が始まるのかと思いきや、その後の展開はまったく正反対のものになった。」
国連監視軍が14年末に発表した報告書によると、イスラエル軍は、ゴラン高原の停戦ライン越しに、アルヌスラの負傷した戦士を受け入れてイスラエル軍の野戦病院で手当したり、木箱に入った中身不明の支援物資を渡したりしている。国連監視軍が現地で見たことを報告書にしたのだから間違いない。(国連の報告書へのリンクもある)出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
イスラエルが停戦ライン越しにアルヌスラを支援するようになったのは13年5月からで、それ以後の1年半の間に千人以上の負傷者をイスラエル側の病院で治療してやっている。イスラエル側は、シリアの民間人に対する人道支援と位置づけているが、負傷者はアルヌスラの護衛つきで送られてくるので、民間人でなく兵士やアルヌスラの関係者ばかりと考えられる。イスラエルのネタニヤフ首相は14年2月にゴラン高原の野戦病院を視察しており、これは政府ぐるみの戦略的な事業だ。国連監視軍は14年6月にも、イスラエルがアルヌスラを支援していると指摘する報告書を出している。(国連の報告書へのリンクもある)出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
そしてこの「アルヌスラ」と「ISIL」は違う組織ではあるものの、共通の敵を持って共闘している。我々から見れば、一心同体と見ても良いかもしれない。(こういうISILではないが似たような組織があの地域にはいろいろあるらしい)
未確認情報ではこういう話もある。
未確認情報で作り話の可能性があるが、ISISが米軍の輸送機C130を持っていて、それがイスラエルのゴラン高原の道路を使った滑走路に離着陸し、イスラエルから物資を受け取っているとか、同じC130がリビアまで飛び、リビアのイスラム過激派の兵士や武器を積んでキルクークやコバニの近くまで運び、劣勢だったクルド軍との戦闘を挽回したなどという話もある。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
この辺から話が面白くなってきます。
米軍は13年から、ヨルダンの米軍(ヨルダン軍)基地で、シリア反政府勢力に軍事訓練をほどこしている。アルカイダやISIS以外の「穏健派勢力」に訓練をほどこす名目になっていたが、かなり前から「穏健派」は、米欧からの支援を受けるための窓口としての亡命組織のみの看板倒れで、米軍が訓練した兵士たちは実のところアルヌスラやISISだった(米軍はそれに気づかないふりをしてきた)。シリアからヨルダンの米軍基地への行き帰りには、ゴラン高原のイスラエル領を通っていたと考えられる(他のシリア・ヨルダン国境はシリア政府軍が警備している)。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
ヨルダン空軍のエリートパイロットがISISに焼き殺され、世論が激昂する中で、自国内で米軍にISIS訓練を許してきたヨルダンの姿勢を変えようとする動きが起きている。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
このイスラエル・アメリカの動きを封じ込めようと、シリア・イランが動き出すのですが、その辺は田中宇氏のサイトを見てください。またその動きに対して、イスラエルは反撃を加えている。
そして話は続きます。
元米軍大将のウェスリー・クラークは最近、米国のテレビに出演し「ISISは当初から、米国の同盟諸国や親米諸国から資金をもらってやってきた。(親米諸国が支援した理由は)ヒズボラの台頭をふせぐためだった」と語っている。ヒズボラの台頭を最も恐れているのはイスラエルだ。クラークは複数形で語っており、イスラエルだけでなくサウジアラビアなどペルシャ湾岸産油諸国のことも示唆していると考えられる。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
サウジもこのごちゃごちゃに巻き込まれているんですね。
サウジは以前、米国に頼まれて、シリア反政府勢力を支援していた。米国が10年にシリアのアサド政権を許すことを検討した時、サウジはいち早くアサドを自国に招待して歓待し、和解した。しかしその後、米国が再び反アサドの姿勢を強めたため、サウジも反アサドに転じた。サウジのシリア政策は、対米従属の一環だ。米国がアルカイダやISISを支援したから、サウジも支援し
た。しかしISISは14年11月、イラクとシリアを「平定」したら、次はサウジに侵攻し、メッカとメディナを占領すると宣言する動画を発表した。メッカの聖職者は、ISISを最大の敵だと非難し返した。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
サウジ政府はその後、イラクと自国の千キロの砂漠ばかりの国境線に、深い塹壕や高い防御壁からなる「万里の長城」の建設を開始し、ISISが国境を越えて侵入してくるのを防ぐ策を強化した。今やISISは、サウジにとって大きな脅威であり、支援の対象であり続けていると考えられない。サウジは以前、米国に頼まれてISISに資金援助していたが、すでに今は支援していないと考えるのが自然だ。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
さて、どうしてイスラエルやアメリカがややこしいことをするかというのはこの辺から理由が見えてきます。
もしISISやアルヌスラがアサド政権を倒してシリアを統一したら、ゴラン高原を本気で奪還しようとイスラエルに戦争を仕掛けてくるだろう。サウジだけでなくイスラエルにとっても大きな脅威になる。だが米国やイスラエルは、アルヌスラやISISを支援する一方で、彼らがアサド政権を倒してシリアを統一できるまで強くならないよう制御し、彼らの間の分裂や、米欧による空爆も行い、シリアの内戦状態が恒久化するように謀っている。こうすることで、イスラエルは自国の北側に敵対的な強国ができないようにしている。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
ここが重要だと思います。
米国の上層部では、オバマ大統領が、自国の中東戦略がイスラエルに牛耳られ、馬鹿げたイラク侵攻を起こした体制からの脱却を望み、イラクからの軍事撤退を強行した。国防総省や議会など軍産複合体がイスラエルと同じ立場で、イラクからの軍事撤退に反対し、オバマが撤退を強行すると、次は過激派にISISを作らせて支援し、米軍が中東の軍事介入から脱却できないようにした。オバマは、軍産イスラエルが、シリアやイラクの混乱を恒久化するため、ISISやアルヌスラを強化しているのに対抗し、米軍の現場の司令官に直接命令して「ISISと戦うふり」を「ISISを本気で潰す戦い」に変質させようとしている。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
アメリカ国内でもイスラエルとくっつく軍産複合体などとオバマ氏の戦いが繰り広げられているということ。そしてイスラエルとしては、
イスラエルの軍司令官は昨秋、オバマの「本気に戦い」に反対を表明し「ISISは(米イスラエルの敵である)ヒズボラやイランと戦ってくれる良い点もある。ISISの台頭をもう少し黙認すべきであり、本気で潰すのは時期尚早だ」と表明している。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
でもオバマ氏のやろうとしているのは
オバマは、軍産イスラエルの策動によってイランにかけてきた核兵器開発の濡れ衣が解かれ、イランが経済制裁を解かれて強くなり、ISISを潰せる力を持つよう、イランとの核交渉をまとめようとしている。すでにイランは、ISISと本気で戦う最大の勢力だ。イランがISISと戦うためイラクで組織したシーア派民兵団は10万人以上の軍勢で、兵力5万のイラク国軍よりずっと強い。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
これではイスラエルは困るわけで
こうした展開は、イスラエルにとって脅威そのものだ。ネタニヤフ首相は米政界に圧力をかけ、3月に訪米して米議会でイランを非難する演説を行い、オバマに圧力をかけようとしている。しかしこの策は、イスラエルが米国の世界戦略を隠然と牛耳ってきた状態を暴露してしまい、逆効果だ。米国のマスコミは、イスラエルに逆らった議員が落選させられてきた米国の歴史を報じ始めている。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
これに対してオバマ氏も反撃を加えている。
オバマはイスラエルに報復する意味で、米国がイスラエルの核兵器開発に技術供与したことを書いた1980年代の国防総省の報告書「Critical TechnologyAssessment in Israel and NATO Nations」を機密解除して発表した。米国は、イスラエルが秘密裏に核兵器を開発していたことを正式に認めたことになる。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
こういう泥仕合状態で、つまりアメリカ内部も一枚板ではないわけで、イスラエルと同調し(これはイスラエルとISISやアルカイダは同盟関係にあることを認めること)「シリア」と「イラン」を「真の敵」と考える勢力と、オバマ氏は真っ向から対立しているってことなんですね。
ところがこれをまたややこしくしているのが「ロシア」「中国」で
この事態を打破し、中東を安定化し、米軍が撤退できる状況を作るため、イランやアサド政権やヒズボラのイラン・シリア連合軍と、オバマは同盟関係にある。イランの背後にいるロシアや中国も、この同盟体に入っている。シリア内戦の解決策として最も現実的なのは、アサド政権と反政府勢力の停戦を大国が仲裁することだが、それをやっているのはロシアだ。米政府はロシアの仲裁を支持している。また中国は以前、中東の国際問題に介入したがらなかったが、最近ではイランの核問題の解決に貢献する姿勢を強めている。事態は、不安定化や戦争を画策する軍産イスラエル・米議会・ISISアルカイダ連合体と、安定化や停戦を画策するイラン露中・アサド・ヒズボラ・オバマ連合体との対立になっている。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり
この背景には利得とそして宗教まで絡んでいるわけで、ややこしいなんてもんじゃないですが、この解説を読むとそれぞれがどういう関係になっているのかが良く見えてくると思いました。敵味方はあの中東だけではなくて、世界を巻き込んだ対立構造が出きている。この大きな戦いには「宗教」が全面に出ているような感じがしますが、それは「詭弁」で、自分たちを正当化するために利用してるだけのようにも思えてきます。宗教はプロパガンダとしては最強ですし、弱い勢力にとっては何よりの「武器」になりますから。
さて、ここで考えないとならないのは、「日本の立場」。
安倍さんはイスラエルに行って支援を約束した。ということは?オバマ氏とは対立関係にあるということになりませんかね。またイスラエル陣営に擦り寄るということは「ISIL」「アルカイダ」への支援も認めたことになる。
もちろんそんなことを表明できるわけもない(イスラエルだってそんなバカなことは言わない)ですが、当然、日本政府はイスラエル陣営が何をしているかは知っているはず。もともとオバマ氏と日本は相性が悪いわけで、日本はイスラエルやアメリカの軍産複合体とくっつくことを選んだと「世界には映る」。
日本人二人がISILに拘束されているのを知っていて、なぜイスラエルに行って余計なことをしたのかと安倍さんは言われていますが、安倍さんは「イスラエルで平和を言うのなら大丈夫」と踏んだのだと思います。でもそうはならなかった。逆に、うまい具合にイスラエルやそれに呼応するアメリカの勢力である軍産複合体の策略にのり、引きずり込まれてしまったのかも。でも、安倍さんはそれさえも読んでいて、「憲法改正」「自衛隊の立場の改革」を狙ったのかもしれません。日本は外圧がないと変えられませんから、今の世界の動きをチャンスと見た可能性はあると思います。
世界中の指導者全ては「平和を望んでいる」というけれど、政治的にはかなりややこしい状態ですね。でもこの解説を読んで謎解きが出来ましたが、これも「一つの見方」でしかなく、「真実はどこにあるのかわからない」。
こんな中で「ややこしいことはわからないけれど」「世界が平和でありますように」という願いは神に届くのか。「戦争反対」を叫んでいればどうにかなるような世界ではないのは、人類始まって以来、今も変わらぬ「事実」だと思います。戦いに生き延びたものだけが残り、そこに「美しく輝かしい歴史」を書き刻むのでしょう。
【「平和」とは「戦って生き延びた人、国が築くもの」】だと思います。願うだけ、叫ぶだけ、あるいは逃げるだけで平和になった歴史はこの地球には無いんじゃないでしょうか。そして人類滅亡の時までその歴史が刻まれることはないと思います。でもそれに挑戦するのが人間の使命なのかもしれませんね。でもまたそれも人類始まって以来、言われてきたことなのだとも思います。そして戦わざるものは歴史上から消された。
ローマ法王が去年、「第三次世界大戦が始まった」といったのはこういうことなんでしょうね。
--------(後記)----------
田中宇氏の解説に大事なことが書かれていたのを付記しておきます。結局ISILにしてもイスラエルというのがキーになるということなのですが、ではイスラエルが何を考えているのかを想像することが必要だと思います。
2人殺害の事件が起きるまで、日本のマスコミはISISについてあまり報じなかった。遠い中東で起きている複雑な背景の現象だから、報道が少ないのは当然だった。だが事件後、テレビは毎日必ずISISのことを報道する。これは911後のテロ戦争と同様、米国(軍産)主導の新たな国際体制を作ろうとする時のプロパガンダ策のにおいを感じる。
軍産イスラエルは、自分たちが支援しているISISが日本人やヨルダン人や米英人やエジプト人らを次々と殺害し、世界がISISとの戦争に巻き込まれ、中東に軍事関与せざるを得ない事態を作ることで、911以来14年経って下火になってきた、テロリストが米国の世界支配を維持してくれる「テロ戦争」の構図を巻き直そうとしている。イスラエルは、オバマやEUなど、世界から敵視を強められている。それに対抗する策としてISISは便利な存在だ。
安倍首相のイスラエル訪問は、安倍がイスラエル現地で会ったマケイン米上院議員ら、米政界の軍産イスラエル系の勢力からの要請を受けて行われた(イスラエルはパレスチナ問題で欧州に経済制裁される分の投資や貿易を日本に穴埋めさせたい)。安倍は軍産イスラエルに頼まれてイスラエルを訪問し、訪問とともにISISに人質事件を起こされ、軍産イスラエルの新たなテロ戦争に見事に巻き込まれた。日本は、ISIS人質殺害事件を機にイスラエルとテロ対策で協調を強めようとしているが、これは防火体制を強化する策を放火魔に相談するのと同じで、とても危険だ。
今のイスラエルの危険さは、国際的に追い詰められている点にある。イスラエルは国際政治力に長けていて謀略の能力が高い。対照的に戦後の日本は、対米従属の国是をまっとうするため、国際政治や謀略の技能を自ら削ぎ、国際情勢に無知な、諜報力が欠如した状態を、意図して維持してきた。そんな無知な日本が、追い詰められた謀略国イスラエルに、のこのこと接近している。ひどいことにならないことを祈るしかない。出典:田中宇:ISISと米イスラエルのつながり