前にもちょっとだけ書きましたが、温度計の誤差って大きいんですね。まさかと思うぐらい。結構高いものでもプラマイ2%はあると。安いものだと5%とか?
60度だとして5%は3度。ま、これだけ誤差が大きい場合は運が悪かったと思うしか無いのでしょうが、1-2度程度の誤差があるケースは普通なのかも。
でも私はそれほど誤差があるものだとは全く知りませんでした。体温計だってそうで、1度の誤差があるだけで大変なことになりますもの。
でも体温計は特別だそうですね。また測る範囲が狭いですから、絶対的な温度の違いとしての誤差は小さく出来るのでしょう。
ところが常温から90度までとか、そういう巾が広い場合はそれなりの誤差があると考えないとならない。
誤差が出ると何がまずいのかですが、自分でその温度を見て調理するならほとんど問題はないですよね。自分が58度だと思っているものがもし56度、60度だとしても、自分で温度調節をして上げたり下げたりしながら自分が「これだ」と思う温度を探す作業は同じことですから。
ところがネットで見つけたレシピを真似するとか、友人と情報交換をする場合はおかしなことが起きるわけです。同じものが作れないことになりますから。
私が低温調理機の温度がおかしいんじゃないかと疑いだしたのは「温泉卵」を作った時です。温泉卵やポーチドエッグにしても卵に凝る人は世界中にたくさんいて、何度だとどうなるかのレポートはネットに多く出ていますが、それと同じ結果を自分では出せないんですよ。まさか温度計に大きな誤差があるのが普通なんてことを知りませんでしたから何が違うのか結構悩みました。
でも温度計がおかしいのかもと、ある時気がついた。
私の低温調理機にカリブレーション機能が付いていまして、調整ができるのですが、さて、正しい温度ってどうやればわかる?
沸騰したお湯を計るという方法があるらしいですが、私は自分の体温を使いました。私の常温は37度弱。
でも低温調理機を抱きしめて自分の体温を計るわけにはいきませんよねぇ。 (笑)
低温調理機を持っていない頃から使っている、デジタル式の温度計を持っています。安いものでステンレスの棒状の針が長くなっていて、肉の芯温を計れるタイプのものですが、まずそれで自分の体温を計ってみたんです。するとなんと38.5度もある。これが本当ならフラフラ状態のはず。2度近い誤差がある様子。
そこで低温調理機を動かして、60度にセット。それをこの温度計で計ったらやっぱり60度じゃないんですね。何度だったか忘れましたが、結構高めに表示されたはず。
安物温度計は高めに出て、低温調理器は低めに出ると考えまして、その間を取って低温調理器のキャリブレーション機能を使って1.2度程度高く表示するように調整しました。
でも本当の温度とどのくらいの誤差があるのかはいまだにわかりません。また使う温度帯によっても違うはず。ただ、温泉卵みたいに温度の違いがはっきりわかるものを作ってみますと、ほぼ、こんな感じなんだろうなと納得するものが出来るようになりましたので、そこそこかなと思っています。低温調理器そのものが高級温度計より安いぐらいですから、ま、しょうがないかと。(笑)
でも、何度だとどうなるかとネットに出している人たちも同じなんですよね。それぞれが全く長さの違う定規を持っているのと同じ。でも今の今まで温度計の誤差に関して書いている人を一人たりとも見たことがありません。
これって非常にうまくないことだと思っていて、温泉卵を作るような温度の場合、もし2度以上の誤差があったら全くちがうものになってしまう。これはローストビーフも同じで、レアとミディアムレア、ミディアムレアとミディアムの温度差ってそれぞれ2度ちょっとのはずですから、やっぱり違うものが出来てしまう。また、何をもってミディアム、あるいはミディアムレアとするかってのも人によってかなり違うんですね。ですから私は「写真」が大事だと思っています。唯一の証拠。(笑)
でも写真もいい加減で、ちゃんとした色は出ないのが普通で、またモニターに因っても見える色にはズレがあって、実は同じものを皆が見ても、目の前のモニターに映る色はそれぞれ微妙に違うんですね。だから画像や映像、印刷関係のプロは高いモニターを使ってしっかりキャリブレーションをする。面白い世界だと思います。
ですから、できるだけ温度は正確なものに近づくようにキャリブレーションしないとならないのと、他人が書いている温度は本当の温度ではないと「常に疑う」必要があると思っています。
私の良いと思うローストビーフは58度なんですが、きっとこれは実際の温度より高く表示されている可能性があると思いながらやっています。55度で作る人も結構いるんですが、私の場合55度ですと真っ赤かなステーキが好きな私でさえ、ちょっと・・・って思うくらいです。そうかと思えば先日、ローストビーフは54度が最適だと書いているアメリカ人のレシピを見まして、彼女の本当の温度はきっともっと高いのではないかと思ったり。
どちらにしても他人は他人で、自分が作るときの最適な温度を試行錯誤しながら探さないとならないわけですが、でもそれで出た答えは「きっとズレがある」と考えるべきで、情報交換をする場合はそれを常に忘れてはならないと思うんです。特に「個人」が書いている温度は「しっかり疑うべき」で私が書いている温度も信用しないことが大事ですし、やっぱりその辺はプロなり、ちゃんとした機関が書いている温度を参考にするべきだと思います。
でも自分の温度計の誤差が大きければ同じものは作れない。(笑)
いつも書いていることですが、温度って非常に微妙で大事なのが低温調理だと思っています。ですから水温を計れないタイプ、あるいは温水を対流させられない場合(ホットスポット・コールドスポットの温度差はかなり大きい。冬のお風呂と同じ)はどれほど大きな差がでるかは簡単に想像できるはず。この辺を無視して調理しても、本人が「低温調理をしているつもり」になっているだけで、実際には何が起きているのかは全くわからないんですね。オーブン料理で芯温を計らずに焼くのと同じ難しさがある。これは炊飯器の保温機能を使っても同じ。
でも低温調理って温度管理をしっかり出来れば、「常に」「大きさが違っても」「形がいびつでも」「誰でも」【同じものが作れる】ってことですね。調理しながら「だいじょうぶかなぁ」とか「もうそろそろかな」とか「今回は成功するかな」とかそういう心配とは完全に縁を切れるってこと。だからホテルや大型店は低温調理機やスチコンを導入するんですね。そうじゃないと常に一定の品質のものを大量に作るのはかなり難しくなるはずですから。
これを「プロの道具」と思っては大間違いで、これこそが(作るたびに出来上がりが違う 笑)「素人」に取っては必需品だぐらいに思っています。
それとこの手の情報収集は、私はアメリカを基本にした方が良いと思っています。自宅で作る生ハムやエージングも同じで、日本ではかなり狭い範囲の趣味でしか無いんですね。欧米のそれに関する歴史の長さと作り手の多さの違いを無視してはうまくなくて、日本の場合は誰かが適当に書いたものがどんどん伝染して広がっている印象を私は持っています。低温調理でも「安全の問題」を軽視するべきではないですし、私も含めた「素人」の「自己責任でお願いします」という言葉を真に受けたらまずいと思います。日本でも海外でもちゃんとした機関がガイドラインを出していますし、趣味人たちもしっかり抑えるところは抑えてやっているのを欧米人に感じることが良くあります。
ダボの書いていることも信用しない。こういうスタンスって大事だと思うんです。