久しぶりのローストビーフです。
使ったのはこの肉。普通にスーパーで売っている普通のロースト用の肉。キロ15ドルで約800グラム。肉には「かなりしっかり」コショウがまぶしてあります。
これを58度で5時間低温調理。鍋から取り出したところ。
水分を拭きとって、フライパンとバーナーを使って周りをしっかり焼きました。
切ってみたらこんな感じ。
どう思います?見た感じはちょうど良さそうに思いますよね。
でも安い肉の場合、ここまで火を入れちゃうと駄目だと思います。しっとりはしていますが味も素っ気もない、中途半端な焼肉です。ソースで誤魔化すしかありません。
これじゃそこらで売っているローストビーフと同じなんですね。ということでこれは「オージー風」です。いや、売っているものの多くはもっと火が入っているし、レストランでもパサパサのローストビーフを出すところが大半です。ま、食文化の違いですから文句を言ってもしょうがないのですが、やっぱりこの肉の58度は高過ぎると思います。55度でやりたかったぁ。
じゃぁ、どうして58度にしたかですが、それは我が家には「真っ赤な肉」だと騒ぐ人がいるから。(笑)
息子もこの焼き具合を見て、「おおお、調度良く焼けたね~~」なんて言ってましたが、たしかに見た目はそうなんですが、こういう焼き方でも美味しく食べるにはそれなりのものを買わないと駄目だと私は思ってます。
それとですね、もう一つ理由があります。
これは最近わかったことなんですが、こういうロースト用として売っている肉って「普通の肉の塊」とは違うんですね。もちろんそのまますぐに焼けるように味付けがなされているわけですが、その味付けの「方法」が問題なんです。
どんな味か?ってことじゃなくて、この手の肉は前に日記に書いた「注射器で溶液を注入」してある肉がほとんどなんですね。つまり、周りに胡椒をメインに塗ったくってあるだけじゃなくて、内部に水分じゃなんじゃといろいろ注入してあるわけです。(そのことに関して書いた日記はこれ)
最近になってやっと気がついたことは、その注入する物によって違いますが、「塩分」が多いいわゆる「塩せき」という肉の前処理をされているものは「塩漬け肉」と同じように、肉がしっとりするんですね。そしてそういう肉の多くは「硝酸塩」も注入されている。これは非常に身体に悪く癌になるとも言われ、日本では毛嫌いする傾向があると思いますが、欧米ではかなりその辺のニュアンスが違うんですね。これは「必要不可欠」だから使うわけで、非常に怖い「ボツリヌス菌」対策。そしてこれを使うと発色が綺麗になるんですね。そして肉の酸化も抑えられて美味しくなると。だからこの硝酸塩を日本では「発色剤」という人が多いようですが、それは一つの作用でしか無い。
自作のハムやソーセージを作る場合でも欧米の一般人のレシピを見ていると、これを使うのが当たり前になっています(キュアソルト、ピンクソルトと呼ばれるのがそれ)。でも日本人の自作ものでこれを使うという人の話は聞いたことがありません。使わないのをウリにしている商品もありますが、それはそれなりの管理がなされているわけで、我々素人が流通経路もわからない、どんな肉かもわからないものを使って平気でハムやソーセージ。それも生ハムの類を作るのがいかに危険であるか。でもそれに言及する趣味人は日本にはほとんどいないのがネットを見ていると良くわかります。
この硝酸塩は肉製品の歴史が長いヨーロッパで「岩塩」の中から見つかったそうです。ですから「硝酸塩」は使わなくても「岩塩」を使えと良く言われるのはそういうことなのだろうと思いますし、もともとそういう岩塩があったからこそ肉製品、それの貯蔵の歴史に花が咲いたと言っても良いくらい重要な物質なんですね。確認は取っていませんが、ドイツではこの「硝酸塩」を使うのが義務付けられていると読みました。また日本でも生ハムに関する規制はかなり厳しい物があって、製法にもよるのでしょうが(熱処理をするとか)、「販売目的のものは」硝酸塩を使わないとならないようになっているはず。(要確認)
そもそも「ボツリヌス菌」の語源は「ソーセージ」から来ているそうです。Wikiにもそれが書いてありました。
ボツリヌス菌との関係
ソーセージやハムによる食中毒が1000年以上前から起きていたが、ソーセージに原因があることが判明したのは1870年のことであった。このときソーセージを意味するラテン語「ボトゥルス」を元に「ボツリヌス(ボトゥリヌス)中毒」と名付けられる。さらに1895年に原因菌のボツリヌス菌が発見された。なお、ボツリヌス菌が作り出す毒素は強烈であるが熱に弱く、食べる前にソーセージを加熱することで簡単に分解する。また、今日の日本では、万が一のことを考慮し加熱殺菌済みのソーセージが多く流通している。
出典:Wiki
話が長くなりましたが、ローストビーフ用のブロックや塩漬け肉にはこの「硝酸塩」が入っているのが当たり前ってことなんですね。そしてそういう肉はローストしても出来上がりの見栄えがまるで違うってこと。しっかり焼けているのに中はピンク色だったり、赤かったり。なおかつ塩漬けしてあるとしっとりしますし、味が出ますので「美味しいなぁ~~~」となる。(笑)
私のローストビーフづくりの中で、どうして同じ温度なのにこれだけ「色」が違うんだろうとか、温度が高いのにどうしてこんなに「赤い」のだろうかとかかなり悩んでいたのですが、それは上に書いた事が理由だというのがつい最近、気が付きました。
例えばですね、前の日記に書いたものですが55度で低温調理してものがこれ。
それより3度高い58度で2時間半調理したのがこれ。こちらの方が赤くて生っぽいですよね。そしてみずみずしい。私はこの違いがどうして出るのかが以前にはわかりませんでした。この時の出来上がりは最高で、「塩っぱくなければ」「オーストラリアで食べた一番美味しいローストビーフ大賞」を出しても良いと思うくらい美味しかったです。
ですから「色」は大事ですが、それは「美味しそうに見える」あるいは「気持ち悪く見える」という感覚でしか無くて、「実際の火の入り方」とは無関係ではないもののかなりの違いがでるということを理解しないとならないと思います。
今日のローストビーフはその実験の意味もあったんです。上の写真にあるような58度なのにしっとりしてまだ赤い出来上がりになったものと同じ温度でやってみたかった。前の肉はかなり塩が効いていて塩っぱいと感じるほどでしたが、それすなわち「塩漬け」で長期保存、旨味、などが重視されているタイプなのでしょう。クラシックスタイルと書いてありましたが、今になればなるほどと思います。当然、「硝酸塩」も注入されているってこと。だから色も赤く鮮やかなんですね。
さて今回のはコショウがしっかりまぶしてありますが、表示義務がある「内容物」のところを見ますとかなり違うのがわかりました。「硝酸塩」は入っていませんし、「肉の含有率」が97%と表示してありました。
肉の含有率が97%っておかしいと思うでしょ?なんで100%じゃないの?って思いますよね。でも肉の塊に針が何百本も付いている注射器で「溶液」を注入した場合、それも表示しないとならないわけです。つまり、水であり塩であり、旨味成分だったり、タンパク質であったり。そしてこの97%はかなり高い比率で、いろいろと注入していないタイプだというのがわかります。酷いものは肉の比率が85%なんてのもあります。
嘘みたいでしょ?でもこれはオーストラリアだけではなくて日本も含めて世界中同じなんですね。特にハムなんて恐ろしいことになっていて、肉そのものの重さと同程度の「溶液」を注射するケースもあるとのこと。この辺の話も前に書きましたので興味があるかたは読んでみてください。(この日記)
一番良いのは、肉屋から「肉の塊」を買うってことですね。でも「ローストビーフ用」なるものはただ単に味付けがされているだけではないケースが多いということ。でも全部が全部そうではありませんから、ちゃんと表示を見ないと何もわからないんですね。で、それらに違いがある肉を同じように調理しても、出来上がりも色も味も、しっとり感もまるで違うってこと。
そしてそういう処理をされている肉は「まずい」わけではないってこと。逆に美味しいケースが多々あるわけです。
奥が深いですね~~~~。
オマケ。
私達が食べているハムとかベーコン、またローストビーフ用にパックされたものはこういう機械を使って、その都度注入すべきものを変えてブスブスやるんでしょう。これは鶏も同じ。そして、な、な、なんと魚にもやるとのこと。なんだか嫌になっちゃいますね。丸々太って味があって脂が乗ってるね~~、なんていうのも調味液と脂肪を注射しているだけかもですね。
ハムはどうやって作られているのかの動画。