コトコト煮る。グツグツ煮る。さて温度の違いは?

料理を長年やっている人でコトコト煮るのとグツグツ煮るのの違いがわからない人はいませんよね。これって私みたいな素人でもわかる。

でもそれって感覚的に理解しているだけで、では「何度?」というとわからない。グツグツとかボコボコは100度に近いというのは簡単にわかりますが、ではコトコトは?

温度なんてどうでも良いんだよ、見ればわかるだろうって?はい、私もそう思うし、自分で泡の出方、対流、具の動きを見ながら区別しています。

でも今の時代、「コトコト煮るのは何度」ってはっきり言ったほうが「誰にでも」わかりやすいし、間違いも誤解もなくなるじゃないですか。こんなITが進んだ時代なのに、コトコト、グツグツっていう言い方って江戸時代か?みたいな感じがするわけです。ましてや今の時代、温度調節が出来る調理器具がいくらでも出てきているんだから、温度ではっきり言えば良いじゃないですか。

ではコトコトは何度なのか?

これをネットで調べてみると面白いですよ。どこにも書いていない。これに言及する人はいない。いや、いないはずはありませんが私は見つけられません。

不思議ですよね。科学的に間違えのない捉え方をせずに、感覚的に「ほとんどすべての料理人」がそれでやっているんですから。

論理的な欧米人はどうかと思って調べてみてびっくりしました。これって「シェフによって違う」とWikiに書いてありました。

コトコトは英語で言うとSimmeringですが、これのWikiにこう書いてあります。

typically a water temperature of about 94 °C (200 °F) at sea level.

94度ですか。なるほどだと思いますよね。ところが読み進めているとこんなことも書いてある。

The appropriate simmering temperature is a topic of debate among chefs, with some contending that a simmer is as low as 82 °C (180 °F)。

出典:Wikipedia [Simmering]

シェフの間でも論争が繰り広げられていて、82度という低温だと主張するシェフもいると。

今の科学の時代でもプロの中でこんな違いがある。面白いですよね。

つまり、「コトコト煮ます」ってのを聞いて、「はいわかりました」と多くの人は言うけれど、プロでも内容がバラバラだということ。

いやー82度だろうと94度だろうと大した差はないんだよって声も聞こえてきますが、私みたいに「温度男」なんてヨメさんにあだ名を付けられるような低温調理オタクに言わせますと、「そりゃないだろう~~」って思うわけですよ。

実際にですね、やってみてくださいよ。82度と94度では違いがないって思う人は。

なぜ私が温度に拘るかというと、煮るにはコトコト、グツグツ、ボコボコ以外にもあると思うからです。例えば低温調理で55度で調理する場合、これをなんと呼びます?鶏肉の胸肉なら60-61度です。腿肉なら67-68度。骨付き肉だと80度程度が一番良いと思うし、皮に至ってはもっと高温で長時間さらさないとダメ。ただ単に「鶏肉に火を通すだけ」でもこれだけの違いがあるわけです。(温度を言わないプロがそれを無視しているかというとそうじゃなくて、鶏肉丸ごとを「まずは沸騰している湯の中に入れる」とかちゃんと火の入り方が部位ごとに違うのをわかって計算している)

そしてタンパク質が変性する温度、水分を放出する温度、そしてコラーゲンが溶ける温度、脂が溶ける温度とかいろいろあるじゃないですか。なおかつ味の出具合、滲み具合、風味が飛ぶ飛ばない、型崩れするしないなど気になることは山ほどあって、そしてその辺の温度を見極めてベストな状態、あるいは自分が欲しい状態にするのが低温調理。温度と時間、特に温度がはっきりわかれば、どこの誰にでもそれを伝えて同じことが出来る。

でもコトコトとかグツグツ、グラグラ、ボコボコみたいな、これって幼児言葉と同じだと思うんですよ。擬音で状態を表すんですから。

例えば4台の車が走っていてそれぞれスピードが違う。それを誰かに伝えるにはどうしますかね。A社はビュンビュン、B車はグィ~~ン、C車はグワ~~~~~~~~、D車はサァ~~~とか?これを聞いて、「そかそか、わかった」ってのと料理の世界って似ていると思うんですよ。

私としてはやっぱり料理も、もう少し科学的になったほうが良いと思うんです。正確に伝えられますから。

特に温度に関してはわからないことばかりで、まぁ、煮物や焼き物、あるいは低温調理は良いにしても、そこから一歩出て洋食で言う「ブレゼ」とか和食で言う「土瓶蒸し」とか、そちらの方を学ぼうと思うと突然「暗黒の世界」に入ったように感じます。

例えば「150度のオーブンに入れて」と聞いてそれで分かる人がいるのが私には理解できないんですよ。150度のオーブンに入れたら、素材は何度になるのか、何度をキープすべきなのか、そこの一番大事なところが抜けているんですね。でもま、そんなことはわからなくても良いのかもしれませんが、器の種類、素材の種類、量によってまるで温度は変わるわけですよ。水分量によっても違うでしょう。でもそんなことはお構いなしに「150度のオーブンで・・・」で通じちゃうっておかしくないですかね。

一体オーブンの中の器のそのまた中にある素材が一体どういう状態になればよいのか、その一番大事なところの話が抜けているっておかしくないですか?この本来の大事な部分がわかれば、じゃぁ低温調理機で同じような環境を作ってみようとか、密封せずにオープンにしたらどうなのか、蒸気がある状態はだめなのか、どんどん先に進めるじゃないですか。ま、そういう科学の根拠があってスチコンも使うんでしょうが、その辺の理屈は我々素人には見えないところにある。ネットを探してもまず出てこない。

最近、素材を熱する温度ではなくて、例えば「スープ」、あるいは「料理そのもの」の低温調理に興味があるんです。私が思うにそれの代表的な料理は和食の「土瓶蒸し」、中華で言う「壺料理」、あるいは洋食の「ブレゼ」も近いかもしれないと思っているんですが、多分、75-80度程度の温度でキープすると、野菜の味は逃げないし、出汁の風味も飛ばないし、それでいてちゃんとスープに味は出て、また素材に味も染み込んでいるという摩訶不思議なことが起きる。

例えば鍋いっぱいのスープにニンニクの欠片を一個入れて何時間も煮こんだとするとそのニンニクの風味なんか飛んじゃうじゃないですか。ところが75-80度の温度だとたった一欠片のニンニクがちゃんと仕事をするんですね。面白いと思います。

これはスパイスも同じで、ベトナムのフォーみたいにスープの出来が大事なものを作るときには「絶対に沸騰させない」というのがお約束で、なおかつ長時間煮込む時にはスパイス類は最後の1-2時間のところで投入するんですね。そうじゃないと風味が飛んじゃう。あるいは風味が混ざりすぎて個々の存在がわからなくなる。これってまさに土瓶蒸しの考え方と同じじゃないですか。

では「風味は飛ばさずに、もう少し柔らかく煮込みたい」なんてことになったらさてどうするべきか?もうわからないんですね。

でもここで、その場合は「何度で」って指針があればどこの誰にでもできるわけでしょ?でも料理界ってそういうふうには出来ていない。

それどころか、この煮込み料理を50度、60度、70度、80度、90度、100度で調理するとどういう違いが出るのか。そんなデータはいくらでもありそうだけれど無いのね。

料理って職人の世界で、その辺のノウハウは「表に出さない」という伝統があるんでしょうね。ましてや温度は一定じゃなくて、途中で変化させたりいろいろやるのがプロの世界ですから。でもそういう世界では素人はいつになっても蚊帳の外。また素人もそこまで知ろうとする人は極端に少なくて、「コトコト煮てください」「はいわかりました」で終わってしまう。

私がまだ若くて、もっとやる気があればデータベースを作って皆さんと共有したいと思うのですが、ボケ始めたジジーにそれは無理ではあるものの、自分がやった実験のデータだけは書き残しておこうと思っています。また似たような人が多くいれば面白いのですが、そんな暇人はほとんどいないのでしょう。ネットの中で探しても、細かい実験、考察を書いている人は本当に少ない。

だた、「これはこう」というのは低温調理も広がってきましたからいろいろありますが、なぜ「これはこう」なのかは誰も書かないんですね。またその温度、時間をずらしたらどうなるのかというところまで書く人もいない。

そんな料理界に私はちょっとイライラしています。参考書、地図もないところを進んでいるような感じがしています。

でもそんな料理界でも科学的にやろうと動くプロたちもいて、面白い勉強会も開かれているんですね。前にも紹介した「関西食文化研究会」です。

関西食文化研究会

おおおおお、今見たら、定期イベントで「料理と温度の関係」ってのが出ていました。読んでみよう~~。

ここは本当に面白くて、様々な分野のシェフ、有名料理人、科学者が集まって勉強会をしています。例えば「乳化とは?」「メイラード反応とは?」の題目をそれぞれ違う分野のシェフが集まって、中華ではこう、和食ではこうとそれぞれが発表し、その手法を取り入れて新しい分野を切り開こうと皆さんが努力している。

当然、こういう話は「科学的」であるわけで、「スープを乳化させるには煮る時に鍋の蓋をします」なんてラーメン屋のオヤジさんがよく言うような言い方じゃないんですね。鍋の蓋をすると温度が上がり、ボコボコになるから「撹拌」されるってことであるし、では強制的に撹拌すれば良いとか、乳化剤としてゼラチンを入れるとか、話がどんどん広がるわけですよ。そしてそれによって「秘伝」とされていたものも明らかにもなってくる。

おもしろいですね~~。

ってこんなことに興味がある人っていないか?料理って人類が生まれてからずーーっと生活の中心にあるのに、こんな非科学的な状態だって本当に不思議です。

あ、ついでですから前にも紹介したあのハーバード大学の料理講座の動画URLも出しておきます。全部で48話あります。

 
 
 

     
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