肉類をあまり食べなくなった私ですが、もちろん全く食べないことはなくていろいろ作っています。
久しぶりにタンシチューを作りました。
正直な所、私はタンシチューの作り方は知りません。ただ自分の頭のなかにある理想の姿にどうやったら近づくのか、少ない経験を元して考えて作るだけ。
でもかなり美味しいものができていると自画自賛しています。
牛タンって安いですよね。キロ単価は覚えていませんが、大きな牛タン一本でも大体5ドルぐらい。
画像は今回撮っていませんが、去年のものがありましたのでそれを出します。今年とさほど価格は変わっていないはず。1キロあたり3ドル70セントぐらいですから鶏ガラとか牛の骨とかそんなのと同じような値段。犬の餌でももっと高いのがありそ。(笑)
これで約1.5キロ、500円ぐらいですが、量は3人でも多すぎるくらい。
いつも書いている通り、私が買う牛タンは「塩漬け(Corned beef tongue)」です。塩漬けでない生もありますが、塩漬けのほうが段違いに美味しいと思います。塩漬けすることによって柔らかく、そして味が出て来るのは普通の肉や魚と同じ。
ただし、焼き肉だけは生のほうが良いのは当たり前。
この塩漬けの牛タンをそのまま大きな鍋に入れて水から茹でるのですが(酒、胡椒の粒、ベイリーフだけは気休めに入れる)、今までは圧力鍋を使うことはしませんでした。その理由は、私はそもそも低温調理に凝っていますし、圧力鍋の120度なんて温度で茹でたら味も素っ気もない牛タンになりそうだから。
でもやっぱり圧力鍋は簡単ですし、時間をうまく調節すれば良いのが最近わかってきましたので、圧力鍋を使うのが普通になりました。15分ぐらい弱火で圧力をかけてあとは放置です。
ここで大事なのは茹で汁にも結構味がでているのですが、これは捨てます。塩辛いってことではなくて、やっぱり牛タンのスープそのものって、なんて言ったら良いのか「野蛮な味」がするんですね。決して上品で良いスープだとは思えません。だから後で使うスープはちゃんと牛骨から取ったものを使う。
牛タンを低温調理をしたこともあるのですが、熱をしっかりかけないと皮もうまく剥けませんし、味や食感にしても低温調理の優位性はないと思っています。
この茹でたただけのものを切って食べるだけでもほどよく塩味が効いていて、酒のツマミにも最高。冷蔵庫に入れて冷やして食べてもオードブルとしてそのまま使えるはず。醤油、辛子、白髪ネギでもあれば完璧かも。
料理として作る場合は、この茹でたものを素材として作ります。今日のタンシチューがそれ。
スープは大量に作って冷蔵庫に入っていたものを使いましたので、これまた楽勝。30分も煮込めばかなり美味しいタンシチューになる。ただ柔らかさの好き嫌いもありますので、時間はそれなりですかね。
ただ問題はスープですね。
最近我が家では牛ベースの料理の場合、「牛骨」からスープを作るのが習慣となりました。カレーもビーフシチューも同じで、最終的にはルーを入れるにしても牛骨で基本的なスープを作るとまるで旨さが違うんですね。
そのスープで牛肉も入れない野菜スープを作っても抜群に美味しいし、肉は肉で入れればもちろん旨さは倍増ですし、それはオックステイルスープを作る時も同じ。もちろんカレーも抜群。特にビーフシチューは「ビーフシチューの素」やルーを入れたものとは格段の差が出ると思います。
この時多めにシチューを作って置きますと、次の日にはもっと美味しくなりますし、余ったものを冷蔵庫に入れておけばそれにちょっと手を加えて「デミグラスソース」の様に使えるという一石二鳥。
私の料理を褒めることは殆ど無いヨメさんですが、最近、牛骨でスープを取るのが普通になってから美味しい美味しいと連発で褒めてくれます。でもニコっと笑って「美味しいあれをまた食べたいな~~~」なんて言葉に乗せられてはならず、本人が手抜きをしたいだけなのはバレバレ。(笑)
でも確かに美味しい。
今回のタンシチューもスープを取って野菜も焼いてそれを入れてまた煮込んで、それからタンも入れて数時間煮込んで・・・なんて面倒なことはしていません。
茹でた牛タンを切って、ダボ流偽デミグラスソースに入れてほんのちょっと煮込んだだけ。簡単なんてもんじゃありません。
でもこの旨さの秘訣はスープ、ソースにあるのは間違いがなく、「牛骨から取る」のがポイントだと思います。
スーパーで売っている牛骨は二種類で、一つは「ネック」、一つは「肋骨」です。肉屋に行くと大腿骨とかいろいろありますが、私はこのネックか肋骨でスープを取っています。あああ、そういえば牛骨の値段が今日のこの牛たん一本と同じ値段だわ。いや、骨のほうが高いくらいかも・・・6ドル以上したような・・・。
ただ肋骨の場合は脂がかなり付いているので、一度しっかり茹でこぼしをしたときに脂は切り取る必要があるのと、それでも脂が多く出ますから、茹でるときにはボコボコやると駄目なんですね。若干は良いにしろ、ボコボコやりすぎるとスープが乳化して白くなってきます(脂と水分が混ざる)。
これはこれでわざとそうしたほうが美味しい料理ってあるわけで、でも洋食の基本のスープとしては乳化はさせず、綺麗な透明である必要はないにしてもそれに近いほうが汎用性があると思っています。また、後に浮いている脂は綺麗に取る。ここも重要だと思います。
以前、骨を買おうと思った時に、韓国人カップルも骨を買おうとしたので「どう調理するんですか?」と聞いてみたところ、2,3時間この骨を煮てスープを取り、それを食べる(飲む)だけだと言っていました。
私が「ユッケジャンスープみたいにはしないんですか?」と聞いた所、「ああ、ユッケジャンスープを知っているのですか?その時に使うのも良いです」と言っていました。
どうも韓国では具合が悪いときだったかな、この骨から取った簡単なスープを飲む習慣があるらしい。
で、実際に、牛骨から取っただけのスープに塩コショウ、そして刻んだネギを乗せただけで十分美味しいスープになるんですね。これに多少の野菜や春雨でも入れれば文句なし。そしてそれの発展形でシチュー、カレーにもできるし、残りは煮詰めてデミグラスソースみたいにも出来る。
牛骨って、隠れた万能選手だと思います。
今までは面倒だと思ってコンソメだとか素の類い、ルー、水の代わりにチキンストックを使っていましたが、やっぱり牛骨から煮だしてスープを取ると全く違うのね。
でもヨメさんが骨からスープを取るのは私は見たことがなくて、自分ではやる気が無いようです。その内、牛骨のスープだけでいいから作って~~なんて言わるのかもしれない。(笑)
実はこの骨から取るスープも2,3時間コトコト煮ていたのですが、最近は圧力鍋でも大丈夫だと思うようになってきて、45~1時間圧力をかけて作ります。もちろん一度茹でこぼしてから。
圧力鍋も使い方も最近わかってきて、「煮出し」とか「柔らかくする」には良いですが、ちょっと油断すると煮崩れはもちろん、大事な風味が飛んでしまうんですね。
先日、骨からスープも取り、野菜(ミレポア)も焼き、肉も小麦粉を付けて焼き、別途、赤ワインはごっそり煮詰めて、そしてトマトピューレを入れてこれまた煮詰めて、スープに足して、いざ、あとは煮こむだけという状態で味見をしたんですよ。
その時は、やっぱり手をかけると美味しいなぁと思ったのですが、それを圧力鍋に掛けた所、出来上がりはなんともそっけのないものになってしまいました。この変化は驚愕と言っていいくらいでした。
やっぱり圧力鍋は圧力鍋の調理法があるんだとこの時に痛感しました。もし圧力鍋ではなくてスロークッカーでしたら、5,6時間放置で最高のものができていたはずで、温度の高さって味、特に香り(揮発性)とは密接な関係があるというのが良くわかりました。
だからこそ「蒸し煮」とか洋食で言えばブレゼ、中華なら壺に入れて蒸すとか、あああ、土瓶蒸しが良い例ですが、80~90度辺りでゆっくり加熱しますと、素材の形、味もそのまま、そして全体の味、香りも素晴らしい物が出来るのが理解できました。
大きな鍋で野菜スープを作るときにニンニクを一欠片入れてもわけがわかりませんが、この中温調理(?)にしますと欠片一個のニンニクの香りがしっかりわかるのね。本当に不思議。圧力鍋で作るとこういう繊細さはなくなると感じます。
その発展形で以前、65度で10時間ほど煮込んだことがあるのですが、なんと野菜のセルロースは分解せずに生に近い歯ごたえがあって、素材の味ははっきりしていて、でも味はスープ全体に回っているという摩訶不思議なスープが出来上がりました。
低温調理に興味のある方は是非この辺の実験をしてみてください。目からうろこだと思います。
温度を制するものが料理を制する、なんて大げさですが、そんな気がしました。