2014年の7月でしたか、OECD諸国が集まって「非居住者の口座情報を交換する」というルールができましたね。いわゆる居住していない海外での銀行や証券会社などの口座情報を交換する。日本在住なのに海外に口座を持っていたら、その情報を日本の当局が入手するようになるし、日本に居住していない人の口座はその居住地に知らせるというルール。
またOECDに加盟していなくてもその動きを広げる動きがある。って非加盟国のほうがいろいろあるでしょうし。
これが動いてきたと感じることがあると前の日記に書きました。それは海外口座を持つ銀行から「オーストラリアのタックスファイルナンバー(納税者番号)」を教えてくれと連絡がありました。
これっておかしな話で、課税権も無い、こちらには納税義務もない国の銀行が、私の居住国であるオーストラリアの納税者番号を教えてくれというんですから。でもま、情報交換をする場合にはこういうデータが必要だってことなんでしょう。
そして先日ですが、「アメリカ用のW-8BENを提出して欲しい」と連絡がありました。
この書類を提出した経験がある方は多いと思いますが、これは「Certificate of Foreign Status of Beneficial Owner for United States Tax Withholding」で、「アメリカの非居住者であり、アメリカに納税義務はない」という自己申告書と考えて良いと思います。
海外で口座を開く時に、これを出さないとダメなケースって多いと思います。ま、アメリカから収益、あるいはアメリカ市場の金融商品を売買、あるいは保持しなければ関係ないとは思うのですが、今では銀行にしろ証券会社にしろ、我々顧客は世界の市場にアクセスするのが簡単になりましたので、これの提出をすることが多い。
でもそれを出さずに開設した銀行口座に関して、今になってそれを提出しろってどういうことなのか。
これは銀行内部で、「アメリカの居住者・非居住者」というフラグを顧客データに付ける必要があるからだと私は想像しています。またオーストラリア在住なら納税者番号が必要になると。
去年のOECDの決め事をあらためて読んでみますと、2015-16年からと書いてありますし、着々と準備が進んでいるんでしょうね。
こういうのっていや~~な感じがしますが、世の中にはあの手この手でいろいろ考える人がいますから、課税するべき人にはしっかり課税するという当たり前のことをやろうと国と国が協力しようという、あってしかるべしの動き。
またこれと関連して、最近は海外在住者には簡単に口座を開かせない動きがあちこちで見えていますし、マレーシアもそうですね。前はちょっとコネがあったり、MM2Hを取るつもりなんだけれど・・・という理由で口座を持てましたが、今ではそれは無理とのこと。MM2Hの仮承認レターがないと開けない。
これはタックスヘイブンでも同じで、その国の法律で「個人情報を一切出してはいけない」という決まりがあっても、個人情報を出す方向にうごいていますね。
我々としては「納税するべきものは納税する」、また「納税しないで良いものは納税しない」方法があるわけですから、こういう世界の変化にビビる必要は全くないと思います。
でもこれからは日本の資産家は「海外に出るのを真剣に考える時代」が来るかもしれませんね。
企業家も同じで、世界を舞台に仕事をするのであれば、それこそ拠点はマレーシアのオフショアに持株会社、ヘッドクォーターを起き、各国、各地には子会社を起き、持株会社から全てをコントロールする、あるいは利益を吸い上げるなんてことをするようになるんじゃないでしょうか。
そういう意味でもマレーシアは今までのロングステイヤーとは違う観点からますます注目されるようになるかもしれませんね。
昨年、OECDが決めたルールに関してはこれ。
富裕層の税逃れを防ぐため、海外に住む個人の金融口座の情報を多国間で交換する経済協力開発機構(OECD)の新ルールの詳細が30日、明らかになった。各国の金融機関に海外居住者すべての口座情報を毎年1回、税務当局に報告させ交換するのが柱だ。2015~16年の導入を目指す。
主要20カ国・地域(G20)もOECDルールの活用で合意しており、9月にオーストラリアで開くG20財務相・中央銀行総裁会議でも詳細を確認する。
米国は海外の金融機関に米国人の口座情報の提供を義務づける法律を10年に成立させ、海外口座情報管理を強化。これを機に、多国間で情報を交換すべきだとの機運が国際的に高まった。
新ルールに参加する国の税務当局の間で、海外に住む人の情報を交換し、資産隠しや税逃れに歯止めをかけるのが狙い。
日本の国税当局が米国に送るのは、日本の金融機関に口座を持ち、米国に居住する日本人や米国人らの情報だ。逆に米国の当局は米国で口座を持ち、日本に居住する米国人や日本人らの情報を日本の当局に送る。
各国の金融機関に海外居住者が持つ預金口座や証券口座の情報を税務当局に毎年1回オンラインで提出することを義務付ける。海外居住者が持つすべての口座の名義人、住所、残高、利子や配当の受け取り記録などを報告の対象にする。
金融機関の事務負担を減らすため、残高100万ドル(約1億円)以下の口座はシステムでの検索など簡易な方法での確認を認める。一方、100万ドル超は営業担当者への聞き取りや保存する書類の確認など、より詳細な作業を求める。
口座情報の交換は当初15年末までに始めるとしていたが、準備が間に合わないため、16年末まで延期することも検討する。
各国はこれまでも税逃れを防ぐために、租税条約を結んで情報を交換してきた。ただ、不定期に情報が入ったCDなどを郵送でやりとりする程度だった。
新ルールでは年に1回オンラインでやりとりするため、情報の質や更新頻度が高まる。ただ、金融機関の手間やコストの増加につながる。日本の金融機関は口座を特定する作業が膨大になることを懸念し、一定額以上の残高がある口座に対象を限定するよう求めていた。新ルールにはOECDに加盟する34カ国などが参加する見通し。G20の枠組みで新興国にも広げ実効性を高める方向だ。