KLの未来と本質

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マレーシアに拠点を移すことにしてから早8年が過ぎました。あっという間でしたがやっと今年KLに行けるようになった。

でもこの8年、KLに度々行ってはその変貌の速さにびっくりしました。でもこれは完成形ではなくて、まだまだ「始まったばかり」なんですね。2020年の先進国入りが悲願のマレーシアですが、半端じゃない数のプロジェクトが立ち上がっている。今の時点でも凄いのに、建設中はもちろん、計画も目白押し。

本当にこのまま伸びるんだろうか。とっても不思議。

この8年、ずーっとマレーシアウォッチングを続け、何度か行ったり来たりしても私が分かる範囲なんて未だにゼロに等しくて何もわかってはいないものの、私が知っている限りの「マレーシア人」とこのマレーシアが狙っている将来像とどうしても咬み合わないんですよ。

こう言ったらお叱りを受けるとは思うものの、ごくごく一般のマレーシア人を見ているとすぐ近未来に先進国になるはずがないと感じます。ある意味、私が知っている人たちとは街にいる普通の働く人たちであり、決してエリートではない。でもHSBCにしてもリレーションシップマネージャーのできの悪さには何度も閉口したし、一流と言われるホテルでも働く人たちの程度の低さには本当に驚くばかり。レストランでも一般店舗でも同じ。要は人材不足だと私は感じるのだけれど、こういう人たちでマレーシアが狙う先進国が作れるなんて私には到底思えないんですよ。

でもすでにあちこちにびっくりするぐらいの大きなビルが立ち並び、そこには大手企業が入っていて、私なんかまるで想像もできないような「できる奴」がごっそりいるんだろうと思うわけです。KLCCのツインタワーにしてもあの近辺にある一流企業に務めている人たちはどんな人達なんだろう。そんなことをいつも想像しています。

マレーシアの教育レベルの低さをいう人は多くいるけれど、でもそれは所得格差があるのと同じで、我々日本人には想像できないほどの「教育レベルの格差」があるんだろうと思っています。オーストラリアには多くのマレーシアの若者が留学して来ていますが、多くは「デキる子」たちで、スマートさはないにしても(笑)、いい成績を取って世界に飛び出し、世界の一流の企業でガンガン稼いでいる20代、30代の若者は決して少なくないのは二人の息子からの彼らの学友の話を聞いてもわかる。

彼らが世界に広がり、また本国に帰る者も多くいてマレーシアの発展に寄与、あるいはそのスピードの中で立身出世を考えている様子も聞こえてきます。きっとその数は半端ではなくてマレーシア人のブログを見ても海外(先進国という意味)で教育を受けた青年は非常に多いのがわかります。マレーシア人の多くは子どもたちを海外で教育するのに非常に熱心だと聞きます。

ブミプトラ政策やマレー語、英語、中国語という3つの言語があることによって教育の現場はかなり混乱していると私は思っていて、それは多くの日本人が「マレーシア人は何ケ国語も話せて凄い」という『大きな大きなとんでもない勘違い』とは全く違う問題を孕んでいるはず。語学が何ケ国語中途半端にできたところで、高度な知識や技術、思想を学ぶのにそれは弊害になることこそあれ、プラスには働かない(こんなことは海外で子供を育ててみればすぐにわかる。でも子供が小さい内や遊び半分で来ている人にはわからない)。国民同士の話だってまともに通じないことがあちこちで起きる。だからマレーシアでは子供の頃から英語を中心にして、高等教育は海外でという家庭が多いと聞きますが、さもありなんと思っています。ここは日本人が「マレーシアで子供を育てたら良いことがある」と考えているのは勝手にしても、当のマレーシア人はもっと先を考えているってことじゃないですかね。ちゃんと世界の現実を見ているんでしょう。

でもねぇ、私から見るとそれでもやっぱりマレーシアの計画に必要なマレーシア人の人材が十分にいるとは思えないんです。

結局、私が考えるマレーシアって「偉大なる不動産業」じゃないかと。これは中国もまた同じで、他の発展途上国の多くはそうですが、どんどん発展し、GDPも大きくなって来たけれど、「どこまでが自国の力か?」と考えた場合、例えば日本から製造業がこぞって中国、東南アジアへ出て稼いでいるのを見てわかるように、マレーシアのGDPが伸びたとしても「それを稼いでいるのは誰か?」という点が気になるわけです。結局、外国企業が入ってきたから、それに土地を与え、労働力も提供し、大きく伸びてきた背景がある。製造業じゃないにしても、それは同じじゃないかと思うんですよ。結局、「場所貸し」で伸びるというビジネスモデルだろうと。

だから大きく伸びたにしても「それはその国の実力ではない」と私は思うんです。そして環境が変わればそういう外国企業は簡単に逃げてしまう。

でもその正反対の考え方も同時に持っています。例えば東京を考えてみても、東京へは地方から人が集まり、企業も集まり、そして今のような巨大な都市になったわけで、それを見て、「元々住んでいた江戸っ子の実力か?」という人はいない。(笑)

つまり、日本という国の中で東京や大阪、あるいは大きな都市に人も富も集中するのと同じ様に、マレーシアという場所に世界から人と富が集まって発展すれば、それで十分なのかもしれない。この辺がちょっと古い頭のジジーには良くわからないところだけれど、東京や大阪だってマレーシアと同じような「偉大なる不動産業」で大きくなったと言っても良いのかもしれない。

東京に地方出身者が多くいるように、そして昨今、外国人が増えてきたけれど、それとマレーシアとどこが違うのか?と考えれば、そこに大きな違いがあるようには思えない。もし昔からの江戸っ子が日本人で、地方から入ってくる人たちは外国人だと仮定した場合、一体、東京とマレーシアとどこが違うのか?同じだと考えて良いわけですよね。

ましてやマレーシアの凄いところは、そうやって入ってくる外国人に「永住権は与えない」という強い意志があること。もちろんマレーシア人にもなれない。つまり、「あんた達を利用はするけれど、絶対に面倒は見ないし、何かあったら国外に追い出すよ」というのがマレーシア。それを考えると「偉大なる不動産業」の完成形、理想形に近い。住まわすけれど、住み続ける権利も与えないし、絶対に面倒は見ないんですから。もし東京や大阪のような大都市も同じことが出来たとしたら、まるで違う世界になっていますよね。坊主丸儲けみたいな。(笑)

つまり、私の「このままマレーシアは先進国入りするのか?」「自国に人材がいるのか?」という疑問は的はずれなのかもしれない。外国人に永住権も市民権も与えないで働かすだけ働かせて、いらなくなれば捨てるし面倒は絶対に見ない。この「外国を利用する」考え方って筋金入りで凄いと思います。不動産を自由に買わせないのも大したもん。そのくせ、マレーシア自体は「多民族国家」であって、日常では日本みたいな「自国民と外国人」みたいな差別的なものは少なくて、共存ができる国民性を持っている。パーフェクトじゃないですか?(笑)

ただ、外国人がうじゃうじゃいて、マレーシアの自国民にも収入の格差、教育程度の格差があって、トップグループはどんどん伸びて、下層グループはきっとそのままなんでしょう。そう考えてみると、日本のほうがマレーシアより進んでいるというより、マレーシアの姿こそが日本の将来のようにも思えて来るんです。

かつて日本には「金の卵」と言われた「集団就職の人たち」がいて日本経済を支えた。この人達は高度な教育を受けていたわけでもなく、労働力の供給という意味合いでしかなかったけれど、これなくしては日本の発展はなかった。これに似たものをマレーシアの労働者にも見ることができるわけだけれど、日本は科学技術の進歩によって単純労働者は減るばかりで、最低限必要な能力のレベルがどんどん上がってきた。そういう意味では私は日本の学生はのほほんとしているように見えるし、日本の教育は世界から見ると的外れにも見えるし、特に大学教育は大きく変化させないと世界に完全に負けてしまう。私は「今の日本の大卒はかつての集団就職の若者と同じ」だと考えています。だからといってでは日本の学生が進んでいる海外で勉強するかというと、動きは逆で若者は「内向き」になっている。これって日本の衰退の始まりに私は感じます。そしてその行き着く先を「マレーシアに見ることができる」ような気がするんです。

格差社会。怖いと思います。でも欧米流の「新自由主義」や「市場原理主義」、「規制緩和」を『グローバルスタンダード』だと信じてそれを選んだのは日本国民だから、その結果は受け入れるしか無いんだろうと思っています。でも「耳障りの良い」『グローバル主義』の行き着くところをお人好しの日本人は気がついていないように感じます。でもしょうがない。自業自得。

そういう意味ではマレーシアは進んでいて「格差は当たり前」の世界。

労働力がなければ安い労働力を導入し、新しい技術が必要なら海外からExpatsを呼びこむ。そして今、恐ろしいほどの開発をして海外の優良企業をも呼びこもうとしている。これが顕著に見えるのがKLCCの南の位置に開発中のTun Razak Exchangeではないかと思います。

場所はここですが、半端じゃない広さ。70エーカーですと。名前はTun Razak Exchangeね。ここにできる高層ビル群は25棟にものぼり、世界中から250社の金融関係のトップの会社、そして3万人の外国人の専門家を誘致する計画。マレーシアが狙っているのはここにアメリカのウォール街、ロンドンのシティと肩を並べる街を作り出すこと。当然、当面のターゲットはシンガポール、香港。

2015-10-17_02h18_15

プロジェクトの内容はこんな。

日本人的感覚だと、「こんな箱物を作っても中身はどうするんだ?」と思ってしまいます。でもそれはまさに「日本的感覚」でしかなくて、バカな政治家や官僚、自治体の日本だからそうなのであって、「場所貸し」ではまさにそれで自国を作り上げてきたマレーシアの方が「ノウハウを持っている」と言って良いのかもしれません。まず私にもわかるのは「スピード感の違い」。日本って何をするにも遅い。国も企業も硬直化しているのを感じますし、それは今シドニーで監査法人に勤めている次男坊も良くいうことです。とにかく日本人は動くのが遅いと。

もちろん動きが遅いだけではなくて、全てがサラリーマン化しているとでも言うべきか、「自分で責任をとってブルドーザーのように前進する人材」が非常に少ないと感じるんです。特に福島の原発事故から私は日本への見方がガラリと変わりまして、どの立場の人間も「利権」と「保身」しか考えていないと思うようになりました。それをキーワードにして日本を見渡してみると、どこもかしこも「利権」と「保身」ばかり目につくようになりました。この傾向は国民も同じで、皆が気になるのは「権利」ばかり。一言で言えば「自己中の国、日本」になった。

これって人間の若さ、老いの関係にも似ていて、日本には活力がないと感じます。

でもマレーシアには「人材もいない」「技術も劣っている」「民意も低い」のかもしれないけれど、「前を見て突っ走る強さ」があって、実はそれが何よりも大切なんじゃないかと思う今日この頃。

前にも紹介したことがありますが、この動画は非常に面白いと思います。クアラルンプールの過去、現在、そして未来が見える動画。この動画が作られたのは2013年で、その時点での「未来」が描かれていますが、すでに完成したプロジェクトもあるし、進行中、そして計画中も合わせて、一体KLはどういう都市になろうとしているのかが見えてくる動画だと思います。この時間の流れでKLを見たのはこれが初めてで非常に面白いと思います。

KLには700ものプロジェクトがあるとのこと。(笑)

これらのプロジェクト一つとっても、もし日本ならそれ一つで大騒ぎになるようなプロジェクトが目白押し。凄いですねぇ。

その中のたった一つのプロジェクトでしか無いこのKL River Cityというプロジェクトだけでも恐ろしいほど大きな計画だというのが良くわかります。

この動画はブログにエンベッド出来ないようになっていますのでここから見てください。凄いプロジェクトです。

KL River City – Extended Version – YouTube

2015年から2020年に掛けての計画中のプロジェクトはこれ。凄いですねぇ。ビックリなんでもんじゃありません。

これだけの大都市を誰が運営するのか、ここに誰が来るのか。それはマレーシアのエリートたちと外国人だと思うのですが、日本の中の東京を「世界の中のマレーシア」と置き換えて考えてみると、このマレーシアの計画も満更、絵に描いた餅ではないかもしれないと感じます。

ただ去年から今年に入って中国の化けの皮が剥がれて世界はリーマンショックどころじゃない大不況に陥ると私は考えています。そしてこれらのマレーシアのプロジェクトも「中国が順調だった頃」に建てられた計画なはずで、我々がびっくりしたあの中国の爆発的な発展と歩調を合わせたマレーシアの動きではないでしょうか。でも中国で起きたことがマレーシアに何の影響もないわけがなく、「海外頼り」の計画の真価が問われる時代に入ったんじゃないでしょうか。

でもマレーシアって臨機応変で凄いと思うわけです。日本なら、「計画したものは実行する」のが当たり前で、途中で建設を止めたり休んだりということはまず無い。でもマレーシアって様子を見ながら平気で工事を途中で止めるんですね。こういう発想も凄いですが、それが出来てしまうのだから凄い。これは日本人にはいい加減に見えますが、これこそが現実に基づいた「生きるノウハウ」なんじゃないでしょうか。

スリアKLCCのすぐ横にフォーシーズンズが入る超高層ビルが建設中ですよね。ホテル、コンドが併設されるプロジェクトで、コンドの価格もマレーシアで一番高い物ができるらしいですが、それのニュースを見ていたところ、これには(今とんでもないことになっている)サウジアラビアもかんでいるそうで、工事がそのまま続行できるのかどうか、そんなことでゴタゴタがすでに始まっているとのこと。

マレーシア。やっぱり面白い国だと思います。

あと10年経ったら、今まで以上に様相が変わるはず。でも順調に行ったらの話で、下手をすれば、中国で言う「鬼城」、つまりあちこちに出来たゴーストタウンがマレーシアにもできるかもしれない。でもこの予兆は私にも見える部分があって、あちこちにできているモールにしても順調に経営ができているように見えないところもある。閑古鳥が泣いているとか、キーテナントが出て行ってしまったとか。

それでも臆すること無く前へ進む凄さがマレーシアにはあると思いますし、ジジーでもう終わりが見えている私でさえワクワクします。(笑)

ロングステイの観点からマレーシアを見ると見間違えるのだろうと思います。でも「偉大なる不動産業」であるのは間違いがないと思っていて、でもそれがどうなるのかは私のような古い頭で、しかも過去の常識、考え方ではきっと何も見えてこないだろうと思っています。この壮大な計画を建てたのはマハティール氏であろうと思うのですが、あのかつては何もないランカウイの海と空を見つめて一人のマレーシア人が何を夢見たのか、ちょっとその辺も調べてみようと思います。

マレーシアには資源がある。でも人材がいない、教育をするにも時間が掛かり、世界の動きには追いつけるわけもない。ではどうするか?彼はきっと自国にできること、出来ないことも徹底的に考え、そして「外国を利用すること」を考えぬいたんじゃないですかね。でも利用はしても利用させない方法。植民地を経験していますから、その辺は抜け目がないと思います。あの通貨危機の時のマハティールさんの決定、行動の速さは尋常じゃなかったですよね。あの人ってやっぱり凄い人なんでしょう。(今の中国がやるべきことは、あの時のマレーシアを見習うことだという評論家もいるのね)

極論を言うと、彼はマレーシアに「世界最大の賭博場」を作ろうと思ったんだと思うんですよ。賭博場とは言葉が悪いですが、いわゆる世界中の投資家が「勝負をする場所」にしようと考えた。当然、外人が入ってくるのは大歓迎で、MM2Hもその発想に基づいたものなんでしょう。でも利用はしても永住権も与えず、外人の面倒は一切見ない。まさに賭博場じゃないですか。「金を持って来てください。チャンスは無限にあります」「ダメになったら出て行ってね」という場所。

きっとこの賭博場の運営ノウハウは我々日本人はもちろんのこと、欧米流の常識では考えられない、発展途上国として考えぬいた計画があるはずで、単にロングステイヤーの目で上辺を見ても何も見えてこないだろうと思っています。

マレーシアは物価が安いとか、ゴルフがやり放題とか、住宅環境が良いとか、そんなことも「外人を集めるための環境づくりのホンの一部」でしかなく、世界を動かすビッグプレイヤー(投資家)達をマレーシアに呼びこむためのノウハウ、計画はきっちりあるはず。それも決して行きあたりばったりではなくて、ランカウイというかつては何もない島で、海と空を見ながら一人の青年が考えて考えて考えぬいて計画し、そして夢見た結果が今に繋がっているんじゃないでしょうか。

当然、その計画とブミプトラ政策は対になっているはずで、そうじゃなければ外国人を利用した恩恵を大元の国民が受けることができなくなりますから。でも将来的にはブミプトラ政策、そして3言語が入り乱れているという現状をどうにかしないと、マレーシアの将来はそれが足かせになるはず。日本人がよく言う、いくつもの言語が喋れて良いですね~、なんてのはとんでもない的外れだと思います。

マレーシア。決して侮れない新しい世界の常識を作り出そうとしている途中かもしれないですね。あちこちで問題は山積みなんでしょうが、外資を呼びこむ制度、オフショアまで作り、そして移民政策、MM2H、外人に対する規制など、結構大筋では整合性が取れているんじゃないですかね。手を広げて歓迎しているようで、締めるところは締めているし。でもこれらをぶち壊す可能性があるのがTPPへの参加だと思っています。非関税障壁はまだまだあるし、国内産業を守る政策もあってそれでどうにかやっているのにTPPに参加して大丈夫なんでしょうか。

これから私たちはマレーシアに行きますが、退職者として、あるいは傍観者としてマレーシアを見るのではなく、激動のマレーシアの中に自分を置いて、その流れを体感してみたいと思っています。いろいろ考えてみると、日本は金もある技術もある人材もいて、マレーシアに劣っているところなんて何も無いような気がしますが、実はそれは大間違いで、世界の先端を走っているのはマレーシアで、日本はもうすでに終わったとは言わないものの、過去を引きずったまま、そして自己陶酔したまま周回遅れでドタバタ足掻いているだけのようにも思えてきます。政治に関しても同じで、日本は世界にどんどん取り残されていくような気がしています。でもそれを選んだ、あるいは放置したのは国民。しょうがないですね。

そのくせ我々日本人には悪いクセがある。発展途上国をバカにして下に見てしまう。これって親や先輩が子どもや後輩を見る目と同じで「お前ら、まだまだだな」みたいな感覚。確かに若者には親や先輩にはかなわない部分が多くある。でも新しい世界に順応するというとんでもない能力があるんですね。そして年寄りにはわからない「新しい価値観」「新しいノウハウ」「新しい技術」を創造し未来を作っていく。そして親や先輩がかつてそうであったように、彼らは親や先輩を乗り越えていく。ここに我々は気が付かないとうまくないわけで、例えば中国をバカにする人は多くいますが、あの中国だって大型ロケットを打ち上げて宇宙に中国人を送り出している。新幹線にしても笑いのネタのように日本人は言うけれど、日本より大きな産業にしてしまった。でも「品質が~」とか「民度が~」というけれど、こういう人たちは『かつての日本』を忘れていると思うんですよ。

私が若いころは「メイドインジャパン」は世界の嘲笑の的だったんです。「安かろう悪かろう」という言葉がありますが、それは「日本製品」を意味していた。あの当時の欧米人が日本をどう見ていたのかを想像すると、それは「今の日本人が発展途上国を見る目線」であったはず。

ですから我々は先入観、固定観念を捨てて、「今、青年になったばかりの純粋さ」を持って冷静にマレーシアを(中国も)見ないと大変なことになる。アメリカの製造業が衰退したのはまさに「胡座をかいていた」わけで、そこから脱却した企業は世界の名だたる企業に成長した。きっとそれと同じことは日本でも起きていて、昔の栄華を引きずり、「日本の技術力は世界一で~~~」なんて思ってるといつか逆転するってことでしょう。そしてそれは今、世の中で大騒ぎしている東芝やシャープもそうだし、ソニーやパナソニックも同じ。でもアメリカがどうやって復活したかを考えても駄目で、過去の検証は意味を成さないんでしょう。大事なところは「現実を把握して、問題点を抽出し、それに対応する」というプロブレムソルビング能力に全ては掛かっているのだろうと思います。私が日本に関して心配するのはこの点で、日本の教育はこのプロブレムソルビングに重点を置かず、つまり「考える事」よりも「覚えること」を重視した教育をいまだに続けている点。これが海外の教育との一番の大きな違いでしょう。これじゃ「歯車として生きる」ことは出来ても、「未来を創造する」ことは出来ない。

マレーシアの「ダメな人たち」ばかり見てああじゃこうじゃ考えるより、リーダー的存在、国を引っ張るトップグループの力量を見て判断しないと未来はわからない。ここも日本とは逆で、一般人は優秀でもリーダーが・・・。

今までの自分に囚われずに、いかに頭を空にしてマレーシアを見つめることができるか。これを私は自分に課したいと思っています。上に紹介した動画を見ても思うことですが、1980年代に今のマレーシアを予想できた人がいたのかどうか。これと同じことがこれからの30年に起きるかもしれない。それは国を引っ張るリーダーの資質によると私は考えていて、「ダメなマレーシア人達」を見てこの国を語っても大ハズレになるのだろうと思っています。中国に関しても同じ様に考えています。中国や発展途上国を見て我々が考えないとならないことは、「昔の日本と今の彼らは同じである」という視点だと思っています。1960年70年代にまさか日本の「一人あたりのGDP」がアメリカを抜く日が来るなんて世界の誰が予想したでしょうか。でもそれはバブルの崩壊と共に地に落ちて今に続いている。日本は「完全な衣替え」をしないかぎり衰退する先進国のままであって、復活は不可能。そして何時の日かバカにしていた国々が日本を追い越していく。

マレーシアを上から目線で見るのではなくて、新時代に彼らがどう生きようとしているのか、そこを冷静に見る目、彼らから学ぶ心が自分に欲しいと思っています。ダメな部分はすぐにわかるけれど、それは決して全てではないはず。

楽しみだ~~~~~~~~~。もし私が若かったら、マレーシアでいろいろやってみたいなぁ。(笑)

 
 
 

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